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平成13年12月21日判決 
平成13年(ワ)第860号 動産収去土地明渡請求事件
             
          主    文
1 被告らは原告に対し,別紙物件目録2記載のスクレーパ1台を収去して,別紙
物件目録1記載の土地を明渡せ。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
   事     実 
1 請求
   主文同旨
2 事案の概要
(1) 争いのない事実
ア 原告は,別紙物件目録1記載の土地(以下,「本件土地」という。)を所有
し,また,本件土地につき,仮換地指定を受ける予定地であり,原告は,本件土地
の区画整理事業を行う施工者として,本件土地を管理している。ところで,被告ら
は,別紙物件目録2記載のスクレーパ(ブルドーザ等の自走式重機により牽引して
使用する車輪つき建設機械。以下,「本件物件」という。)を本件土地上に放置し
ているが,本件物件は被告Aの所有名義で登録されており,被告らは本件土地を占
有している。
イ 原告は,訴外Bに対し,平成10年12月8日,本件土地を含む周辺土地の整
地工事(a地区b工区c-d街区外整地工事。以下「本件工事」という。)を総額
5722万5000円で請け負わせた。訴外Bは,本件工事を訴外Cに下請けさ
せ,訴外Cは,訴外Dに下請けさせ,訴外Dは,訴外Eに下請けさせた。そして訴
外Eは,被告Fに対し,本件工事のうち,重機を用いた土砂の掘削,運搬,切盛等
の工事を報酬2110万円で下請けさせ,被告Fは,平成11年7月25日ころ,
工事を完成させた。
ウ 被告Fは訴外Eから,平成11年8月31日までに報酬代金の一部の支払を受
け,被告Fは,訴外Eに対し,少なくとも256万0039円の債権を有している
と主張し,被告らは,同金員の支払を受けるまで,本件物件を残置して本件土地を
留置する。
(2) 本件は,被告らは,留置権及び原告に対する損害賠償請求権をもって,本件土
地を正当に占有できると主張している事案である。
3  争点
(1) 公団所有地について,下請けの宅地造成工事代金に関し,留置権が認められる
か。
(2) 下請業者が注文者に対し,使用者責任に基づく損害賠償が認められ,その債権
つき,留置権が認められるか。
              理    由
1 甲第1号証ないし甲第6号証の2,乙第1号証ないし乙第5号証によれば,次
の事実を認めることができる。
(1) 訴外Eが,被告Fに対し,本件工事の下請負契約に基づき256万0039円
の残債務を有していることを自認し,訴外Eは,平成11年10月5日時点でこの
債務につき即時支払すべき義務があることが認められる。
(2) そこで,被告らが,この債権を担保するために本件土地につき留置権の主張が
できるかについて判断する。
ア 被告Fは,訴外Eに対する工事下請負代金債権を担保するために,訴外Eとの
関係では,本件土地につき留置権が成立するが,本件土地は注文者である原告の所
有地である。
イ 留置権は,当事者間の公平を制度趣旨としており,占有物をそれに関して生じ
た債権の弁済を受けるまでその物の返還を拒絶できることで,その債権の効力を強
めて当事者間の公平を図る担保物権である。また,留置権は,債務者以外の第三者
の所有地であっても,主張できると解されている。
ウ しかし,下請負契約は,元請負契約から全く別個独立の契約ではなく,元請負
契約の存在と内容を前提とし,元請負人の債務履行を目的として締結されたもので
ある。そうすると,下請負人は,注文者との関係においては,元請負人の履行補助
者的立場にある。そうすると,元請負人が注文者に対して,目的物の引渡しを拒絶
できないような場合にまで下請負人に留置権の主張を認めるのは,下請負人の債権
を注文者の犠牲において保護することになり,かえって公平を欠き,留置権の本来
の趣旨に反する。 
エ したがって,特段の事情がない限り,下請負人は注文者に対し,留置権を主張
し得ないと解するのが相当である。
オ これを本件についてみると,被告Fは,注文者である原告との関係において
は,元請負人である訴外Bの履行補助者的立場に立つ者の1人にすぎず,被告Fを
原告に優先して保護すべき特段の事情は見当たらない。よって,被告らの主張する
留置権は認められないと考える。
(3) 被告らは原告に対し,本件工事において,工事現場に適正な資格や能力を持っ
た現場代理人もしくは現場監督を置かなかったから,原告に対し,注文者としての
監督上の過失により,被告Fは,無駄な労力や手間を費やされ,さらに,原告に対
し,使用者責任に基づく損害賠償請求権として少なくとも528万円の債権を有し
ていると主張する。
 ア 被告らは,原告に対し,民法715条の使用者責任を主張しているが,訴外
Eが被告Fへの請負代金を支払らわないことは,債務不履行であり,その債務不履
行について,注文主である原告に対し,民法715条によって損害賠償を請求する
ことができない。
イ 被告らは原告に対し,民法716条の注文者責任を主張しているが,原告の注
文及び指図に関する過失について具体的な事実の主張がなく,また,その過失を認
めるに足りる証拠はない。
 ウ  したがって,被告らは原告に対し,損害賠償請求権がないから,留置権の
判断をするまでもなく,被告らの主張を認められない。
  以上より,被告らの主張は認められず,被告らは,原告に対して,本件放置物
件を収去し,本件土地を明渡す義務があるというべきである。
2 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決
する。
             京都地方裁判所第7民事部
裁判官  葛   井   久   雄     
          
           物 件 目 録  1
(仮換地指定処分前の土地)
所  在     京都府相楽郡e町大字f小字g
地  番     h番i
地  目     畑
地  積     6972.93平方メートル
(仮換地指定処分後の土地)
仮換地指定の日  平成4年12月15日
仮換地の街区番号 j-k-l
仮換地の画地番号 m
仮換地の地積   7万5630平方メートル 
 そのうち,別紙図面(底地番図)のイロハニイの各点を順次直線で結んだ線で囲
まれた範囲内の部分48平方メ-トル(別紙図面省略)
                    
          
           物 件 目 録  2
名  称 スクレーパ
形  式 22SA
製造番号 22SA-72177
製造年月 昭和47年7月

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