弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人堂野達也の上告趣意は「原判決はその理由中に「被告人A弁護人岩間幸平
同林逸郎同毛利与一ハ当公廷ニ於テ管轄ノ裁判ノ申立ヲ為シ本件ニ付当裁判所ハ管
轄権カナイトノ裁判ヲ求メソノ理由トシテ当裁判所カ本件上告ヲ管轄スルノハ裁判
所施行令ニ依ツテ当大審院ノ受理事件カ当裁判所ニ移管サレタ為デアルカ前記施行
令ハ憲法ニ違反スルカラ無効テアル依ツテ当裁判所ハ本件ニツイテ管轄権ガナイ、
旧大審院ノ受理事件中重要デナイ事件ニツイテ最高裁判所カ上告審トシテ関与シナ
イ旨ヲ法令テ定メルノハ憲法ニ違反シナイカ重要テアルト否トヲ問ハナイテ一切ノ
右ノ受理事件ヲ挙ケテ最高裁判所ニ関与セシメナイ事ハ最高裁判所ヲ設置シタ意義
ヲ無ニスルモノテアルカラ斯ル旨ヲ規定シタ前記施行令ハ憲法ニ違反スル此ノ事ハ
縦令一時経過的処置テアツテモ同様テアルト述ヘタ仍而按スルニ日本国憲法施行ノ
日カラ裁判所法カ施行セラレ裁判所構成法カ廃止セラレタカラ裁判所構成法ニヨル
裁判所テ裁判所法施行前ニ為サレタ判決ニ対スル上告事件ヲイツレノ裁判所テ取扱
フヘキカガ問題トナル而シテ此ノ際重要ナ事件トソウデナイ事件トヲ区別シ重要ナ
事件ヲ最高裁判所ノ処理ニ委ネルノハ国民ノ人権ヲ尊重シ国ノ正義ヲ維持スル上ニ
適当ナ処置ト謂ヘルカラ所論ハ此ノ点カラ観ルト実質的ナ理拠ヲ有スルモノト謂ヘ
ヨウ併シ飜ツテ之ヲ実際上ノ問題トシテ考ヘルト右ノ事件ヲ取扱フ為ニ東京高等裁
判所内ニ旧大審院ト其ノ実質ヲ等シウスル特別ノ上告部ヲ設ケソコデ事件ノ重要デ
アルト否トヲ問ハナイデ一切之ヲ処理セシメルコトニスレハ手続上ノ調整カ保タレ
寧ロ時宜ニ適スルノテアツテソノ為ニ特ニ人権カ蹂躪セラレ正義カ無視セラレル様
ナコトハ考ヘラレナイ裁判所法施行令第一条ハ蓋シ斯カル考慮カラ出タ規定テアツ
テソレニ依ツテ所論ノ様ニ最高裁判所ヲ設置シタ意義カ無ニサレタトマテハ謂ヘナ
イ、サレバ本来経過的規定タラサルヲ得ナイ右施行令ヲ以テ憲法ニ違反スルトマテ
断スルノハ妥当テナイ従ツテ右施行令ハ憲法上有効テアリ比較的重要テアルト観ラ
レル本件ニツイテモ当裁判所ハ上告審トシテノ管轄権ヲ正当ニ有スルコトトナル故
ニ右弁護人等ノ申立ハ結局理由カナイコトトナル」と判示して右管轄違の申立を排
斥すると共に裁判所法施行令が憲法に適合するものと判断した一、併しながら元来
裁判所の管轄に関する事項は総て法律を以て定めることを憲法上の原則とすること
は国民の権利保護は重大な関連を有するその本質より当然のことであつて裁判所構
成法と謂い裁判所法裁判所施行法等何れも法律を以て確と裁判所の事物並に土地の
管轄を定めてゐることによつても明かである」従つて裁判所の管轄に関しこれを変
更する場合に於ては当然法律を以て定めなければならないのは勿論でそれが一時的
経過法であると恒久法であるとに依つてその差異を生じないと信ずる二、こゝに於
て本件の問題たる裁判所法施行令(以下単に施行令と謂ふ)について考察するに同
令第二条以下の規定は制度の改廃に因つて生じた裁判所構成法より裁判所法への実
際的な事務引継ぎに関する事項を定めると同時に旧法に於ける地位に相当した新法
上の裁判所が旧裁判所の事件その他を引継ぐことを定めたものであるから新憲法施
行に伴ふ当然の結果として国民の権益に利益こそ齎らせ不利益を与ふるものでない
から何等問題となる余地はない換言すれば控訴院が高等裁判所に地方裁判所が矢張
り地方裁判所に区裁判所が簡易裁判所に移行したものでこの故に国民に不利益を与
へる点は全くない三、右施行令に於て憲法違反の問題を生ずる疑あるのは即ち第一
条の規定である同条は「第一条(大審院の事件)大審院に於いてした事件の受理そ
の他の手続は、これを東京高等裁判所に於いてした事件の受理その他の手続とみな
し、裁判所法施行前大審院にあてて発せられた上告状その他の書類で同法施行の際
まで受理されていないものは、これを東京高等裁判所にあてたものとみなす東京高
等裁判所は左の事件については、裁判所法による裁判権の外大審院の裁判権と同一
の裁判権を有する一、前項の規定に基いて取り扱ふべき事件二、裁判所法施行前に
された判決及同法施行前に終結した弁論に基いて同法施行後にされた判決に対する
上告事件三、裁判所法施行前にされた決定及び命令に対する抗告事件東京高等裁判
所が前項の事件を取り扱う場合には、合議体の裁判官の員数は、裁判所法第十八条
第二項本文の規定にかゝわらず、五人とする」と規定している(一)右第一項は裁
判所構成法に於ける終審裁判所に該当する大審院に於ける上告事件等が総て東京高
等裁判所に於いてした事件とみなすと規定したが裁判所法に於いては終審裁判所と
して新たに最高裁判所が設定されたのであるから大審院に於ける事件は当然最高裁
判所の管轄に属すべきで裁判所法施行法(以下単に施行法と謂ふ)第二条は「第二
条(従前の裁判所に於ける手続)裁判所構成法による裁判所に於いてした事件の受
理その他の手続は政令の定むるところによりこれを最高裁判所又は下級裁判所に於
いでした事件の受理その他の手続とみなす」と規定し又同条第二項は従前の行政事
件について東京高等裁判所の管轄に属すべきことを明かにしたがこの規定の解釈上
大審院に於ける事件は当然に最高裁判所の管轄に帰すべきことを予想せられるとこ
ろである殊に施行法第一条二項の行政裁判所に於ける事件の管轄に関する規定と施
行令第四条の規定とを対照すれば政令に委ねられたところは細則的な事柄であつて
原則的な管轄に関する事項でないことは極めて明かであると謂はねばならない従つ
て裁判所法並に施行法に定めた管轄に関する規定に変更を生ずべき事項を政令に依
つて定めることの憲法違反であることは明瞭なるは勿論施行法第二条に「最高裁判
所又は下級裁判所」とある趣旨よりすれば最高裁判所設置は無意味となり国民は裁
判所法に依つて附与された最高裁判所に於いて裁判を受くるの権利を奪わるゝもの
である而して本規定の性質よりすれば同条第二項の規定と同様施行法中に具体的に
規定せらるべき事柄であることは何人も疑をさしはさまないと信ずる(二)右第二
項の規定に於て東京高等裁判所は裁判所による裁判権の外大審院の裁判権と同一の
裁判権を有すると定めてあるが大審院は昭和二十二年五月三日施行令施行と同時に
消滅したのであるから大審院と同一の裁判権といふものが在る筈がないので斯る規
定は政令を以て別に大審院と同一の裁判権を有する特別な裁判所を設置したと同じ
結果を齎すもので憲法違反たることは明かであり施行法第七条の政令に依つて斯る
内容を有する政令を発し得ないことは明白である(三)右第三項の規定も亦政令を
以て法律を変更するもので憲法違反たることは明かである、法律上合議体の裁判官
は三名とあるを五名とすることは国民の不利益とならないと云ふような形式的な議
論を以てこれを憲法違反ならずと解すれば国会に於て成立した法律も官僚の独善的
解釈に依り政令によつてどしどし変更せらるるに至るであらう四、原判決は上告人
弁護人等の主張の一部は実質的理拠があるとしながらこれに対し「東京高等裁判所
内ニ旧大審院ト其ノ実質ヲ等シユウスル特別ノ上告部ヲ設ケソコデ事件ヽヽヽヽヽ
ヽヲ処理セシメルコトニスレバ手続上ノ調整ガ保タレ寧ロ時宜ニ適ス」る旨判示し
て居るが具体的に本件を取扱つた原審東京高等裁判所の上告部構成について見れば
裁判官の員数は五名であるがその中二名の裁判官は昭和十年乃至昭和十一年司法官
試補に任官したもので判事経験年数漸く十年を越えた者であつて旧大審院判事の経
歴に比すれば雲泥の差があり而も被告人は本件に於て法律上当然最終審として最高
裁判所の裁判を受くる権利があるに拘らず単なる政令に依つてその利益を喪ひ斯る
特殊な取扱を受けねばならないことは人権が正に蹂躙されたものと謂ふことが出来
る五、以上の理由に依つて裁判所施行令第一条の規定が憲法に違反するものなるこ
と明かなのに原判決はこれを憲法に適合するものと判断したことは不当なりと信ず
るものでこれを再上告の理由とするものである」と云うにある。
 しかし最高裁判所は大審院の後身乃至承継者でないこと並に裁判管轄及び審級制
度は違憲審査権の最終審を除く外は一に法律の定めるところに委されていること、
従つて従来大審院において受理していた一群の訴訟事件は当然に最高裁判所の管轄
に属するものと論定し得ないこと及びかかる一群の事件について法律(裁判所法施
行法第二条)をもつて「政令の定めるところによりこれを最高裁判所又は下級裁判
所においてした事件の受理その他の手続とみなす」と規定し、この委任に基き政令
(裁判所法施行令第一条)をもつて大審院においてした事件の受理その他の手続は、
これを東京高等裁判所においてした事件の受理その他の手続とみなし、同裁判所は
かゝる事件につき大審院と同一の裁判権を有し又かかる事件を取り扱う場合は特に
五人の裁判官の構成による合議体をもつて審判すべき旨を規定したことは毫も憲法
の規定又はその精神に違反するものではないことは既に当裁判所の判例(昭和二二
年(れ)第一九四号昭和二三年七月一九日大法廷判決参照)とするところである。
論旨は結局右と反対の見解に立脚するものであつて採用することはできない。
 よつて本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四四六条により主文の如く判決す
る。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるのである。
 検察官 柳川真文関与
  昭和二三年一〇月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   田   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判官小谷勝重は差支につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義

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