弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中懲戒処分無効確認請求に係る部分を破棄し、右部分について、
第一審判決を取り消し、上告人の訴えを却下する。
     その余の本件上告を棄却する。
     訴訟の総費用は、上告人の負担とする。
         理    由
 一 本件懲戒処分無効確認請求について、職権をもって判断する。
 1 上告人の主張の大要は、次のとおりである。
 (一) 上告人は、被上告人を包括宗教法人とする宗教法人D寺の代表役員であり、
同寺の住職である。
 (二) 被上告人は、昭和五六年八月三一日、上告人が昭和五一年五月一五日訴外
人と共に被上告人の宗務所を不法占拠し、教団の秩序を乱したとの理由で、上告人
を重懲戒七年の懲戒処分(以下「本件処分」という。)に付した。
 (三) 本件処分により、上告人は、自己が所属する寺院以外の場所で一切の僧侶
としての活動ができなくなるため、他の寺院での宗教活動によって自己の生活又は
D寺の維持に必要な収入を得ることができなくなり、また、一切の役職を免ぜられ
るため、D寺の住職としての地位を免ぜられ、住職が代表役員に就任するものとさ
れている宗教法人D寺の代表役員の地位をも失うことになる。
 (四) 本件処分は、懲戒権の行使において条理に反し、処分の理由として掲げら
れた事実を誤認し、さらに、他の関係者に対する懲戒処分に比して著しく重いから、
無効である。
 (五) よって、上告人は本件処分が無効であることの確認を求める。
 2 原審は、本件処分により、上告人が、自己の所属する寺院以外の場所で一切
の僧侶としての活動ができなくなり、住職としての地位を含め一切の役職を免ぜら
れ、宗教法人D寺の代表役員の地位、被上告人の宗務役員たる役職をも失い、本件
処分によって上告人は経済的に重大な影響を受けるとの事実を認定し、右事実を前
提とすると、本件処分によって上告人の具体的な権利又は法律関係に変動を生ずる
から、本件処分に関する争いは具体的な権利又は法律関係に関する争いであり、裁
判所として本件処分の適否を判断することができるとして、請求の内容である本件
処分の効力の有無を判断した上、上告人の請求を棄却すべきものとした。
 3 しかしながら、宗教団体内部においてされた懲戒処分が被処分者の宗教活動
を制限し、あるいは当該宗教団体内部における宗教上の地位に関する不利益を与え
るものにとどまる場合においては、当該処分の効力に関する紛争をもって具体的な
権利又は法律関係に関する紛争ということはできないから、裁判所に対して右処分
の効力の有無の確認を求めることはできないと解すべきである(最高裁昭和五一年
(オ)第九五八号同五五年一月一一日第三小法廷判決・民集三四巻一号一頁参照)。
これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、本件処分は、
被上告人の宗教団体内部の規律違反に関するものであり、被上告人の宗教団体内部
において、上告人の僧侶としての宗教活動を制限し、又は宗教団体内の地位をはく
奪し、若しくは降格するものであるというのである。そうすると、本件処分の効力
の有無をもって具体的な権利又は法律関係に関する紛争ということはできない。
 もっとも、上告人は、前記1(三)記載のとおり、本件処分により上告人が被る不
利益として、宗教法人D寺の代表役員又は同寺の住職たる地位の喪失及び僧侶とし
ての活動等が制限されることによる収入の減少を挙げる。しかし、原審認定事実に
よっても、D寺の住職たる地位が単なる宗教上の地位以上の法律関係を含むもので
あるとは認められない上、宗教法人D寺の代表役員たる地位の存否は、同宗教法人
との間の紛争であって、本訴当事者間の権利又は法律関係に関する紛争ということ
はできない。そして、本件処分の結果として上告人が経済的及び市民的生活に関す
る不利益を受け、これが具体的な権利又は法律関係に関する紛争に該当することが
あるとしても、その故に本件処分の効力の有無をもって具体的な権利又は法律関係
に関する紛争ということはできない。
 4 右によれば、請求の内容の当否を判断して上告人の右請求を棄却すべきもの
とした原審の判断は違法であり、この違法が判決に影響することは明らかであるか
ら、原判決は、この部分につき破棄を免れない。そして、本件処分の無効確認請求
に係る訴えは不適法として却下すべきものであるから、右請求を棄却した第一審判
決を取り消し、右訴えを却下することとする。
 二 本件地位確認請求について
 上告代理人上羽光男の上告理由について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。右事実関係によれば、本件
処分によって上告人は被上告人の宗務役員たる地位を喪失したものというべきであ
るから、右地位にあることの確認を求める上告人の請求を棄却すべきものとした原
審の判断は首肯するに足りる。論旨は採用することができない。
 三 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、八九条
に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    四 ツ 谷       巖
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    橋   元   四 郎 平
            裁判官    味   村       治

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛