弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一、原告らが被告に対し労働契約上の権利を有することを確認する。
二、被告は、
(1) 原告aに対し、金一、一四八万六、一八〇円および別紙目録(一)中金額
欄記載の各金員に対する当該年月日欄記載の各日から各支払ずみまで年五分の割合
による金員
(2) 原告bに対し、金一、五四二万二、三九〇円および別紙目録(二)中金額
欄記載の各金員に対する当該年月日欄記載の各日から各支払ずみまで年五分の割合
による金員
(3) 原告cに対し、金一、二七六万三六一〇円および別紙目録(三)中金額欄
記載の各金員に対する当該年月日欄記載の各日から各支払ずみまで年五分の割合に
よる金員
(4) 原告dに対し、金九一九万八、五三〇円および別紙目録(四)中金額欄記
載の各金員に対する当該年月日欄記載の各日から各支払ずみまで年五分の割合によ
る金員
をそれぞれ支払え。
三、被告は、
(1) 原告aに対し、昭和五〇年一月から同年三月まで金一五万六、六九〇円、
同年四月から本判決の確定まで金一四万五、〇八〇円
(2) 原告bに対し、昭和五〇年一月から同年三月まで金二一万五九〇円、同年
四月から本判決の確定まで金一九万四、九九〇円
(3) 原告cに対し、昭和五〇年一月から同年三月まで金一七万七、七九〇円、
同年四月から本判決の確定まで金一六万四、六二〇円
(4) 原告dに対し、昭和五〇年一月から同年三月まで金一三万一七〇円、同年
四月から本判決の確定まで金一二万五二〇円
をそれぞれ毎月二〇日限り支払え。
四、原告らのその余の請求を棄却する。
五、訴訟費用は被告の負担とする。
六、この判決は第二および第三項に限りかりに執行することができる。
       事   実
第一、当事者の求めた裁判
一、原告ら
 主文第一、第二、第五項と同旨および主文第三項のうち各原告につき「本判決の
確定まで」の文言を除いたものと同旨の判決ならびに右第一、第五項を除きその余
につき仮執行宣言。
二、被告
 「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」
との判決。
第二、当事者の主張
一、請求の原因
(一) 原告aは昭和三一年四月一日、原告bは同三〇年四月一日、原告cは同三
〇年四月一日、原告dは同三六年四月一日、それぞれ被告に入社し、その従業員と
して雇用されてきた。
 被告は、海上、火災、運送、自動車等の各種損害保険およびこれらの再保険事業
等を営むことを目的とする株式会社である。
(二) 被告は、原告らに対し、いずれも昭和四三年一〇月一六日、被告と訴外住
友海上火災保険労働組合(以下住友労組という)との間の労働協約第八条のユニオ
ンシヨツプ条項にもとづき解雇する旨の意思表示をし(以下本件解雇という)、以
後原告らの要求にもかかわらずその就労を拒否している。
(三) しかし本件解雇は無効であり、原告らは、次のとおり、本件解雇後の賃金
を請求する権利を有する。
(イ) 月例賃金
 別表(一)月例賃金の内容記載のとおりである(原告らの資格号棒は本件解雇当
時のもので計算した。付加給は年令給であり、家族手当は定額であるので、その年
ごとの協定にもとづき算出した。臨時加給は昭和四六年度より採用されたもので、
本給、付加給、家族手当を合算した金額にそれぞれの年に協定された割合(昭和四
六年五パーセント、昭和四七年八パーセント、昭和四八年五パーセント、昭和四九
年八パーセント)によつて算出した。)。
 月例賃金の支給日は毎月二〇日である。
(ロ) 臨時給与
 別表(二)臨時給与の内容記載のとおりである(六月臨時給与と一二月臨時給与
は本給、付加給、家族手当の合計に一律の臨時給与月数を乗じて算出する定めであ
り、三月臨時給与は四ランクの格付による支給がなされる定めであるが三月臨時給
与を受ける者の最低ランクのDで計算した。)。
 六月臨時給与と一二月臨時給与の支給日は各月一〇日であり、三月臨時給与の支
給日は、昭和四四年は三月二四日、昭和四五年は三月二七日、昭和四六年は三月二
三日、昭和四七年は三月二四日、昭和四八年は三月一九日、昭和四九年は三月二〇
日であつた。
(四) よつて、被告に対し、原告らがそれぞれ労働契約上の権利を有することの
確認と次の金員の支払を求める。
1 本件解雇後昭和四九年末までの月例賃金または臨時給与として、
(イ) 原告aに対し、別紙目録(一)金額欄記載の各金員の合計金一、一四八万
六、一八〇円および右各金員に対する各支払日の翌日である同目録(一)の当該年
月日欄記載の各日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金
(ロ) 原告bに対し、別紙目録(二)金額欄記載の各金員の合計金一、五四二万
二、三九〇円および右各金員に対する各支払日の翌日である同目録(二)の当該年
月日欄記載の各日から各支払ずみまで前同遅延損害金
(ハ) 原告cに対し、別紙目録(三)金額欄記載の各金員の合計金一、二七六万
三、六一〇円および右各金員に対する各支払日の翌日である同目録(三)の当該年
月日欄記載の各日から各支払ずみまで前同遅延損害金
(ニ) 原告dに対し、別紙目録(四)金額欄記載の各金員の合計金九一九万八、
五三〇円および右各金員に対する各支払日の翌日である同目録(四)の当該年月日
欄記載の各日から各支払ずみまで前同遅延損害金
2 昭和五〇年一月以降の月例賃金として、
(イ) 原告aに対し、毎月二〇日限り、昭和五〇年一月から同年三月までは月額
金一五万六、六九〇円、同年四月以降は月額一四万五、〇八〇円
(ロ) 原告bに対し、毎月二〇日限り、昭和五〇年一月から同年三月までは月額
金二一万五九〇円、同年四月以降は月額金一九万九九〇円
(ハ) 原告cに対し、毎月二〇日限り、昭和五〇年一月から同年三月までは月額
金一七万七、七九〇円、同年四月以降は月額金一六万四、六二〇円
(ニ) 原告dに対し、毎月二〇日限り、昭和五〇年一月から同年三月までは月額
金一三万一七〇円、同年四月以降は月額金一二万五二〇円
二、請求の原因に対する認否
請求の原因(一)および(二)は認める。
 同(三)のうち、本件解雇が無効である点および原告らがその主張の賃金を請求
する権利を有する点は争うが、本件解雇がなかつたとした場合原告らに支払われる
べき月例賃金および臨時給与の額およびそれらの支給日が原告ら主張のとおりであ
ることは認める。
三、抗弁(本件解雇の正当性についての被告の主張)
(一) 住友支部の全損保脱退
1 原告らは、被告に入社以来全日本損害保険労働組合(以下全損保という)住友
海上支部に所属していたものであるが、右住友海上支部(以下住友支部という)
は、昭和四一年一二月九、一〇日の第五二回臨時支部大会において、支部として全
損保を脱退する旨およびこれに伴ない労働組合の名称を住友労組と変更する旨を決
議し、同年一二月一〇日、全損保に対して文書により全損保を支部として脱退する
旨の意思表示をした。
2 ところで、全損保規約第一五条は、「この組合に加入したいものは、定められ
た申込書に加入金と組合費一カ月分をそえて、支部または地方協議会を通じて本部
に申し込む。組合員の資格取得は、中央執行委員会が交付する組合員証の発行の日
とする。」と規定し、同第一七条第一項は、「この組合から脱退する事情の生じた
ものは、定められた脱退届に所要事項を記載し、組合員証をそえて支部または地方
協議会を通じ、本部に届出なければならない。」と規定して、個人が全損保に加入
し脱退する場合を定め、一方同第一六条は、「すでに組織されている企業組合が、
この組合に加入したい場合、その組合の規約、組合員名簿および役員名簿をそえ本
部に申し込み、中央執行委員会が承認した場合には、前条に準じ、加入金とその員
数の組合費を納め、第四八条の手続にしたがつて、ただちに支部を結成しなければ
ならない。この場合、中央執行委員会は、組合員証交付に関する業務をその支部に
代行させることができる。」と規定し、同第一七条第二項は「支部が脱退する場合
は、前項の規定を準用する。」と規定して、すでに組織されている企業組合が団体
として全損保に加入する場合および支部が支部として全損保を脱退する場合を定め
ている。右第一六条の団体加入によつて一企業組合が全損保に加入した場合には、
当該企業組合が全損保の一構成員となるのではなく、同第四七条によつて支部を構
成することになり、団体加入時に当該企業組合に所属する個々の組合員はそのまゝ
当然その支部に所属する全損保組合員となる。そしてこれを逆に、右第一七条第二
項にもとづいて支部が支部として全損保を脱退する場合には、その時点において当
該支部に所属していた全損保組合員はその支部の構成員として当然全損保から離脱
するのであり、すなわち全損保組合員の資格を失うのである。
 右第一七条第二項の解釈は、全損保結成当時全損保は基本的には個人加入を建て
前としていたが、この建て前を貫けば種々の不合理を生ずるので個人加入と並んで
第一六条の団体加入方式が採用されたこと、その際第一七条第二項は団体加入した
企業内組合が後に全損保を一体として離脱する道を開いておくため設けられたもの
であること等の全損保規約制定の経過および労働協約の締結や団体交渉も住友支部
だけが当事者となる等住友支部が独立の労働組合性を貫いてきたという全損保組織
内における住友支部の運営の実態に徴しても明らかである。
3 そこで、住友支部の前記全損保脱退により同支部所属の組合員は全員一体とな
つて全損保の組織より離脱し、全損保の組合員たる地位を失うと同時に、右脱退前
の住友支部は一箇独立の行動をなしうる単位組合としての組織的同一性を保持しつ
つ全損保を脱退して住友労組となり、かつての同支部組合員は一人残らず住友労組
の組合員となつた。
(二) ユニオン・シヨツプ協定の存在
1 被告と住友労組との間の労働協約第七条には、「従業員は左の各号の一に該当
する者及び見習員である者を除き、この組合員でなければならない。同時に組合員
は、この会社の従業員でなければならない。(各号省略)」と規定され、同第八条
には、「会社は組合から除名されたものを解雇する。但し会社は解雇に異議のある
ときは組合と協議する。」と規定されており、さらに労働協約に関する覚書三項に
は、右協約第八条に関し、「但し書の協議は、最終決定に至るまでの過程を示した
ものであつて、協議が整わないときは、第七条の主旨に基づき、会社はその者を当
然解雇することとなる。」と定められている(以下右各条項を本件シヨツプ協定と
いう)。さらに、原告らは、入社時に被告と個別に労働契約を締結したが、その第
一項には、「会社は右本人を労働協約、就業規則及びその他の諸規則に従つて取扱
うこと」と規定し、被告と原告らの個別契約の内容として組合からの除名による解
雇が約されている。
2 本件シヨツプ協定は昭和二二年以降今日まで被告と被告の従業員で組織する労
働組合との間において終始一貫して存続してきた。すなわち、もともと、被告には
大阪住友海上社員組合なる労働組合が存在しており、同組合と被告との間の労働協
約第一条には「甲(大阪住友海上火災保険株式会社)の社員は、乙(大阪住友海上
社員組合)の規約で組合員になることを除かれた職にある者の外、必ず乙の組合員
であることを要する。同時に乙の組合員は必ず甲の社員でなければならない。」と
定められていたところ、右大阪住友海上社員組合は、昭和二四年一一月全損保発足
の際、団体加入の方法でこれに参加して住友支部となつたので、それまでの被告と
の間の労働協約はそのまゝ住友支部に引き継がれた。そして翌二五年一〇月一日、
会社と住友支部との間に改めて労働協約が締結されたが、同協約第七条および第八
条は現在の労働協約第七条および第八条と全く同文であつて、昭和四一年一二月一
〇日住友支部が全損保を脱退し、その名称を住友労組と改めた際にも、また右脱退
に伴なう整備のため若干の規定改訂を行なつたという経過の中においても、全く変
りはなく現在に至つている。
(三) 原告らに対する除名および解雇
 被告は、昭和四三年二月一〇日、住友労組より、同労組が昭和四三年二月七、八
日の第五五回組合大会で原告らを除名した旨の通知およびこれに伴ない本件シヨツ
プ協定に従つて原告らを解雇すべき旨の要請を受けた。住友労組より送付された制
裁録写および資料によれば、従前の住友支部は昭和四一年一二月九、一〇日の第五
二回臨時支部大会の決議にもとづいて同月一〇日全損保を脱退し、名称も住友労組
と変更した結果、従前の住友支部の組合員であつた者は全員住友労組の組合員とな
つたこと、従つて原告らも当然に住友労組の組合員となつたが、原告らはその後再
三の警告を無視して住友労組の組合規約、大会決定、組合機関の指示、指令に公然
反対し、反組合的分派活動を繰返して行ない、その活動に指導的役割を果してきて
いること、そこで昭和四三年二月八日の第五五回組合大会で原告らの除名が決議さ
れたこと、住友労組は同年二月九日右決議にもとづき原告らのそれぞれにあてて除
名通知を行なつたこと、これらの除名に関する手続はすべて組合規約および制裁審
査規程に則つて行われており手続上なんらのかしも認められないことが判明した。
 そこで、被告は、昭和四三年一〇月一六日、本件シヨツプ協定にもとづき原告ら
に対し本件解雇をした。
四、抗弁に対する原告らの認否と反論
A 認否
 抗弁(一)の1のうち、原告らが入社以来住友支部に所属していたことおよび被
告主張の日に第五二回臨時支部大会が開かれたことは認めるがその余は否認する。
被告主張の支部脱退決議は後に反論するとおり無効である。
 同(一)の2のうち全損保規約第一五条、第一六条および第一七条第一、二項が
被告主張のとおり規定していることは認めるが、その解釈は後に反論するとおり争
う。
 同(一)の3は後に反論するとおり争う。
 同(二)の1のうち原告らが入社時に被告主張の文言の労働契約を締結したこと
は認めるが、被告と住友労組間の労働協約は知らない。その余は争う。
 同(二)の2のうち、被告と大阪住友社員組合および全損保間にそれぞれ被告主
張のとおりの労働協約が締結されたことは認めるが、その余は争う。
 同(三)のうち、原告らに対して本件解雇がなされたことは認めるが、その余は
否認する。
B 反論
(一) 被告主張の支部脱退決議は全損保規約および住友支部規約に違反して無効
である。
 全損保は規約上個人加盟の産業別単一組織であり、企業組合の存在を認めない。
全損保規約第二条に、全損保は、「日本各地における損保事業またはこれに関連あ
る事業に従事する労働者で構成する。」と明記し、第五条に、「組合員の産業別単
一組織の自覚と団結の力によつて」全損保組合員の生活と権利を守ることを全損保
の目的として定めているのはそのためである。したがつて、全損保の支部は、単一
組織の全損保の一機関であり、「全損保組合員で組織」され、その機能も「全損保
の統制のもとに、単一組合の一組織として」機能することが義務づけられている。
このことは、全損保結成当時、企業組合であつた大阪住友海上社員組合を解散して
あらたに全損保の支部をつくつた事実およびそもそも全損保結成にあたつてその基
本理念として指向されたものは産業別単一組織をつくることであつた事実によつて
も裏付けられる。
 全損保は規約第一五条のとおりその加入形式も個人加入が原則である。ただ、結
成当初、早急にできるだけ多くの労働者が全損保に結集しやすいように、手続上の
便法として、いわゆる団体加入方式が規約上定められることになつたが、加入後
は、全員が個人個人、全損保組合員として同一の資格を取得するよう規約上明記さ
れている。すなわち、第一六条は団体加入との見出しがつけられているけれども、
全損保加入が承認された場合には第四七条の手続に従つて直ちに支部を結成しなけ
ればならないのであり、そして全損保の支部は、いうまでもなく、全損保組合員を
もつて組織されるのであるから、加入方式はいかようであれ、加入後は企業組合の
存在を許さない。したがつていわゆる団体加入の場合でも加入前の企業組合と加入
後の支部とは根本的な組織原理において質的に異なるのであつて、第一七条第二項
は、全損保結成時における過渡的な論議の一端が反映したまでのことであり、支部
の丸ごと脱退を容認したものではない。
 被告は全損保の運営の実体は連合体のそれであつたと主張し、そこから連合体な
みの支部丸ごと脱退が可能である如く主張する。しかし、支部を全損保から分断し
て企業内に丸抱えにするための政策をとつてきたのは被告であつて、全損保は全損
保規約どおり産業別単一組織としての活動を積みあげてきたのである。
 結局、被告主張の支部脱退決議は、全損保規約および住友支部規約上の根拠を欠
くものであり、全損保の根本的組織原理に背馳するものであつて、無効である。
(二) 被告主張の支部脱退決議は、脱退に反対し全損保組合員として全損保にと
どまる意思を表明した者までひきさらつて全損保から脱退せしめる効力を有するも
のではない。
 全損保規約中個人加盟の単一組織をあらわす第二条、第五条、第一五条、第一七
条第一項に対して、第一七条第二項は一見それと矛盾するものではないかとみられ
るかも知れない。しかし、組合規約の解釈はその組合の根本の組織原理がなんであ
るか、どのような組織運営を基本的に指向するものなのかをはつきり踏まえた上
で、その組織原理の基本にもとづいて規約全体を統一的に矛盾のないよう解釈しな
ければならない。
 全損保が個人加盟の単一組織であるということは、たんに単一であるというだけ
でなく、個人加盟、単一組織であるということが全損保の存在理由でもある。した
がつて、第一七条第二項もその存在理由に反しないように解釈されなければならな
い。そうすれば、第一七条第二項が支部脱退決議の根拠規定にならないことは前項
で述べたとおりであるが、まして、この決議が全損保にとどまる意思を明示した組
合員までひきさらつて全損保から脱退させる効力を持つことは絶対にない。
 このことは、全損保第二三回定期全国大会で第一七条第二項の解釈について、
「全損保規約第一七条第二項による支部の丸ごと脱退は許されず、まして全損保に
残る意思を明示した組合員まで全損保からひきさらうことはできない。」との趣旨
の提案がなされ、圧倒的多数で右解釈が確認されたことによつても裏付けられる。
五、再抗弁その一(本件シヨツプ協定の効力についての原告らの主張)
(一) 昭和四一年一二月以後の住友支部と住友労組の併存
 昭和四一年一二月九、一〇日の住友支部大会で全損保脱退決議がなされた経過を
みて、全損保に留まろうとした組合員は、原告らを中心に、とりあえず住友支部臨
時総会を開催し、住友支部の機能を再建する活動を開始した。すなわち、同月一〇
日、可能なかぎり呼びかけて、全損保に残る組合員を結集し、支部機能再建のため
支部大会までの暫定執行部として原告らを含む一〇名を選出し、原告aはその臨時
執行部代表者に選出された。この臨時支部総会、臨時執行部選出や新たな事態に即
応する組合活動は公然と行なわれ、いち早く支部機関紙も発行され、分会機関紙も
大阪分会をはじめとして発行され、また住友労組を相手どつて住友支部の財産を保
全する仮処分申請も行なわれ、同年一二月一六日東京地方裁判所で仮処分決定が出
された。
 一方、被告に対しても原告aを代表とする住友支部の公然たる活動が開始され
た。すなわち、同年一二月一〇日の数日後原告aは被告に対し住友支部が存続して
いることを申し入れ、同月一七日、住友支部臨時執行部の役員名を通知し、同月二
七日、住友支部として経営協議会の申し入れを行ない、昭和四二年一月四日、チエ
ツクオフ問題などにつき団体交渉を申し入れた。その後、支部大会、支部執行委員
会の開催、全国的オルグ活動、支部機関紙、分会機関紙の発行、書記局活動、渉外
活動、共斗会議、全損保全国大会の出席等ますます活発な組合活動を開始した。
 したがつて、原告らの所属する住友支部の存在と活動は、それが昭和四一年一二
月一〇日の被告主張の支部脱退前の住友支部と同一性を有するか否かを論ずるまで
もなく、住友労組とは別個の組合組織として存することは明らかであり、一二月一
〇日以後、被告の従業員で組織する労働組合としては、原告らの所属する住友支部
と住友労組の二つが併存することになつた。
(二) 本件シヨツプ協定の効力
 企業内にその労働者を組織する労働組合が併存する場合に、その一方の組合が締
結したユニオンシヨツプ協定の効力は他方の組合の組合員には及ばないと解するの
が通説であり、特に、ユニオンシヨツプ協定の締結時に既に組合が併存している場
合に及ばないと解することについてほとんど異論がない。
 本件シヨツプ協定は被告主張によると昭和四一年一二月一二日に読みかえの協定
がなされたものである。読みかえ前は、全損保の統制の下にある住友支部の締結し
た労働協約であるから、そのシヨツプ条項で全損保の組合員を解雇することはでき
ないし、また読みかえ後は、前記のとおり、ユニオンシヨツプ協定締結時に既に組
合が併存しているのであるからその効力は原告らに及ばないというべきである。
六、再抗弁その二(不当労働行為についての原告らの主張)
(一) 原告らの組合歴
 原告aは昭和三一年七月全損保組合員となり、同三四年九月以降住友支部広島分
会常任委員、住友支部福岡分会書記長などを歴任し、昭和四一年一二月一〇日住友
支部臨時支部執行委員長に選出され、同四二年一月以降住友支部執行委員長、全損
保中央委員として組合活動を行なつてきた。
 原告bは、昭和三〇年七月全損保組合員となり、昭和三五年九月以降住友支部大
阪分会常任委員、大阪分会副委員長を歴任し、昭和四一年一二月一〇日住友支部臨
時支部執行委員に選出され、同四二年一月以降住友支部副執行委員長、大阪分会副
委員長、全損保中央委員として組合活動を行なつてきた。
 原告cは、昭和三〇年七月全損保組合員となり、同三九年九月住友支部横浜分会
常任委員となり、昭和四一年一二月一〇日住友支部臨時執行委員に選出され、昭和
四二年一月以降住友支部副執行委員長として組合活動を行なつてきた。
 原告dは、昭和三六年七月全損保組合員となり、昭和四一年一二月一〇日、住友
支部臨時支部執行委員に選出され、昭和四二年一月以降住友支部書記長として組合
活動を行なつてきた。
(二) 解雇理由自体の不当労働行為
 住友労組の制裁録の記載によれば、住友労組の原告らに対する除名理由は、結
局、住友労組とは別個に住友支部の組合活動が行なわれ、原告らがその指導的役割
を果したということであるから、右除名自体が住友支部の団結権を侵害しているこ
とは明らかである。被告は、右除名理由を知らされていたのであるから、被告がし
た本件解雇は、原告らが住友支部の組合活動の指導的役割を担う者であることを知
り、かつ、住友支部の団結を破壊することになることを知りながら行なわれたとい
うべきであり、この点からだけでも本件解雇は不当労働行為であつて無効である。
(三) 全損保排除を目的とする不当労働行為
 被告は、全損保を嫌悪し、全損保の影響を企業から排除することを企図して次の
ような一連の行為を行なつてきた。すなわち、被告は賃金政策をテコとして住友支
部の弱体化と破壊を狙い、まず昭和三三年には三月臨時給与の査定による格差の導
入、昭和三六年には賃金差別拡大のため資格制度の導入、昭和三七年には労使関係
正常化委員会の設置、昭和三九年には賃金決定に関する協定の押しつけ、昭和四〇
年には服務、懲戒規程の改悪等を行ない、昭和四一年には住友支部の全損保からの
脱退を容易に進めるため、全損保の団結のために中心的組合活動をしてきた組合員
を配置転換し、支部の一部幹部による脱退工作を勤務時間中でも容認してそのため
の会社施設の利用を特別に許可し、会社幹部が各職場で組合員に対し脱退を助長、
支持する発言を行なつて脱退の動きを援助した。昭和四一年一二月一〇日以降は、
住友労組の幹部と一体となつて全損保の完全な排除と破壊に狂奔し、まず、同月一
二日、従前の住友支部と会社間のユニオンシヨツプ条項を含む労働協約を日付をさ
かのぼつた同月一〇日付で住友労組と読みかえることを確認し、その後各職場で職
制を通じて一斉に住友支部組合員の全損保脱退を強要し、住友支部の団体交渉申し
入れは一切拒否し、臨時給与、昇給、メーデー参加、休暇取得、配置転換等につい
て住友支部組合員に対する不利益な差別を行ない、さらに仕事の取り上げ、机の島
流し的配置、つるしあげ等人権侵害にわたる村八分的ないやがらせを行なつた。本
件解雇はこれら一連の行為の一環として、住友支部の指導的役割を果している原告
らを排除し、その組織破壊を狙つてなされた不当労働行為であるから無効である。
七、再抗弁その一、その二に対する被告の認否
(一) 再抗弁その一の(一)のうち、原告ら主張のとおりの仮処分申請がなされ
仮処分決定があつたことは認めるが、原告ら主張の住友支部と称する労働組合が存
することおよび同組合から原告ら主張の申し入れ、通知を受けたことは否認する。
その余は知らない。
 原告ら主張の住友支部は独立の労働組合ではなく、住友労組の組合員のうちの分
派行動者の集団に過ぎない。
 同その一の(二)は争う。
(二) 同その二の(一)のうち原告らの昭和四一年一二月一〇日以前の組合歴は
認めるがその余は知らない。
 同その二の(二)および(三)は否認する。
 本件解雇は被告が住友労組に対する本件シヨツプ協定による協約上の義務を履行
したもので被告に解雇するか否かを選択する余地はないから不当労働行為が成立す
るいわれはない。
第三、証拠(省略)
       理   由
一 被告が海上、火災、運送、自動車等の損害保険およびこれらの再保険事業等を
営むことを目的とする株式会社であること、原告らがその主張の日に被告に入社
し、その従業員として雇用されてきたことおよび被告が昭和四三年一〇月一六日本
件解雇をしたことはいずれも当事者間に争いがない。
二(一) 成立に争いのない甲第一、第二号証、乙第一三、第四八号証、証人eの
証言と原告a本人尋問の結果により成立を認めることができる甲第五ないし第二三
号証、甲第二五、第二六号証、甲第三〇ないし第五〇号証、甲第六五、第六六号証
(ただし、甲第一七ないし第二三号証、甲第二五号証、甲第三〇ないし第四七号証
の官公署作成部分の成立は争いがない)、証人fの証言により成立を認めることが
できる乙第一一、第一二号証、証人e、同g、同fの各証言および原告a、同bの
各本人尋問の結果を総合すると、次の事実を認めることができ、これに反する証拠
はない。
1 全損保は、全国各地における損害保険事業およびこれに関連する事業に従事す
る労働者が加入して組織する労働組合である。全損保規約によれば、全損保は、最
高議決機関として全国大会、これにつぐ議決機関として中央委員会を置き、全国大
会、中央委員会で決議された事項を執行する機関として中央執行委員会等を設け、
一企業体の組合員が八〇名を越える場合または八〇名に達しなくても全国大会の承
認を得た場合は支部を組織することができることとされている。
 住友支部は、被告と雇用関係を有する全損保組合員で組織し、全損保規約にいう
その一支部である。その支部規約によると、住友支部は、最高議決機関として支部
大会を、執行機関として支部執行委員会を設け、会社の本支店毎に分会を置き、全
損保の統制のもとに会社と団体交渉をし、労働協約を締結する等の組合活動を行な
うこととされ、昭和四一年三月に労働組合として登記されている。
2 住友支部は昭和四一年一二月九、一〇日、支部規約の定める手続に従い、第五
二回臨時支部大会を開催し、同大会において、住友支部が全損保を脱退する旨およ
び同時に名称を住友労組と変更する旨決議し、同月一〇日全損保に支部脱退届を提
出した(第五二回臨時支部大会が開催されたことについては争いがない)。
3 ところで、原告らは、入社以来住友支部組合員として組合活動を続けてきた
が、右組合員のうち原告らを含む右脱退決議に反対する者らは、全損保は個人加入
を原則とする単一組織の組合であるから、住友支部が支部として脱退の決議をして
も脱退賛成者が個別的に全損保を脱退する効力を有するに止まり、単一組織の一支
部を全損保から脱退させるものではなく、まして右決議に反対して全損保に残留す
る意思を表示した者までも全損保から脱退せしめる効力を有するものではないとい
う一致した見解の下に、なおも全損保の一支部である住友支部の組合員たる地位を
保持するものと判断し、同月一〇日、とりあえず原告らを含む約二〇名が住友支部
臨時総会と称する集会を開催し、支部機能再建のための支部大会までの暫定執行部
として支部執行委員一〇名を選出し、またその代表者として原告aを選出した。
 右暫定執行部は、全損保住友支部の名称で、被告に対し、おそくとも同月二三日
頃には右執行部の氏名を通知し、同月二八日には労働協約に定める経営協議会を開
催すべきことを要求し、昭和四二年一月四日には組合費のチエツクオフ等に関して
団体交渉を申し入れた。
4 原告らの見解に賛同してなお全損保住友支部組合員であると主張する者は原告
らを含め五三名に達するが、これらの者は、昭和四二年一月一五日従前の住友支部
規約に従つて臨時支部大会を招集し、同大会において、原告aを執行委員長に、原
告b、同cを副執行委員長に、原告dを書記長に選出した。これらの新執行部は全
損保住友支部の名称で同年一月一三日被告に対しその氏名を通知し、引続き、従前
の住友支部規約に則つて、昭和四二年二月一一日、九月一五、一六日、昭和四三年
一月一四、一五日にはそれぞれ支部大会を開催し、昭和四二年二月以降少くとも隔
月には執行委員会を開催し、昭和四三年一月一一日、一月一六日、一月一八日、一
月二〇日、九月一日には被告に対し賃金引上げ要求その他につき団体交渉の申入れ
をし、昭和四二年二月一五日、三月一七日、三月二九日、七月二〇日、昭和四三年
二月八日、三月二二日、六月一一日、七月一七日にはそれぞれ被告に対し賃金引上
げ、臨時給与等につき要求を行ない、昭和四二年三月、六月、一一月、昭和四三年
三月にはそれぞれ組合員のh、i、j、kの配置転換につき被告に対し異議申立を
行ない、さらに昭和四一年一二月以降しばしば機関紙あしおとを発行配布した。な
お前記五三名の氏名はおそくとも昭和四三年三月二二日には被告に通知された。
(二) 成立に争のない乙第三号証の一、二、第四四号証、弁論の全趣旨により成
立を認めることができる乙第一号証、証人fの証言により成立を認めることができ
る乙第四、第六号証、乙第七号証の一ないし五、乙第八号証の一ないし四、乙第
九、第一〇号証、(ただし乙第八号証の一ないし四の郵便官署作成部分の成立につ
いては争いがない)、証人lの証言により成立を認めることができる乙第四五、第
四六号証、証人f、同mの各証言および原告a本人尋問の結果を総合すると、次の
事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
1 昭和四一年一二月一〇日の前記脱退前、被告と住友支部との間の労働協約に
は、第七条に「従業員は左の各号の一に該当する者及び見習員である者を除き、こ
の組合の組合員でなければならない。同時に組合員は、この会社の従業員でなけれ
ばならない。(一ないし一八省略)」、第八条に「会社は組合から除名されたもの
を解雇する。但し会社は解雇に異議のあるときは、組合と協議する。」と規定さ
れ、さらに労働協約に関する覚書第三項には、右協約第八条に関し、「ただし書の
協議は、最終決定に至るまでの過程を示したものであつて、協議が整わないとき
は、第七条の主旨に基づき、会社はその者を当然解雇することとなる。」と定めら
れていた(被告と住友支部間の労働協約については争いがない)。被告と住友労組
は、昭和四一年一二月一二日、右の労働協約中全損保の統制のもとにある住友支部
とあるところを住友労組と読みかえることを確認し、その後両者間で労働協約の改
定を行なつた際にも右各条項(本件シヨツプ協定)は従前と同様のままであつた。
2 被告は、昭和四三年二月一〇日、住友労組より、昭和四三年二月七、八日の第
五五回組合大会決議により原告らを除名した旨の通知を受け、さらに、同年二月一
七日、住友労組より制裁録および資料の送付を受けた。右制裁録および資料には、
従前の住友支部は昭和四一年一二月九、一〇日の第五二回臨時支部大会決議により
同月一〇日全損保を脱退し名称を住友労組と変更したこと、その結果原告らを含む
従前の住友支部組合員は全員住友労組の組合員となつたこと、しかるに原告らは大
会決定に従わず、じごなお原告aは住友支部執行委員長、同c、同bは同支部副執
行委員長、同dは同支部書記長と称し、再三の警告制止にもかかわらず、住友労組
の組合規約、大会決定、組合機関の指示、指令に公然反対し、住友労組の分裂を策
し、住友労組の団結を侵害するような種々の反組合的分派活動を行ない、その指導
的役割を果したこと、住友労組執行部は昭和四二年九月二三日の第六六回執行委員
会決議により、同月二五、二六日の第五四回組合大会に原告ら四名を除名するよう
提訴したこと、そこで制裁審査委員会が設けられたが、同委員会は審議の結果、同
年一二月一〇日除名を相当とする旨組合大会議長に報告したこと、昭和四三年二月
八日の第五五回組合大会で原告らの除名が決議され、住友労組は翌二月九日原告ら
に右除名通知を行なつたことが記載されていた。
 その後被告は昭和四三年四月三〇日住友労組から本件シヨツプ協定にもとづき原
告らの解雇の要請を受け、その後も再三同様の要請を受けた。
 そこで、被告は、昭和四三年一〇月一六日、本件シヨツプ協定にもとづき、原告
らに対し本件解雇を行なつた。
三 そこで、以上認定の事実にもとづき、本件解雇の効力について検討する。
 労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善等を図ることを主たる目的と
する団体が、独自の規約を有し独自の活動をなしうる社団的組織を形成している場
合には、独立の労働組合として存在するものといわねばならないから、本件におい
て、昭和四一年一二月一〇日以後もなお引き続き全損保に残留する旨を表明し住友
支部の名称の下に行動している原告らを含む五三名は、前記認定の組織と行動に照
らせば、遅くとも住友支部規約に従つて支部大会を開催した昭和四二年一月一五日
以降は労働組合を結成しているものというべきであり、これが昭和四一年一二月一
〇日以前の住友支部と同一性を有するか否かは別として、住友労組とは別個の組織
を有する以上、もはや同労組内における単なる分派行動者のグループたるにとどま
るものではなく、それが一個の独立した労働組合であることは到底否定することが
できない。
 ところで、本件解雇当時被告と住友労組との間にいわゆるユニオンシヨツプ協定
が締結され、本件解雇は右協定にもとづいてなされたことは前記認定のとおりであ
る。
 一般にユニオンシヨツプ協定は、使用者の助力によつて労働組合の団結を維持強
化することを目的とするものであるから、その限りでは憲法第二八条が労働組合の
団結権を保証している趣旨にも沿うものであるが、企業内に二つの労働組合が併存
する場合、その一方の組合と結ばれたユニオンシヨツプ協定の適用により、他方の
組合の団結権を侵害する結果を招来することは、憲法第二八条がいずれの組合にも
平等に保証している団結権の一方を侵害することになるので許されないというべき
である。換言すれば、一方の組合と結ばれたユニオンシヨツプ協定の効力は、他方
の組合に加入している者に対しては、他方の組合が団結権の保証を受けるに値する
民主的組織を構成している限り、その組合の結成が協定の締結前であるか否か、そ
の組合員が一方の組合を離脱し(脱退しまたは除名され)た者であるか否か、さら
にはその離脱が協定締結の前であるか否かを問わず、その者には及ばないと解する
のが相当である。もつとも、このように解すれば、ユニオンシヨツプ協定を締結し
ている組合から離脱した者が新たな組合を組織した場合には、その新たな組合がい
かに小さなものであつても、もはやユニオンシヨツプ協定を適用できないことにな
つて、結局ユニオンシヨツプ協定自身の有効性をも否定することにつながるという
批判があり得るが、いかに少人数の組合であつても前に判示した労働組合の実態を
有する以上その団結権は保障されなければならないし、そのためにユニオンシヨツ
プ協定を締結した組合の団結権が侵害されユニオンシヨツプ協定自体の効力を減殺
することがあるとしても、それは憲法第二八条がいずれの組合にも平等に団結権を
保障している結果の反射として止むを得ないものというべきである。
 本件についてこれをみるに、本件解雇当時すでに原告らが住友支部と称する組合
の組合員であつたことおよび右組合がその団結権を保証するに値する民主的組織を
構成していることは前示のとおりであるから、被告と住友労組間の本件シヨツプ協
定の効力は原告らには及ばないものというべく、したがつて、本件シヨツプ協定に
もとづいてなされた本件解雇は、その余の点につき判断するまでもなく解雇事由を
欠き無効であるといわねばならない。
四 以上のとおり、原告らは本件解雇がなされた昭和四三年一〇月一六日以降も依
然として被告の従業員として労働契約上の権利を有し、また被告が同日以降原告ら
の要求にもかかわらず、その就労を拒否していることは当事者間に争がないから、
被告は原告らに対し所定の賃金を支払う義務があるところ、本件解雇がなかつたと
した場合原告らに支払われるべき賃金(月例賃金および臨時給与をいう。以下同
じ)の額およびそれらの支給日が原告ら主張のとおりであることは当事者間に争い
がない。
 そうすると、原告らの請求のうち被告に対し労働契約上の権利の確認を求める部
分(主文第一項相当)ならびに賃金請求中本件口頭弁論終結(昭和五〇年一月一四
日)までに履行期の到来したものおよびこれに対する遅延損害金の支払を求める部
分(主文第二項相当)はすべて理由があるから、これを認容すべきである。しか
し、本件口頭弁論終結後に履行期の到来するものについては、前認定の本件紛争の
経過および被告の支払拒絶の態度に鑑み、本判決確定までの分については予め請求
する必要があると認め、これを認容する(主文第三項相当)こととするが、右の事
情からすれば、その後の分については被告において任意に支払うものと推認される
から、他に特段の事情がない以上予め請求する必要があるとは認められず、したが
つてこの分の請求は失当として棄却すべきである。
 よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条、仮執行の宣言について同法
第一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 大西勝也 光広龍夫 中田昭孝)
(別紙省略)

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