弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉田久、同本村善太郎、同木原鶴松名義の上告理由第一点について。
 被上告人の上告人に対する本件訴は、当事者相互の相接する各所有土地間の境界
に争があるため、その境界を現地に即し具体的に定める創設的判決を求める、いわ
ゆる境界確定の訴であつて、所論B地区が被上告人の所有に属することの確認を求
める所有権確認の訴ではなく、相隣者間の土地所有権の範囲の確認を目的とする訴
でもないことは、原判決摘示の請求趣旨および請求原因ならびに記録にあらわれた
当事者の弁論の経過に徴し明らかである。
 従つて、原判決が、本訴を前示境界確定の訴であるとして、証拠によつて認定し
た諸般の事実関係に基づき相当と判断するに至つた境界を確定判示したことに、所
論釈明権不行使による審理不尽ないし理由不備の違法はない。
 同第二点について。
 同(1)の論旨は、原判決は所論23地点の特定を明確にしていないから、本件
境界を特定したとはいえないというが、原判決の判示をその引用にかかる第一審判
決添付図面の表示と併せて見れば、右所論23地点は現地に即して特定判示されて
いるものと認められるから、右所論は採用できない。また、上告人訴訟代理人が再
測量を実施したところ、所論14地点から23地点までの距離が原判示と相違する
ことをいう論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定に異論を述べ
るにすぎないものであつて、採用のかぎりでない。
 同(2)の論旨は、原判示の谷川は所論24地点から25地点には及んでいない
というが、原判決が証拠によつて認定した事実と異ることを主張するものであつて、
上告理由として採用できない。
 同(3)の論旨は、原判決が所論22地点ないし29地点間の境界線の南北の林
相が異つていると判示している点は証拠によらず或いは証拠の趣旨に反する事実認
定であるというが、原判決がこの点の証拠として挙示する原審の検証調書(第一回)
の「四、検証の結果」の(ハ)(ホ)の項を見ると、所論判示の地域に林相の差異
の認められる旨の記載があるから、所論違法はないものといわねばならない。原審
鑑定人Dの鑑定結果に右判示と相違する点のあることをいう所論は、原審の専権事
項たる証拠の取捨判断について異論をいうにすぎず採用できない。
 同第三点について。
 いわゆる境界確定の訴にあつては、当事者間の相接する所有地相互の境界が不明
ないし争あることの主張がなされれば十分であつて、原告において特定の境界線の
存在を主張する必要はないのであるから、本件原告たる被上告人が所論のように境
界線の主張を変更したからといつて、何らの違法もなく、所論変更訂正を経た被上
告人の主張に吻合する境界線を原判決が確定した点に実験則違反はない。
 なお、論旨は、上告人訴訟代理人らが昭和三九年六月三〇日実地を巡視したとこ
ろによると、所論「一」地点より谷川を東上して「1」地点の谷川の分岐点に至つ
て水量および川幅を見たところ、被上告人が境界線であると主張する水流より上告
人が境界線であると主張する水流の方が本流であることが一見して確認されたこと、
上告人が主張する「字ab番地山林」と「字cd番地山林」との境界線には界標と
認められる木杭六本が現存していること、しかるに第一審および原審検証調書には
右木杭六本の所在個所が不明であることをいい、または、右検証調書の内容が杜撰
であることをいうが、右はひつきよう原審の専権に属する証拠の取捨判断を非難す
るに帰着するものというべく、上告理由として採用のかぎりでない。
 所論は、また、上告人が境界として主張する「16」地点より「60」地点に至
る間は、相当古い谷間になつて一貫性があるのに反し、被上告人主張の境界線すな
わち原審が確定した境界線は一部分谷川の支流によつて画され、谷川の流がないと
ころでは、いわゆる石場道をもつて境界とし、或いは南北林相を同じくする山林に
一線を画するという実情であつて、境界の確定に一貫性がないというが、境界確定
の判断に所論のような一貫性がないからといつて、何らの違法も生じないものとい
うべきである。
 その余の所論は、原審の実験則違反をいうが、原判決の事実認定に所論違反は見
当らず、所論は、ひつきよう原審の専権事項を非難するにすぎないから、採用のか
ぎりでない。
 同第四点について。
 所論は、本件境界確定に重要な影響をもつ「字ae番地畑」の所在位置を認定判
断するにあたつて、原判決は「焼畑」の意義を正解せず実験則に反する判断をした
というが、原判文および記録を調べても、原判決の右認定は肯認できて、その点に
所論誤解、違法は見当らない。また、所論は、原審が上告人の主張を正解しないで
右の認定をした点に理由不備があるというが、原審は、上告人が「字ae番地畑」
は所論「一」58ないし46 10 9「1」「一」を結ぶ線で囲まれた地域に存
在すると主張していることを正解したうえで、上告人の右主張を証拠上認められな
いとしているのであつて、この点は原判文上明らかに説示されているから、所論理
由不備はない。
 次に、論旨は、訴外Eが原告となつて上告人に対して提起した別件の境界確定訴
訟において、Eの所有にかかる「字af番地山林」とこれに隣接する上告人所有の
「字ag番地山林」「同e番地畑」との境界線は、上告人主張の所論「一」58な
いし23を結ぶ線であるとの判決がなされ、この判決は確定したところ、右判決に
よれば「字ae番地畑]は本件において原審が認定した位置には在りえないはずで
ある、といい、右判断を示す判決書が乙三号証の二として本件で提出されているに
もかかわらず、原審がこれとそう相容れない認定をしたのは、裁判の威信をそこね
自由心証の域を逸脱する違法な採証判断であるという。
 しかし、別件判決の事実認定が他の判決の事実認定を拘束することは、ありえな
いといわねばならず、そのことは、境界確定訴訟における判決が一定地番の土地の
所在位置を認定した場合にあつても異らない。そして、この理は、右別訴の判決が
確定判決であるからといつて、消長をきたすことはない。よつて、所論は、採用で
きない。
 同第五点について。
 論旨は、原判決がB地区を上告人において所論のように支配管理していた事実を
認定しながら、本件境界を上告人主張の線に確定しなかつた点に、証拠判断の不合
理、理由不備の違法があるというが、右の点に関する原判決の理由説示はすべて肯
認できて、所論違法は存しない。その余の所論は、ひつきよう原審の専権に属する
証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着する。従つて、論旨は、すべて採用
できない。
 同第六点について。
 所論は、原審が採用した証人Fの証言の措信し難いことをはじめとし、原審の証
拠の取捨判断の誤りをいうが、事実審の専権に属することについて異見を述べるに
すぎないから、上告理由として採用のかぎりでない。
 同第七点について。
 本訴が所論B地区の所有権確認の訴ではなく、かつ、相隣者間の土地所有権の範
囲の確認を求める訴でもないことは、論旨第一点について説示したとおりである。
従つて、本件請求の趣旨が右所有権確認ないし所有権の範囲の確認にあることを前
提とする論旨は、すべて採用の余地ないものである。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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