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平成14年11月22日判決言渡
平成14年(ハ)第906号 債務不存在確認請求事件
主       文
1 原告と被告間の,平成13年12月14日の金銭消費貸借契約に基づく原告の
被告に対する債務は,金20万円を超えて存在しないことを確認する。
2 被告は原告に対し,金5万円及びこれに対する平成14年5月11日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請  求 
1 原告は被告に対して,平成13年12月14日付け金銭消費貸借契約に基づく
金25万円の債務を負担していないことを確認する。
2 被告は原告に対し,金30万円及びこれに対する平成14年5月11日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 請求原因
1 金銭消費貸借契約の公序良俗違反による無効,不法原因給付
 (1)被告は,「株式会社A」と称しているが,実際は法人格を取得しておらず,
   個人で高利貸しを営んでいる貸金業者である。原告は美容師であり個人で美
   容院を経営している。
(2)被告もしくは被告の従業員は,平成13年11月末頃,原告に直接電話し
て,融資の勧誘をした。その結果,
① 原告は被告から,平成13年11月30日に,10日後の同年12月1
0日に5万円の利息を加え20万円を返済する約定で,15万円を借り受
けた。原告は,上記約定に基づき,同年12月10日,20万円を被告に
支払った。
② 更に原告は被告から,平成13年12月14日に,利息は10日毎に5
万円,支払期日の同月21日には利息の5万円もしくは元利金の25万円
を返済する約定で,20万円を借り受けた。
(3)上記①②金銭消費貸借契約の金利は,年1000パーセント以上の超高金
利であり,刑罰法規にも触れる暴利行為である,債務の返済が困難な者をよ
り窮地に追い込むもので,正常な取引関係とは到底いえないものである。即
ち,原・被告の上記①②金銭消費貸借契約は,出資法,貸金業法に違反し,
公序良俗に反する無効な契約といわなければならない。
(4)よって,原告は被告に対し,本件②の平成13年12月14日付け金銭消
費貸借契約に基づく25万円の債務が存在しないことの確認を求めるととも
に,原告の借入れも被告の不法原因給付であるから,原告は被告に対し,交
付を受けた20万円の返還義務は,ないというべきである。
2 被告の違法な取り立て行為,慰謝料請求権
(1)原告は,平成13年12月20日に,被告を含む14件の債務整理を原告
代理人に依頼し,原告代理人は,同日午後12時35分,被告に対しFAX
で受任通知を送付した。ところが,被告はこの受任通知を無視して,同日午
後3時30分頃,原告宅に2名の被告従業員を取り立てに行かせ,同日午後
4時50分頃外出先から事務所に戻った原告代理人による抗議にもかかわら
ず,また,原告宅に駆けつけた警察官の説得も聞き入れず,被告従業員は同
日午後7時30分頃まで原告宅に居座った。
(2)被告従業員が行った,原告宅への押しかけ,原告宅に上がり込んでの違法
な取り立て行為は,被告の原告に対する不法行為を構成するものである。即
ち,被告の行為は,原告を威迫し原告の業務及び私生活の平穏を害する行為
であり,原告が債務整理を弁護士に委任した旨通知したにもかかわらず,違
法な取り立てを行ったといわなければならない。(貸金業法21条1項,金
融庁事務ガイドライン3-2-2,に違反する取立行為)
(3)原告は被告の違法な取り立て行為により慰謝料請求権20万円を有するもの
で,原告は本件の代理人弁護士に,被告の違法取り立ての阻止と慰謝料請求権
の実現のため10万円を支払った。
(4)よって,原告は被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として30万円及
びこれに対する訴え変更(追加的)の申立書送達の日の翌日である平成14
年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員を求める。
第3 請求原因に対する認否
1 金銭消費貸借契約の公序良俗違反による無効,不法原因給付について
(1)① 被告は原告に対し,平成13年11月30日に,20万円を貸し渡し,
同年12月10日,20万1330円の返済を受けた。
② 更に被告は原告に対し,平成13年12月14日に,25万円を貸し
渡した。その後,一切原告から返済を受けていない。
(2)上記①②の契約の金利は年24%である。金利が年1000%以上である
ことは否認する。
2 被告の違法な取り立て行為,慰謝料請求権について
原告から被告に対し,平成13年12月20日正午過ぎに,貸金の返済が
出来ないとの電話連絡があったので,被告は話し合いのために原告宅に行っ
たものである。被告の取立行為が違法であることは,否認する。
第4 争  点
1 金銭消費貸借契約の公序良俗違反による無効と不法原因給付の成否
2 被告の違法な取り立て行為と慰謝料請求権の成否
第5 理  由
1 金銭消費貸借契約の公序良俗違反による無効と不法原因給付の成否について
(1)原告は妻と2人で美容院を経営していたが,平成13年11月頃には高金
利業者からの借入れが8社,15件位にのぼるようになったこと,そのよう
な状況の中で,被告の従業員から原告に融資の電話があったこと,結局,原
告は被告の融資を受け入れたこと,原告は当初50万程度の融資を希望して
いたが,被告から1回きちんと返して信用を積んで欲しいといわれたこと,
その結果
① 原告は,平成13年11月30日に,被告から15万円の交付を受けて,
10日後の同年12月10日に5万円の利息を加え20万円を返済する約束
をしたこと,そして同月10日に,原告は被告の銀行口座に20万円を振り
込んだこと,
② 更に原告は,平成13年12月14日に,被告から20万円の交付を受
けて,利息は10日毎に5万円,支払期日の同月21日には利息の5万円又
は元利金の25万円を返済する約束をしたこと,しかし,原告は被告に対し,
同月20日には何らの支払いをしなかったこと
が認められる。
(甲第6,8号証,原告本人)
(2)上記(1)に対して,被告及び証人Bは,平成13年11月30日に20万   
円を,同12月14日に25万円を原告に交付した,乙第1乃至4号証の書   
類はそのことを裏付るというが,原告は同書類の手書き部分は原告自らの筆   
跡と認めるものの,金額欄は被告に言われるままに返済すべき金額を書いた   
ものであり,同連帯借用証書の利息の年利24%,返済日の日付はいずれも   
原告が記載したときには空白であったと供述する。利息が年利24%で,返   
済日が平成14年1月4日(乙第2号証),同月15日(乙第3号証)であ   
るなら,何故,返済期限が到来してないのに,原告は被告に対し,平成13   
年12月10日に20万円を振り込んだのか,被告は契約書との関係につい   
て納得のゆく説明を
行わないし,それらについて原・被告間で話し合った形   跡もない。
被告らの主張は採用できない。
(甲第6,8号証,原告本人,証人B,乙第1乃至4号証)
(3)そうすると,上記(1)の①平成13年11月30日の金銭消費貸借契約の   
金利は約1217%になり,②同年12月14日の金利は約1304%にな   
る。(①,15万円×X%×10日÷365日=5万円,X≒1217,②,  
 20万円×Y%×7日÷365日=5万円,Y≒1304)
(4)従って,本件①②の金銭消費貸借契約は金利の契約部分において,出資法,
貸金業法に違反し,利率それ自体において著しく高率であるから,原告の窮
状無経験等を考慮することなく,また被告の動機の不法を問題とすることな
く,公序良俗(民法90条)に違反する無効な契約というべきである。
しかしながら,原告が被告から交付を受けた上記②の20万円の借入れも
被告の不法原因給付(民法708条)となるかについては,上記認定のとお
り,原告は被告の電話による融資の勧誘に応じて借入れをしたもので,原告
の仕事内容,原告が被告からの借入時点の債務が約300万円位であったこ
と,原告は他の高金利業者からも借入れをしており,原告自身も自転車操業
的であったと認めている事実,被告の原告に対する融資態様等を比較検討す
ると,原告は自由な意思で被告から借入れをしたものと評価すべきであり,
本件①②の金銭消費貸借契約が金利の契約部分において,公序良俗(民法9
0条)に違反し無効な契約であるとしても,被告の貸付は倫理,道徳に反す
る醜悪な貸付として,被告にのみ不法原因が存したということはできない。
(甲第8号証,原告本人,証人B)
(5)まとめ
本件②の金銭消費貸借契約の金利及び返済期限の部分は公序良俗により無
効となるが,金員の返還合意は有効である。原告は被告に対し,交付を受け
た20万円の返還義務を負うといわなければならない(原告は被告から金員
の請求を受けた時に遅滞の責めを負う)。
2 被告の違法な取り立て行為と慰謝料請求権の成否について
(1)請求原因2(1)の事実は,これを認めることができる。
(甲第1乃至3,5の1~4,7,8号証)
(2)被告の取り立てについては,被告従業員が原告に対して,声を荒立てて貸
金の返済を迫った事実は認められるが,同従業員が原告宅に上がり込んだ事
実については,当日は冬の寒い日であり,同従業員としては単に原告が営む
美容院に入ったもので,原告の求めに応じて来た警察官も,同美容院に入っ
ており,原告もそれらを事実上容認していた事実が認められる。
従って,被告の従業員が私生活の場である原告宅に上がり込んだと評価す
ることはできない。
(甲第8号証,原告本人,証人B)
(3)しかしながら,被告従業員は原告が経営する美容院に同日午後2時過ぎ頃
から同日午後7時20分頃まで居座ったもので,その間に於ける,原告の対
応,原告の原告代理人事務所への電話による相談,原告の困惑状況,原告の
要請による警察官の出動とその説得,原告代理人の抗議等の一連の事実につ
いて必要な時間の流れはあるものの,被告従業員の約5時間20分に及ぶ債
権取立行為とその態様は,原告を相当程度困惑させ,その結果,原告の受忍
限度を超えて,原告の業務及び私生活の平穏を侵害した言わなければならな
い。
(甲各号証,原告本人,証人B,弁論の全趣旨)
(4)まとめ
被告の取り立て行為と原告側の対応とを比較考量すると,被告の不法行為に
よる原告の受忍限度を超えた損害は,5万円が相当と認められる。
3 よって,主文のとおり判決する。
東京簡易裁判所民事第1室
裁 判 官  小  峰    正

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