弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴はいずれもこれを棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人前堀政幸の控訴趣意第一点について
 被告人両名がBと共謀の下に原判示第一の(一)及び第二の(一)掲記の通り行
為を分担したことは原判決挙示の証拠によつて優にこれを認定するに足り、所論を
斟酌しながら記録を精査しても原審の右認定に誤りがあるとは認められない。そう
して、共謀者間において、事実行為の分担の面で、従たる地位にあつたか主たる地
位にあつたかということは共謀共同正犯の成否に影響するものではないので、判決
においてこれを判示するを要しないものであり、原審もまたこれを判示していない
のであるから、被告人Aが従たる地位にあつたことを主張して原審の事実認定が誤
つていると主張する所論はこれを採用することができない。
 同第二点及び控訴趣意補正書第二項について
 <要旨第一>(イ) 日本専売公社法第一八条第一項によれば、同公社の役員及び
職員は法令に依り公務に従事する職員とみなされるから、同公社が刑法
第一五五条の公務所に該当することは同法第七条によつて明らかであつて、所論
(二)記載の各規定の存在は右結論を左右するに足らない。
 (ロ) そもそも、文書図画類の意味内容は、関係法令又は取引慣習等その使用
せられた基盤を広く参酌して解釈決定をすべきものである。そして、たばこ専売法
によれば、製造たばこの製造、輸入及び販売はもとよりたばこ種子の輸入、葉たば
こ及び製造たばこ用巻紙の一手買取、輸入及び売渡の権能に至るまであげて国に専
属するものとし(第二条)、この権能及びこれに伴う必要な事項は同法及び日本専
売公社法の定めるところにより日本専売公社に行わせることとし(第三条)、製造
たばこは右公社でなければ製造できず(第二七条)、その販売は公社又はその指定
した小売人でなければ販売することができないものとし(第二九条)その違反に対
しては刑罰を以て臨む(第七一条)ほか、さらに違反事件につき国税犯則取締法の
規定をも準用することとすると共に(第七九条)、製造たばこの外箱の規格図柄並
に証票を一定し(昭和一一年九月一九日大蔵大臣決裁、明治三九年大蔵省令第八〇
四号並に日本専売公社法施行法第三条参照)、以て税収確保の見地よりこれが密造
密売を防止し公社製品の信用保持につとめていることを看取することができる。と
ころで、原判決認定事実によれば、<要旨第二>被告人等は共謀のうえ真正な製造た
ばこ「光」の外箱と同様な図柄および「日本専売公社」なる文字その他所 二>要の事項を印刷したというのであつて、たばこ専売法における右のような基盤に
照して本件「光」の外箱における表示を総体的に観察するときは、これを以て右公
社の製造にかかる製造たばこ「光」すなわち合法的な専売品であることを証明する
意思を表示した図画であると解するを相当とし、所論のような美術的効果を否定で
きないとしても、単にそれだけのものにすぎないということができないから、この
点よりして刑法第一五五条第一項の図画当らないとする所論は採用することができ
ない。
 (ハ) 所論旅行者外食券の偽造が軽い同条第三項によつて処断せられたのは公
務所又は公務員の印章もしくは署名の不正使用又はその偽造印章もしくは署名の不
正使用がなかつたからであつて(このことは原審の事実認定及びその挙示の証拠に
よつて明らかであり、また、当時正規の外食券に発給官庁の印章もしくは署名のな
かつたことはその様式を規定した農林省告示「食糧管理法の施行に関する件」によ
つて明瞭である)、文書の真正に対する公の信用を保護しようとする刑法の立場か
らすれば、特に信用度の高かるべき印章もしくは署名あるものの偽造とこれなきも
のの偽造との間にこそ刑の軽重を設けるべきであり、その文書の内容が如何なる事
項に関するかによつて差等を設けるべきでないとするのが当然であつて、旅行者外
食券に対する適条との比較権衡を以て「光」外箱の偽造に対する原審の法令適用を
非難する所論は採用することはできない。
 (ニ) なお、被告人は日本専売公社の署名を偽造し前示のような意思表示を含
む図画を偽造したものであつて、単にその印章又は署名を偽造したにとどまるもの
ではないから、これに対し印章又は署名の偽造もしくは不正使用のみにかかる刑法
第一六五条又は第一六七条第一項を適用すべしという所論もまた排斥を免れない。
 <要旨第三>(ホ) 次に、たばこ専売法第六五条の二が製造たばこの包装(製造
たばこの包装に使用する目的を以て印刷された紙を含む)の無許可製造
を禁止し、同法第七一条がその違反に対して刑罰を規定したけれども、右は被告人
の本件行為後の施行にかかり、ただちにこれを被告人に適用できないのみならず、
右法条は、製造たばこの需給の円滑化と取締の強化に伴い粗悪稚拙な密造たばこが
一般から顧みられなくなつたこと及び摘発の危険が増大したこと等の理由により、
密造品は多く公社の製品を装うに至り公社製品の信用に重大な影響を及ぼすように
なつたので、これが取締の迅速を期し併せて国税犯則取締法による処理を可能なら
しめるために設けられたものであつて、公文書の真正に対する公の信用を保護しよ
うとする刑法第一五五条とその目的を異にし、その取締の対象となる行為の範囲が
同一でないから、たばこ専売法の右規定に該当するの故を以て刑法第一五五条の適
用がないということは許されないのみならず、また右規定の施行前においては刑法
第一五五条第一項による取締のらち外に放任されていたものということもできな
い。
 <要旨第四>(ヘ) 最後に、所論は被告人の右所為は日本専売公社法第七条第四
八条に該当するだけであると主張するけれども、同条は日本専売公社に
名称の独占使用権を与えこれを保護しようとするものであつて、もつぱら自己の名
称に用いたという案件に適用されるべきものであるが、物件が日本専売公社製造に
かかるものであるということを表示したという本件に適用はない次第であつてその
保護法益を異にする刑法第一五五条第一項の適用を妨げるものではない。所論はい
ずれもその理由がない。
 同第三点及び控訴趣意補正書第三項並に被告人Cの弁護人吉川信太郎の控訴趣意
について。
 量刑に関する各所論に鑑み記録を精査しても被告人両名に対する原審の科刑が重
すぎるとは認められない。
 よつて刑事訴訟法第三九六条に則り主文のように判決をする。
 (裁判長判事 荻野益三郎 判事 梶田幸治 判事 井関照夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛