弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を罰金五、〇〇〇円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金二〇〇円を一日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。
     原審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 検察官検事本位田昇の控訴趣意および弁護人島田徳郎の之に対する答弁は、本判
決末尾添附の控訴趣意書および答弁書に各記載のとおりであるから、これについて
判断する。
 控訴趣意第一乃至第五の要旨は、およそ営業の目的を以て同種行為を反覆継続的
に行うことをいうものなるところ本件において、被告人は、古物営業法所定の許可
を受けることなく、利得の意図を以て数回にわたり売却委託、買受又は交換により
中古自転車数台を入手して之を他に売却し相当の利益を挙げたのであるから、当然
無許可の古物営業犯の成立を来している。然るに、原判決は猶被告人には同営業行
為を以て目すべき事実の証明十分ならずとして無罪を宣したのは事実を誤認し延い
ては法令の適用を誤つたものであるというにある。
 答弁一、二の要旨は、営業とは営利の目的を以て又継続的収入を図るため或いは
自己の生活を維持する意図で同種有為をなすことを指称し、単に利得の意図でなし
た行為を以て直ちに営業というべきではない。故に原判決において被告人の本件所
為を以て単純利得行為に過ぎずと解し、待つて被告人には公訴の如き古物営業をな
したる証明十分ならずとして無罪を言渡したのは正当であり、事実誤認も適条の誤
りもないというにある。
 そこで審按するに、
 <要旨>一般に営業とは営利の目的を以て同種類の行為を継続的に反覆累行するこ
とをいい、此の判断は行為の実状に即して客観的になさるべきものであり、
その営利は右業務を構成する各所為毎に現実且つ積極的な利得あることを必要とせ
ず、それら一連の行為を包括的にみて利益を挙げ得べき性質のものなることを以て
足り又それらの所為は全体として之により同所為者の生活の基本を維持するもの即
ち本業もしくは本職等と称すべき場合のみならず、それらに雁行してなされるもの
即ち副業もしくは内職等というべき場合をも汎く包含するものと解するを相当とす
る。之を本件についてみるに、被告人は予て自転車商人の間を廻つて古クイヤを仕
入れ之を改作して履物を製造した上販売することを営業とし来た商人なるところ営
利の目的を以て所定の許可を受けないまま起訴状記載第一の中古自転車二台は二回
に売却委託を受け、同第二の自転車一台は之を買受け、同第三の自転車一台は石油
コンロ一台に金一、〇〇〇円を打金して交換することにより夫々入手した上之を起
訴状記載の如く四回に三名に売却し、そのうち右第一の初めに売却したとき金五〇
〇円、同第二の売却により金一、一〇〇円の各利得をなし、なお右第一の他の一台
の売却に関し謝礼として売却委託者から自転車の古クイヤ三、四本(価格約四〇〇
円)の贈与を受けたこと竝びに右第一の二台の売却委託も被告人から申込んだため
になされたものなることは孰れも記録上明らかである。而して同一人が同種行為を
反覆した場合には、その具体的事情に照らし、その全体が継続的意思に出たものと
認定するのを妨げないのであるから、比較的短期間に反覆された被告人の右各自転
車の売買や交換等は孰れも継続的意思によつてなされたものと解するを相当とす
る。
 故に、被告人の右自転車の取引行為は之を包括的に観て営利の目的を以て継続的
になされた営業的行為と認めるに十分なること控訴趣意所論のとおりである。而し
て元来古物営業を許可にかからしめて取締る所以は賍物の取引の有無を監視するこ
とによつて之を阻止し遡つて犯罪発生自体の阻止を図ることを主眼とするものであ
るから、その取引取締は必ず客観的普遍的に行われるべきであり、原判決にいう如
き本件取引の回数や之による利得がさまで多からざること、取引中には被告人から
自転車を買取つた者の希望に基き若しくは被告人に幾分の好意もあつて始められた
ものであること、被告人が当時生活に困窮していたこと等は、孰れも右取締法違反
罪成否を決する本質的事柄ではなく、単にその成立後犯情の軽重に関する事情たり
得るに過ぎない。
 故に、原判決において被告人の本件所為を以て古物管業法所定の許可を受けざる
まま利得意思を以て反覆された取引であり且つ之により現実の利得もあつたことを
認めながら右は未だ継続的収入の基礎となす目的の下になされた所為ではなく従つ
て同法にいわゆる古物営業行為とは認め難いから、結局本件公訴事実は之を認むべ
き証明十分ならずとして無罪を宣したのは、営業の観念の誤解に発端して事実の認
定を誤り延いては法令の適用を誤るに至つたものであり、此の原判決と同調する答
弁も亦同様の誤りであるといわざるを得ない。而して右の誤は判決に影響を及ぼす
ことが明白である。原判決は此の意味において破棄を免れず、控訴の論旨は第一乃
至第五全体として理由がある。
 そこで、刑訴法第三九七条第三八二条第四〇〇条但書により原判決を破棄した上
更に判決する。
 一、 犯罪事実 原判決において「本件公訴事実の要旨」として記載している各
事実(第一(一)(二)、第二、第三)
 一、 証拠(省略)
 一、 適用法令 古物営業法第六条第二七条、刑法第四五条前段第四八条第二
項、罰金等臨時措置法第二条第一項第三条第一項第一号(所定刑中罰金刑を選択
し、併合罪であるから各所為に対する罰金の合算額の範囲内で罰金五、〇〇〇円に
処する)、刑法第一八条第一項、刑事訴訟法第一八一条第一項。
 (裁判長判事 久札田益喜 判事 武田軍治 判事 下関忠義)

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