弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人岡崎襄の上告趣意第一点について。
 論旨は、累犯加重の刑を科した判決は憲法第三九条後段の規定に違反するという
のであるが、累犯加重の制度が憲法の右規定に違反するものでないことは、当裁判
所の判例(昭和二四年(れ)第一二六〇号、同年一二月二一日大法廷判決)の示す
通りである。従つて累犯加重の刑を科した本件第一審判決及びこれを維持した原判
決には、所論のような違憲の点はない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、累犯加重の規定が憲法の平等の原則に違反すると主張している。なるほ
ど憲法第一四条第一項は、すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性
別、社会的身分又は門地により、政治的又は社会的関係において、差別されないこ
とを規定している。しかし犯人の所罰は、かような理由に基く差別的処遇ではなく、
刑罰制度の目的に応じて各犯罪各犯人毎に妥当な処置を講ずべきものであるから、
各箇の場合にその処遇の異なることがあるのは当然であつて、犯人の性格、年齢及
び境遇並に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を考慮した結果、犯情の或る面において
他の犯人に類似した犯人をこれより重く罰しても、憲法の平等の原則に違反するも
のでないこと、既に当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四三五号同年一〇月六日
大法廷判決参照)の趣旨とするところである。さすれば累犯者の刑を加重する規定
も亦、憲法の平等の原則に違反するものでないこと、右の判例の趣旨に徴して明か
である。よつて論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨に従えば、原判決が維持した第一審判決は、累犯加重の規定を適用したため
刑の量定が著しく不審な結果に陥つた、というのであるが、このような主張は適法
な上告理由とならない。
 尤も刑訴第四一一条第二号には、「刑の量定が甚だしく不当であること」を挙げ
ているが、同条は上告申立の理由を定めたものではなく、刑訴第四〇五条各号に規
定する事由がない場合であつても、上告裁判所が原判決を破毀しなければ著しく正
義に反すると認めた場合に、職権をもつて原判決を破毀し得る事由を定めたものに
外ならない。しかし本件記録を精査しても、そのような事由は見出されない。
 以上の理由により刑罰第四〇八条に従つて主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
  昭和二五年一月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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