弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     当審訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人大石力作成名義の控訴趣意書のとおりであるからこれを
引用し、次のとおり判断する。
 論旨第一、
 道路交通取締法施行令附則第四項によつて適用される道路交通取締令第二六条は
車馬又は軌道車は、見透しのきかない交さ点若しくは坂の頂上附近、曲角、横断歩
道又は雑踏の場所を通行するときは、警音器を鳴らし又は掛声その他の合図をして
徐行しなければならない。というのであるが、ここにいう曲角という文字には見透
しのきかないという文言はかからないのである。即ち見透しのきかないという文言
は交さ点と坂の頂上附近とにのみかかるものであると解するのを右法文の文理解釈
上相当とする。のみならず曲角とは普通道路が直角或はこれに近い急角度乃至くの
字形に曲る場所をいうものであつて、かかる個所は見透しのきくきかないには関係
なく(或程度見透しのきく田畑の中の道路でも直角或はこれに近い急角度乃至くの
字形に曲つている箇所は曲角という。)徐行することが交通安全上要請されるので
ある。従つて原判決の如く曲角に見透しのきかな<要旨第一>いがかかるものとは解
すべきものではない。而して原審が取り調べた証拠によれば、本件現場道路は直角
或はこれに近い急角度乃至くの字形に曲つてはおらず、或る程度の見透
しはききながらゆるやかに轡曲且つ蛇行している箇所と認められるので、右第二六
条にいう曲角とは認め難く、寧ろ同令第二七条にいう屈曲の場所と認めるのを相当
とする。しからば原判決は法令の解釈を誤り事実を誤認したものというべきであ
る。
 しかし被告人が本件現場を時速三七、三キロ位で貨物自動車を運転通行していた
ものであることは原判決引<要旨第二>用のA作成の鑑定書の記載によつて明瞭に認
めうるところであり、所謂自動車の徐行とは如何なる程度の速度即ち時
速何キロ以下をいうのか法令には格別これを定めていないのであるから社会通念に
よつてこれを決するより外ないのであるが、通常貨物自動車の徐行とはその制限時
速(昼間の)四〇キロの二分の一(二〇キロ)以下たるべきものと解するを相当と
する。(当審証人Bの公判供述もこの見解に照応する。)従つて被告人が本件現場
を所謂徐行しなかつたものであることは明らかである。故に原審認定に右の如き事
実の誤認と適用法令の一部に誤があつても結局道路交通取締令第五七条第二号によ
つて処断すべきものであることには何等かわりないのであるから、右の誤認は格別
判決に影響を及ぼすものと認められない。畢竟論旨は理由なきに帰する。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 山田要治 判事 石井麻佐雄 判事 石井文治)

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