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平成14年(行ケ)第88号 審決取消請求事件
平成14年5月30日口頭弁論終結
            判       決
      原     告     ヘキスト・アクチエンゲゼルシヤフト
      同           コルネリア・モクヴィッツ
      訴訟代理人弁護士  加  藤  義  明
      同         川  田     篤
      同         鹿  野  直  子
      同         角  田  邦  洋
      同弁理士     アインゼル・フェリックス=ラインハルト
      被     告     日本ケミファ株式会社
          主       文
    特許庁が平成11年審判第35542号事件について,平成13年10月
15日にした審決を取り消す。
    訴訟費用は被告の負担とする。
        事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文同旨
第2 被告の不出頭
  被告は,公示送達によるものではない適式の呼出しを受けながら,本件口頭
弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面の提出もしない。
第3 特許庁における手続の経緯並びに審決の存在と理由
  以下は,原告が主張し,かつ,証拠(弁論の全趣旨を含む。)によって認定
できる事実である。
1 被告は,平成7年3月29日,「サマリール」の片仮名文字と「SAMAR
IL」の欧文字とを上下二段に左横書して成る商標につき,第5類「薬剤」を指定
商品として商標登録出願し,同商標は,平成10年10月16日設定登録された
(登録番号第3370520号,以下「本件商標」という。)。
  (甲第2号証,第3号証)
2 原告は,平成11年10月1日,本件商標の登録を無効にすることにつき,
審判を請求した。
  特許庁は,同請求を平成11年審判第35542号として審理し,その結
果,平成13年10月15日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決を
して,これを同月25日原告に送達した。
  (甲第1号証,弁論の全趣旨)
3 審決の理由
  審決は,別紙審決書の写しのとおり,本願商標は,登録第3183036号
の商標(平成4年7月13日に登録出願され,平成8年7月31日に設定登録され
たもので,「Amaryl」の文字より成り,指定商品は第5類「薬剤」である。
以下「引用商標1」という。)及び登録第3183037号の商標(平成4年8月
14日に登録出願され,平成8年7月31日に設定登録されたもので,「アマリー
ル」の文字より成り,指定商品は第5類「薬剤」である。以下「引用商標2」とい
う。)と,称呼において十分区別することができ,外観,観念上も類似するものと
はいえないとして,原告主張の無効理由を排斥した。
  (甲第1号証)
第4 原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本願商標と引用商標1及び2とが称呼において類似していないと誤
って認定判断したものであり,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかである
から,違法として取り消されるべきである。
1 本件商標からは,その構成に照応して「サマリール」の称呼が自然に生じ
る。
  引用商標1及び2のいずれからも,「アマリール」の称呼が自然に生じる。
  上記の両称呼は,いずれも長音を含む4音構成であり,語頭音の「サ」と
「ア」のほかは構成配列音を同じくする。また,語頭音においても,母音「a」を
共通にする。
  本件商標の「サ」は,比較的聴取しにくい無声摩擦子音「s」と比較的聴取
しやすい母音「a」からなり,引用商標1及び2の語頭音である「ア」と本件商標
の語頭音「サ」は近似した音となるから,明確に聴別することができない。
  語頭音に続く「マ」と「リー」は,いずれも語頭音より強く発音されるか
ら,語頭音の差異は,本件商標と引用商標1及び2の称呼の差異に大きな影響を及
ぼさない。
2 本件商標も引用商標1及び2も,いずれも,4音5拍の構成から成るから,
短い音構成から成るということはできない。そうである以上,語頭における「サ」
と「マ」の差異のみに認められるにすぎない称呼の差異が商標の類否判断に及ぼす
影響を,過大に評価することは許されない。
第5 当裁判所の判断
1 本件商標と引用商標1及び2から生じる称呼
  本件商標からは,その構成上,「サマリール」の称呼が生ずる。
  他方,引用商標1及び2からは,いずれも,「アマリール」との称呼が生ず
る。
(甲第3号証ないし第5号証)
2 「サマリール」と「アマリール」の各称呼の類似性
  「サマリール」と「アマリール」の相違点は,語頭音の「サ」と「ア」の相
違のみであり,それ以外は音そのもの,音数,拍数いずれも同じである。相違する
両語頭音も,「sa」と「a」として,いずれも母音「a」を含む点において共通
する。そして,「サ」の無声摩擦子音「s」は,それ自体比較的聴取しにくい音で
あることに加え,母音の中でも特に口を大きく開けて明瞭に発音する母音「a」と
結合するときは,「シ」音などと比べ,「a」の音が強く印象に残るように発音さ
れることになる。このように,「サ」と「ア」の発音上の相違は,もともと大きな
ものではない。
  本件商標も引用商標1及び2も,長音部分「リー」に強勢が置かれ,語頭音
はそれより弱く発音されるから,語頭音の差異が称呼全体の差異に与える影響はよ
けいに小さくなる。
  本件商標と引用商標1及び2の各称呼の関係が上記のとおりである以上,両
称呼は類似しているというべきである。
3 結論
 以上に検討したところによれば,原告主張の取消事由には理由がある。そこ
で,原告の本訴請求を認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟
法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
          裁判長裁判官    山  下  和  明
             裁判官     設  樂  隆  一
 
             裁判官    高  瀬  順  久

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