弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人菊池圭作及び同堀合正男の上告趣意第一点について。
 論旨援用の当裁判所の判例は、証拠とされた副検事の聴取書に「司法警察官作成
の意見書記載の犯罪事実を読み聞けたところ、相違なき旨を述べた」との記載があ
り、右の意見書を見なければ聴取書の内容がよくわからないにもかかわらず、この
意見書の証拠調をしなかつた場合についてのものである。しかるに本件においては、
所論昭和二三年三月二五日附及び同年四月一五目附被告人Aに対する検察官の聴取
書には、被告人が所論各会社等から金を貰つたという事実の記載があるのであるか
ら、読み聞かされた司法警察官の意見書を除いても、右の聴取書の記載だけで判示
事実を証明する証拠となり得るものである。それ故原審が右の司法警察官の意見書
について証拠調をしないで検事の聴取書のみについて証拠調をしこれを証拠に採用
したとしても、所論のような違法はなく、所論援用の判例に違背するところもない。
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨援用の判例は、詐欺罪の犯意を推断せしめるに足る証拠も存しない場合につ
いてのものであるが、本件においては、被告人の検察官に対する昭和二三年四月一
五日附聴取書並に証人B、Cの各供述等を綜合することにより、被告人に恐喝の犯
意があつたことを推認することができるのであるから、原判決には所論のような違
法はなく、所論援用の判例は本件に適切でない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原審公判において、被告人及びその弁護人が、被告人が判示各会社等から交付を
受けた各金員は、喝取したものではなく、本代、広告料の値上りの差額及び「株式
時代来る」という単行本の料金として受取つたものである旨を供述し主張している
ことは所論のとおりである。しかし右の主張は、旧刑訴三六〇条二項にいわゆる法
律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張に該当するものとは認められな
い。それ故原判決には所論のような違法はなく、所論援用の各判例は本件と場合を
異にするものであつて、適切ではない。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 事実誤認又は理由齟齬の主張であつて、適法な上告理由とならない。
 被告人Aの弁護人段林作太郎の上告趣意並に被告人D、同Eの弁護人森岡繁次の
上告趣意について。
 論旨はいずれも単なる法令違反又は事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の定め
る上告理由にあたらない。
 被告人Fの弁護人小泉要三の上告趣意について。
 論旨は事実誤認又は審理不尽の主張に帰し適法な上告理由とならない。(なお原
審は、所論Gがすでに第一審公判において証人として取り調べられていたため、所
論証人申請を必要ないものとして却下したものであることが認められる。)
 なお記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて刑訴施行法三条の二刑訴法四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
  昭和三〇年三月二二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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