弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中九〇日を本刑に算入する。
         理    由
 弁護人正木亮の上告趣意第一点および弁護人松永東同名尾良孝の上告趣意につい
て。
 論旨は、原判決がその冒頭の事実として「被告人Aは、、、a一帯の住民就中旅
館飲食店業者からその勢力を畏怖せられていたものである。」と認定したことにつ
き原判決挙示の証拠によつては右事実を認め得ないのであつて、その認定には伝聞
を証拠とし、論理および経験上の法則に反する違法があり旧刑訴法四一〇条一九号
の場合に当るというのである。しかし、原判決が判示冒頭の事実を認定する資料と
して挙示している証拠、殊にB、C、Dに対する司法警察官の聴取書の各記載等を
綜合すれば原判示の右事実を認定し得るのである。そして、所論のような伝聞であ
つても旧刑訴法の下にあつては証拠とできないものではなく、また原審の認定は論
理および経験上の法則に反するところもない。それゆえ、原判決には所論のような
違法はなく論旨は理由がない。
 弁護人正木亮の上告趣意第二点について。
 論旨は、原判示第一の(二)の事実につき被告人がEと共謀したとの証拠がなく、
原判決は右両名間に如何なる機会に如何なる場所において如何なる方法により共謀
したものであるかの証拠を挙げていないというのである。しかし、原判決挙示の証
拠、殊に証入横山源次の第一審第三回公判調書の記載、証人Fの第一審第四回公判
調書の記載、同人に対する検事の聴取書の記載およびGに対する司法警察官の聴取
書の記載等によれば、被告人とEとの間に本件共同犯行につき意思の連絡のあつた
ことを認定し得られるのである。そして共謀の事実を認定するについては、必ずし
も所論の諸点に亘り一々証拠を挙げて説示することを要するものではない。それゆ
え、論旨は理由がない。
 被告人本人の上告趣意について。
 論旨は、原判決の認定した事実につき誤認を主張するに帰するので上告の適法な
理由ではないから採用することができない。なお、所論中には、本件日本刀の所持
の点につき被告人がさきに聯合国占領軍の軍事裁判所において処罰ずみの趣旨の陳
述があるが、仮りにそのような事実があつたとしても軍事裁判は我が国の裁判では
ないので本件に既判力を及ぼすものではないので問題とはならない。
 よつて、本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴法四四六条刑法二一条に従い主
文のとおり判決する。
以上は、当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 堀忠嗣関与
  昭和二五年一〇月三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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