弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年(行ケ)第10550号特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日平成18年10月23日
判決
原告リーテルオートモティブ
(インターナショナル)アーゲー
訴訟代理人弁理士石井良和
被告特許庁長官
中嶋誠
指定代理人鈴木久雄
同柴沼雅樹
同岡田孝博
同内山進
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日
と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が異議2003−71594号事件について平成17年2月15日にした「特許第
3359645号の請求項1ないし47に係る特許を取り消す。」との決定を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が特許権者である後記特許に関し,第三者からの特許異議の申立
てに基づき特許庁が特許取消決定をしたので,原告がその取消しを求めた事案で
ある。
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁における手続の経緯
原告は,名称を「超軽量多機能遮音キット」とする発明につき,パリ条約
による優先日を平成8年(1996年)10月29日(以下「本件優先日」という。優
先権主張国オーストリア)として,平成9年(1997年)10月29日に国際特許
出願をし,この出願は平成12年12月5日に国内公表され(特表2000−516175
号),平成14年10月11日に特許第3359645号として設定登録を受けた(請求項
の数は47。甲13〔特許公報〕。以下「本件特許」という。)。
これに対し,Aほか3名から特許異議の申立てがなされたので,特許庁
は,これを異議2003−71594号事件として審理した上,平成17年2月15日,
「特許第3359645号の請求項1ないし47に係る特許を取り消す。」との決定
(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は平成17年3月7日に原告に
送達された。なお,出訴期間として90日が附加された。
(2)発明の内容
本件特許の特許請求の範囲1∼47は,別紙のとおりである(以下,請求項
の番号順に「本件発明1」のようにいうことがある。)。これらのうち請求
項1は独立請求項であり,その余の請求項は請求項1を直接又は間接に引用
する従属請求項である。そして,請求項1を再説すると,下記のとおりであ
る。

【請求項1】車両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう,吸音性かつ
遮音性かつ振動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キッ
ト(41)であって,少なくとも1つの面状車体パーツ(11)と,複数層からな
るノイズ低減アセンブリパッケージ(42)と,を具備してなり,
前記アセンブリパッケージは,少なくとも1つのポーラスなスプリング
層(13)を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パーツとの間には,空気
層(25)が設けられ,
遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるよう
な超軽量キット(41)を形成するために,前記多層アセンブリパッケー
ジ(42)は,微小ポーラスを有した硬質層(14)である開放ポアを有したファ
イバ層またはファイバ/フォーム複合体層を備え,
前記硬質層(14)は,Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsmという空気流に対して−3−3
の総抵抗を有し,かつ,mF=0.3kg/m∼mF=2.0kg/mという単位面積あた22
りの重量を有していることを特徴とするキット。
(3)決定の内容
ア本件決定の内容は,別添「異議の決定」写しのとおりである。
その理由の要点は,本件発明1は,下記第1,第2引用例に記載された
発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,本件発明1
に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,本
件発明2∼47に係る発明限定事項も,いずれも,格別なものとはいえない
か,又は下記第1∼第12引用例に記載ないし示唆されたところに基づいて
当業者が容易に想到することができたから,本件発明2∼47に係る特許
も,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである,等としたもの
である。

第1引用例:特開平7−152384号公報
第2引用例:特開平4−9898号公報
第3引用例:米国特許第4420526号明細書
第4引用例:特開昭63−297646号公報
第5引用例:特開平5−272041号公報
第6引用例:特開平5−51478号公報
第7引用例:特開平6−107235号公報
第8引用例:特開平8−30274号公報
第9引用例:特開平2−126297号公報
第10引用例:「自動車技術ハンドブック」(1992年6月12日社団法人自動
車技術会発行)第328∼331頁
第11引用例:特開昭62−48545号公報
第12引用例:米国特許第5459291号明細書
イなお本件決定は,本件発明1と第1引用例に記載された発明との一致点
及び相違点を,次のとおり認定した。
(一致点)
「車両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう,吸音性かつ遮音性か
つ振動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キットであっ
て,
少なくとも1つの面状車体パーツと,複数層からなるノイズ低減アセ
ンブリパッケージと,を具備してなり,
前記アセンブリパッケージは,少なくとも1つのポーラスなスプリン
グ層と,微小ポーラス及び開放ポアを有した硬質層とを備え,
前記硬質層は,mF=0.3Kg/m∼mF=0.75Kg/mという単位面積あたり22
の重量を有しているキット」に係る発明である点。
(相違点1)
本件発明1では,「前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パ
ーツとの間には,空気層(25)」が設けられるのに対し,第1引用例に
は,空気層を設けることについて言及がない点。
(相違点2)
本件発明1では,「遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせ
るのに好適であるような超軽量キット(41)を形成する」というのに対
し,第1引用例にはこのような言及がない点。
(相違点3)
硬質層に関して,本件発明1では「ファイバ層またはファイバ/フォー
ム複合体層」からなり,「Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsmという空気流−3−3
に対しての総抵抗」を有するのに対し,第1引用例では,「ポリウレタ
ンの発泡体であることが好ましい」とされ,また,「通気性が直径80mm
の試験片につき毎分5リットルから45リットル」という記載はあるもの
の,「空気流に対しての総抵抗」については直接的な言及がない点。
(4)決定の取消事由
しかしながら,本件決定は,以下の理由により,違法なものとして取消し
を免れない。
ア取消事由1(本件発明1の認定の誤り,引用発明の認定の誤り,これら
に起因する一致点の認定の誤り)
(ア)本件発明1の認定の誤り
a本件発明の本質についての評価の誤り
(a)本件発明1は,発明者が発見した現象に基づくものである。その
現象は,従来技術(マス‐スプリングシステムに基づく遮音構造)
において避けることのできなかった200Hz近傍における共鳴現象が消
滅したことである。本件発明1は,このような新規現象の発見に基
づくものである。
上記の現象は,本件明細書(特許公報。甲13)の図7に明確に示
「本発明によるキットされている。本件明細書には,この現象に関し,
においては,驚くべきことに,通常的に共鳴の兆候が起こる領域においての遮音
性が著しく改良されることがわかった。」(7頁左欄46∼48行)「本発明によ,
るキット41の遮音性の周波数依存性17を示している図7からはっきりと結論づけ
られることは,従来のスプリング−質量−システムにおいては200Hzの領域におい
て当然のことのように発生していたような共鳴の兆候が,何ら見られないことで
という的確な記載があるとともに,従来のある。」(9頁左欄41∼45行)
ものには見られない現象であることが記載されている。
本件発明1は,上記のとおり新規な現象の発見に基づくものであ
「本発明の目的は,……軽量車体パーツに対してり,本件明細書(甲13)の
適用したときに,音響効率を損失させないような,超軽量キットを提供すること
である。………。本発明によれば,上記目的は,概して,請求項1の特徴点を備
えたキットによって得られる。とりわけ,従来のスプリング−重量システムにお
いて使用されていた空気不透過性の重量層に代えて,比較的薄くかつ微小ポーラ
スを有した硬質のファイバ層またはファイバ/フォーム複合体層を使用する(判
決注:「使用するする」とあるのは誤記)ことにより,得ることができる。」
との記載のとおり,マス‐スプリングシステムの(7頁左欄21∼34行)
原理自体を否定することから出発した革新的な原理に基づく発明で
ある。すなわち,発明の名称中に「超軽量」と端的に示されている
ように,マス‐フリー(massfree)を目指した発明であって,遮音
に従来のような重量のマスを使用しなくとも同等もしくはそれ以上
の遮音効果が得られるという新発見の防音原理に基づくものであ
る。
(b)本件発明1の本質が上記(a)のようなものであることは,本件発
明1に与えられた評価からも明らかである。
(i)本件発明1は,その国内公表(平成12年12月5日)の後になさ
れた下記特許出願において,先行技術として引用されている。
①平成13年7月6日出願特願2001−206725号
(特開2003−19930号公報(甲14),以下「甲14公報」という。)
②平成14年8月23日出願特願2002−242958号
(特開2004−84077号公報(甲15),以下「甲15公報」という。)
③平成15年6月9日出願特願2003−163762号
(特開2005−1403号公報(甲16),以下「甲16公報」という。)
④平成15年9月16日出願特願2003−323641号
(特開2005−88706号公報(甲17),以下「甲17公報」という。)
⑤平成15年10月17日出願特願2003−358587号
(特開2005−121994号公報(甲18),以下「甲18公報」という。)
⑥平成15年3月26日出願特願2003−84707号
(特開2004−294619号公報(甲19),以下「甲19公報」という。)
⑦平成16年1月26日出願特願2004−17150号
(特開2005−208494号公報(甲20),以下「甲20公報」という。)
⑧2004年3月23日国際出願PCT/JP2004/003902
(国際公開WO2004-086354号公報(甲21),以下「甲21公報」という。)
これらの後願においては,ゴム等の比較的重量がある非通気性
の遮音材を使用したものを従来技術として挙げ,それに対比させ
る形で本件発明を引用し,重い非通気性の遮音材を使用すること
なく軽量の通気性材料のみから成る新しい原理に基づく吸音・遮
音構造であって重量軽減効果が大きく,また,断熱性に富むもの
であるため,近年実用に供されていると評価している。これらの
後願は,本件発明1に対するかかる評価を前提に,本件発明1を
改良し,又は,本件発明1とは異なる原理に基づく吸音・遮音構
造を提案するものである。
このことは,当業者が,本件発明1を,新規な軽量防音材とし
て評価していることを示している。
(ii)本件発明1は,「2000PACEAWARD」を受賞している。同賞
は,革新的な発明品によって自動車産業に貢献した自動車部品の
供給者に与えられるものであって,同賞の受賞の事実は,本件発
明1が,世界的にみて秀逸なものであるとの評価が確定している
ことを示すものである。
同賞の受賞理由を記載した報告書(甲22-1)に記載されている
ように,本件発明1は,防音性能が高く,自動車にとって重要な
課題である重量軽減効果が絶大であり,多くの世界的な自動車メ
ーカーに採用されていることから,本件発明1の革新性が認めら
れて受賞に至ったものである。
(iii)日本国内においても,本件発明1の防音材は,トヨタ自動車
(株)の「ウィンダム」や日産自動車(株)の「エルグランド」のよ
うな高級車を始めとして,多様な車種に採用されている(甲26,
34,35)。そして,トヨタ自動車(株)の社内報(甲26)や自動車
雑誌(平成13年10月15日発行「モーターファン別冊第289号」,甲
27)においても,「新規軽量防音材」として紹介されているとお
り,全く新しいコンセプトに基づく防音構造であるとの評価を受
けているものである。
b本件発明の認定の誤り
発明の構成は,その発明の作用と対で認定すべきものである。
分解可能な構成にまで特許請求の範囲を分節していけば,公知の構
成要素に到達し,各構成に対応する作用を無視すれば,ほとんどの発
明は,組合せが容易であるとして進歩性が否定されてしまう。
上記aのとおり,本件発明1は,従来避けることのできなかった
200Hz付近の音響部材の共鳴が,特定の層構造とすることによって消滅
するという現象の発見に基づくものである。出願時点においては,こ
の現象は旧来の音響理論では説明できなかったことでもあり,特定の
層構造は,特定の作用を発揮する一体のものとして把握されるべきで
あり,それを更に分節することは誤りである。
本件決定は,本件発明1に,旧来の音響部材の延長線上のものであ
るとの評価しか与えていないが,発明の構成に対応する作用を無視し
たものであって,誤りである。
(イ)引用発明の認定の誤り
「第1引用例には,……『遮音性かつ振動減衰性かつ断熱性』に関本件決定は,
する言及はないが,『セミリジッドの発泡体の板1』や『柔軟な発泡性の材料』を含む
吸音パネルに,遮音性や振動減衰性,断熱性が全くないとは考えられない。したがっ
て,上記吸音パネルと,『面状車体パーツ』に相当する『鋼板5』」とによって,<車
両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう,吸音性かつ遮音性かつ振動減衰性かつ
断熱性のカバーを形成するための多機能キット>が形成されているといえる」(17頁最
と認定したが,誤りである。終段落∼18頁第1段落)
「【産業上の利用第1引用例に記載された発明は,第1引用例(甲1)の
分野】本発明は,特に自動車の屋根を作るためのパネル製造,或いは内張りの製造の分
野に関連し,低,中並びに高周波数,特に400Hzから5000Hzの周波数における音エネル
との記載のとおギーを吸収する吸音パネルに関するものである」(段落【0001】)
り,吸音パネル以外の何物でもないにもかかわらず,本件決定は,本件
発明1の構成に合わせるために,当該吸音パネルに遮音性,振動減衰
性,断熱性(以下,併せて「遮音性等」という。)を恣意的に付与して
発明を創作したものであり,論理の飛躍がある。第1引用例の吸音パネ
ルが実効的な遮音性等を有していると認定したこと自体が,技術常識を
超越した論理に基づくものであって,誤りである。
「【作用】従って本発明第1引用例(甲1)には,発明の作用に関して,
では,細胞が開き且つ連絡し合っているセミリジッドのポリウレタンの発泡体からなる
板によって形成されるマスが,その固有の吸収特性によって,中及び高周波数の1000Hz
から5000Hzの範囲内にある音波を50%から70%吸収する。しかしながら,低及び中周波
数の400Hzから1000Hzの音波は,マスを形成するポリウレタンの発泡体の板によって吸
収されず,その結果,該板に撓みを生じさせる傾向を招くことになる。この撓みは,同
時にスプリングを形成するクロスによって阻まれ,それによって,マスを形成する板の
振動と,音エネルギーの力学的エネルギーへの変化が生じ,これによって,低及び中周
と記載波数の400Hzから1000Hzの音波が30%から60%吸収される。」(段落【0012】)
され,従来の音響理論に基づいて説明されている。第1引用例では,本
件発明1で問題としている200Hz付近での共鳴の消滅について何らの言及
もなく,遮音について考慮されていないことは明らかである。
(ウ)一致点の認定の誤り
本件決定は,上記(ア)(イ)のとおり本件発明1及び引用発明の認定を誤
った結果,一致点の認定も誤っている。すなわち,本件発明1は,200Hz
付近での共鳴に由来する遮音性の低下がない超軽量多機能遮音キットを
提供するものであるのに対し,第1引用例から把握できる発明は,吸音
パネル以外の何物でもなく実効的な遮音性はないから,両者が,「車両
においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう,吸音性かつ遮音性かつ振
動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キット」である点
で一致するとの認定は誤りである。
イ取消事由2(硬質層の数値限定に関する一致点の認定の誤り)
本件決定は,「硬質層は,mF=0.3Kg/m∼mF=0.75Kg/mという単位面22
積あたりの重量を有している」点を一致点の認定に含めている。しかし,
かかる認定は,硬質層の技術的意義を無視したものである。硬質層におい
て,空気流に対する総抵抗と単位面積当たりの重量とは一体不可分の相補
的な構成であるから,両者を分離して認定することは,音響理論を踏み外
したものであって誤りである。
ウ取消事由3(相違点1の判断の誤り)
本件決定は,相違点1について,第1引用例自体に空気層を設けること
の示唆があり,また空気層を設けることが周知技術であることを理由に,
相違点1は当業者が容易に想到できる設計事項であると判断したが,誤り
である。
まず,第1引用例(甲1)の図1においてクロス2の状態が相当空隙の
多いものとして示されていることが,クロス2と鋼板5の間に空気層が形
成されていることを示唆しているというための理由付けがなされていな
い。また,本件発明1の空気層の技術的意義と,第1引用例のクロス2が
相当空隙の多いものであることの技術的意義を対比することもなされてい
ない。
さらに,本件発明1の多機能キットとは基本的に無関係な第4,第8引
用例を引用して,空気層を設けることは周知であると認定し,これを根拠
に,空気層を設けることは設計事項であると結論づけているが,空気層の
技術的意義の検討を欠いた推論であって,不当である。
エ取消事由4(相違点2の判断の誤り)
本件決定は,遮音性,吸音性,振動減衰性のバランスを最適化すること
や,部材をできるだけ軽量化することは,当業者であれば通常考慮するべ
「第1引用例記載の発明においても,<遮音性き技術事項といえることを理由に,
と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるような超軽量キット>を形
と判断したが,誤りであ成することは,格別困難とはいえない」(19頁第4段落)
る。
上記ア(取消事由1)で述べたように,第1引用例に記載されているの
は吸音パネルであり,実用的な遮音性はないといってよく,遮音性,吸音
性,振動減衰性の複数の機能を一挙に解決したのは本件発明1が最初であ
る。そして,このような本件発明1の効果の大きさは予想外に大きなもの
であって重量軽減効果は車両当たり30%にも達し,効果の絶大さは常識を
超えたものであることから,「超軽量」「多機能」に格別の意味が込めら
れたものであり,重量軽減が一般的であるとして片付けられる事項ではな
い。
オ取消事由5(相違点3の判断の誤り)
本件決定は,硬質層の空気流に対しての総抵抗を相違点3として検討し
ているが,上記イ(取消事由2)のとおり,硬質層の構成において重量と
総抵抗が一体不可分であることを無視したものであって,技術的に意味が
ある検討とはいえない。また,原理の異なる発明の数値を対比すること自
体が無意味であることは論ずるまでもない。
カ取消事由6(作用効果等についての判断の誤り)
本件決定は,本件発明1の作用効果についても,各引用例の記載事項か
ら予測し難いものとはいえないと判断したが,本件発明1を正確に理解せ
ず,また,第1引用例記載の発明と本件発明との根本的な差異の認識を欠
いた判断であって,誤りである。第1引用例及び他の引用例にも,本件発
明1のように吸音性,遮音性,振動減衰性,断熱性という多機能を発揮す
るキットは示されておらず,本件発明1が有する作用効果についての言及
もない。
キ取消事由7(本件発明2∼44についての判断の誤り)
本件発明2∼44は,本件発明1に限定事項を付加したものであり,本件
発明1に進歩性がある以上,本件発明2∼44に進歩性がないとした本件決
定の判断も誤りであることは明白である。
ク取消事由8(本件発明41∼47についての認定の誤り)
「本件請求項41∼47では,請求項1∼46のいずれかに記載のキットに関本件決定は,
して,キットを構成する各層についての数値や材料に係る限定事項を規定するものである
として判断を進めているが,本件発明45∼47は,が,……」(23頁下第2段落)
本件発明1∼40のキットのためのアセンブリパッケージであって,キット
ではないのであるから,発明の認定を誤っている。また,本件発明41が本
件発明42∼45を引用したものであるとし,本件発明46が本件発明46を引用
したものであるとしたことも,明らかに誤りである。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)(2)(3)の各事実は認める。同(4)は争う。
3被告の反論
(1)取消事由1に対し
ア本件発明1の認定につき
(ア)本件明細書(甲13。特許公報)の記載によれば,従来の技術として言
及された「従来のフロア体1」の「面状車体パーツ3」,「空気層5」
及び「ファイバ層6」と,本件発明1の「面状車体パーツ11」,「空気
層25」及び「ポーラスなスプリング層13」とは,それぞれ対応するもの
と認められるから,本件発明1は,「従来のフロア体1」のスプリング
−質量システムの「空気不透過性重量層7」に替えて,「微小ポーラス
を有した硬質層(14)」(開放ポアを有したファイバ層またはファイバ/
フォーム複合体層)とし,当該硬質層(14)の空気流に対しての総抵抗を
所定の数値範囲(Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsm)とし,かつ,単位面−3−3
積当たりの重量を所定の数値範囲(mF=0.3kg/m∼mF=2.0kg/m)とし22
たことを,構成上の特徴とするものといえる。そして,本件発明1は,
上記「微小ポーラスを有した硬質層(14)」を備えたことによって,従来
のスプリング−質量−システムと比較して,重量が低減されるととも
に,吸音性や遮音性が向上するものと認められる。
しかし,本件明細書には,「空気層25」,「ポーラスなスプリング層
13」及び「微小ポーラスを有した硬質層(14)」の各層が,それぞれ単独
で,あるいは他の層と協働して,どのような機能を果たすのかについて
記載されていないので,本件発明1が,なぜ,従来のスプリング−質量
−システムと比較して,吸音性や遮音性が向上するのかは明らかでな
い。
(イ)第1引用例(甲1)の記載によれば,第1引用例記載の発明の吸音パ
ネルは,従来の技術では,「細胞が開き且つ連絡し合っているポリウレ
タンの発泡体の板」を単独で吸音パネルとしていたのに対して(段落
【0002】【0003】参照),「(細胞が開き且つ連絡し合っている)セミ
リジッドの発泡体の板1」と「(接合された繊維或いは柔軟な)発泡性
の材料からなるクロス2」とから構成され,全体がマススプリングの原
理に従って機能し得るように構成されたものであって(段落【0015】参
照),マススプリングを構成する系において,「板状部材」(マス)を
「セミリジッドの発泡体の板1」とし,同じく「空気層」(スプリン
グ)を「発泡性の材料からなるクロス2」としたものに相当する。
一方,本件発明1は,上記(ア)で指摘したように,従来の技術のスプリ
ング−質量システムの「空気不透過性重量層7」に替えて「微小ポーラ
スを有した硬質層(14)」としたことを構成上の特徴とするものであり,
また,従来の技術のスプリング−質量システムと同様に「ポーラスなス
プリング層(13)」というスプリング層を備えたものである。
そうすると,本件発明1の「微小ポーラスを有した硬質層(14)」も第
1引用例記載の発明の「セミリジッドの発泡体の板1」も「多孔質材
料」といえるものであるから,従来の技術のスプリング−質量システム
の「空気不透過性重量層7」あるいは「板状部材」(マス)に替えて
「多孔質材料」にしたという本質的な構成部分において,本件発明1と
第1引用例記載の発明とは一致しているということができる。
また,第1引用例には,「セミリジッドの発泡体の板1」及び「発泡
性の材料からなるクロス2」の機能に関する記載(段落【0022】∼
【0024】)によれば,1000Hzから5000Hzの中及び高周波数の音波に対し
ては,第1引用例の「セミリジッドの発泡体の板1」は多孔質材料とし
て機能し,空気と材料間の粘性摩擦(通気抵抗)により音エネルギーを
熱エネルギーに変換して音波を吸収するものと認められる。また,400Hz
から1000Hzの低及び中周波数の音波に対しては,第1引用例の「セミリ
ジッドの発泡体の板1」はマス(板状部材)としても機能し,スプリン
グとして機能する「発泡性の材料からなるクロス2」と協働して,マス
スプリングの原理に従って,音エネルギーを力学的エネルギーに変えて
音波を吸収するものと認められる。
そして,上記(ア)で指摘したように,本件明細書(甲13)には,「ポー
ラスなスプリング層(13)」及び「微小ポーラスを有した硬質層(14)」の
各層の機能について記載されていないが,本件発明1は,スプリングと
して機能し得る「ポーラスなスプリング層13」と多孔質材料である「微
小ポーラスを有した硬質層(14)」とを備えたものであることを考慮する
と,本件発明1の各層は,上記第1引用例に記載の「発泡性の材料から
なるクロス2」及び「セミリジッドの発泡体の板1」と同等の機能を果
たすものと考えるのが妥当である。
(ウ)したがって,本件発明1は,第1引用例記載の発明と比較すると,原
告主張のように,従来の防音理論では考えつかないことであり革新性が
ある,とは到底いえないものである。
(2)取消事由2に対し
原告は,硬質層の単位面積当たりの重量が一致しているとした本件決定の
認定は,空気流に対する総抵抗と単位面積当たりの重量とを分離して認定し
ており,誤りである旨主張する。
しかし,第2引用例(甲2)には,実施例1ないし4として,硬質層に相
当する遮音材の材質と厚さとを変えることによって,空気流れ抵抗と面重量
とが適宜の数値になることが記載されており,硬質層の空気流に対する総抵
抗と単位面積当たりの重量とは,直接関連するものではないと考えられるか
ら,硬質層の単位面積当たりの重量が一致しているとした認定に誤りはな
い。
(3)取消事由3に対し
ア原告は,本件決定が,相違点1の判断において,空気層を設けることが
第1引用例に示唆されているとした点は誤りである旨主張する。
「尚,屋根しかしながら,第1引用例(甲1)の段落【0021】後段には,
の内張りと屋根を形成する鋼板との固定は,接着,クリップ留め或いはその他のどのよう
と記載されている。そして,クロスな機械的手段によっても行うことができる。」
2を含む吸音パネルを,第1図に示すように,屋根を形成する鋼板5に適
宜の機械的手段によって固定した場合,その固定状態の態様によっては,
屋根を形成する鋼板との間に隙間,すなわち,空気層が形成されることは
明らかであるから,空気層を設けることが示唆されているとした点に誤り
はない。
イまた,原告は,空気層を設けたことの技術的意義を検討することなく,
空気層を設けるようにすることが設計事項であるとした本件決定の判断は
誤りであると主張する。
しかし,本件明細書(甲13)には空気層を設けたことの技術的意義に関
しての具体的な記載はないし,また,本件発明1では空気層の厚さが特定
されているものではないから,一般的に,吸音材や遮音材等に隣接して空
気層を設けることが周知技術であることを指摘すれば十分であると考え
る。そして,本件明細書の従来の技術に関する記載及び実願昭62−116645
号(実開昭64−22556号)のマイクロフィルム(乙4)の記載にみられるよ
うに,空気層を形成することによって,空気層の部分で振動,騒音の減衰
効果を得ることができ,従来の材料構成のみの場合よりも一層高い防音効
果が得られることは,周知技術である。
したがって,本件決定において,クロス2と鋼板5との間に空気層を設
けるようにすることは設計事項であると判断したことに,誤りはない。
(4)取消事由4に対し
原告は,本件決定が,相違点2の判断において,引用例1の発明において
「遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるよう
な超軽量キット」を形成することは格別困難とはいえない,と判断したこと
は誤りであると主張する。
しかし,第1引用例に記載された発明は,音エネルギーの吸収に着目した
ものであるので「吸音パネル」とされているが,「セミリジッドの発泡体の
板1」や「発泡性の材料からなるクロス2」を含むものであるから,それら
の部材の機能や材質からみて,遮音性や振動減衰性,更には断熱性があるこ
とは技術常識である。また,本件発明1でいう重量軽減効果は,従来の空気
不透過性重量層7に替えて,微小ポーラスを有した硬質層(14)とすることに
よって得られる効果といえるから,当該微小ポーラスを有した硬質層(14)と
同程度の単位面積当たりの重量を有する「セミリジッドの発泡体の板1」を
備える第1引用例記載の「吸音パネル」も,本件発明1でいう重量軽減効果
と同程度の効果を奏するものと認められる。
したがって,本件決定の上記判断に誤りはない。
(5)取消事由5に対し
原告は,相違点3に関し,原理の異なる発明の数値を対比すること自体が
無意味であると主張する。
しかし,本件決定においては,第2引用例(甲2)記載の「遮音シート」
は,第1引用例でいう「セミリジッドの発泡体の板1」(硬質層)に対応す
るものとみることができるとした上で,第2引用例の遮音シートの材料及び
空気流れ抵抗について検討して,第1引用例記載の吸音パネルにおいても,
硬質層として,本件発明1と同じ「ファイバ層またはファイバ/フォーム複
合体層」からなり,本件発明1と同じ数値範囲の空気流に対しての総抵抗を
有するものを採用することは格別困難とはいえないと判断しているのである
から,当該判断に誤りはない。
また,特公昭63−45982号公報(乙2。以下「乙2公報」という。)の記載
によれば,自動車用吸遮音板の空気流れ抵抗を100∼1000dyne・sec/cmとする3
ことは周知技術といえるものであって,上記周知技術の数値の単位を換算す
ると1000∼10000N・sec/mとなり,本件発明1の微小ポーラスを有した硬質層3
(14)の空気流に対しての総抵抗「Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsm」とは,−3−3
1000Nsm∼2500Nsmの範囲で一致するものである。−3−3
取消事由6に対し
原告は,本件決定における作用効果等についての判断は誤りである旨主張
しているが,上述したところから,当該判断に誤りがないことは明らかであ
る。
取消事由7に対し
本件決定において詳述したとおり,本件発明2∼44が,各引用例に記載さ
れた発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとした結
論に誤りはない。
取消事由8に対し
ア原告は,請求項45∼47の発明は,請求項1∼40のキットのためのアセン
ブリパッケージであって,キットではないのであるから,本件決定は発明
の認定を誤っていると主張している。
しかし,キット(41)は,面状車体パーツ(11)とアセンブリパッケージ
(42)とから構成されるものであるから,請求項45∼47の発明が,キット
を構成する各層についての数値や材料に係る限定事項を規定するものであ
ると認定したことに誤りはない。
イまた,原告は,本件決定が,請求項41が請求項42∼45のいずれかを引用
したものとして認定し,また,請求項46が請求項46を引用したものと認定
したことも,誤りであると主張している。
しかし,請求項41∼47の発明の認定は,当該各請求項が,その請求項よ
り前のいずれかの請求項を引用していることをまとめて記載したものであ
るから,原告が主張するような認定でないことは明らかである。
第4当裁判所の判断
1請求の原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容)及び(3)
(決定の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,以下,原告の主張する本件決定の取消事由について順次判断する。
2取消事由1について
(1)取消事由1における原告の主張の要旨は,本件発明1は自動車の遮音技術
において革新的な発明であるのに対し,第1引用例の記載から認定できる発
明(以下「第1引用例記載発明」という。)は吸音技術に関する発明である
上に従来技術の延長線上にあるものでしかない,という相違があることを理
由に,本件発明1と第1引用例記載発明が「吸音性かつ遮音性………のカバ
ーを形成するための多機能キット」である点で一致するとした本件決定の認
定の誤りをいうものである。
そこで,この点について以下検討する。
(2)ア本件明細書(甲13)には,以下の記載がある。
「図4に示す本発明によるキット41の原理的な構成は,本質的に,面状車体パーツ11と,
パーツ11に対して設けられたアセンブリパッケージ42と,を備えている。このアセンブ
リパッケージ42は,複数の層を備えており,必要に応じて,ポーラス(多孔性)スプリ
ング層13と,微小ポーラス硬質層14と,を備えている。ポーラススプリング層13は,好
ましくは,開放ポアを有したフォーム層(発泡体層)から形成されている。微小ポーラ
ス硬質層14は,好ましくは,開放ポアを有したファイバ層またはファイバ/フォーム複
合体層から形成されている。……。補助のために,さらなる層21,23を設けることができ
る。……。」(8頁右6∼23行)
本件明細書の上記記載及び図4の内容によれば,本件発明1のキット
は,面状車体パーツ(11),空気層(25),ポーラススプリング層(13),微小
ポーラス硬質層(14),補助のためのさらなる層(23)から成る多層構造の
ものとされることが示されているということができる。
本件発明1のキット41の「原理的な構成」を,第1引用例記載発明の構
成と比較すると,面状車体パーツ(11)と屋根(5),ポーラススプリング層
(13)とクロス(2),微小ポーラス硬質層(14)と発泡性の板(1),さらなる層
(23)と内装材(3)とがそれぞれ対応する。そして,本件決定が相違点1∼3
として認定した点を除けば,本件発明1と第1引用例記載発明との構成
は,完全に一致しているということができる。相違点に係る構成の容易想
到性に関する本件決定の判断の当否については,取消事由3∼5に関する
後記4∼6において別途検討するので,ここで検討すべきは,一致点の認
定の当否である。
イ原告は,本件発明1と第1引用例記載発明とは,発明の目的や原理が全
く異なるから,上記アのような外見上の構成の一致があるとしても,進歩
性の判断のために発明を対比するに当たって,一致点として認定するのは
誤りであると主張する。この主張は,本件発明1は重量を軽減しつつ遮音
性を向上させることに発明の本質があり,一方,第1引用例記載発明は吸
音性を向上させることに発明の本質がある,ということを前提にするもの
である。
そこで,まず本件発明1についてみると,本件発明1の「吸音性かつ遮
音性かつ振動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キット」
に係る発明ではあるが,ここに挙げられた4つの性質のうち,いずれに重
点を置くかは,カバーが用いられる箇所(内側端部,フロア,屋根内側,
ドア等)によっておのずから異なってくるものと解される。一方,第1引
用例に,遮音性について言及する記載が存在しないことは,原告主張のと
おりである。しかし,第1引用例記載発明は,屋根(5)と内装材(3)をそれ
ぞれ最も外側及び内側の層として備えているから,それ自体で屋根の内張
りとして完結したキットである。そして,第1引用例記載発明も,屋根の
内張りである以上,吸音性,遮音性,振動減衰性,断熱性のすべてを,程
度の差こそあれ有するべきであるから,第1引用例の特許出願人は,第1
引用例記載発明の構成によって必要最小限度の遮音性は確保されているこ
とを前提に,吸音性の向上という第1引用例記載発明の特段の効果に着目
して特許出願を行い,発明の名称も「吸音パネル」としたものと解され
る。
そうすると,本件発明1と第1引用例記載発明は,構成を等しくする上
に,作用効果の面においても,上記4つの性質をいずれも有し,これらの
バランスを取るという点で一致しているということができる。そうする
と,原告の上記主張は,「発明の本質」の相違を前提にする点において理
由がない。
ウしたがって,本件決定が,本件発明1と第1引用例記載発明との一致点
の認定に「吸音性かつ遮音性………のカバーを形成するための多機能キッ
ト」である点を含めたことは,誤りであるとはいえない。
エ原告の取消事由1に係る主張は,以下のとおり,いずれも採用すること
ができない。
(ア)本件発明1の認定につき
a原告は,本件発明1は,本件発明1の構成によるキットが,軽量で
ありながら200Hz付近での共鳴を解消して遮音性を向上させるという現
象の発見に基づくものであり,この点において革新的なものであると
主張する。そして,原告が,その主張の前提とする本件明細書(甲
(8頁左7行∼9頁左45行の一連の記載。13)の記載は,以下のとおりである
。①∼⑧の段落番号は本判決で付した。)
「①図1に示す従来のフロア体1は,遮音パッケージ2を備えている。この遮音パ
ッケージ2は,複数の層から構成されていて,フラットな面上に,すなわち,面
状車体パーツ3上に,固定されている。従来の車両においては,この車体パーツ
は,………約0.8mm厚さのスチールシートから製造される。この車体パーツ3上
には,………の重量を有した一般に約2.2mm厚さのビチューメン層からなる減衰
層4が取り付けられている。この減衰層4によって,本質的に,高周波の振動が
減衰される。この減衰層上には,一般に,スプリング−質量システムが穏やかに
結合される。その結果,減衰層4とスプリング−質量システムとの間には,約
0.2mm厚さの空気層5が発生する。スプリング−質量システムは,………の重量
を有した約15mm厚さのファイバ層6を備えている。このファイバ層6に代えて,
同様の重い弾性フォーム層を使用することができる。このファイバ層6に対して
は,………の重量を有した約2mm厚さの空気不透過性重量層7が連結されてい
る。この空気不透過性重量層7上には,例えば,………の重量を有した約5.0mm
厚さのカーペット8が設けられている。………よって,この典型的なフロア体
は,合わせて,………の重量を有している。………。
②図2に示された曲線9は,周波数の係数としての,このフロア体1の吸収係数
の振舞いを表している。………。
③このフロア体1に関しての,図3に示すような遮音性についての周波数応答10
は,高周波音を遮音すること,および,スプリング−質量システムにおいて特徴
的な200Hz領域における共鳴の兆候(判決注:「遮音の兆候」とあるのは誤記と
認める。)が見られること,を明らかに示している。
④このような従来型の遮音システムに対して,車体パーツ3として,約0.8mm厚
さのスチールシートに代えて,約1.1mmのアルミニウムシートを使用した場合に
は,………。
⑤図4に示す本発明によるキット41の原理的な構成は,本質的に,面状車体パー
ツ11と,パーツ11に対して設けられたアセンブリパッケージ42と,を備えてい
る。このアセンブリパッケージ42は,複数の層を備えており,必要に応じて,ポ
ーラス(多孔性)スプリング層13と,微小ポーラス硬質層14と,を備えている。
ポーラススプリング層13は,好ましくは,開放ポアを有したフォーム層(発泡体
層)から形成されている。微小ポーラス硬質層14は,好ましくは,開放ポアを有
したファイバ層またはファイバ/フォーム複合体層から形成されている。この場
合,ファイバ層またはファイバ/フォーム複合体層は,………という空気流に対
しての総抵抗を有し,および,………という単位面積あたりの質量を有してい
る。補助のために,さらなる層21,23を設けることができる。多機能キット41の
音響効率に対して不可欠的なものは,アセンブリパッケージ42と車体パーツ11と
の間の,空気層25である。この音響効率をさらに改良するために,微小ポーラス
硬質層14は,………という曲げ硬さを有している。
⑥図5に示した本発明による超軽量キットは,フロア遮音あるいは内側端部壁カ
バーの構成として,特に好適である。このキットは,約1.1mm厚さのアルミニウ
ム製車体パーツ11と,このパーツ上に適用された例えばSDL減衰層のような軽量
減衰層12と,を備えている。ただしこの場合においても,空気層25が形成されて
いる。このようなSDL減衰層12は,公知のものであって,………におけるような
表面パターンを有しており,………の材料組成を有している。このような減衰層
は,シート上に前記パターンでもって適用され,ソフトなフォームシステムに対
して堅固に連結される。この減衰層12の効果的な密度は,………である。この実
施形態における例においては,………の重さを有した,約2.0mm厚さの減衰層が
使用されている。この減衰層上には,………の重さを有した,約25mm厚さの成型
フォーム層13が,適用されている。この成型フォーム層13は,特に熱成型された
フォーム層であって,開放ポアを有しており,………の重さを有した,約1.5mm
∼約5.0mm厚さの,微小ポーラスを有した硬質ファイバ層14に対して連結されて
いる。減衰層として適切なものとしては,また,………の減衰層がある。これ
は,例えば,………を備えている。この微小ポーラスファイバ層14は,………と
いう空気流に対しての総抵抗を有し,および,………の質量を有し,さらに,…
……という曲げ硬さを有しているような,タイプのものである。このような微小
ポーラスの程度および硬さは,アセンブリパッケージ全体の吸収能力にとって本
質的なものであり,様々な材料の適切な選択によって得ることができる。フロア
遮音としての適用に際しては,カーペット層または装飾層15が,微小ポーラスで
ありかつ硬いファイバ層に対して,自動車の乗客空間側に連結される。この層15
は,この実施形態における例においては,約5mmの厚さまたは………の質量を有
している。よって,本発明によるアセンブリパッケージ42は,………の重さしか
なく,フロア体全体の重さを,………から………へと低減させることができる。
このキットを内側端部壁として使用した場合には,装飾層またはカーペット層を
省略することができる。
⑦図6に示す吸収係数の周波数特性16は,約1.1mm厚さのアルミニウムシートに
対して適用されたときの本発明によるキット41に関しての,特別の周波数依存性
を明瞭に示している。すなわち,中間的な周波数領域における完璧な吸音性を表
しており,また,高周波領域におけるα=0.7∼α=0.8というあまり大きすぎず
かつ一定の吸音特性を明瞭に表している。これは,自動車内において会話を理解
する能力を維持するためには,必要なことである。
⑧本発明によるキット41の遮音性の周波数依存性17を示している図7からはっき
りと結論づけられることは,従来のスプリング−質量−システムにおいては
200Hzの領域において当然のことのように発生していたような共鳴の兆候が,何
ら見られないことである。」
上記各記載のうち,共鳴の解消について述べるのは段落⑧である
が,上記①∼⑧の記載の順序に照らすと,上記段落⑦及び⑧は,段落
⑥で具体的に説明された構成のフロア体について,それぞれ吸音性及
び遮音性を評価したものと解するのが自然である。一方,段落⑤にお
いては,「」として,本件発図4に示す本発明によるキット41の原理的な構成
明1の構成要件に該当するものが説明されている。そして,段落⑤の
「フロア記載と段落⑥の記載を比較すると,段落⑥においては,用途が
体」「約1.1mm厚さのアルミニウに特定されていること,面状車体パーツが
のものに特定されていること,が存在すること,ム製」「軽量減衰層12」
が存在すること,等の点において,段落⑤「カーペット層または装飾層15」
に記載された本件発明1の構成に比べて,構成が付加ないし特定され
ている。そうすると,段落⑧で説明された,200Hz付近での共鳴の解消
による遮音性の向上という現象は,段落⑥で開示された特定の構成の
フロア体において確認されたものにすぎないというべきであり,本件
発明1の全体について確認されたものとはいえない。
また,段落⑧で説明された,200Hz領域での共鳴の解消による遮音性
「200Hz領域における共鳴の兆の向上という現象は,段落③で説明された
との関係において顕著な作用効果であると原告は主張するが,この候」
主張についても以下の点を指摘することができる。すなわち,段落③
は,段落①で説明されたの遮音性について述べたも「従来のフロア体15」
のであるが,段落①のフロア体と段落⑥のフロア体の構成を比較する
「約0.8mm厚さのスチールシート」「約1.1mm厚さのと,(a)面状車体パーツがか
アルミニウム製」「約2.2mm厚さのビチューメン層」「SDL減衰か,(b)減衰層がか
層のような軽量減衰層」「空気不透過性重量層7」「微小ポーラス硬質か,(c)か
か,等の点において相違している。これらのうち(c)は本件発明層14」
1の構成に係る相違であるが,(a)及び(b)はそうではないから,仮に
段落⑧で図7を引用して説明された200Hz領域における共鳴の解消が,
段落③で図3を引用して説明された200Hz領域における共鳴の兆候に対
する顕著な効果であるといえるとしても,それが,(a)又は(b)の点の
相違による効果である可能性を否定できず,本件発明1の構成を採用
したことによる効果であるということはできない。
しかも,上記段落①∼⑧は,主として「フロア体」に関する構成及
び作用効果の説明であって,本件発明1を他の箇所に適用した場合の
効果については全く言及されていないから,原告の主張する本件発明
1の「革新性」は,本件決定による本件発明1の認定を誤りとする理
由にはなり得ないものである。
b原告は,本件発明1が複数の後願において引用されている事実は,
当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する
者)が本件発明1を新規な軽量防音材として評価していることを示す
ものであると主張する。
しかし,そのような事実は,本件発明1の進歩性を直接に基礎づけ
るものではない。また,後願の明細書の下記記載にかんがみると,い
ずれの後願も,本件発明1を,ダッシュパネルやフロアのような特定
の箇所に適用することを前提にしたものにすぎない。したがって,原
告の主張する本件発明1に対する当業者の評価は,本件決定による本
件発明1の認定を誤りとする理由にはなり得ないものである。

甲14公報
「【0002】【従来の技術】自動車のエンジン音が車室内に透過するのを防ぐため
の自動車用インシュレータは,………」
甲15公報
「【0002】【従来の技術】騒音の激しい場所,例えば車両ではエンジンノイズ,
パワートレインからのノイズ,排気ノイズ,タイヤノイズ等が様々な騒音が生じ
ておりこれらを防止するために従来から防音シート等が車両の所定の場所に配設
されている。」
甲16公報
「【0001】【発明が属する技術分野】本発明は,自動車室内のフロアパネル上に
敷設するフロア敷設材に関し,………」
甲17公報
「【0001】この発明は,車体パネルの室内面側に取り付けられる車両用防音材に
係り,………」
「【0024】以下,本発明に係る車両用防音材の好適な実施の形態として,車両の
ダッシュパネルの室内面側に装着されるインシュレータダッシュについて,添付
図面を参照しながら詳細に説明する。」
「【0042】上述した第1実施例,第2実施例では,ダッシュパネル20の室内面側
に取り付けられるインシュレータダッシュ10に本発明を適用した実施形態につい
て説明したが,エンジンルーム,あるいはトランクルーム内に取り付けられる防
音材全般に適用することができる。」
甲18公報
「【0001】本発明は,エンジンルームなどの非車室内側における騒音を車室内に
伝播しないようにする超軽量な防音材に関し,………」
甲19∼21公報
(甲18公報と同一の出願人による特許出願であり,甲18公報の上掲段落【0001】
と同様の記載がある。)
c原告は,本件発明1が全く新しいコンセプトに基づく「新規軽量防
音材」であるとの評価を受けており,多様な車種に採用されているこ
とも,本件発明1の革新性を示すものであると主張する。
しかし,現実に自動車用防音材として採用された製品は,各層の構
成,材質及び物性等の点で本件発明1の構成以外に様々な要素を含む
上に,いわゆる商業的成功には,発明の進歩性以外にも多様な要因が
関与するものであるから,商業的成功が本件発明1の構成のみによっ
てもたらされていることが明らかでない以上,本件発明1の進歩性を
明らかにするものとはいえない。
d本件特許の特許権者である原告が「2000PACEAWARD」を受賞してい
るという事実も,その受賞理由が上記cの採用実績に基づいているこ
とからみて(甲22-1,2),上記b,cに述べたところと同様に,本件
決定による本件発明1の認定を誤りとする理由にはなり得ない。
(イ)引用発明の認定につき
原告は,本件決定は,吸音パネルでしかない第1引用例記載発明に,
恣意的に遮音性等を付与して引用発明を認定したものであると主張す
る。しかし,前記イのとおり,第1引用例が屋根の内張りとして完結し
た物を開示している以上,「吸音パネル」という発明の名称にかかわら
ず,自動車の屋根が有するべき必要最小限の遮音性等も具備していると
解するのが相当であるから,原告の主張は採用することができない。
(3)小括
前記(2)のとおり,本件発明1と第1引用例記載発明の認定に誤りはなく,
これらの誤りがあることを前提として一致点の認定の誤りをいう原告の主張
は,採用することはできない。
3取消事由2について
原告は,硬質層の単位面積当たりの重量が一致しているとした認定は,空気
流に対する総抵抗と単位面積当たりの重量とを分離して認定しており,誤りで
ある旨主張する。
しかし,硬質層の単位面積当たりの重量が0.3kg/m∼0.75kg/mの範囲で重複22
していること自体は原告も争っていない。そして,本件決定は,空気流に対す
る総抵抗の点で本件発明1と第1引用例記載発明とが相違していることを相違
「第1引用例記載の吸音パネルに点3として挙げ,相違点3についての判断の中で,
おいても,………,硬質層として,………『Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsmという空気流に対
−3−3
との判断に続けしての総抵抗』を有するものを採用することは格別困難とはいえない。」
「なお,第2引用例では,上記遮音シートの空気流れ抵抗を『150dyne・sec/cm』(1500て,

Nsm)とする場合の面重量は3000g/mとしており,この面重量は本件発明で規定する範囲
−32
22
(0.3∼2kg/m)からは外れている。しかし,第2引用例記載の発明では,『面重量が500g/m
以上』としているのだから,本件発明と同様に2kg/mよりも軽くしてもよいことは明らかであ

るし,また,空気流れ抵抗が50dyne・sec/cm(500Nsm)を下回らない範囲で,面重量を2kg/m
3−3
よりも軽くする(例えば,構成素材の種類を変えたり,厚みを減少させる)ことが特段困難で

としており,空気流に対する総抵あるとも考え難い。」(19頁最終段落∼20頁第1段落)
抗と単位面積当たりの重量とが関連することを考慮した判断を加えているので
あるから,一致点の認定において単位面積当たりの重量の点のみを抜き出して
認定したことは,容易想到性の判断の当否に影響するものではない。
4取消事由3について
(1)原告は,本件決定が,面状車体パーツとアセンブリとの間に空気層を設け
ることが第1引用例に示唆されている,としたのは誤りである旨主張する。
「尚,屋根の内張りと屋根を形成する鋼板とのしかし,第1引用例(甲1)には,
固定は,接着,クリップ留め或いはその他のどのような機械的手段によっても行うことがで
と記載されており,クリップ留め等の手段を用いた場きる。」(段落【0021】)
合に,屋根を形成する鋼板と内張り(吸音パネル)との間に隙間が生じ,空
気層が形成されることは明らかであるから,空気層を設けることが示唆され
ているとした点に誤りはない。
(2)また,原告は,本件決定が,本件発明1において空気層を設けたことの技
術的意義を検討することなく,空気層を設けるようにすることが設計事項で
あるとした点は誤りである旨主張する。
しかし,本件明細書(甲13)には,本件発明1における空気層の技術的意
「目的を達成するための本質的なものは,吸音性キット内にお義に関する記載としては
との記載があるにとどまり,これ以上ける空気層の形成である」(7頁左36∼37行)
「図1に示す従来のフロア体1の具体的な記載はない。そして,本件明細書には
は,遮音パッケージ2を備えている。………。その結果,減衰層4とスプリング−システム
との記載があり,との間には,約0.2mm厚さの空気層5が発生する」(8頁左7∼20行)
従来技術においても空気層は設けられていたとされているところ,従来技術
における空気層に比べて本件発明1の空気層が構成又は作用効果の点でどの
ように相違するかについての記載はない。また,本件明細書では,本件発明
1の構成と空気層を設けない構成との間で作用効果等を比較することも行わ
れていない。
このような本件明細書の記載に照らすと,本件発明1における空気層の技
術的意義を検討することは,そもそも不可能であるといわざるを得ない。し
たがって,本件決定が,本件発明1において空気層を設けたことの技術的意
義について特段の検討を加えず,自動車用防音材に関する公知文献(第4,
第8引用例)に基づき,多層構造の防音材において空気層を設ける構成が周
知技術であることを理由に,相違点1に係る構成は当業者が容易に想到でき
る設計事項としたことに,誤りはない。
5取消事由4について
原告は,本件決定が,第1引用例記載の発明において「遮音性と吸音性と振
動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるような超軽量キット」を形成
することは格別困難とはいえない,と判断したことは誤りであると主張する。
しかし,本件発明1の「遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせ
るのに好適であるような超軽量キット」という構成要件につき,本件明細書に
は,「最適」「好適」「超軽量」という用語の定義は全くなされていないか
ら,上記構成要件は,遮音性,吸音性及び振動減衰性を併せ持つキットを意味
「合成いているにすぎないことになる。そして,例えば第2引用例(甲2)には
樹脂フォーム,……の吸音材料と,請求項1に記載の遮音材とを積層したことを特徴とする防
が開示され,第7引用例(甲7)の「車体パネル」音材」(特許請求の範囲第2項)
「本発明は,……振動及び騒音を十分に低減できるという優れた効果」(段落の発明は
を有しているものであり,乙2公報(特開昭63−45982号公報)の「自【0020】)
「……吸音効果及び遮音効果ともにすぐれた性能」(2頁右39動車用吸遮音板」の発明は
を有しているものであるから,これらの公知文献によって,本件優先日∼40行)
(平成8年10月29日)当時,遮音性,吸音性及び振動減衰性を併せ持つキット
という構成は十分に示唆されていたものということができる。したがって,本
件決定の上記判断に誤りはない。
なお,原告は,これらの公知文献につき,本件発明1とは遮音性等のレベル
が異なると主張する。しかし,本件発明1は遮音性等の程度を具体的に特定す
るものではないし,本件明細書の発明の詳細な説明にも,遮音性等の測定結果
については図7に記載があるだけで,これが具体的にどのような構成(各層の
材質,厚み等)のキットについてのどのような測定条件の下での測定結果なの
か不明であるから,原告の主張は特許請求の範囲及び本件明細書の記載に基づ
かないものであって,採用できない。
6取消事由5について
(1)原告は,本件決定の相違点3の検討は,硬質層の構成において重量と総抵
抗が一体不可分であることを無視したものであって技術的に意味がある検討
とはいえないと主張する。
しかし,上記3(「取消事由2について」)で説示したとおり,本件決定
は,硬質層の構成において重量と総抵抗とが関連することを認識した上で相
違点3の検討を行っている。また,第2引用例の実施例1∼4を見ると,空
気流れ抵抗と面重量は,それぞれ順に,450dyne・sec/cmと550g/m,2032
dyne・sec/cmと2000g/m,300dyne・sec/cmと830g/m,150dyne・sec/cmと32323
3000g/m,であり,空気流れ抵抗の大小と面重量の軽重との間に相関関係は2
認められないから,当業者は必要に応じて重量と総抵抗との所望の組合せを
有する硬質層を得ることができるというべきであり,硬質層の構成において
重量と総抵抗が一体不可分であるとまではいえない。
よって,原告の主張は採用することができない。
(2)原告は,原理の異なる発明の数値を対比すること自体が無意味であると主
張する。しかし,上記2(2)のとおり,本件発明1と第1引用例記載発明とが
原理の異なる発明であるとはいえないのであるから,原告の上記主張も採用
することができない。
7取消事由6について
原告は,本件決定が,本件発明1の作用効果は各引用例の記載事項から予測
し難いものとはいえないと判断したのは誤りであると主張する。
しかし,前記2(2)エ(ア)aで説示したとおり,原告が本件発明1の顕著な作
用効果を示したものとして援用する本件明細書の記載(8頁左7行∼9頁左45
行)及び図6・図7は,主として「フロア体」に関する構成及び作用効果の説
明であって,本件発明1を他の箇所に適用した場合の作用効果については言及
されていない上に,本件発明1をフロア体に適用した場合の測定結果としてみ
ても,従来技術と本件発明1とを同一条件で比較したものとはいえないから,
そもそも,本件発明1に顕著な作用効果があるということ自体が,本件明細書
の記載からは明らかでないといわざるを得ない。
よって,取消事由6に係る原告の主張も,採用することができない。
8取消事由7について
原告の取消事由7に係る主張は,本件発明1の進歩性を否定した本件決定の
判断が誤りである以上,本件発明1に限定を付した本件発明2∼44の進歩性を
否定したことも当然に誤りであるというものである。原告は,その他に,本件
発明2∼44について独立の取消事由を主張していない。
そうすると,上記2∼7のとおり,本件発明1の進歩性を否定した本件決定
の判断に誤りがない以上,原告の主張は前提を欠き,採用することができな
い。
9取消事由8について
(1)原告は,本件発明45∼47は本件発明1∼40のキットのためのアセンブリパ
ッケージであって,キットではないのであるから,本件決定は発明の認定を
誤っていると主張する。しかし,キット(41)は,面状車体パーツ(11)とアセ
ンブリパッケージ(42)とから構成されるものであるから,本件発明45∼47
が,キットを構成する各層についての数値や材料に係る限定事項を規定する
ものであると本件決定が認定したことに,誤りはない。
(2)原告は,本件決定が,請求項41が請求項42∼45のいずれかを引用したもの
として認定し,また,請求項46が請求項46を引用したものと認定したこと
が,誤りであることは明らかであると主張する。原告の主張は,本件決定の
「本件請求項41∼47では,請求項1∼46のいずれかに記載のキットに関して,キットを構成
する各層についての数値や材料に係る限定事項を規定するものである」(23頁下第2段落)
との表現の不合理をいうものであるが,本件決定の上記記載は,正確には
「請求項41は請求項1∼40のいずれかに記載のキットに関して,請求項42は
請求項1∼41のいずれかに記載のキットに関して,………請求項47は請求項
1∼46のいずれかに記載のキット又はアセンブリパッケージに関して,……
…」と記載すべきところ,その煩を避けるためのものであると認められ,原
告の主張のような認定をしたものではない。したがって,本件決定に,原告
主張の誤りはない。
10結語
上記の次第で,原告の主張する取消事由はいずれも理由がない。よって,原
告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決す
る。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官岡本岳
裁判官上田卓哉
(別紙)
本件特許の特許請求の範囲
【請求項1】車両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう,吸音性かつ遮音性かつ振動減衰性か
つ断熱性のカバーを形成するための多機能キット(41)であって,少なくとも1つの面状車体パーツ
(11)と,複数層からなるノイズ低減アセンブリパッケージ(42)と,を具備してなり,
前記アセンブリパッケージは,少なくとも1つのポーラスなスプリング層(13)を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パーツとの間には,空気層(25)が設けられ,
遮音性と吸音性と振動減衰性とを最適に組み合わせるのに好適であるような超軽量キット(41)を形
成するために,前記多層アセンブリパッケージ(42)は,微小ポーラスを有した硬質層(14)である
開放ポアを有したファイバ層またはファイバ/フォーム複合体層を備え,前記硬質層(14)は,Rt=
500Nsm∼Rt=2500Nsmという空気流に対しての総抵抗を有し,かつ,mF=0.3kg/m∼mF=2.0kg/
−3−32
mという単位面積あたりの重量を有していることを特徴とするキット。

【請求項2】前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,B=0.005Nm∼B=10.5Nmという曲げ硬さ
を有していることを特徴とする請求項1記載のキット。
【請求項3】前記アセンブリパッケージ(42)には,ポーラスなカバー層(15)であるソフトな装飾
層またはカーペット層が設けられている,あるいは,汚染物に対して耐性のある保護フリースが設け
られていることを特徴とする請求項1または2記載のキット。
【請求項4】前記ポーラスなスプリング層は,前記空気層(25)と,前記微小ポーラスを有した硬質
層(14)と,の間に配置されていることを特徴とする請求項1∼3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】前記ポーラスなスプリング層(13)は,ρ≦30kg/mという小さな密度を有した熱成型

フォームを備えて構成されていることを特徴とする請求項1∼4のいずれかに記載のキット。
【請求項6】前記ポーラスなスプリング層(13)は,ρ≦70kg/mという小さな密度を有したPU成型

フォームを備えて構成されていることを特徴とする請求項1∼4のいずれかに記載のキット。
【請求項7】前記ポーラスなスプリング層(13)は,ρ≦70kg/mという小さな密度を有した,熱可

塑物質が混合されたファイバ製フリースを備えて構成されていることを特徴とする請求項1∼4のい
ずれかに記載のキット。
【請求項8】前記ポーラスなスプリング層(13)は,ρ≦70kg/mという小さな密度を有した,デュ

ロプラスチックが混合されたファイバ製フリースを備えて構成されていることを特徴とする請求項1
∼4のいずれかに記載のキット。
【請求項9】前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パーツ(11)との間には,少なくとも
部分的に,減衰層(12)が配置されていることを特徴とする請求項5∼8のいずれかに記載のキッ
ト。
【請求項10】前記減衰層(12)は,約2.2mmの厚さを有しているとともに約2.4kg/mという単位面

積あたりの重量とされた超軽量減衰材料を備えて構成され,
前記減衰層は,前記面状車体パーツ上に接着され,
前記アセンブリパッケージ(42)の凹凸状支持によって,前記アセンブリパッケージと前記減衰層と
の間に形成された前記空気層(25)は,約0.2mmの厚さとされ,前記ポーラスなスプリング層(13)
は,約25mm厚さとされるとともに約0.4kg/m∼約1.75kg/mという単位面積あたりの重量とされ,
22
前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,1.5mm∼5.0mmという厚さとされるとともに0.6kg/m∼

1.6kg/mという単位面積あたりの重量とされていることを特徴とする請求項9記載のキット。

【請求項11】前記減衰層は,約0.2mm厚さの薄いアルミニウム箔を少なくとも備えているとともに
約2.94kg/mという単位面積あたりの重量とされた,多層超軽量減衰材料を備えて構成され,

前記減衰層は,前記面状車体パーツ上に接着され,
前記アセンブリパッケージ(42)の凹凸状支持によって,前記アセンブリパッケージと前記減衰層と
の間に形成された前記空気層(25)は,約0.2mmの厚さとされ,前記ポーラスなスプリング層(13)
は,約25mm厚さとされるとともに約0.4kg/m∼約1.75kg/mという単位面積あたりの重量とされ,
22
前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,1.5mm∼5.0mmという厚さとされるとともに0.6kg/m∼

1.6kg/mという単位面積あたりの重量とされていることを特徴とする請求項9記載のキット。

【請求項12】前記減衰層は,約0.2mm厚さの薄いファイバ補強プラスチック紙を少なくとも備える
とともに約2.67kg/mという単位面積あたりの重量とされた,多層超軽量減衰材料を備えて構成さ

れ,
前記減衰層は,前記面状車体パーツ上に接着され,
前記アセンブリパッケージ(42)の凹凸状支持によって,前記アセンブリパッケージと前記減衰層と
の間に形成された前記空気層(25)は,約0.2mmの厚さとされ,前記ポーラスなスプリング層(13)
は,約25mm厚さとされるとともに約0.4kg/m∼約1.75kg/mという単位面積あたりの重量とされ,
22
前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,1.5mm∼5.0mmという厚さとされるとともに0.6kg/m∼

1.6kg/mという単位面積あたりの重量とされていることを特徴とする請求項9記載のキット。

【請求項13】前記減衰層は,約2.0mm厚さとされているとともに,約2.4kg/mという単位面積あた

りの重量とされかつ凹凸状構造表面を有した超軽量減衰材料を備えて構成され,
前記減衰層は,一方の面においては,前記凹凸状構造とされた前記減衰層と前記面状車体パーツとの
間に形成される前記空気層(25)が少なくとも部分的に約0.2mm厚さであるようにして,前記凹凸状
構造表面を介して,前記面状車体パーツ上に配置され,
前記減衰層は,他方の面においては,前記開放ポアを有したスプリング層(13)に対して固定され,
前記ポーラスなスプリング層(13)は,約25mm厚さとされるとともに約0.4kg/m∼約1.75kg/mとい
22
う単位面積あたりの重量とされ,
前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,1.5mm∼5.0mmという厚さとされるとともに0.6kg/m∼

1.6kg/mという単位面積あたりの重量とされていることを特徴とする請求項9記載のキット。

【請求項14】前記減衰層は,約0.4mm厚さとされかつ約40kg/mという単位体積あたりの実効重量と

されまたは約0.2kg/mという単位面積あたりの重量とされさらに凹凸状構造表面を有した薄い成型フ

ォーム層を備えて構成され,
前記減衰層は,一方の面においては,前記凹凸状構造とされた前記減衰層と前記面状車体パーツとの
間に形成される前記空気層(25)が少なくとも部分的に約0.2mm厚さであるようにして,前記凹凸状
構造表面を介して,前記面状車体パーツ上に配置され,前記減衰層は,他方の面においては,前記開
放ポアを有したスプリング層(13)に対して固定され,
前記ポーラスなスプリング層(13)は,約25mm厚さとされるとともに約0.4kg/m∼約1.75kg/mとい
22
う単位面積あたりの重量とされ,
前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,1.5mm∼5.0mmという厚さとされるとともに0.6kg/m∼

1.6kg/mという単位面積あたりの重量とされていることを特徴とする請求項9記載のキット。

【請求項15】フロア遮音のために,前記アセンブリパッケージ(42)は,約5mm厚さとされかつ
0.4kg/m∼1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた装飾層を備えていることを特徴とする請求
22
項5∼8のいずれかに記載のまたは請求項10∼14のいずれかに記載のキット。
【請求項16】内側端部壁のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,大部分にわたっ
て,約5mm厚さとされかつ0.4kg/m∼1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた装飾層を備えて
22
いることを特徴とする請求項5∼8のいずれかに記載のまたは請求項10∼14のいずれかに記載のキッ
ト。
【請求項17】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して接着される凹凸状構造表面を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,圧縮係数が120,000Paよりも大きくかつ約13mm∼17mm厚さとされか
つ0.2kg/m∼0.4kg/mという単位面積あたりの重量とされた硬質熱成型フォーム層を備え,
22
前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項18】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して接着される凹凸状構造表面を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,圧縮係数が60kPaよりも小さくかつ約20mm厚さとされかつ0.8kg/
mという単位面積あたりの重量とされた,開放ポアを有したソフトなPU成型フォーム層を備え,

前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記カバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの重量とされ

ていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項19】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して接着される凹凸状構造表面を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,35kg/mよりも小さな密度とされかつ約20mm厚さとされかつ0.7kg/

mという単位面積あたりの重量とされた,熱可塑物質が混合されたファイバ製フリースを備え,

前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記カバー層は,ポーラスであるとともに,約2mmという厚さとされかつ約0.21kg/mという単位面積

あたりの重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項20】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して接着される凹凸状構造表面を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,50kg/mよりも小さな密度とされかつ約20mm厚さとされかつ

1.07kg/mという単位面積あたりの重量とされた,デュロプラスチックが混合されたファイバ製フリ

ースを備え,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記カバー層は,ポーラスであるとともに,約2mmという厚さとされかつ約0.21kg/mという単位面積

あたりの重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項21】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して押圧される凹凸状構造表面を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)は,さらに,約3∼5mm厚さとされかつ0.4∼0.6kg/mという単位面

積あたりの重量とされた,開放ポアを有した硬質キャリア層(26)であり,高度にプレスされた微小
ポーラスを有したファイバ材料からなるまたはハニカム状構造のキャリア材料からなる開放ポアを有
した硬質キャリア層(26)を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,圧縮係数が120,000Paよりも大きくかつ約13mm∼17mm厚さとされか
つ0.2kg/m∼0.4kg/mという単位面積あたりの重量とされた硬質熱成型フォーム層を備え,
22
前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4∼0.6kg/mとい

う単位面積あたりの重量とされ,
前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項22】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して押圧される凹凸状構造表面を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)は,さらに,約3∼5mm厚さとされかつ0.4kg/m∼0.6kg/mという
22
単位面積あたりの重量とされた,開放ポアを有した硬質キャリア層(26)であり,高度にプレスされ
た微小ポーラスを有したファイバ材料からなるまたはハニカム状構造のキャリア材料からなる開放ポ
アを有した硬質キャリア層(26)を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,圧縮係数が60kPaよりも小さくかつ約20mm厚さとされかつ約0.8kg/
mという単位面積あたりの重量とされた,開放ポアを有したソフトなPU成型フォーム層を備え,

前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項23】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して押圧される凹凸状構造表面を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)は,さらに,約3∼5mm厚さとされかつ0.4∼0.6kg/mという単位面

積あたりの重量とされた,開放ポアを有した硬質キャリア層(26)であり,高度にプレスされた微小
ポーラスを有したファイバ材料からなるまたはハニカム状構造のキャリア材料からなる開放ポアを有
した硬質キャリア層(26)を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,35kg/mよりも小さな密度とされかつ約20mm厚さとされかつ約

0.7kg/mという単位面積あたりの重量とされた,熱可塑物質が混合されたファイバ製フリースから構

成され,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされかつ約0.21kg/mという単位面積あたりの重量と

されていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項24】屋根内側のカバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)は,空気層(25)を形
成するようにして前記面状車体パーツに対して押圧される凹凸状構造表面を備え,
前記アセンブリパッケージ(42)は,さらに,約3∼5mm厚さとされかつ0.4∼0.6kg/mという単位面

積あたりの重量とされた,開放ポアを有した硬質キャリア層(26)であり,高度にプレスされた微小
ポーラスを有したファイバ材料からなるまたはハニカム状構造のキャリア材料からなる開放ポアを有
した硬質キャリア層(26)を備え,
前記ポーラスなスプリング層は,50kg/mよりも小さな密度とされかつ約20mm厚さとされかつ約

1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,デュロプラスチックが混合されたファイバ製フリー

スを備え,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,1.5mm∼2.0mmという厚さとされるとともに0.4kg/m∼0.6kg/

mという単位面積あたりの重量とされ,

前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされかつ約0.21kg/mという単位面積あたりの重量と

されていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項25】屋根内側壁のために,前記アセンブリパッケージ(42)と前記面状車体パーツとの間
には,少なくとも部分的に,約4mm厚さとされかつ約0.2kg/mという単位面積あたりの重量とされた

成型フォームからなる減衰層が配置されていることを特徴とする請求項21∼24のいずれかに記載のキ
ット。
【請求項26】ドアのカバーのために,前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間
には,約25μm厚さとされかつ約0.003kg/mという単位面積あたりの重量とされた薄いPU箔が配置さ

れ,
前記アセンブリパッケージのうちの前記ポーラスな層は,約0.3kg/mという単位面積あたりの重量を

有した約15mm厚さの熱成型フォームから構成され,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,約1mm∼1.5mmという厚さとされるとともに約0.5kg/mという単

位面積あたりの重量とされ,
前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項27】ドアのカバーのために,前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間
には,約25μm厚さとされかつ約0.003kg/mという単位面積あたりの重量とされた薄いPU箔が配置さ

れ,
前記アセンブリパッケージのうちの前記ポーラスな層は,約0.6kg/m∼0.9kg/mという単位面積あた
22
りの重量を有した約15mm厚さの成型フォーム層から構成され,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,約1mm∼1.5mmという厚さとされるとともに約0.5kg/mという単

位面積あたりの重量とされ,
前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項28】ドアのカバーのために,前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間
には,約25μm厚さとされかつ約0.003kg/mという単位面積あたりの重量とされた薄いPU箔が配置さ

れ,
前記アセンブリパッケージのうちの前記ポーラスな層は,約35kg/mよりも小さな密度とされかつ約

0.5kg/mという単位面積あたりの重量とされた約15mm厚さの,熱可塑物質が混合されたファイバ製フ

リースから構成され,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,約1mm∼1.5mmという厚さとされるとともに約0.5kg/mという単

位面積あたりの重量とされ,
前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項29】ドアのカバーのために,前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間
には,約25μm厚さとされかつ約0.003kg/mという単位面積あたりの重量とされた薄いPU箔が配置さ

れ,
前記アセンブリパッケージのうちの前記ポーラスな層は,約50kg/mよりも小さな密度とされかつ約

0.75kg/mという単位面積あたりの重量とされた約15mm厚さの,デュロプラスチックが混合されたフ

ァイバ製フリースから構成され,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,約1mm∼1.5mmという厚さとされるとともに約0.5kg/mという単

位面積あたりの重量とされ,
前記ポーラスなカバー層は,約2mmという厚さとされるとともに約0.21kg/mという単位面積あたりの

重量とされていることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項30】前記面状車体パーツには,少なくとも部分的に,約2.67kg/mという単位面積あたり

の重量とされかつ少なくとも1つの約0.1mm厚さの薄いアルミニウム箔を有した,多層の約2.3mm厚さ
の超軽量減衰材料から構成された減衰層が設けられていることを特徴とする請求項26∼29のいずれか
に記載のキット。
【請求項31】前記面状車体パーツには,少なくとも部分的に,約2.67kg/mという単位面積あたり

の重量とされかつ少なくとも1つの約0.1mm厚さのファイバ補強プラスチック紙製箔を有した,多層
の約2.3mm厚さの超軽量減衰材料から構成された減衰層が設けられ,
前記箔を有することにより,前記多層減衰層の単位面積あたりの重量は,約2.54kg/mであることを

特徴とする請求項26∼29のいずれかに記載のキット。
【請求項32】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)には,前記
モータ空間側において,汚染物に対して耐性のある保護層が設けられ,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,前記スプリング層と前記保護層との間に配置され,
前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプ

レスされたファイバ材料から構成され,前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを
有したスプリング層は,約15mm厚さとされかつ約0.3kg/mという単位面積あたりの重量とされた熱成

型フォームから構成され,
前記モータ空間側における前記保護層は,0.2∼0.4mm厚さとされかつ0.1∼0.3kg/mという単位面積

あたりの重量とされていることを特徴とする請求項3記載のキット。
【請求項33】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)には,前記
モータ空間側において,汚染物に対して耐性のある保護層が設けられ,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,前記スプリング層と前記保護層との間に配置され,
前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプ

レスされたファイバ材料から構成され,前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを
有したスプリング層は,約15mm厚さとされかつ約0.6kg/m∼0.9kg/mという単位面積あたりの重量と
22
されたPU成型フォームから構成され,
前記モータ空間側における前記保護層は,0.2∼0.4mm厚さとされかつ0.1∼0.3kg/mという単位面積

あたりの重量とされていることを特徴とする請求項3記載のキット。
【請求項34】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記アセンブリパッケージ(42)には,前記
モータ空間側において,汚染物に対して耐性のある保護層が設けられ,
前記微小ポーラスを有した硬質層は,前記スプリング層と前記保護層との間に配置され,
前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプ

レスされたファイバ材料から構成され,前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを
有したスプリング層は,約15mm厚さとされかつ約0.7kg/m∼1.0kg/mという単位面積あたりの重量と
22
された,デュロプラスチックが混合されたファイバ製フリースから構成され,
前記モータ空間側における前記保護層は,0.2∼0.4mm厚さとされかつ0.1∼0.3kg/mという単位面積

あたりの重量とされていることを特徴とする請求項3記載のキット。
【請求項35】前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間に,0.05kg/m∼

0.15kg/mという単位面積あたりの重量とされ,汚染物に対して耐性のある保護フリースが設けられ

ていることを特徴とする請求項32∼34のいずれかに記載のキット。
【請求項36】前記微小ポーラスを有した硬質層は,前記ポーラスなスプリング層(13)と,前記空
気層(25)と,の間に配置されていることを特徴とする請求項3記載のキット。
【請求項37】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約
1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプレスされたファイバ材料から構成され,

前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを有したスプリング層は,約15mm厚さとさ
れかつ約0.3kg/mという単位面積あたりの重量とされた熱成型フォームから構成され,

前記モータ空間側には,0.2∼0.4mm厚さとされかつ0.1∼0.3kg/mという単位面積あたりの重量とさ

れた汚染物に対して耐性のある保護層が設けられていることを特徴とする請求項36記載のキット。
【請求項38】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約
1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプレスされたファイバ材料から構成され,

前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを有したスプリング層は,約15mm厚さとさ
れかつ約0.6kg/m∼0.9kg/mという単位面積あたりの重量とされたPU成型フォームから構成され,
22
前記モータ空間側には,汚染物に対して耐性のある保護層が設けられていることを特徴とする請求項
36記載のキット。
【請求項39】モータ空間側の端部壁カバーのために,前記硬質層は,約2.5mm厚さとされかつ約
1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,高度にプレスされたファイバ材料から構成され,

前記アセンブリパッケージ(42)のうちの,前記開放ポアを有したスプリング層は,約15mm厚さとさ
れかつ約0.7kg/m∼1.0kg/mという単位面積あたりの重量とされた,耐熱ファイバ製のデュロプラス
22
チックが混合されたファイバフリースから構成され,
前記モータ空間側には,汚染物に対して耐性のある保護層が設けられていることを特徴とする請求項
36記載のキット。
【請求項40】前記空気層(25)と前記アセンブリパッケージ(42)との間に,3.0mm厚さとされか
つ約0.12kg/mという単位面積あたりの重量とされたフォーム製減衰体が設けられていることを特徴

とする請求項32∼34のいずれかに記載のまたは請求項37∼39のいずれかに記載のキット。
【請求項41】前記面状車体パーツは,約0.8mm厚さのスチールシートであることを特徴とする請求
項1∼40のいずれかに記載のキット。
【請求項42】前記面状車体パーツは,約1.1mm厚さのアルミニウムシートであることを特徴とする
請求項1∼40のいずれかに記載のキット。
【請求項43】前記面状車体パーツは,約1.5mm厚さの,ファイバ補強プラスチック部材であること
を特徴とする請求項1∼40のいずれかに記載のキット。
【請求項44】前記ポーラスなスプリング層は,0.05W/mKよりも小さな熱伝導度λを有していること
を特徴とする請求項1∼40のいずれかに記載のキット。
【請求項45】請求項1∼44のいずれかに記載のキットのためのアセンブリパッケージであって,
微小ポーラスを有した硬質層(14)を備え,
前記硬質層(14)は,Rt=500Nsm∼Rt=2500Nsmという空気流に対しての総抵抗を有し,かつ,
−3−3
mF=0.3kg/m∼mF=2.0kg/mという単位面積あたりの重量を有していることを特徴とするアセンブリ
22
パッケージ。
【請求項46】前記微小ポーラスを有した硬質層(14)は,B=0.005Nm∼B=10.5Nmという曲げ硬
さを有していることを特徴とする請求項45記載のアセンブリパッケージ。
【請求項47】減衰層および/または接着層が設けられていることを特徴とする請求項45または46に
記載のアセンブリパッケージ。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛