弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中,第2項を取り消す。
2本件を東京地方裁判所に差し戻す。
3訴訟費用は,第1審原告Eに係るものを除き,第1,2審とも被控訴人らの
負担とする。
第2事案の概要
本件は,控訴人らが,被控訴人らに対し,控訴人Aの父F作成の遺言書(本件遺
言書)が偽造であることを知らないで和解をしたと主張して,東京地方裁判所平成
12年(ワ)第24946号事件について平成14年3月29日に成立した裁判上の
和解(本件和解)が無効であることの確認を求めたものである。被控訴人らは,本
件和解が成立した経緯からすると,本件提訴は紛争の蒸し返しであるし,また,本
件遺言書は真正であると主張している(なお,一審原告Eも,被控訴人らに対し本
件和解の無効確認を求めたが,本件和解の当事者ないし利害関係人のいずれでもな
いことから,原審は一審原告Eの訴えは却下しており,同人は控訴していない。)。
争いのない事実,当事者の主張及び争点については,原判決「事実及び理由」の
「第2事案の概要」2から4までの記載のうち控訴人らと被控訴人らに関する部
分のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも棄却すべきものと判断する。
2本件和解が無効であるか否かについて
控訴人らは,本件和解の際,本件遺言書が真正なものであると思い込み,偽造で
あることを知らないで錯誤し本件和解をしてしまったから,本件和解が無効である
旨を主張する。
しかしながら,そもそも,紛争当事者間に権利の帰属又は事実の存否,評価など
につき争いがあり,互いに譲歩して和解をしたときは,当該争いのあった権利の帰
属又は事実の存否,評価などに関する錯誤を理由に和解の無効を主張することはで
きないと解すべきである。けだし,紛争当事者が和解をする場合は,権利の帰属又
は事実の存否,評価などに関して認識の対立があり,いずれかの当事者の認識に事
実との不一致,すなわち錯誤があり得るものであって,そのような状況となってい
ることを前提に,双方がそれぞれその段階での認識に基づく主張や要求を互いに譲
歩して当事者間に存在する争いをやめるために和解するのであるから,和解におけ
る錯誤の主張につき前記の制約を課して錯誤を理由に紛争を蒸し返すことを避ける
ことが和解の趣旨にも合致するし,認識等に対立があることを前提に争いをやめる
ために和解をした当事者にとっても必ずしも酷とはならないからである。
これを本件についてみるに,前記争いのない事実,証拠(甲1,3,乙15の
1)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
()被控訴人らは,控訴人Aを相手に株式引渡請求訴訟を東京地方裁判所に提1
起したが(同裁判所平成12年(ワ)第24946号事件),他方,控訴人Aは,被
控訴人らを相手に,同裁判所に本件遺言書が真正に成立したものでないことを確認
するため,証書真否確認請求訴訟を提起していた(同裁判所平成13年(ワ)第15
260号事件)。本件遺言書は,Fが保有するG株式会社の株は半分ずつ被控訴人
らに相続させることなどをその内容とするものであるが,同控訴人は,その訴状に
おいて,本件遺言書には真筆とする鑑定書があるが,偽筆とする鑑定書に基づき,
真正に成立したものでないことの確認を求めると主張していた。
()上記東京地方裁判所平成12年(ワ)第24946号事件において,平成12
4年3月29日,控訴人Bが利害関係人として加わった上で,控訴人らと被控訴人
らとの間で本件和解が成立したが,その概要は次のとおりである。
ア株式会社H(旧G株式会社)の発行済株式数2万株のうち,被控訴人Dが5
851株,同Cが5850株,控訴人Aが4194株,同Bが2643株の各持株
数であることを確認する。
イF名義の株券百株券58枚につき,49枚の株券は被控訴人らが2分の1ず
つ,9枚の株券は控訴人らが各2分の1ずつ所持することを同意する。
ウ控訴人Aが被控訴人らに対し提訴した本件遺言書に係る証書真否確認請求事
件を取り下げ,被控訴人らが取下げに同意する。
以上の認定事実によれば,本件和解は,本件遺言書の真否や前記会社の株式の帰
属等の対立していた主張や要求につき,控訴人らと被控訴人らが互いに譲歩して争
いをやめるために和解したものであることが認められるから,本件和解については,
本件遺言書の効力,本件遺言書等に基づく株式等の権利の帰属についての錯誤を理
由に本件和解の錯誤による無効を主張することはできないというべきである。
3以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの本件請
求は理由がない。
第4結論
よって,原判決は,結論において相当であり,本件控訴はいずれも理由がないか
らこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官南敏文裁判官安藤裕子裁判官生野考司)

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