弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決および第一審判決中、被告人A、同Bに関する部分を破棄する。
     本件中、右被告人両名に関する部分を、熊本地方裁判所に差し戻す。
         理    由
被告人Aの弁護人本田正敏の上告趣意は、単なる法令違反の主張であり、被告人B
の弁護人鍛冶良道の上告趣意一は、単なる法令違反の主張であり、同二は、量刑不
当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権をもつて調査すると、原判決および第一審判決中、被告人A、同B
に関する部分は、後記のように、刑訴法四一一条一号により破棄を免れないものと
認められる。
 右被告人両名につき、原判決および同判決の維持した第一審判決が確定した事実
によると、被告人Aは、C穀物取引所所属の商品仲買人D商事株式会社の熊本出張
所長、被告人Bは同出張所の営業部長をしていたものであるが、(一)、被告人両
名共謀の上、右会社の業務に関し、第一審判決判示の日時、場所で、前後一三回に
わたり、委託者Eほか三〇名から商品先物取引の委託証拠金の代用として第一審判
決判示の各種証券、株券の預託を受け、これを共同して業務上保管中、委託者らの
書画による同意はもちろん、なんらの承諾を得ないで、委託の趣旨に反し、単一犯
意のもとに、F信用金庫ほか二名からの借入金の担保として差し入れ横領し、(二)、
被告人Bは、右会社の業務に関し、委託者Gから預託を受けて保管していた商品先
物取引の委託証拠金の代用たる第一審判決判示の株券を、取引から生じた債権の弁
済にあてるため、同人の書画による同意を得ないで、委託の趣旨に反し、同判決判
示の日時、場所で、六回にわたり、単一犯意のもとに、H商券株式会社ほか一名に
対し売却処分した、というのである。第一審判決は、被告人両名の右(一)、(二)
の各所為につき、商品取引所法九二条違反の罪の成立を認め、(一)の所為につい
てはほかに業務上横領罪の成立を認めて両罪が一所為数法の関係にあるものとして
処断し、原判決もこれを維持しているのである。
 ところで、商品取引所法九二条は、「商品仲買人は、委託者から預託を受けて、
又はその者の計算において自己が占有する物をその者の書面による同意を得ないで、
委託の趣旨に反して、担保に供し、貸し付け、その他処分してはならない。」と規
定しているが、商品仲買人が商品市場における売買取引を受託するにあたり、委託
者から担保として徴する委託証拠金の代用たる有価証券(いわゆる証拠金充用証券)
が、ここにいう「物」の中に含まれるかどうかについて考えるに、同条は、同法中
「商品市場における売買取引の受託」と題する第九章の中にあり、「受託者が占有
する商品等の処分の制限」という見出しものとに委託証拠金に関する規定よりも前
に置かれ、文言上もとくに「委託の趣旨に反して」という要件が加えられていると
ころからみると、元来、売買取引の委託と直接に関係のある物、すなわち商品仲買
人が注文に応じて売買取引を行なうために委記者から受け取り、または売買取引の
結果委託者に引き渡すべき商品(同法二条二項に掲げる綿花以下のもの)およびこ
れに代わる倉荷証券などについて、その処分を規制しようとする趣旨の規定と解せ
られる。そして同法九七条一項によると、委託証拠金というのは、商品仲買人が売
買取引の委託を受けるについて、取引に関して生ずることのある債権を担保するた
めに徴するものであることが明らかであつて、委託者が売買取引に関して生じた債
務を履行しない場合に、商品仲買人がこれによつて弁済を受け、債権債務を決済す
るためのものであるから、委託者が売買取引の目的物である商品等を預託するのと
は全く異つた趣旨で差し入れられるものであり、これを同法九二条にいう「物」の
中に含ませて考えることはできない。そればかりでなく、委託証拠金を有価証券で
充用し得ることについては、そもそも商品取引所法自体になんらの規定が置かれて
おらず、それは本件記録上明らかなように、C穀物取引所が制定し、所属商品仲買
人および委託者が遵守すべきものとしている受託契約準則の一八条に規定されてい
るにすぎないのである。そして同条によれば、証拠金充用証券は、委託者が債務を
履行しないときには現金に換えることのできる手続をすませたものでなければなら
ないとされており、あくまでも担保たる委託証拠金の代用をなすものとして扱われ
ていることが認められる。これらの点を考え合せると、同法九二条が、このような
ものまでを一切含めて規制しているものとはとうてい認められず、けつきよく証拠
金充用証券は、同条にいう、商品仲買人が委託者から預託を受けて、又はその者の
計算において占有する物の中には含まれないと解するのが相当である。
 したがつて、被告人らが、委記者から預り、保管していた本件各証拠金充用証券
を、委託者の書面による同意を得ないで担保に供し、あるいは処分したとしても、
業務上横領罪の成否を論ずることは別として、少なくとも商品取引所法九二条違反
の罪は成立しないものといわなければならない。それにもかかわらず、被告人両名
に対し右の罪が成立するとした第一審判決およびこれを維持した原判決は、法令の
解釈、適用を誤つた違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、これ
を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴法四一一条一号により、原判決および第一審判決中、被告人両名に
関する部分を破棄し、同四一三条本文により、本件中、被告人両名に関する部分を
第一審裁判所である熊本地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官横田喜三郎、同奥野健一、同草鹿浅之介、同長部謹吾の各反
対意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官奥野健一の反対意見は次のとおりである。
 商品取引所法九二条は、「商品仲買人は、委託者から預託を受けて、又はその者
の計算において自己が占有する物をその者の書面による同意を得ないで、委託の趣
旨に反して、担保に供し、貸し付け、その他処分してはならない。」と規定した所
以は、商品仲買人の取扱う取引の大量性と顧客の大衆性とに鑑み、仲買人が取引に
関し占有する物について、顧客に無断で委託の趣旨に反する処分を行うことを禁止
し、もつて顧客の利益を保護せんとするにある。そして、同条は、苟も仲買人が委
託を受けた取引に関して自己が占有する物について、何ら制限をしていないのであ
るから、その種類を問わず、すべてその適用があるものと解すべく、仲買人が顧客
に対する債権の担保として預託を受けて占有するいわゆる充用証券は、もとよりこ
れに包含するものというべきである。すなわち、委託証拠金に代わる充用証券は「
仲買人が委託者から預託を受けて、自己が占有する物」に外ならないし、委託証拠
金に代わる充用証券は仲買人が売買取引に関して生ずる債権を担保するため、委託
者より徴するものであつて、委託者がその債務を履行しない場合に、仲買人がこれ
によつて弁済を受けるためのものであるから、かかる目的に反して、これを担保に
供し、貸し付け、その他の処分をすることは「委託の趣旨に反する」こと明らかで
あつて、かかる行為を委託者の書面による同意を得ないで行うことは、正に同条の
構成要件を充足するものである。従つて、充用証券について右九二条の適用を除外
すべき何らの理由がないといわねばならない。
 このことは、同条と同趣旨を以つて設けられ、類似の立言形式がとられている証
券取引法五一条第一項についても同条第二項と対比して、同様に解すべきことに徴
し疑をいれないところであつて、商品取引所法九二条を異別に解さなければならな
い理由がないのである。
 多数意見の如く、若し充用証券に右九二条の適用がないとすれば、仲買人は元来
充用証券の上に一種の質権を有しているのであるから民法三四八条により、その権
利の存続期間内において自己の責任を以つて質物を転質する権利を有し、従つて右
の範囲において自己の債務のため担保に供することは適法な権利行使であつて、横
領罪を構成しないことになる。これに反し、右九二条の適用ありとせば、充用証券
については右民法三四八条の適用が制限せられることになり、右九二条違反の転質
は同時に横領罪を構成することになる(第一審判決判示第一の事実参照)。
 以上の理由により、商品取引所法九二条は、商品仲買人がいわゆる充用証券を委
託者の書面による同意を得ないで担保に供し、あるいは処分したとしても、その適
用がないという多数意見には同調し難い。
 裁判官横田喜三郎、同草鹿浅之介、同長部謹吾は、裁判官奥野健一の右反対意見
に同調する。
 検察官 平出禾公判出席
  昭和四一年七月一三日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
 裁判官山田作之助は退官、裁判官横田正俊は海外出張のため署名押印することが
できない。
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛