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裁判例


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○ 主文
一 本件各控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が、昭和四八年八月九日付けをもつて公告した原判決別紙各筆換地等
明細書の各「氏名等」の欄に記載の各控訴人に対してした、同明細書の記載中「従
前の土地」欄記載の各土地について、同「換地」欄記載の各土地を換地とする旨の
処分(以下「本件換地処分」という。)は無効であることを確認する。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項同旨。
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実摘示
中「第二 当事者の主張」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人ら関係)
一 原判決六枚目表一一行目「原告ら」の次に「(ただし、後記のとおりその後一
部の者について相続による承継がある。)」を、同裏末行「この点は、」の次に
「土地改良法施行規則(以下「規則」という。)四三条の六に規定された」をそれ
ぞれ加え、同七枚目表二行目末尾に以下のとおり加える。
「なお、いかに農地といえども、稗にも述べるとおり、国道沿いの土地と、国道か
ら三キロメートルも離れ、幅二メートルの農道に接するだけの土地とでは、農地と
しての利用条件が大きく異なり、その評価に格段の差があるのは当然である。土地
の不評定は、照応換地の重要要件である清算の正当な実施をそもそも不能とするも
のであり、控訴人ら個々人の照応原則違反を問うまでもなく、本件換地処分全体を
無効とするものである。」
二 同七枚目表一〇行目「別表」を「本判決の別表『不当換地明細』」に改める。
三 1同八枚目表九行目「正確な」を「換地計画書に記載された数値を集計した結
果を用いて算出した」に改め、同一〇行目「また、」から同裏八行目末尾までを以
下のとおり改める。
「また、正確な換地交付基準率は、(1)従前地 二七八万四四四八・六八平方メ
ートル、(2)不換地 二万〇五四五平方メートル、(3)換地 二九五万二九五
六・七七平方メートルに、農用地として換地すべきであるのに、改良区所有とした
(登記はしていない。)土地・稲敷郡<地名略>(以下、同村所在の土地は大字以
下をもつて表示する。)三二二二平方メートルを、本来地権者に換地されるべき土
地として加算した面積 二九五万六一七八・七七平方メートル、以上によつて計算
すべきである。したがつて、換地の基礎となるべき換地交付基準率は一〇六・九五
六六パーセントとなる。
計算式 2956178.77÷2784448.68-20545)=1.06
9566
しかも、換地交付基準率が一〇六パーセントを上回り、一〇七パーセントに近くな
ることは、事業計画を立てる段階で判明していたことである。してみると、その後
の工事の過程での若干の換地面積の増減を考慮したとしても、本件換地処分は、少
なくとも一〇七パーセントの換地交付基準率に依るべきであつたのである。」
2 同九枚目裏五行目「ある。」の次に「いうまでもなく、土地改良事業の申請人
は、計画の概要を公告し、これには換地計画の要領を定めることとされている。こ
こで換地計画の基本事項が決まるが、従前地と換地の各総地積はその最も基本的な
事項であるから、その後の微細な面積の変動はともかくとして、両者の比である換
地交付の基準値が決定されていなければならない。事業計画決定の段階では、改良
区として、当然換地計画の概要を定めなければならず、したがつて、その段階で基
本的な換地交付基準率も決定していなければならないのは当然のことというべきで
ある。」を、同九行目の次に改行して「しかも、県及び改良区は、前述した不正の
利得を得させるために一〇〇パーセント換地との誤つた交付基準率を流布し、控訴
人ら地権者を欺罔して現実にも交付基準率一〇〇パーセントの換地を行つた。いう
までもなく、法五三条二号の規定は、二〇パーセントの範囲内であれば換地交付基
準率を問題としなくとも良いことを意味しない。具体的換地に当たつて、例外的に
右基準率にしたがつた配分ができない場合、右範囲での換地が許され、しかも清算
の制度が、それを補うのである。」をそれぞれ加え、同末行から同一〇枚目表一行
目にかけての「七・九八七四パーセント」を「六・九五六六パーセント」に、同
一、二行目「二三万八三九七平方メートル(二四町歩弱)」を「二〇万五六四九平
方メートル(二〇町五反歩強)」にそれぞれ改め、同二行目「及ぶから」を「及
び、しかも右の換地交付基準率の無視は違法売却処分の手段と結果との関係にある
から」に改める。
四 同一〇枚目表九行目「これは、」を「いうまでもなく、従前地と換地とが全く
同一となることは不可能であるから、その過不足を均し、公平を担保するため、法
は清算の制度を設けているのであつて、右清算と換地処分とは別個の手続ではな
く、極めて密接な関連性を有し、換地計画で定められた清算を実施しなかつたこと
は、それ自体で換地処分の適法性を失わせるものである、してみると、本件換地処
分は、」に改める。
五 同一一枚目裏八行目次に改行して、以下のとおり加える。
「以上の恣意的清算が、『改良区換地委員会』の名で行われたとしても、その実体
は改良区そのものにほかならず、少なくとも被控訴人の担当主幹もこれを承知し
て、そのままに放置し、県が換地計画で定めた清算を現実に実施しなかつたのは、
実際には右のとおりの恣意的な清算が行われたため、これで清算が終了したと事実
上判断したものであり、その意味でも改良区と県とは共謀して違法な恣意的清算を
実施したものというべきである。また、いずれにしても、県が清算を実施しないこ
とは、照応の原則にしたがわないことにほかならず、本件換地処分の瑕疵は重大か
つ明白である。」
六 同一二枚目表二行目「メートル)。」の次に「なお、右従前地とされた山林に
ついては、改良事業が行われることもなく、換地処分後も山林であり、このような
処分が違法無効であることは明らかである。」を加える。
七 1同一四枚目表六行目冒頭に「(1)」を、同裏七行目「次の」の次に
「(3)の(1)ないし(5)の」をそれぞれ加え、同八行目の次に改行して以下
のとおり加える。
「(2)なお、右違法な売却が決定され、実現されていつた経緯は次のとおりであ
る。
(1) ライスセンター用地については、昭和四五年二月六日の換地委員会におい
て、根本農業協同組合から六反歩の敷地につき売却の要請のあつたことが紹介さ
れ、これに応ずることが決定された。そのさい、県のA主幹は、同組合には正式の
換地をする手段がないので、形式的には権利者個人に特別換地した形を採るべきこ
とを示唆し、脱法行為を教えた。
そして、これを承けて、同年六月ころ、同組合への売却が決定され、形式的には個
人への特別換地として処理し、売却代金の額は県職員の立会う換地委員会で決定す
ること及びその使途としては換地清算金に使うことまで決定された。
昭和四六年四月一九日の換地委員会はA主幹出席のもとに開催されたが、余剰地の
売却方法が検討され、右ライスセンター用地も含めて一平方メートル当たり二五〇
円(反当たり二五万円)、支払い方法は落札時二分の一、換地処分後二分の一、入
札期限は同年六月一五日までと決められ、同時に四〇〇平方メートル以下の土地に
ついては、隣接地権者に落札権利を与えることが決定された。
ところで、根本農業協同組合は昭和四五年一二月二三日に前記代金一〇五万円を支
払つたが、その時点では売却単価も決定されていなかつたのであるから、このこと
は、実際には一部の有力者たちがそれを事実上決めていたことを示しているのであ
る。
(2) 昭和四七年七月二〇日の全体委員会においては、新利根村及び県南農業共
済組合への土地の売却が報告され、各地権者に対する売却土地の決定は調査小委員
会が行うことが決定され、さらに売買代金の使途決定については処理委員会を構成
して、これに当たることが決定された。
(3) ところで、違法な余剰地の売却の詳細、その代金の支払い状況等について
は以下のとおりである。」
2 同一四枚目裏一〇行目「用地」の次に「・契約日昭和四六年一二月二三日)」
を、同一五枚目表六、七行目「用地」の次に「・契約日昭和四六年一〇月一九日」
を、同一〇行目「代替地」の次に「・契約日昭和四五年一〇月二六日」をそれぞれ
加える。
八 同一六枚目裏九行目の次に改行して以下のとおり加える。
「(4) 一部有力者への売却(なお表のうち契約日は昭和四六年)
番号 買主氏名   契約日    地積合計2m    代金(円)
イ  B    一二・七    一四二二   三五万五五〇〇
ロ  C   一二・一五   四一二二  一〇三万〇五〇〇
ハ  D   一二・三    三七〇二   九二万五五〇〇
ニ  E    一二・一四   一〇〇〇   二五万〇〇〇〇
ホ  F   一二・二〇   二〇〇〇   五〇万〇〇〇〇
へ  G 一二・二三   四五六四  一一四万一〇〇〇
ト  H 一二・三    二〇〇〇   五〇万〇〇〇〇
チ  I 一二・二三   五二〇三  一三〇万〇七五〇
リ  J   一二・二三   一五〇〇   三七万五〇〇〇
(5) その他の一般売却
その他の一般売却の明細は、別紙「一般売却分明細」のとおりである。すなわち、
明らかなものだけでも、合計九万二〇一二平方メートルの土地を、一〇一二名の者
に対し、代金合計二二七一万九三〇〇円で売却したものであるが、その時価は二億
一一四四万円を下らない。」
九 同一七枚目表七行目冒頭に「(1)」を加え、同一八枚目表七行目の次に改行
して以下のとおり加える。
「(2)仮に右通知が有効であるとすると、本件訴訟は本件換地処分の通知前に提
起されているのであるから、出訴期間を遵守しており、取消訴訟として扱われるべ
きである。
3 原審原告Kは、本件換地処分後で本訴提起前の昭和四九年三月一日死亡してお
り、原審において訴訟を追行したのは、相続によりその権利義務を承継していたそ
の子であるLであるから、当事者の表示をそのように訂正する。
原審原告Mは、昭和五一年五月四日死亡し、子であるNが、原審原告Oは、昭和五
五年二月八日死亡し、妻であるPが、それぞれその権利義務を承継した。」
(被控訴人の関係)
一 同一八枚目裏四行目「別表」の次に「(不当換地明細)」を、同五行目「認
め」の次に「(換地のすべてが国道沿いに存在するわけではないが)」を、同一一
行目「清算金の」の次に「徴収・」を、同一九枚目表末行の「事実中、」の次に
「(3)の」をそれぞれ加え、同裏五行目の次に改行して、以下のとおり加える。
「14同3のうち、相続関係の事実は認め、当事者の訂正に関する主張は争わな
い。」
二 同二〇枚目表一行目「法施工規則(以下「規則」という。)」を「規則」に改
め、同三、四行目「及び換地」、同四行目「それぞれ」を各削り、同五行目「結
果、」の次に「その個々の土質、利水、排水等の自然条件、利用条件において差異
がなかつたわけではないが、用途、地積も含めて総合的に評定した結果、等位とし
てはいずれも『中程度』と評価される範囲内にあり、三段階方式の『最高位』、
『最低位』に分類すべきほどの差異はなく、」を加え、同五行目「認められたので
ある。」の次に「また、換地についても同様に評定した結果、全地域にわたつて第
一等位と認めたもので、このように換地の等位が同等であることは、換地の全地域
にわたり、反当収量が殆ど均一であることによつても、裏付けられている。農用地
としての評価である以上、国道から離れていることをもつて、等位が異なるとする
のは、土地改良法の建前と相容れないというべきである。」を加え、同九行目「で
はない。」の次に改行して以下のとおり加える。
「なお、土地の評定は、従前地と換地との照応性を確保するための手段であつて、
それ自体が目的ではなく、本件換地処分が、控訴人らそれぞれに重大な不利益を与
えているのであれば格別、不評定が直ちに本件換地処分を無効とするものではな
い。」
三 1 同二一枚目表九行目「一〇六・八四〇〇パーセント」を「一〇六・九五六
六パーセント」に改め、同一〇行目末尾「同様である。」の次に以下のとおり加え
る。
「ちなみに、地区総計表記載の総地積には、従前地、換地ともに誤りがあり、その
正確な計算に基づく数値は、従前地二七八万四八七九・六二平方メートル、換地二
九五万一二五六五・七七平方メートルであり、不換地の合計も二万〇九八六・九一
平方メートルである。また、控訴人らは、いわゆる『用悪水路』の土地三二二二平
方メートルを問題としているが、右土地は本件土地改良事業の施行地域外の土地で
ある(乙第一九、第二〇号証参照)。」
2 同二一一枚目表一行目冒頭「もので」の次に「ある。」を加え、その次の「、
当時としては」から同一二行目末尾「根拠もない。)。」までを以下のとおり改め
る。
「事業計画における「予定地積一覧表」に表示した従前地の合計面積三一〇・七ヘ
クタールは、従前地の登記簿上の面積の総計ではなく、航空写真に基づき図上計算
したものであり、当時の技術水準から止むを得ない航空測量自体の誤差(一ないし
一・五パーセント)のほか、右写真から現況農用地と判定されたものを総計したた
め、公有水面を不法に耕作している分の相当の面積を含む結果となり、それらが過
大な数字となつて表れた原因である。そこで、換地計画実施の段階で、従前地の面
積を登記簿上のそれの総計により把握し、これと確定測量によつて把握された正確
な換地の面積との比率でもつて、換地交付基準率一〇六・八六四二(計算に若干の
誤りがあつたが)と定めたものである。広大な面積を対象とする本件土地改良事業
としては、合理的、かつ、やむを得ない措置であり、手続上違法とされる点はな
い。
また、事業計画決定の段階で定められる換地計画の概要の中で、換地交付基準率を
定めなければならないとする控訴人らの主張は、法律上の根拠がない。のみなら
ず、現実の問題として、換地及び従前地の総地積をその段階で予め正確に積算しこ
れを明示することは、事実上困難というべきである。」
四 同二三枚目表一行目末尾「ない。」の次に「なお、すなわち、清算金の徴収・
支払が未了であること自体は換地処分の公告により確定した請求権の履行の問題で
あるから、いかなる意味においても換地処分の違法をきたすものではない。なお清
算が実施されていないのは以下の事情のためである。昭和四七年一一月二三日の土
地改良法の改正法施行にともない、清算金の一括微収、一括支払の方法が定められ
たが、旧法によりなされた本件事業の換地計画には、当然のこととはいえ、一括清
算についてなんらの定めをしていなかつた。その点で、新法施行後において一括清
算の方式を採るのは違法ではないかとの疑義も出て、検討中のところ、本件訴訟が
提起されるに至つたのである。」
五 同二五枚目表五行目の次に改行して以下のとおり加える。
「訴外豊田新利根土地改良区では、換地委員会という名称の正規の補助機関は設置
されていない。その他の『工区委員会』、『地区全体委員会』等さまざまな名称で
呼ばれる委員会も、右改良区の執行機関のような役割を果たしていない。仮に、そ
れらが改良区とまつたく無縁のものでなかつたとしても、少なくとも当該委員会で
の決議等が、改良区の意思決定でないのは勿論、右委員会等が、改良区に代わつて
直接対外的になんらかの法律行為をする余地はない。」
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 当裁判所も、当審における審理の結果を勘案しても、控訴人らの請求は理由が
なく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削
除するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二六枚目裏五行目「したこと」の次に「、請求原因3の相続関係の事
実」を加え、「争いがない。」の次に以下のとおり加える。
「右相続の事実と弁論の全趣旨によると、本件訴訟中原審原告K名で追行された部
分は、控訴人Lが当事者であつたことが認められ、その当事者名の変更は許される
べきである。」
2 原判決二八枚目表一行目「具体的評価は」を「各筆ごとに具体的な評定を」
に、同二行目「評価額とするものとしたこと」を「評価額とし、近隣の農用地の価
格等を参考として、一反歩につき、従前地三〇万円、換地四〇万円の価額を決めた
ものであること」にそれぞれ改め、同裏五行目「しかし、」から同二九枚目表一行
目末尾「理由がない。」までを、以下のとおり改める。
「いうまでもなく、右等位の評定は、換地計画における換地を定めるに当たり、従
前地と換地との照応関係を相当なものにするための基礎となる手続である。したが
つて、規則の定める等位の評定がされていないことは、換地のなかに従前地との照
応関係を欠くもののあることを疑わせるものである。しかし、右評定は、従前地と
換地との照応関係を相当なものにするための手段的な手続でありそれ自体が目的で
はないから、それに瑕疵がある場合においても個々の換地処分に対する影響を全く
度外視して取消原因または無効原因に当たるとするのは相当ではない。右評定は、
自然条件及び利用条件の総合的判断によるものであるから、それによる等位の段階
も通常多くとも数段階を越えるものではなく、同一等位に格付けされる土地も少な
くはないはずであり、規則に定める正確な評定がされていないという瑕疵があつた
としても、それだけでは当然に個々の全ての換地処分について照応関係を欠く結果
を招来するものとはいえず、個々の換地処分に対する影響は必ずしも明白ではな
い。したがつて、右の瑕疵が換地処分の取消原因になるかどうかは別として、直ち
に無効原因に当たるということはできず、右の瑕疵により本件換地処分が無効にな
るというためには、控訴人らにおいて、被控訴人が規則に定める正確な評定をせ
ず、従前地、換地ともに同一等位であることを前提として換地を定めたために、控
訴人らに対する個々の具体的な換地処分が明らかに従前地との照応を欠く等本件換
地処分に重大かつ明白な瑕疵が生じていることを具体的に主張立証すべきである。
しかるに、本件において同一等位であることを前提として換地を定めたことによ
り、控訴人らの従前地と換地とが明らかに照応しない等本件換地処分に無効原因の
あることについての具体的な主張立証はないから、結局、規則に定める評定をしな
かつたことが本件換地処分の無効原因に当たるとの控訴人らの主張は、理由がな
い。」
3 同二九枚目表六行目「他の」の次に「者に対する」を、同一〇行目「県道」の
次に「(現在の国道四〇八号線、以下当時の道路として「県道」と表示する。)」
をそれぞれ加え、同裏八行目「一等地」を「他の農用地より格段の差があり等位が
一段上に評価されるべき」に改め、同行目「ある旨」の次に「、また実際にも県道
から三キロメートルも離れた農地と右道路沿いの土地とでは、当時としても格段の
差がある旨」を加え、同九行目「宅地化されて評価も」を「、特に本件換地処分後
に宅地化が進み、本件換地処分の当時としても評価が」に改め、同三〇枚目表四行
目「右の点が」の次に「本件換地処分について」を、同行目「自然条件」の前に
「農用地としての」をそれぞれ加える。
4 (一)同三〇枚目裏末行「一〇六・八四〇〇パーセント」を「一〇六・九五六
六パーセント」に改め、同三一枚目表一行目冒頭「なお、」から同八行目「根拠が
ない。」までを、以下のとおり改める。
「控訴人らは、<地名略>、三二二二平方メートルについて、換地面積に加算すべ
きであるとも主張するが、成立に争いのない甲第二三号証によると、右土地の地目
は用悪水路であると認められるから、農用地とはいえず、原審における控訴人Q本
人尋問の結果によりその成立を認めることができる甲第二二号証、右本人尋問の結
果及び原審証人Gの証言によると、その後も農用地とすることができず、荒地のま
ま放置されていることが認められるのであるから、換地交付基準率算定の対象とす
べきではない。もし、控訴人らの計数が正しいとして、右用悪水路を除くと、一〇
六・六八四〇パーセントとなる。
計算式 2952956.77÷(2784448.68-20545)=1.0
68400)」
(二) 同三一枚目表一〇行目「仮定しても」の次に「(いずれにしても、一〇七
パーセントを越えることはないと認められる。)」を加え、同裏一行目「〇・〇二
四二」を「〇・〇九二四」に、同行目「上回つて」を「上回るか下回つて」に、同
二行目「〇・二四二」を「〇・九二四」にそれぞれ改め、同三行目「しかも権利者
にとり有利な」を削る。
(三) 同三二枚目表三行目「であつた」の次に「、または換地計画において一〇
六・八六四二パーセントと定められた換地とは異質の換地が事実上された」を、同
四行目「ほかはなく、」の次に「照応に欠けるかどうか検討する場合において
は、」をそれぞれ加え、同三三枚目表四行目「なお、」から同末行「解される。」
までを削る。
(四) 同三五枚目表一一行目「本件についてみるに、」の次に「当審証人Rの証
言によりその成立を認めることができる乙第三一号証、」を、同末行「S」の次に
「、当審証人R」を、同裏末行「T」の次に「、当審証人U、同R」を、同行目
「各証言」の次に「(いずれも後記措信しない部分を除く。)」をそれぞれ加え
る。
(五) 同三六枚目裏一〇行目「増歩は」の次に、「前年度の不足分を埋めても余
りがあり、」を、同末行「いたうえ、」の次に「そもそも前記三一〇ヘクタール余
の従前地の面積は、航空写真に基づき図上計算したものであつたが、」を、同三七
枚目表三行目「現況農地」の次に「(本来従前地とすべきでない。)」をそれぞれ
加え、同三九枚目表七行目の次に改行して以下のとおり加える。
「原審証人S、同T、当審証人R、同Vの各証言中には、余剰地の清算手続等に
は、改良区そのものはなんら関係していないなど右認定に反する部分があるが、前
掲各証拠及び右認定と対比して措信できず、他にこれを左右するだけの証拠はな
い。」
(六) 同三九枚目表一〇行目「否定しがたいが、」の次に「一〇六パーセントと
か、一〇七パーセントの数字がなく、」を加え、同一一行目「その見通しの下で
は」を「右認定のとおり、広大な面積の農用地で、その自然的条件から正確な測
量、公有地との境界の確定等ができず、従前地及び換地の面積の把握が充分にでき
ていない状況のもとでは、やむを得ない」に改め、同末行「できるし」の次に
「(控訴人らは一〇〇パーセントの交付基準率は、改良区の関係者らが、当初から
大量のいわゆる余剰地を作るため、本来のそれより意識的に低率に設定してきたも
のであるとの趣旨の主張をするが、右のような事実を認めるに足りる証拠はな
い。)」を、同裏一行目「配分方法も、」の次に「前記(8)の配分方法が採られ
ると、従前地よりかなり広い面積の農用地が一部の地権者に配分されることにはな
るが、前記余剰地が生じた経緯からしても、」をそれぞれ加え、同七行目「決定さ
れた以上」を「決定され、特別換地に該当するものについてその要件を具備してい
る以上」に改め、同四〇枚目表五行目「認めるべきで、」の次に「右目的がライス
センター等農業経営上有益な施設の敷地の用に洪する目的で、当時としていわゆる
創設換地の制度がなかつたことを考慮しても、」を加える。
5 同四〇枚目表末行「清算金の」の次に「微収・」を、同裏二行目「現実の」の
次に「微収・」をそれぞれ加え、同行目「本件換地処分後の手続」を「本件換地処
分それ自体を構成するものではなく換地処分をした旨の公告があつた日の翌日に確
定する清算金の徴収権又は交付請求権の行使又は履行の問題」に改める。
6 (一)同四〇枚目裏六行目の次に改行して「控訴人らの主張は、結局、被控訴
人が換地計画で定められた基準による清算を実施していないということに帰する
が、清算の不実施の問題は、前記のとおり本件換地処分の無効事由となり得ないと
ころである。」を、同上行目冒頭に「なお、」を、同四一枚目表二行目「右各証
言」の次に「及び当審証人R、同Vの各証言(いずれも後記措信しない部分を除
く。)」を、同五行目「者からは」の次に「、上回つた分」を、同六行目「下回つ
た者には」の次に「、少なくなつた分」を、同九行目末尾「認められる・」の次に
「原審証人S、同W、同T、当審証人R、同Vの各証言中には、右清算やその後の
余剰清算金の保管等は改良区とは関係がないか、ないかのように述べる部分がある
が、前掲各証拠及び右認定と対比して措信できず、他にこれを左右するだけの証拠
はない。」をそれぞれ加え、同裏三行目「したがつて、」から同八行目末尾「明ら
かである。」までを削り、同九行目「しかしながら」を「そして」に改め、同四二
枚目表八行目「そうすると、」から同裏五行目「問題とはなり得ない。」までを削
り、同五行目「ただ」を「もつともに」に、同九行目「無効と認めるには足りな
い。」を「無効と解することはできず、結局控訴人らの主張は理由がない。」にそ
れぞれ改める。
7 同四三枚目表一一行目末尾「認められない。」の次に「なお、控訴人らは、右
土地を従前地として、Gに対し、四二二二平方メートルの換地がなされた点も問題
とするようであるが、成立に争いのない乙第一号証によると、<地名略>の田・四
二二二平方メートルは、右山林のみでなく、<地名略>の畑(現況田)一七一二平
方メートルの二筆の土地に対する換地であるし、同人は全体としても換地交付基準
率を約九パーセント上回る換地を受けたに過ぎないことが認められるのであつて、
控訴人らの主張は採用できない。」を加える。
8 同四三枚目裏一〇行目冒頭から同四四枚目裏七行目までを以下のとおり改め
る。
「控訴人らの主張は、要するに、X及びGが同人らに対する換地処分において表示
された地積よりも広い地積の土地を占有しており、それにより同人に対する換地処
分は違法となるということに帰する。しかしながら、右主張は、他の者に対する換
地処分の違法をいうにとどまり、右事実があることによつて控訴人らに対する換地
処分が無効になることについて具体的な主張はないから、主張自体失当である。仮
に控訴人らの主張が、右事実のあることによつて控訴人らの土地の占有面積につい
て本件換地処分により表示された地積に充たない状態を生じており、それにより本
件換地処分が違法となるという趣旨であるとしても、換地処分に基づく権利者の土
地の占有は、換地処分に基づいて行われる事実行為であつて、換地処分それ自体を
構成するものではないから、換地処分に基づく権利者の占有範囲に誤りが生じてい
るとしても、それにより換地処分それ自体に瑕疵をもたらすものではなく、その誤
りは、換地処分において定められたところに従つて、現実の占有範囲を是正すれば
足りるのである。したがつて、控訴人らの右主張は理由がない。」
9 (一)同四六枚目表一一行目「余剰地を」の次に「、一平方メートル当たり二
五〇円で」を、同裏一行目末尾「認められる。」の次に「(前掲甲第三四号証、成
立に争いのない甲第五三号証の二、原審証人S、同T、同W、当審証人R、同Vの
各証言によると、右金員は、前記『清算』金とともに、改良区の行うべき機場、農
道等の補修・整備管理、あるいはフリユーム管の設置、補修等の費用に充てられた
ことが認められる。)」を、同二行目「一部地権者に対し」の次に「換地計画にお
いて定められた換地処分の内容と全く異なる」をそれぞれ加え、同三行目「いうべ
きである」を「いうべきであり、したがつて一般の地権者らとしても、右代金や一
〇〇パーセントの換地を基準にした前記清算金以外にさらに県から正規の清算金を
徴収されたり、支払いを受けられると考えていたかどうかは疑問である。」に改
め、同三、四行目「しかも」から同五行目末尾までを削り、同九行目冒頭「明らか
であり」から同末行末尾までを「明らかであるから、改良区ないし換地委員会の右
行為により被控訴人の行つた余剰地についての換地処分は何ら影響を受けるもので
はなく、これにより控訴人らに対する本件換地処分が違法になるものでもない。」
に改め、同末行の次に改行して、以下のとおり加える。
「控訴人らは余剰地の違法処分、それに伴う代金類似の金員の徴収については、県
側もこれを熟知し、改良区側と共謀して右不正行為を進めてきたなどと主張する。
前認定のとおり、そうしたことが決められていつた改良区の各種委員会や換地会議
には、A主幹が出席していて、指導に当たつていたことは認められるが、一方前記
甲第三〇号証、第三四号証、当審証人Vの証言によりその成立を認めることができ
る乙第三九号証、原審証人A、当審証人Uの各証言を総合すると、各会議の席上に
おいても、県側は、最終的には清算によつて換地の過不足は調整されると説明し、
また改良区の側からも、右清算の基準は、従前地一平方メートル三〇〇円、換地一
平方メートル四〇〇円、その差一〇〇円は県の負担した工事費用との説明がなされ
てきたもので、県側では、換地計画にしたがつた換地及び清算をする予定であつた
ことが認められ、控訴人らの右主張は採用することができない。なお、右三四号証
には、『清算金の計画書上と実際の差異について』との記載があるが、右の差異は
換地交付配分率の記載一〇六・八六四二パーセントと、実際のそれの一〇〇パーセ
ントとの差異を指しているものと認められ、県側が清算を行わない意図であつたと
認めることはできないし、また原審証人Sの証言中には、右について曖昧な部分が
あるが、右認定を左右するほどのものではなく、他にこれを覆すだけの証拠はな
い。」
(二) 同四七枚目表一行目「事実中、」の次に「(3)の」を加え、同裏七行目
「直ちに」を削り、同八行目「なるものとはいえず」を「なるかどうかは」に改め
る。
(三) 同四八枚目表七行目「違法な分譲」の次に「(昭和四七年の法改正で、第
五三条の三の規定がおかれ、いわゆる創設換地の制度がもうけられたが、当審証人
Uの証言によると、右各土地上の設備のうち農協のライスセンター及び農業共済組
合の建物は、右改正後の創設換地の対象設備に該当することが認められるほか、そ
のほかの分も村のグランドとして提供された農地の代替地というのであり、またそ
のための形式的増換地についても、正規の清算手続がされるはずであつたこと等を
考慮すると、その実質的違法性がそれほど大きいとは思われない。)」をそれぞれ
加える。
10 同四八枚目裏六行目冒頭から同五一枚目表七行目末尾までを次のとおり改め
る。
「本件換地処分の通知書が昭和四七年一〇月三〇日付で作成されており、換地処分
をした旨の公告が同四八年八月九日付でされたこと、その後同五〇年一二月頃まで
に右通知書が控訴人らに交付されたことは、当事者間に争いがない。そして、原審
証人A、同Tの各証言並びに原審における控訴人Q本人尋問の結果及びこれにより
その成立を認めることができる甲第六号証によれば、右通知書は、他の権利者に対
する通知書と一括して、昭和四七年一〇月三〇日頃、改良区の事務局に交付された
が、事務局長であるTは、他の前例にならい、換地に基づく登記が完了した段階
で、登記済証とともに権利者に交付するつもりでこれを保管したままでいたとこ
ろ、本訴において右通知書の交付が問題となつたため、昭和五〇年一二月下旬頃各
部落の委員等を通じて控訴人らを含む各権利者にこれを交付したことが認められ
る。
被控訴人は、改良区事務局には、控訴人らを含む全権利者から本件事業関係の文書
の代理受領権限が付与されていたものであると主張し、原審証人Tの証言中にはこ
れにそう部分があるが、原審証人Y、同Aの各証言によれば、早く確実に届くとい
うことから便宜上改良区事務局が文書を一括して預かり、改良区部落の委員等を通
じてこれを各権利者に交付していたに過ぎないものと認められ、前記証人Tの証言
は直ちに措信することができない。また、原審証人G、同Y、同A、同S、同W、
同Tの各証言によれば、本件事業における一時利用地の指定通知書、換地会議の開
催通知書等は、すべて被控訴人から改良区事務局が一括受領し、各部落の委員等を
通じて、各権利者に交付され、そのことについて各権利者から苦情が申し立てられ
たことはなかつたことが認められるが、前記の改良区事務局が文書を一括受領しこ
れを各部落の委員等を通じて交付していた理由に照らし、右事実から直ちに改良区
事務局が本件事業関係の文書、
とりわけ本件事業の手続として権利者にとつて最も重要なものである換地処分の通
知書の代理受領の権限を有していたものと認めることはできない。そして、他に被
控訴人の右主張を認めるに足りる証拠はない。
右事実によると、被控訴人は、従前一時利用地の指定通知書等についてはこれを改
良区事務局に一括交付し、それが各部落の委員等を通じて各権利者に交付され特段
の異議もなかつたことから、昭和四七年一〇月三〇日頃換地処分の通知書を改良区
の事務局に一括交付し、これをもつて権利者に対する交付があつたものとして、現
実に各権利者に対する通知書の交付がないのに、同四八年八月九日付で換地処分を
した旨の公告をしたものと認められるが、控訴人らに対する本件換地処分の通知
は、その通知書が改良区事務局に交付されただけでは完了せず(県営の土地改良事
業については法四五条の準用がない。)、本来、これが現実に控訴人らのもとに到
達したとき、すなわち、その通知書の作成された日から三年以上を経過し、また換
地処分をした旨の公告の日から二年四か月以上経過した昭和五〇年一二月下旬に完
了したことになるものというべきである。
ところで、一般に、行政処分は、処分庁がその意思を決定しこれを外部に表示した
ときに(相手方に到達しなくとも)存在し、成立するにいなると解すべきものであ
るが、土地改良事業における換地処分は、県知事が(県営土地改良事業の場合)権
利者に対し換地計画において定められた関係事項を通知してするものとされている
のであるから(法八九条の二第八項)、権利者に右通知が到達したことにより換地
処分が成立すると解するのが相当であり、その効果は、県知事の換地処分をした旨
の公告のあつた日の翌日に生ずることになる(昭和四七年法律第三七号による改正
後の法(以下「新法」という。)八九条の二第一〇項、五四条の二)。そして、右
通知は、事柄の性質上書面を送付することにより行うのが相当であり、公告前にす
べての権利者に対し換地処分の行われていることが必要であると解される(新法八
九条の二第一〇項、五四条)。そうすると、本来、本件換地処分はその通知書が控
訴人らに到達した昭和五〇年一二月下旬に成立したことになり、本件事業の手続に
は、公告前に換地処分が行われていなかつたという瑕疵があることになる筋合いで
ある。
しかしながら、本件のように、換地処分の通知書が処分庁である被控訴人(前記争
いのない事実によれば、知事から委任を受けていた。により作成されて内部的な意
思決走があり、次いで、前記認定のような従前の関係書類の交付の実情のもとで、
これが被控訴人から改良区事務局に交付されて処分庁の意思が外部に表示されるに
いたつたが、それが未だ権利者に到達しない間に、被控訴人が換地処分をした旨の
公告を行つた場合において、権利者が右換地処分の内容を事前に知つているときは
(本件事業の換地処分の内容は換地計画の公告及び縦覧により明らかにされている
ばかりでなく、前記乙第三一号証及び当審証人Rの証言によれば、昭和四六年一一
月八日に開催された権利者全員で組織する換地会議の前に右会議の招集通知ととも
に換地処分通知書に添付された各筆換地等明細書と同一内容の書面が各権利者に交
付されていたこと及び換地会議においても換地及び清算金について説明がされたこ
とが認められ、換地及び清算金について深い関心をもつていたはずである控訴人ら
を含む各権利者は少なくとも自己に対する換地処分の内容を知つていたものと推認
される。)、右換地処分の通知について法律上は書面によることまでは要求されて
いないこと(個別的な行政処分は当然相手方に対する告知を必要とするものである
から、法八九条の二第八項の定めは、「換地計画において定められた関係事項」を
通知すべきこととして通知の内容を法定したところに意味があり、通知の方式及び
方法については書類の送付をすることができない場合にそれに代わる公告についで
の定め(法一一二条)があるほかは、特段の定めはなく、成立について争いのない
乙第一三号証及び弁論の全趣旨によると、実務上通達によつて一定の書式により行
われているにすぎないものと認められる。)、右公告が処分庁である被控訴人によ
つて行われていること(土地改良区の行う土地改良事業の場合に監督庁である知事
が行うのとは異なる。)、右公告は換地処分の通知に代えて行われるもの(法一一
二参照)ではないにしても、換地処分をしたことを広く一般人に知らせることを目
的とし、権利者もこれにより換地処分のあつたことを知ることができる状態に置か
れることを考慮すると、書面によらないことにおいて相当でない点はあるにしても
(それが違法原因になるかどうかは問題であるが)、右公告により、前記のとおり
既に決定表示されていた換地処分について権利者に対し通知が到達したものとし
て、右公告があつた時に換地処分が成立し(もし右の点が違法原因になるとすれば
書面によらないという瑕疵のある処分として成立し)、その翌日にその効力が発生
し、その後換地処分の通知書が権利者に交付されることにより、右の相当でない点
についても(もし違法原因になるとすれば)処分成立の時にさかのぼつて治癒され
るにいたつたものと解するのが相当である。けだし、右のように解しても、本件の
ような場合には各権利者に対し重大な不利益を与えるものではなく、かえつて右の
ように解しないと以下に述べるような種々の不都合が生じ、法の趣旨にもとること
になるからである。
すなわち、一般に行政処分はそれが相手方に到達したときに効力を生ずるのである
が、土地改良事業における換地処分については、その性質上各権利者すべてについ
て同時期かつ一律にその効力を発生させなければならないという技術的要請から、
法は、特別に規定を設け、その通知が相手方に到達したときに効力が発生するもの
とはせず、権利者すべてに対する換地処分の通知書が送付されたことを前提として
その後に行われるべき換地があつた旨(あるいは換地をした旨)の公告があつた日
の翌日にその効力が発生するものと定めているのである(このように、行政処分の
効力の発生時期を通常の場合(相手方に到達した時)と異なる時期に発生させるた
めには、法の特別の規定(明文または少なくともその趣旨を明らかにしている規
定)を必要とするものと解される。)。もし仮に、あくまでも換地処分の成立につ
いてはその通知書の到達が必要であり、それが公告の後に権利者に到達した場合に
は右法の特別の規定の適用がなく、処分の通知書が到達した時にその効力が発生す
るものと解すべきであるとすれば、各権利者ごとに効力の発生時期が区々となり、
権利関係が錯綜し、収拾することのできない混乱が生ずることになる。また、右の
場合において、換地処分の通知書が権利者すべてに到達した後に、さかのぼつて法
の規定するように公告のあつた日の翌日に効力を生ずるものと解するとすると、処
分の成立前に効力が発生することを認めなければならないことになるばかりでな
く、通知書の送付を受けないため未だ換地処分がないものとして築かれた権利関係
がさかのぼつて覆えされることになり、関係者間に不測の損害を生じさせることに
なりかねない。また、権利者に対する換地処分の通知書がその最後の者に到達した
時に換地処分の効力が一律に発生すると解することも、前記のとおりその旨の法の
特別規定がない以上無理である(なお、公告が右の時期に繰り下げられて行われた
ことになると解するのも、その本質が告知を目的とする事実行為であり、それに法
が法律効果の発生を結びつけているにすぎないことから考えると、事実自体を変更
するに等しく、無理である。)ばかりでなく、各権利者にとつて何時効力が発生し
たのか正確に知ることが困難であり、また公告を信頼した第三者に不測の損害を与
えることになりかねない。
そうすると、本件においては、前記のとおり公告と同時に換地処分の通知があつた
(換地処分が成立した)ものと解されるところ、このような場合でも、換地処分の
効果を同一時期かつ一律に発生させるためすべての換地処分が成立したことを前提
として公告をするという法の趣旨は充足されているものというべきであるから、法
の定める公告前の換地処分の通知がなかつた(換地処分が成立していなかつた)こ
とにより本件換地処分が無効である旨の控訴人らの主張は結局理由がない。
なお、控訴人らは、本件訴訟(本件換地処分の無効確認訴訟)は出訴期間内に提起
されたものであるから取消訴訟として扱われるべきであると主張するが、前記のと
おり本件換地処分があつたのはその公告があつた昭和四八年八月九日であり、控訴
人らがこれをいつ知つたかはしばらく措き、本件訴訟(なお、控訴人らも右公告に
よる本件換地処分を対象として無効確認を求めている。)が提起されたのはそれか
ら一年以上経過した同四九年一二月一四日または同五一年四月一九日であることは
記録上明らかであるから、行政事件訴訟法一四条三項の規定に照らし(控訴人らに
右期間を遵守することができなかつたことについての正当な事由があると認めるに
足りる証拠はない。)、出訴期間経過後に提起されたものといわざるをえず、控訴
人らの主張は理由がない。」
二 よつて、これと結論において同旨の原判決は相当であり、本件各控訴は理由が
ないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、
民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 越山安久 鈴木經夫 浅野正樹)
別表(不当換地明細)(省略)
(原裁判等の表示)
○ 主文
一 原告らの請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告らの請求の趣旨
1 被告が別紙各筆換地等明細書記載の各原告に対し昭和四八年八月九日付をもつ
て公告した同明細書「従前の土地」欄記載の各土地について同「換地」欄記載の各
土地を換地とする旨の処分(以下「本件換地処分」という。)が無効であることを
確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する被告の答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 原告らの請求の原因
1 被告は、茨城県知事の委任を受けて、茨城県営圃場整備事業曽根地区の土地改
良事業(以下「本件事業」という。)において、原告らに対し、本件換地処分をし
た。
2 本件換地処分は、以下に述べるとおり、重大かつ明白な瑕疵を有するから、無
効である。
(一) 照応性違反
(1) 不評定
被告は、本件換地処分に係る従前の土地(以下「従前地」という。)及び換地につ
いて、土地改良法(以下「法」という。)の定める事項(土性、水利、傾斜、温度
その他の自然条件及び利用条件)の評定をしないで、本件換地処分をした。このこ
とは、各筆換地等明細書に「評定」として「等位」と「価額」が記載されることに
なつていたのに、本件換地処分においては、「等位」が全て空欄とされ、「価額」
も全て一律に評定されているところから、明白である。そして、この点は、換地の
際に考慮すべき最も重要かつ基本的な要件であるから、その瑕疵は重大かつ明白で
ある。
(2) 利用条件及び自然条件不勘案
本件事業の対象地においては、主要道路である県道成田線(千葉県成田-江戸崎-
土浦市を結ぶ。以下「県道」という。)に接する土地又はその付近の土地は、利用
条件上一等地として評価され、特に昭和五二、三年ころから宅地化が進み、坪当た
り五ないし八万円で取引きがされている。このような県道沿いの土地につき、従前
全く土地を所有していなかつた一部有力者が、別表のとおり換地配分を受け、他
方、そのために、従前県道沿いに土地を所有していた者が、県道から離れた評価の
低い土地の換地を受けた。このことは、法の定める利用条件を勘案した換地といえ
ないことが明らかであり、その瑕疵は重大かつ明白である。
また、右の県道沿いの土地の一部有力者への換地は、それらの者に県道沿いの土地
を取得せしめる目的でされたもので、したがつて、各土地の土性、水利状況、傾斜
の有無、温度差等、法の定める自然条件を全く勘案しないまま換地されたことが明
らかであり、その瑕疵は重大かつ明白である。
(3) 換地交付基準率無視
換地と従前地とは、地積が照応(おおむね同等の意)していなければならず、その
ためには、いわゆる普通換地の場合(法第五三条第一項本文)には、要するに、換
地の地積が換地交付基準率(従前地の総地積に対する換地の総地積の割合をいう。
以下同じ。)に従前地の地積を乗じて得た地積に照応していることを要する。
ところで、本件事業における換地交付基準率について、被告は、当初一〇六・八六
四二パーセントである旨主張、立証していたが、その後一〇六・八七八二パーセン
トであると変更し、更に、一〇六・八六三〇パーセントであると訂正した。しか
し、正確な換地交付基準率は、一〇六・八四〇〇パーセントである。また、後記
(二)のとおり、違法に土地を売却したのであるから、そのうちライスセンター用
地、県南共済組合、グランド用地の合計二万八四九〇平方メートルだけを考慮して
も、本来の換地交付基準率は一〇七・八七〇八パーセントであり、更に、新利根川
に隣接する茨城県稲敷郡<地名略>、三二二二平方メートル(以下、同村所在の土
地は、大字以下のみをもつて表示する。)も、換地配分せず、違法に土地改良区の
所有のままにしているから、この点も考慮すると、結局本来の換地交付基準率は、
一〇七・九八七四パーセントである。
ところが、本件換地処分は、右の換地交付基準率によつたのではなく、一〇〇パー
セントという架空の換地交付基準率により行われた。このことは、本件事業におい
て大部分の者が現実に従前地のほぼ一〇〇パーセントに相当する地積の換地を受け
たことから明らかである。また、本件事業においては、事実たる慣当に基づき、被
告の委任を受けて豊田新利根土地改良区(以下、単に「改良区」という。)が換地
に伴う清算事務を行つたところ、昭和四七年九月ころ、各地権者に対し、一〇〇パ
ーセントの換地交付基準率による清算が実施されたことからも、明らかである。そ
して、本件事業においては、事業計画書に本来記載されて然るべき換地交付基準率
が全く記載されないまま、現実の換地事務は、水路や縄延び等により少なくとも従
前地の地積よりは二、三町歩(実際には一六町八反余)の余剰が生ずることが予見
されていたにもかかわらず、従前の公簿上の地積と同面積の土地が実測によつて換
地配分されたのである。しかし一方では、後記(二)のとおり本来売却することが
できない第三者に対して広大な土地が優先的に売却され、更に右一七町歩弱に及ぶ
余剰地が一部有力者等に売却されてしまつたのである。右のとおり、本件事業の事
業計画そのものが換地を行うに際しての最も基本的な要件も定めない杜撰なもので
あり、計画決定自体に無効原因を有しており、しかも予想される余剰地についても
全く考慮されず、極めて不公平かつ法を無視した換地が強行されたのである。
以上のとおり、本件換地処分には、換地交付基準率を無視した違法があり、原告ら
地権者が不法に奪われた土地は、前記本来の換地交付基準率に従えば、七・九八七
四パーセント、面積にして、二三万八三九七平方メートル(二四町歩弱)にも及ぶ
から、その瑕疵は重大かつ明白である。
(4) 清算の不実施
被告は、前記の正確な換地交付基準率による清算をしておらず、そればかりか、当
初の基準率である一〇六・八六四二パーセントによる清算すらしていない(そし
て、清算金に関する請求権は五年で時効消滅するから、今さら清算を実施すること
は不可能である。)。これは、換地の際の照応性の要件を欠くものであり、その瑕
疵は重大かつ明白である。
(5) 基準に基づかない恣意的清算
被告は、本件事業における換地に伴う清算金の算出基準を一平方メートル当たり四
〇〇円(一反当たり約四〇万円)と決定した。ところが、実際に清算事務を行つた
改良区は、地権者が換地交付基準率(ただし、一〇〇パーセント)を上回つて換地
を受けた場合には一反当たり二五万円を徴収し、それを下回つた場合には一反当た
り五〇万円を支払うという恣意的な基準を作り、これに基づいて清算をした。そし
て、本件事業の対象地区内には、永年にわたり水路を埋め立てて事実上各地権者が
水田として耕作していた土地が多く、その意味で相当の縄延びがあることが予想さ
れ、現に一六町八反五畝からの縄延びが生じたのであるから、右の清算基準からす
れば、増換地を受けることの方が著しく利益である。そこで、右のような恣意的基
準を設け、原告ら一般農民には一〇〇パーセントの換地をして清算金の支払をしな
いようにし、一方一部有力者には数十パーセントに及ぶ増換地をして、一反当たり
二五万円という極めて低廉な価額で、一等地を確保させたのである。
なお、右の恣意的精算基準が悪用された実例をあげると、Iの場合には、自己の耕
作する田一五五三平方メートルが母Zの所有であつたところ、同人が換地配分を受
けるのを辞退して、一反当たり五〇万円の清算金を受け、他方Iが当該土地を増換
地してもらい、一反当たり二五万円を支払うという手法で、現実には耕作者が何ら
変更ないにもかかわらず、換地手続を利用することにより、一反当たり二五万円の
差益を得、更に、将来課される贈与税又は相続税を免脱したのである。P1の場合
も同様である。
右のとおり、実際上は一〇〇パーセントの換地交付基準率により行われた本件換地
処分は、一反当たり四〇万円と設定された清算基準に従つた清算が行われなかつた
瑕疵があり、その瑕疵は重大かつ明白である。
(6) 山林の従前地組入れ
農用地以外の土地を換地の対象にすることは許されないのに、被告は、G所有の山
林(<地名略>、二二八平方メートル)を正当な理由なく従前地に組み入れ、か
つ、違法に換地配分をした(<地名略>、田、四二二二平方メートル)。
(7) 従前地の不存在
Hが所有していた宅地(<地名略>、六・六一平方メートル及び<地名略>、九・
九一平方メートル)は、昭和四二年三月一〇日に茨城県竜ケ崎土木事務所に売却ず
みであるのに、被告は、右土地を従前地として、同人に対し、大字<地名略>及び
<地名略>の土地を違法に換地配分した。
(8) 換地処分以上の現実の換地配分
被告は、実際に換地を配分する際に、改良区役員、換地委員に委せ切りにしていた
ため、換地処分における換地地積よりも不当に広い土地を一部役員に与えた。
すなわち、Xに配分された換地の地積は、六〇〇〇平方メートルである(換地明細
書では三五四八平方メートルでしかない。これが訂正印もなく六〇〇〇平方メート
ルに訂正され、再度三五四八平方メートルに訂正されている形跡がある。)のに、
その実測地積が六三〇〇平方メートルある。また、Gの換地のうち、<地名略>が
七七六二平方メートルのところ実測面積は八二〇〇平方メートルもあり、<地名略
>も四二二二平方メートルのところ実測面積は四五〇〇平方メートルもある。
(9) 従前地の不当な除外
被告は、本件事業に提供した原告Q及び同P2の土地を従前地に加算せずに、違法
に換地地積に加算した。
イ 原告Qの場合
被告は、本件事業を遂行する際、改良区を通じ、原告Qの肩書地宅地内にあつた旧
水路敷(別紙見取図(一)の斜線(2)部分)を農道にするため無断で埋め立てて
取り込み、また、同原告所有の農地(同図の斜線(1)部分)を村道拡幅のため埋
め立てて取り込んだが、同原告が補償請求した結果、昭和四七年に代替地として三
〇〇平方メートルを補償する旨同意した。
ところが、被告は、右同意に違背し、同原告に対する換地処分につき、右の取り込
んだ土地を従前地に加算せずに、右補償地を換地に加算したため、同原告は、あた
かも増換地を受けたか余剰地を買い受けたかのごとき結果となり、増地積分の清算
金又は買受金の請求を受けるという違法な処分を受けた。右の瑕疵は重大である。
ロ 原告P2の場合
原告P2の場合も同様に、同原告の肩書地に隣接する宅地の一部(別紙見取図
(二)の斜線部分、現況畑)をコンクリート排水路として削られた分(二一五平方
メートル)の補償地(三倍補償)の一部に相当する四三六平方メートルが、右削ら
れた土地が従前地に加えられていないにもかかわらず、換地に加算されて、増歩さ
れたかのようにされている。右の瑕疵は重大かつ明白である。
(二) 余剰地の違法処分
土地改良事業においでは、対象区域内の土地を、第三者はもとより、地権者に対し
ても、売却することは許されない。
しかるに、本件事業においては、被告は、地権者に対しては換地交付基準率一〇〇
パーセントで換地し、その他は余剰地として一反当たり二五万円で買入申込を受
け、その者に右金額で売却した。その売却代金は、被告が換地事務処理を契約によ
り委託して清算事務を取り扱つた改良区が収受し、余剰地を買い入れた地権者につ
いては、換地配分を受けたかのように処理した。ところが、地権者以外の第三者に
ついては、換地による処理ができないため、実質は買い入れた第三者が代金を支払
つて当該土地を当初から使用しているのに、地権者が換地を受けたかのように仮装
した。このようにして第三者に売却した土地は、次のとおりである。
(1) 根本農業協同組合(以下「根本農協」という。)に売却したもの(ライス
センター用地)
<地名略>
田 二六五二平方メートル(D名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P3名義)
<地名略>
田 一七七七平方メートル(P4名義)
合計地積  六四二九平方メートル
(2) 茨城県南農業共済組合に売却したもの(事務所敷地用地)
<地名略>
田 二〇六一平方メートル(I名義)
(3) 新利根村に売却したもの(村のグランド用地の代替地)
<地名略>
田 二七〇三平方メートル(S名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P5名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P6名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P7名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P8名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(I名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(G名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P3名義)
<地名略>
田 二〇〇〇平方メートル(P9名義)
<地名略>
田 一二九七平方メートル(S名義)
合計地積  二万平方メートル
以上(1)ないし(3)合計地積二万八四九〇平方メートル
右の二町八反に及ぶ土地は、形式的には地権者に換地配分されたようになつている
が、本来原告ら真の地権者に照応の原則に照らして平等に換地配分すべきものであ
つたから、その点において原告ら地権者は回復し難い損害を蒙つている。そして、
改良区は、右の売却の代金として、それぞれ次のとおり受領した。
(イ) 中根本農協から
昭和四五年一二月二三日  一〇五万円
(ロ) 茨城県南農業共済組合から
昭和四六年一〇月一九日  五一万五二五〇円
(ハ) 新利根村から
昭和四五年一〇月二六日  二五〇万円
同年一二月二六日     二五〇万円
以上のとおり、被告は、本件事業の対象地区内の土地の売却を改良区に行わせ、又
は改良区が行つていることを知りながらこれを黙認して放置し、もつて、本来公平
に各地権者に換地配分すべき土地を、一部有力者等に恣意的に売却し、更に、換地
を受けられない第三者にまで売却した。このことは、本件換地処分の照応性に重大
な影響を及ぼすばかりでなく、それ自体に本件換地処分に影響を及ぼす違法があ
り、右瑕疵は重大かつ明白である。
(三) 換地処分の通知の欠缺
本件換地処分は、昭和四八年八月九日、換地処分をした旨の会告がされたものであ
るが、それ以前にされるべき換地処分の通知が、原告らを含む権利者にされていな
い。
被告は、本件換地処分の通知書は他の地権者に対するものと一括して改良区事務局
に交付したこと、同事務局員が被告作成の公文書を権利者に代わつて受送達する代
理権限を有することを主張する。しかし、右代理権限の根拠は不明である。そし
て、被告から改良区事務局員が預つた公文書は、部落代表の理事、換地委員を経由
して、部落総代の手から各権利者に交付される方法が採られたが、この方法による
と、経験上文書が中間で滞留したり、紛失したり、故意に各権利者に渡されないお
それがある。各権利者にとつて重要な換地処分の通知書を右のような方法で行うこ
とは、許しがたい。ましてや、本件のように改良区ぐるみで不正を働いていた同事
務局に通知書を交付したまま、その行先を調査せず放置していたことは、通知の義
務を果たさないことと同断である。現に原告らには通知書は到達しなかつた。
そこで、被告は、前記公告後二年以上経過した昭和五〇年一二月ころ、突然昭和四
七年一〇月三〇日付の本件換地処分通知書を、原告ら権利者に交付してきた。しか
し、このように大幅に遅れて通知がされても、法の定める公告前の通知があつたも
のとはいえない。
以上のとおり、本件換地処分は、その通知を欠いており、その瑕疵は重大かつ明白
である。
よつて、原告らは、被告に対し、本件換地処分の無効の確証を求める。
二 請求の原因に対する被告の認否
1 請求の原因1の事実は認める。
2 同2の冒頭の事実は否認する。
3 同2(一)(1)の事実中、本件換地処分の各筆換地等明細書の評定の「等
位」欄が全て空欄とされており、「価額」が全て同一であることは認め、その余は
否認する。
4 同2(一)(2)の事実中、別表のとおりの換地処分がされたことは認め、そ
の余は否認する。
5 同2(一)(3)の事実中、第一段、第二段のうち被告が換地交付基準率は一
〇六・八六四二パーセントである旨主張していること、第三段のうち本件事業にお
いては多くの者が従前地のほぼ一〇〇パーセントに相当する地積の換地を受けたこ
とは認め、その余は否認する。
6 同2(一)(4)の事実中、本件換地処分に伴う清算金の支払が未だ実施され
ていないことは認め、その余は否認する。
7 同2(一)(5)の事実中、Zが不換地申出をしたこと、同人の息子に当たる
Iについて増換地したこと、P1についても同様のことがあつたことは認め、その
余は否認する。
8 同2(一)(6)の事実中、主張の換地処分がされたことは認めるが、その余
は否認する。
9 同2(一)(7)の事実中、主張の換地処分が違法であることは否認し、その
余は認める。
10 同2(一)(8)の事実は否認する。
11 同2(一)(9)の事実中、原告Q及び同P2に対し増歩換地がされたこと
は認め、その余は否認する。
12 同2(二)の事実中、(1)ないし(3)の各土地が各権利者の名義に換地
処分されたことは認め、その余は争う。
13 同2(三)の事実中、本件換地処分通知書が昭和四七年一〇月三〇日付で作
成されており、その公告が昭和四八年八月九日付でなされたこと、その後昭和五〇
年一二月ころまでに右通知書が原告らに交付されたことは認め、その余は争う。
三 被告の主張
原告らの主張する本件換地処分の無効事由について、被告は、次のとおり反論す
る。
(一) 照応性違反について
(1) 不評定について
被告は、本件換地処分に係る従前地及び換地について、適法に評定をした。
土地の評定は、法施行規則(以下「規則」という。)第四三条の六により土地の等
位を定めて行うこととされているところ、本件事業についても、対象地域内の従前
地及び換地について、それぞれ一等から三等までの三段階制で等位を定めた結果、
全地域第二等位と認められたのである。したがつて、その価額が全て一律に評定さ
れたことも正当である。なお、右のとおり全地域同一等位と評定された結果、各筆
換地等明細書の等位欄は空欄とされたものであり、評定がされなかつたからではな
い。
(2) 利用条件及び自然条件不勘案について
県道沿いの土地は、ほとんどが国有地に属する池沼であつたもので、そこに従前地
を有していた者は二名程度にすぎず、これらの者には現地換地又は現地換地と同等
に評価しうる換地処分がされている。したがつて、別表の換地処分により県道沿い
に従前地を有していた者が排除されたという事実はない。
別表の換地処分がされたのは、もと池沼などの国有地に同表記載の者らが一時利用
地の指定を受けていたからにほかならない。
また、照応性の判断に当たつては、農用地としての評価のみを考慮すべきで、宅地
化された場合の評価を考慮すべきではないところ、県道沿いの土地は、農用地とし
てはむしろ低く評価されこそすれ、原告ら主張のように一等地と評価されるもので
はない。
(3) 換地交付基準率無視について
本件事業における換地交付基準率は、一〇六・八六四二パーセントである(なお、
被告は終始その旨主張している。)。これを現在までに発見された誤記及び誤算を
修正して計算しても、一〇六・八六二五パーセントである。したがつて、前記換地
交付基準率の誤りは微小である上、権利者にとつてより有利な方へと誤つたのであ
るから、右の誤りが本件換地処分の無効事由となりえないことは明白である。原告
らの主張する一〇六・八四〇〇パーセントが正しいとしても、同様である。
本件事業において多くの者がほぼ一〇〇パーセントの換地処分を受けたことを原告
らは非難するが、法第五三条第一項第二号(昭和四七年法律第三七号による改正前
のもの。以下同じ。)によつて明らかなように、換地交付基準率を従前地地積に乗
じて得た地積に対し二〇パーセントの範囲内で換地地積に増減があつても、何ら差
支えないとされている。
また、本件換地処分に先立ち、一時利用地指定処分が一〇〇パーセントの指定率で
行われたことは、事実である。しかし、これは、本件事業の事業計画の段階で、確
定測量を経ていないため、計画面積すなわち造成されるべき農用地の総地積が二八
八・一ヘクタールとしか見込まれず、従前地の公簿上の総地積三一〇・七ヘクター
ルに対しての比率は九二・七パーセント程度と見込まれていたことによるもので、
当時としては合理的かつやりをえない措置であつた(なお、事業計画において換地
交付基準率を定めなければならないとする原告らの主張は、法律上何の根拠もな
い。)。そして、一時利用地指定が一〇〇パーセントを目安として行われた結果、
その最終段階で一三町歩(原告らは一七町歩弱というが、疑問である。)の余剰
地、つまり一時利用地指定のされていない土地を生じたが、これもやむをえないと
ころであつた。本件事業において換地計画が樹立されたのは、右の一時利用地指定
が既に行われ、各権利者がそれぞれの一時利用地を愛着をもつて管理していた段階
になつてからであるから、この事実を尊重して、当該一時利用地をそのまま当該権
利者に対する換地とすることとされた。その結果、換地計画の段階でも約一三町歩
のいわゆる余剰地を生じたが、これを全ての権利者に対し平等配分すれば、これを
細分化した零細農地となり、農地の集団化という土地改良事業の基本原則に沿わな
いこととなるため、各部落ごとに、いわゆる部落配分の方式で割り当て、希望者に
対し配分すべく、これを特別換地又は普通換地として換地計画に組み入れたもので
あり、合理的な措置であつて、何ら違法ではない。
(4) 清算の不実施について
清算金の支払が実施されていないことは事実であるが、行政処分としての換地処分
には、現実の支払の事務は包含されていないから、清算の不実施は換地処分の瑕疵
にはならない。
(5) 基準に基づかない恣意的清算について
本件換地処分に伴う清算金の支払、徴収については、改良区は法律上も契約上も何
らの権利義務をも有しないから、仮に改良区がどのような行為をしても、本件換地
処分に伴う清算事務をしたことにはならない。のみならず、原告らの主張するよう
な行為を行つたのは、改良区ではなく、一部の権利者すなわち曽根地区内の農民グ
ループとしての私的団体にすぎないのが実態であつた。
なお、原告らは、ZとIとがたまたま親子関係にあることを採り上げて主張する
が、Zが法定の不換地申出をし、Iについて特別換地が行われたものにすぎず、い
ずれも適法であり、しかも、ZとIは世帯を別にし農業経営者として別個の立場に
あつたから、何ら作為的に両名の利益をはかつたものではない。P1の場合も同様
である。
(6) 山林の従前地組入れについて
<地名略>の土地は、現況は田であつた。なお、仮に現況山林であつたとしても、
山林を土地改良事業の対象地とすることは差支えない。
(7) 従前地の不存在について
本件事業施行当時、<地名略>及び<地名略>の土地は、登記簿上は未だH名義で
あつたから、同人の従前地に組み入れられ、本件事業により県道に平行して設けら
れた土地改良施設たる農道として造成され、その上で公共用地として換地されたも
ので、右換地処分は何ら違法ではない。
(8) 換地処分以上の現実の換地配分について
仮に原告ら主張のような事実があるとしても、それは、杭打ち又は畦畔作りの実施
に伴う誤りにすぎず、行政処分たる換地処分の瑕疵ではない。
(9) 従前地の不当な除外について
原告らが不当に従前地に加えなかつたと主張する土地は、いずれも本件事業の対象
地区外の土地であつて、被告は一切これらに関係していない。原告らと改良区との
間でどのような話合いがあつたとしても、それは被告の関知しないところである。
(二) 余剰地の違法処分について
被告がいわゆる余剰地(一時利用地指定のされなかつた農用地。以下同じ。)につ
いて売却処分をしたことは、全くない。被告は、右余剰地について、適法な手続に
よりいわゆる特別換地等を行つたものである。
なお、右の特別換地等によつて換地の配分、引渡しを受けた権利者が、換地処分の
後に、それぞれの自由意思に基づき、地元農協、共済組合、村当局等の第三者に対
し、当該換地を譲渡、引渡し等をしても、それは、事後処分として被告の何ら関知
しないところであり、本件換地処分の効力を左右するものではない。
また、原告らの主張は、改良区が被告から清算事務の委託を受けていたことを前提
とするものであるところ、被土と改良区との間に締結された委託契約においては、
清算金の支払、徴収事務は委託事務の内容に含まれていないから、改良区が清算事
務を行うことは、ありえない。
(三) 換地処分の通知の欠缺について
本件換地処分の通知は、以下のとおり、有効に行われたものである。
本件事業の当初において開催された換地委員会全体会議の席上、改良区事務局か
ら、「本件事業関係文書は、全て被告から改良区事務局が一括代理受領した上、改
良区の役員及び委員を通じ配布交付することとした。」旨が諮られ、かつ、その旨
が換地委員らを通じて各担当地区内の権利者に連絡、周知させられ、異議なく賛同
を得た。これにより、原告らを含む権利者全員から改良区事務局に対し、本件事業
関係文書の代理受領権限が授与された。そこで、被告は、本件換地処分の通知を、
昭和四七年一〇月三〇日付江戸改第八〇六号を以つて発付し、そのころこれを改良
区事務局に一括交付した。その後、遅くとも昭和五〇年一二月ころまでに、改良区
の役員、委員らを通じ、各権利者に右通知書が交付された。
なお、換地処分の公告の前提として必要とされる換地処分の通知は、処分庁から権
利者に対し発付されれば足り、受領、到達を含まないものと解すべきであり、右受
領、到達が公告の後となつても差支えないというべきである(最終的に通知の受
領、到達がなければ、換地処分の効力が発生しないことは、別論である。)。した
がつて、仮に改良区事務局による一括代理受領権限が認められないとしても、公告
前に換地処分の通知が発せられたのであるから、本件換地処分の通知、公告には、
何らの瑕疵もない。
また、仮に、換地処分の公告がされた時点で未だ権利者に換地処分の通知が到達し
ていなければ、右公告には瑕疵があると解さざるをえないとしても、その後右通知
が到達することによつて、右瑕疵は治瘉され、公告時に遡つて換地処分の効力が生
じるものと解すべきである。したがつて、本件換地処分の瑕疵も、換地処分の通知
が原告らに到達したことによつて治癒され、完全に有効なものとなつた。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 被告が茨城県知事の委任を受けて本件事業において原告らに対し本件換地処分
をしたことは、当事者間に争いがない。
二 原告らは、本件換地処分は重大かつ明白な瑕疵を有するから無効である旨主張
するので、以下、この点について検討する。
1 照応性違反について
(一) 不評定について
請求の原因2(一)(1)の事実中、本件換地処分の各筆換地等明細書の「評定」
の「等位」欄が全て空欄とされており、「価額」が全て同一であることは、当事者
間に争いがない。
原告は、右の点をとらえて、本件換地処分においては、土地の評定が行われていな
い旨主張する。この点について、法第八九条の二第三項において準用する法第五三
条第一項第一号(本件換地処分に関して換地計画が定められたのは、後記認定のと
おり、昭和四六年一一月八日であるから、これらの規定は、昭和四七年法律第三七
号による改正前のものが適用される。以下同じ。なお、以下準用関係は省略す
る。)は、換地と従前地との照応性の判断に際しては、省令の定めるところによ
り、用途、地積、土性、水利、傾斜、温度その他の自然条件及び利用条件を総合的
に勘案すべきものとしており、規則第四三条の六は、右の総合的勘案は、換地及び
従前地の用途及び地積並びに右の自然条件及び利用条件に基づいて評定した当該換
地及び従前地の等位についてしなければならないものとしている。各筆換地等明細
書の「評定」及び「等位」は、右の規則の規定する評定、等位を指すものである。
したがつて、右の等位を評定するとは、土地の自然条件及び利用条件に基づいて各
土地を複数の段階に格付けすることを意味するものであると解される。
そこで、右のような趣旨の評宝が行われたか否かについて案ずるに、証人G及び同
Wの各証言により真正に成立したと認められる甲第二九、第三〇、第三四号証並び
に証人A、同Y及び同Sの各証言によれば、本件事業においては、被告としても、
被告から換地事務を委託された改良区としても、従前地及び換地のいずれについて
も、具体的評価は行わず、全区域について同等の農用地であるとして一律の評価額
とするものとしたことが認められる。これに対し、証人W及び同Tの各証言中に
は、従前地及び換地をいずれも三段階方式で評定し、その結果、従前地は全地域に
ついて第二等位、換地は全地域について第一等位とされた旨の部分がある。しか
し、これらの証言は、これを裏付ける書証が一切提出されていないこと、証人Wの
証言によれば右の評価を行つたのは評価委員会であるというのに対し、証人Tの証
言によれば本件事業においては評価委員会は存在せず換地委員会が評価も行つたと
されていること、同証言によれば、改良区は本件事業以外の土地改良事業において
も全て各筆換地等明細書の「等位」欄は記載を省略していた(すなわち、常に同一
等位と取り扱つていた)ことが認められること、及び前記各証拠に照らし、にわか
に措信しがたい。
右認定の事実によれば、被告が本件事業において規則の定める等位の評定を行つた
ものとは評しがたい。しかし、結果的に全地域同一等位と扱われたことが直ちに本
件換地処分の無効事由となると解すべきではなく、原告ら各自の従前地と換地とが
照応しているか否かを個別に判断すべきである。そして、右の評定が行われなかつ
たために原告ら各自の従前地と換地とが照応していないという結果を生じたことに
ついては、何らの主張もないので(なお、請求の原因2(一)の(2)ないし
(9)の各主張については、以下検討する。)、評定をしなかつたことのみを根拠
とする照応性違反の主張は、理由がない。
(二) 利用条件及び自然条件不勘案
原告らに対する本件換地処分の瑕疵の有無を判断するに際し勘案すべきなのは、原
告らの従前地と原告らに対する換地との利用条件及び自然条件であることが明らか
であるから、本件事業において行われた他の換地処分に、自然条件又は利用条件を
勘案しなかつた違法があるとしても、そのこと自体が直ちに本件換地処分の瑕疵と
なるものではないというべきである。そして、原告らの主張する一部有力者への有
利な換地により不利な扱いを受けたのは、県道沿いに従前地を有していた者らであ
るというにとどまり、原告ら各自に対する本件換地処分上、どのような照応違反を
生じたのかが明らかでないから、原告らのこの点に関する主張は、失当たるを免れ
ない。
なお、県道沿いに従前地を有していた者らに原告らのうちの一部の者が含まれると
仮定しても、以下に述べるとおり、原告らの主張は理由がない。
請求の原因2(一)(2)の事実中、別表のとおりの換地処分がされたことは、当
事者間に争いがないところ、原告らは、まず利用条件の上で県道沿いの土地は一等
地である旨主張する。その根拠として、県道沿いの土地は宅地化されて評価も高い
ことを挙げているが、法第五三条第一項第一号が勘案すべきであるとする利用条件
は、農用地については、あくまで農用地としての利用条件であることが明らかであ
るから、右の点は根拠とはなりえない。また、原告らは、別表記載の換地処分は一
部有力者に県道沿いの土地を得させる目的でされたから、自然条件を勘案しなかつ
たことが明らかであると主張するが、右の点が自然条件を勘案しなかつたことの根
拠となるとは、直ちにはいいがたい。
そこで、県道沿いの土地の農用地としての利用条件及び自然条件についてみるに、
利用条件上は、県道に近接していることによる交通上の利便は肯定することができ
るが、右の点は農用地においてはさほど大きな利点ということはできず、殊に、道
路の整備された換地においては、県道沿いであるか否かによる差異はほとんどない
というべきである。逆に、交通量の多い県道沿いの農用地は、排気ガス、投棄物等
により農作業や作物の生育が害されるおそれがある面もあつて、自然条件及び利用
条件上不利な点があることも否定できない。これらの点を総合考慮すると、県道沿
いの土地が、農用地として他の土地より等位が上であると断ずることはできない。
したがつて、原告らの前記主張は、結局理由がない。
(三) 換地交付基準率無視について
成立に争いのない乙第一号証によれば、本件換地処分における換地交付基準率は一
〇六・八六四二パーセント(従前地の総地積二七七万八一四八・九一平方メート
ル、換地の総地積二九四万八二五二平方メートル)とされたことが認められる。と
ころで、原告らは、本来あるべき換地交付基準率を正確に計算し直すと、一〇六・
八四〇〇パーセントである旨(なお、ライスセンター用地等を考慮すれば一〇七・
八七〇八パーセントである旨の原告らの主張は、原告ら自身換地処分上はこれらの
土地が権利者に対する換地と扱われたことを認めているところから、趣旨不明とい
わざるをえず、また、<地名略>については、成立に争いのない甲第二三号証によ
れば、その地目が用悪水路であると認められるから、換地交付基準率の計算の基礎
とすべきでなく、原告らの主張は、根拠がない。)、被告は、現在までに発見され
た誤記及び誤算を修正すると、一〇六・八六二五パーセントである旨主張する。こ
れらのいずれが正しいと仮定しても、本件換地処分において現実に換地交付基準率
とされた一〇六・八六四二パーセントは、これらをごくわずか一〇・〇〇一七ない
し〇・〇二四二パーセント)上回つているにすぎず、右のような微小な(一〇〇〇
平方メートル当たり〇・二四二平方メートル以下)しかも権利者にとり有利な誤り
が、それだけで本件換地処分の効力に影響を及ぼしうる瑕疵とはいえないことは明
らかである。
また、原告らは、本件事業の事業計画において換地交付基準率が定められていなか
つたことが違法であると主張するが、事業計画の段階で換地交付基準率を定めなけ
ればならないとする法的根拠はないから、右の主張も失当である。
次に、本件事業において多くの者が従前地のほぼ一〇〇パーセントに相当する面積
の換地を受けたことは、当事者間に争いがないところ、原告らは、右事実をとらえ
て、本件事業においては、現実には一〇〇パーセントの架空の換地交付基準率によ
る換地処分がされた旨主張する。しかし、右事実から換地交付基準率が一〇〇パー
セントであつたということは、失当というほかはなく、前認定の一〇六・八六四二
パーセントの換地交付基準率の下において、右のような現実の配分がされたことの
可否が問題となるにすぎない。また、原告らは、本件事業において換地交付基準率
を一〇〇パーセントとする清算が改良区により実施されたと主張するが、右事実が
認められないことは、(五)において後述するとおりであるから、そのことを前提
に換地交付基準率無視をいう原告らの主張は、やはり理由がない。
そこで、一〇六・八六四二パーセントの換地交付基準率の下において従前地のほぼ
一〇〇パーセントに相当する地積の換地を配分することの可否について検討する。
まず、法第五三条第一項第二号、規則第四三条の七によれば、従前地の地積に換地
交付基準率を乗じて得たものに対する換地の地積の増減の割合が二割未満であれ
ば、法第五三条第一項第二号の要件を充足することとされているから、前記のよう
な配分が右要件を充足していることは、明らかである。したがつて、右の配分が換
地交付基準率を無視したことになるとする原告らの主張は、右の点において理由が
ない。しかし、右のような配分が同項第一号の要件を充足するか否かも検討する
に、同号の要件は、地積のみならず用途、土性、水利等を総合的に勘案すべきもの
と定められているから、地積のみの比較により右要件の充足の有無を決することは
できないが、他の条件が同等であるとすれば、従前の地積のほぼ一〇〇パーセント
に相当する地積の換地は、地積の上で従前地に照応しているものということができ
る。なお、原告らは、いわゆる普通換地の場合には換地交付基準率に従前地の地積
を乗じて得た地積に照応していることを要する旨主張し、被告もこれに同調する
が、右主張は、法第五三条第一項第一号の要件と同項第二号の要件とを混同してい
るもので、首肯しえない。同項第一号は、当該換地とその従前地とを直接比較対照
して、総合評価としておおむね同等といえることを要件とするものであるから、そ
こでは換地交付基準率が直接考慮の対象となるものではないと解される。そうする
と、前記のような配分は、そのことのみで同号の要件を充足しないものということ
はできない。
ところで、換地を定めるに当たつては、右の意味における照応性のほかに、権利者
間の公平をも考慮しなければならないことは、条理上当然というべきである。そこ
で、前記のような配分が他の権利者との間に公平を欠くことになるか否かが、次に
問題となる。前記乙第一号証によれば、平井幸夫は、本件事業において、従前地の
地積が合計二二七平方メートルであるにもかかわらず、その換地として合計三一〇
八平方メートルの配分を受けたこと、そのほか、規則第四六条の七に従つて算定し
た換地の地積の従前地の地積に対する割合が二割以上増となつている者が八八名
(ただし、内一六名は共有)いることが認められる。これらの者と従前地の地積と
ほぼ同じ地積の換地の配分を受けた者とは、同等の扱いを受けていないことが明ら
かである。しかし、法第五三条第一項は、同項各号の要件を充足しない換地計画を
絶対的に許さないものとはせず、そのような換地計画も同項ただし書の要件を充足
する場合には、これを許すものとしている(いわゆる特別換地)。右ただし書の要
件は、従前地の権利者の同意を得ることであるが、その趣旨は、特定の権利者がそ
の意に反して同項各号の要件より不利な換地を受けることを相対的に有利な換地を
受ける他の大多数の権利者を含む全権利者の三分の二以上の多数の賛成により決定
されてしまうことを防止することにあり、ただその者が不利益を甘受する意思を表
明した場合には、そのような換地計画も許容されるとするものである。したがつ
て、右の場合には、結果として不均衡な換地配分がされても、公平の原則に反する
とはいえないことが明らかである。これに対し、特定の権利者が同項各号の要件よ
り有利な換地を受ける場合には、その者の個別の同意を要件とすることは、相対的
に不利な扱いを受ける他の大多数の権利者の保護に役立たないことが明らかである
(ただし、有利な換地を受ける者は、その反面で清算金を徴収される等の不利益も
受けることがあるから、当該権利者の個別の同意を要件とする意味はある。)。そ
れにもかかわらず、同項が特別換地を受ける者の同意のみで足りるものと規定して
いるのは、右の後者の場合には、有利な換地を受ける者の恣意によつて換地計画を
定めることはできず、相対的に不利な扱いを受ける他の大多数の権利者を含む全権
利者の三分の二以上の者が当該換地計画に賛成しなければこれを定めることができ
ないので、そのような厳格な手続を経てなおこれが決定された以上、当該換地計画
は合理的内容を有するものと考えられるからであると解される。したがつて、右の
場合には、換地会議において換地計画が有効に定められた以上、結果として生じる
不均衡はやむをえないものとするのが権利者の総意であるものということができ、
右の不均衡が公平の原則に照らして許容しえない特段の事情がある場合に限り、こ
れが違法となるものというべきである。これを本件についてみるに、証人A及び同
Sの各証言によれば、本件事業における換地計画は、昭和四六年一一月八日、換地
会議において出席した権利者の全員の賛成により決定されたものであることが認め
られる。そして、本件事業において前記のような結果的に不均衡のある換地計画が
定められるに至つた経緯について検討すると、前掲甲第三〇、第三四号証、証人G
及び同Wの各証言により真正に成立したと認められる甲第三二、第三八号証、証人
Wの証言により真正に成立したと認められる甲第四七号証の一ないし四、弁論の全
趣旨により真正に成立したと認められる同号証の六、成立に争いのない甲第四八号
証の一、原告P10本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第六六号
証、右各証言、証人Y、同A、同S及び同Tの各証言、原告Q及び同P10の各本
人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の(1)ないし(9)の事実が認め
られる。
(1) 本件事業の事業計画は昭和四二年に定められたが、その際には、従前地の
総地積は三一〇・七ヘクタールであるのに対し、換地処分後の農用地の総地積は二
八八・一ヘクタールとなるものと見込まれていた。
(2) 被告は、右の事業計画に基づいて、昭和四二年秋から、改良区に委託し
て、本件事業の工事を四年計画で開始した。
(3) 被告は、昭和四二年度分の工事の終了後の昭和四三年六月ころ、改良区の
作成した原案に従つて、当該工事工区(約七三ヘクタール)の一時利用地指定を行
つた。右工事工区においては、道路、水路の整備等のため、一時利用地として指定
しうる土地の総地積が、使用収益を停止する土地の総地積を若干下回つた。しか
し、昭和四三年度の工事工区において、河川、水路等の埋立てにより相当の増歩が
見込まれていたため、昭和四四、四五年度の工事工区での減歩を見込んでも、全工
区をならせば、換地交付基準率は一〇〇パーセント強となるものと予想された。そ
こで、前記一時利用地も、使用収益を停止する土地とほぼ同地積のものとする方針
で、配分、指定がされた。
(4) ところが、昭和四三年度の工事を実施したところ、河川、水路の埋立て等
による増歩は予想をかなり上回つた。それは、当該工区においては、河川、水路等
が複雑に入り組んでいたうえ、航空写真を使用しての測量技術が未熟で、公図等に
たよつていたため、被告及び改良区の立てた予測が不完全であつたこと、水路等が
長年にわたり地元農民の手で埋め立てられて公簿に記載のない現況農地となつてい
たことなどによるものと推測できる。被告は、当該工区の一時利用地指定を昭和四
四年六月ころ行つたが、既に前年ほぼ一〇〇パーセントの率で一時利用地指定を行
つていたし、昭和四四、四五年度において減歩を生じる見込みであつたので、やは
りほぼ一〇〇パーセントの率で行うこととし、余剰の土地はとりあえず調整地とし
て一時利用地指定の対象とせず、最終的に換地計画を樹立する際に処理することと
された。
(5) 昭和四三年度分の一時利用地指定の結果調整地が出たので、そのころか
ら、根本農協からはライスセンターの敷地として、茨城県南農業共済組合からは事
業所敷地として、新利根村からは同村のグランド用地として買収した農地の代替地
として、それぞれ調整地の一部を分譲してもらいたい旨の申入れが、改良区(換地
委員会)に対してされるようになつた。これに対し、改良区は、被告の用地管理課
主幹(当時)Aの指導の下に、従前地を有しない右の者らに直接調整地を分譲する
ことは法律上許されないので、最終的に換地処分をする際に、一部の従前地の権利
者に対して特別換地をしたうえで、当該権利者から右の者らが取得するという方法
で、右の者らが調整地の一部を取得するものと取り決め、改良区において右の者ら
との間にその旨の合意を成立させた。
(6) 昭和四四、四五年度分について工事が行われた結果、昭和四四年度におい
ては三ヘクタール弱、昭和四五年度においては約二ヘクタールの減歩となつた。そ
こで、一時利用地の指定は、昭和四三年度に生じた調瞥地を含めることによつて、
それぞれ約一〇〇パーセントの率で行われた。
(7) 工事及び一時利用地指定が完了し、確定測量も終わつた結果、一時利用地
指定がされなかつた農用地(以下「余剰地」という。)が約一三ヘクタール生じ
た。
(8) 被告の委託を受けた改良区は、本件事業の換地計画原案を作成するに当た
り、前記余剰地を全権利者に案分すると一権利者当たり平均百数十平方メートルの
零細農地となつて、農用地の集団化という土地改良事業の本来の目的に反する結果
となり、また、全地区にわたつて換地のための配分をし直すことは、昭和四三年以
降権利者により一時利用地の耕作が行われてきた実態を無視することになるので、
次の方針に従つて、一部の権利者にのみ換地配分することとした。
イ 四〇〇平方メートル以下(すなわち、長さ一〇〇メートルで整地された土地の
幅四メートル以下)の余剰地は、独立して耕作の用に供するのが困難であるから、
隣接する一時利用地の指定を受けた者に配分する。
ロ その余の余剰地は、右イによる配分を含めた計算により各部落単位に案分した
うえ、希望者に有償で(すなわち清算金を徴して)配分する。ただし、その際、前
記(5)のライスセンターの敷地等の予定地は、予め根本農協等に譲渡することを
承諾している者に配分する。
(9) 右の方針に従つて、改良区は、換地委員が各部落ごとに余剰地の取得を希
望する者を募り、これをとりまとめて、換地計画原案を作成した。被告は、右原案
をそのまま換地計画案として、換地会議に提出した。
右認定の(1)ないし(9)の事実によれば、事業計画の段階及び昭和四二、四三
年度工事の段階における見通しの甘さがあつたことは否定しがたいが、ほぼ一〇〇
パーセントの率に従つて一時利用地の指定を行つたことは、その見通しの下では相
当な措置であつたものということができるし、その結果生じた余剰地の配分方法
も、一応合理性を有するものと認められるから、結果的に換地の配分に不均衡が生
じたことには、相当の理由があつたものと認められる。そして、その不均衡は、清
算を実施することによつて調整が計られるものと予定されている(その内容につい
ては、後記(五)において認定するとおりである。)。したがつて、そのような内
容の換地計画が換地会議において決定された以上、右の不均衡が公平の原則に照ら
して許容しえないとまではいいがたく、これをもつて本件換地処分の無効事由とは
認められない。
もつとも、改良区が、前認定のとおり、被告の用地管理課主幹の指導の下に、根本
農協等との間で、ライスセンターの敷地等として余剰地の一部を右組合等に取得さ
せる旨の合意を成立させ、右合意に従つて換地計画原案を作成し、被告もこれを知
りながらそのまま換地計画案として容認したことは、形式的には一部権利者に対す
る換地処分という手段を用いたとしても、実質的には権利者以外の第三者に対する
余剰地の処分と認めるべきで、脱法行為として違法であるといわざるをえない。し
かしながら、この点は、後に2において判示するとおり、本件換地処分を無効なら
しめる違法とまでは認められない。
以上のとおり、換地交付基準率無視として原告らの主張するところは、全て理由が
ない。
(四) 清算の不実施について
本件換地処分に伴う換地交付基準率に基づいた清算金の支払が未だ実施されていな
いことは、当事者間に争いがない。しかし、清算金の現実の支払は、本件換地処分
後の手続であるから、これが未了であることは、本件換地処分自体の無効事由とは
なりえないことが明らかで、原告らの主張は、それ自体失当というべきである。
(五) 基準に基づかない恣意的清算について
前掲甲第三四号証、証人G、同S、同W及び同Tの各証言により改良区の機関であ
る本件事業に係る換地委員会又は同委員会で設置が決められた余剰地売渡代金等処
理委員会(以下、これらを単に「換地委員会」という。)の作成した文書であると
認められる甲第一号証、第二号証の一ないし五〇、第三七号証、弁論の全趣旨によ
り真正に成立したものと認められる甲第五三号証の一、二並びに右各証言によれ
ば、改良区の換地委員会は、昭和四六年四月一九日、被告の用地管理課主幹(当
時)のAの出席した会合において、本件事業における換地処分により従前地の地積
を超えて換地の配分を受けた者からは一平方メートル当たり二五〇円を徴収し、こ
れを下回つた者には一平方メートル当たり五〇〇円を支払うことを決定し、各権利
者に対し、「清算」と称して右決定に従つて金員の徴収、支払を行つたことが認め
られる。
ところが、前掲乙第一号証によれば、本件事業における換地計画においては、換地
の評価額を一平方メートル当たり四〇〇円、従前地の評価額を一平方メートル当た
り三〇〇円、換地交付基準率を一〇六・八六四二パーセントとして比例地積清算方
式により清算を行うものと定められたことが認められる。したがつて、換地委員会
は、換地計画で定められた清算とは全く異なる「清算」を実施したことになり、被
告は、少なくとも担当主幹がこれを知つていながら放置していたことになる。そし
て、右の換地委員会の行つた「清算」は、換地計画において定められた清算に比べ
て、権利者にとりはなはだ不利なものであることが明らかである。
しかしながら、成立に争いのない甲第三ないし第五号証、第七号証の四、第八号証
の七、第四一ないし第四四号証及び弁論の全趣旨によれば、原告らに対する本件換
地処分の通知書においては、換地計画において定められたとおりの清算が行われる
ものと明記されていることが認められ、法律上はそれが本件換地処分に伴う清算で
あり、前記換地委員会の行つた「清算」と称する行為が本件換地処分に伴う清算で
はないことが明らかである。したがつて、原告らは、被告に対し、換地処分通知書
記載の清算を実施すべきことを求める権利を有し、そのことは前記のとおり換地委
員会が「清算」と称する行為を行つたことにより影響を受けないものというべきで
ある。そうすると、換地委員会が右の行為をしたことは、本件換地処分を無効なも
のとする事由とは認められない。
もつとも、換地委員会の右の行為は、本件換地処分に伴う清算とは矛盾、抵触する
行為であり、これが被告の委託に基づきされたのであれば、本件換地処分の瑕疵と
なりうると考えられなくはないが、証人Wの証言により真正に成立したと認められ
る乙第三号証の一、二、第四号証の一ないし三、第五ないし第九号証によれば、清
算の実施は被告から改良区に対する委託事務に含まれていないものと認められるか
ら、この点も問題とはなりえない。ただ、被告の担当主幹が換地委員会において前
記「清算」と称する行為をすることが決められるのを知りつつ放置した点は、はな
はだ妥当性を欠くことというべきであるが、これをもつて本件換地処分を無効と認
めるには足りない。
(六) 山林の従前地組入れ
原告らは、農用地以外の土地を換地の対象にすることは許されないとの前提に基づ
いて、山林を従前地に組み入れて換地配分したことを違法であると主張するが、農
用地の改良等のため必要な範囲内で農用地以外の土地を土地改良事業の対象地区に
含ませることは許されると解されるから、原告らの主張はその前提に誤りがある。
のみならず、仮に原告らの指摘する<地名略>を従前の土地に組み入れたことが違
法であるとしても、その地積は二二八平方メートルにすぎず、二七〇ヘクタール以
上にも及ぶ本件事業の対象地全体からみれば、その〇・〇一パーセントにも満たな
いから、右の点が原告らに対する本件換地処分に及ぼす影響はほとんど無視しうる
程度であつて、本件換地処分を無効ならしめる事由とは認められない。
(七) 従前地の不存在について
請求の原因2(一)(7)の事実は、当該換地処分が違法であることを除き、当事
者間に争いがない。右事実によれば、被告は、本件事業の事業主体である茨城県自
身が買い受けていた土地をHの従前地に組み入れて換地処分をしたというのである
から、当該処分に瑕疵があることは、明らかである。しかしながら、右の従前地は
二筆合計しても一六・五二平方メートルにすぎないから、右(六)の事由と同様、
原告らに対する本件換地処分を無効ならしめるものということはできない。
(八) 換地処分以上の現実の換地配分
原告らの主張するところは、要するに、換地処分において表示された地積よりも広
い土地が換地としてX及びGに引き渡されたというものであるところ、右の事実が
認められれば、右引渡しに瑕疵があることは明らかである。しかしながら、権利者
に対する土地の引渡しは、換地処分に基づいて行われる事実行為であつて、換地処
分それ自体を構成するものではないから、右両名に対する換地処分に瑕疵があるも
のということはできず、ましてや、原告らに対する本件換地処分を無効に帰せしめ
る関係を認めうる主張、立証はない。
もつとも、換地処分において表示された地積よりも現実に引き渡された土地の地積
が広いとすると、その超える部分は、他の地権者に引き渡されるべき土地又は余剰
地となるべき土地であつたと解されるところ、右の前者の場合は、やはり換地処分
の瑕疵とはいいがたいが、後者の場合は余剰地として換地処分の対象地に加えるべ
きことになり、換地処分の瑕疵となりうるものということができる。しかしなが
ら、この点に関する原告らの主張事実がすべて認められ、かつ、右の後者の場合で
あると認められるとしても、これにより生ずべき余剰地は一〇〇五平方メートルに
すぎないから後記2において判示するのと同様の理由で、本件換地処分の無効事由
とは認められない。
(九) 従前地の不当な除外について
まず原告らは、原告Qと被告との間に同原告所有地の一部を埋め立てて取り込んだ
ことの代替地として三〇〇平方メートルを補償する旨の合意が成立したと主張する
が、これを認めるに足りる証拠はない。もつとも、原告Q本人尋問の結果及びこれ
により真正に成立したと認められる甲第六四号証には、ほぼ右主張に沿う部分があ
る(ただし、その内容は、いずれも必ずしも明確でない。)が、これは同原告と改
良区との間でされた合意であると認められる。そして、被告に代理して無償で代替
地を与える権限を改良区が有することを認めるに足りる証拠はない。したがつて、
本件事業の対象地区外の土地である原告Qの土地が、改良区により無断で埋め立て
られたのであるとすれば、そのこと自体が違法行為であることは明らかであるが、
そのことから、同原告が代替地であると主張する三〇〇平方メートルの換地を受け
たことに伴いこれを清算の基礎たる換地地積に含ませた被告の行為が違法となるも
のと認めることはできない。
次に、原告らは、原告P2も同様に四三六平方メートルの補償を受けた旨主張する
が、やはり、同原告と被告との間にそのような補償をする旨の合意が成立したこと
を認めるに足りる証拠はない。この点についても、原告P11本人尋問の結果及び
これにより真正に成立したと認められる甲第五九号証の一ないし三中には、はぼ右
主張に沿う部分が存するが、これも同原告と改良区との間でされた合意であること
が明らかであつて、被告による本件換地処分の無効事由とは認められない。
(一〇) 以上のとおり、原告らが照応性違反により無効であると主張する諸点
は、いずれも理由がない。
2 余剰地の違法処分について
原告らは、被告が余剰地を一部の地権者及び第三者に売却したと主張するが、前判
示のとおり、本件事業においては、結果として生じた余剰地を一定の方針の下に一
部の地権者に換地配分し、換地の評価額を一平方メートル当たり四〇〇円、従前地
の評価額を一平方メートル当たり三〇〇円、換地交付基準率を一〇六・八六四二パ
ーセントとして比例地積清算方式により清算をするという内容の換地処分がされた
ものであつて、一部の地権者に余剰地が売却されたことを認めるに足りる証拠はな
い。もつとも、前掲甲第三四、第六六号証、原告P10及び同P11の各本人尋問
の結果によれば、改良区の換地委員会においては、余剰地を売り渡すかの如き審
議、決定が行われ、また、地権者に対しても、そのような説明がされ、前認定の
「清算」と称して代金類似の金員の徴収が行われたことが認められる。右の事実に
よれば、換地委員会が一部地権者に対し余剰地を売り渡すかの如き行動をしたこと
は、事実というべきである。しかも、その内容は換地計画において定められた換地
処分の内容とは異なるもので、これを無視したものというのほかはない。しかしな
がら、改良区ないし換地委員会が余剰地の売渡しを行う権限を有しないことは、法
規に照らし、また前記乙第三号証の一、二、第四号証の一ないし三、第五ないし第
九号証によつて明らかであり、被告は、前記認定のとおり、余剰地について清算を
伴う換地処分を行つたのであるから、被告の行つた本件換地処分が改良区ないし換
地委員会の右行為により違法となるものとは認められない。
ところで、請求の原因2(二)の事実中、(1)ないし(3)の各土地が各権利者
の名義に換地処分されたことは当事者間に争いがないところ、前掲甲第三八号証、
証人Gの証言により真正に成立したと認められる甲第二〇号証の二、証人Sの証言
により真正に成立したと認められる甲第五〇号証、成立に争いのない甲第六〇号証
の一、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる同号証の二の(1)ないし
(6)及び右各証言並びに弁論の全趣旨によれば、右(1)の土地が根本農協のラ
イスセンター用地となり、右(2)の土地が茨城県南農業共済組合の建物敷地とな
り、右(3)の土地が新利根村がグランド用地として買収した土地の代替地と予定
している土地であることが認められる(ただし、これらの土地について換地処分を
受けた者から根本農協等に所有権移転登記がされたことについては、これを認める
に足りる証拠がない。)。右の(1)ないし(3)の各土地は、形式的には(1)
ないし(3)の各権利者に対し換地されたものとされているが、前記1(三)の認
定事実及び右認定の事実に鑑み、実質的には本件事業の対象地区内に従前地を有し
ない第三者たる根本農協等に分譲されたものと認めるのが相当であり、脱法行為と
して違法であるといわざるをえない。しかしながら、右の違法が直ちに原告らに対
する本件換地処分の瑕疵となるものとはいえず、これが本件換地処分に対し与える
影響を考慮しなければならない。よつて案ずるに、右の(1)ないし(3)は、本
来、原告らを含む地権者に配分されるべき土地であるところ、前記1(三)におい
て認定したとおり、本件事業においては、余剰地は権利者の全員に案分して配分す
る方法をとらず、希望者に配分する方法をとつたものであり、原告らがその配分を
希望したにもかかわらず余剰地が不足したために配分を受けられなかつたとの事情
があつたことを認めるに足りる証拠はないから、結局、前記(1)ないし(3)が
根本農協等に分譲されなかつたとしても、原告らがこれを換地として取得しえたも
のとは認められない。したがつて、前記の違法な分譲は、原告らに対する本件換地
処分の内容に影響を及ぼしたものということはできず、本件換地処分の瑕疵になる
ものとは認めがたい。また、仮に、前記(1)ないし(3)の土地が各地権者に平
等に案分されるべきものであるとしても、これらの土地は合計二万八四九〇平方メ
ートルと決して狭小ではないが、本件事業における換地の総地積は二九〇ヘクター
ル以上あるから、その一パーセントにも満たないことが明らかである。したがつ
て、前記の違法分譲が本件換地処分に与える影響は微小であつて、これを無効なら
しめる事由とは認められないというべきである。
3 換地処分の通知の欠缺について
本件換地処分の通知書が昭和四七年一〇月三〇日付で作成されており、その公告が
昭和四八年八月九日付でなされたこと、その後昭和五〇年一二月ころまでに右通知
書が原告らに交付されたことは、当事者間に争いがない。そして、原告Qの本人尋
問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第六号証並びに証人Tの証
言によれば、右通知書の交付がされたのは、昭和五〇年一二月下旬であつたことが
認められる。
ところで、被告は、本件換地処分の通知は、昭和四七年一〇月三〇日ころ、改良区
事務局に一括交付することにより行われたものであり、改良区事務局には、原告ら
を含む全権利者から、本件事業関係文書の代理受領権限が授与されたと主張する。
確かに証人Tの証言中には、各地区の部落集会において地区の役員又は委員を通じ
て改良区に一括受領の権限が与えられた旨の部分があるが、証人Y及び同Aの各証
言中には、慣例により又はたまたま機会があつたので、早く確実に着くということ
から改良区事務局が代理受領した旨の部分があることに鑑み、直ちに右代理受領権
の授与があつたものとは認めがたい。また、仮に右部落集会における授権の事実が
あつたとしても、同集会に出席しなかつた者まで代理受領権授与をしたとはいえ
ず、かつ、その趣旨も、設良区が権利者の代理人として受領する権限を与えたもの
と解すべきではなく、単に改良区を経由して文書を受領することを承諾したにすぎ
ないものと解するのが相当である。なお、前記のとおり、改良区事務局が代理受領
するのが慣例であつた旨の証言が存し、証人G、同Y、同A、同S、同W及び同T
の各証言によれば、本件事業においては、換地処分の通知に先立つ一時利用地の指
定通知、換地会議の開催通知等はすべて、被告から改良区事務局が一括受領し、各
部落の委員等を通じて各権利者に配布されており、そのことについて苦情が出たこ
とはなかつたことが認められる。しかし、右事実から直ちに改良区事務局が本件事
業の関係文書、とりわけ換地処分通知書の代理受領権限を有していたものと認める
ことはできない。したがつて、本件換地処分の通知は、通知書が改良区事務局に引
き渡されただけでは完了したものとはいえず、現実に原告らに到達したときにはじ
めて完了したものということになる(なお、通知が権利者に直接郵送されなければ
ならない法的根拠はないから、権利者に到達する限りにおいては、改良区事務局、
更には地区の委員等の第三者の手を経て通知書が引き渡される方法も、その妥当性
はともかく、許容される。)。
前記事実によれば、本件換地処分の通知書は、作成の日から実に三年以上の期間を
経た昭和五〇年一二月下旬にようやく原告らに到達し、そのときに本件換地処分の
通知が完了したものである。また、本件換地処分の公告から数えても二年四か月以
上も後になつて、本件換地処分の通知書が到達したことになる。そして、換地処分
は処分権者が権利者に対し換地計画において定められた関係事項を通知してするも
のと定められているから、換地処分の通知がされることは、換地処分の成立要件で
あるところ、通知がされるとは、特則のない限り、通知が被通知者に到達すること
を要するものと解すべきである。また、換地処分の公告は換地処分をした場合にす
るものと定められているから、公告に先立つて換地処分の通知が権利者に到達して
いなければならないと解すべきことも、当然である。
これに反する被告の主張は採用することができない。
そうすると、本件換地処分には、公告に先立つて行われるべき通知が二年四か月以
上も遅れて完了したという違法がある。しかしながら、通知と公告との順序が逆に
なつたとはいえ、それぞれが所定の手続により完了したのであるから、通知が完了
したことによつて、それまでの瑕疵は治癒したものと解するのが相当であり、右通
知の遅延によつて原告らが実質的に甚大な損害を蒙つたとの証拠もないので、これ
をもつて本件換地処分が無効であるものと認めることはできない。
4 以上のとおり、原告らが本件換地処分の重大かつ明白な瑕疵であると主張する
詣事由は、いずれも本件換地処分を無効ならしめるものと認めることができない。
三 よつて、原告らの本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担に
ついて行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文の規定を
適用して、主文のとおり判決する。
別表、別紙見取図(一)、(二)、別紙各筆換地等明細書(省略)

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