弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人長谷川靖晃、同森山博の上告理由第一、第二について
 一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人らと上告人Aは、いずれも昭和五〇年八月二日に死亡したDの相続
人である。
 上告人Aは、昭和四八年一〇月一日から昭和五〇年七月一六日までの間に、Dが
株式会社E相互銀行F支店の同人名義の貸金庫内に保管していた同人所有の銀行預
金証書、株券等の全部をひそかに持ち出した上、順次預金の払戻しを受け、あるい
は株券を売却して、払戻金や株券売却代金を着服した。
 2 D及び被上告人Bは、昭和五〇年七月一六日、上告人Aが右貸金庫内のD所
有の預金証書、株券等の全部を持ち出していることを知り、同上告人に対し、持ち
出した預金証書等を返還するよう求めたが、これを拒まれた。
 同上告人は、D死亡後にされた遺産分割協議の席上でも、持ち出した財産の内容
や処分の全容等を秘匿して明かさなかった。
 3 被上告人らは、昭和五八年六月六日、上告人Aを被告として本件訴訟を提起
し、同上告人が着服した預金払戻金及び株券(E相互銀行の株券を除く。)の売却
代金相当額につき、被上告人らの相続分に応じた損害賠償を請求するとともに、E
相互銀行の株券につき、同上告人がいまだ売却せずに所持しているものと考えて、
共有物の保管者である被上告人Bへの引渡し等を請求した。
 4 被上告人らは、昭和六三年四月一四日の第一審口頭弁論期日において、前記
E相互銀行の株券は既に上告人Aにより売却されていることが判明したとして、引
渡し等の請求を右株券の売却時における価額相当額についての被上告人らの相続分
に応じた損害賠償請求に変更した。
 5 また、被上告人らは、同年一一月三〇日の第一審口頭弁論期日において、上
告人Aによる預金払戻金及び前記各株券売却代金の着服を理由とする不当利得返還
請求を追加した上、平成元年二月一五日の第一審口頭弁論期日において、従前の損
害賠償請求の訴えを取り下げた。
 6 その後の第一審口頭弁論期日において、上告人Aは、抗弁として、被上告人
らが追加した不当利得返還請求については、被上告人らが貸金庫内からの預金証書
等の持出事実を知った日である前記昭和五〇年七月一六日から一〇年の時効期間の
経過により、右請求を追加する以前に消滅時効が完成している旨主張し、時効を援
用した。
 二 1 右事実関係の下においては、被上告人らが追加した不当利得返還請求は
 上告人Aが預金払戻金及び株券売却代金を不当に着服したと主張する点において、
昭和五八年六月六日に提起した本件訴訟の訴訟物である不法行為に基づく損害賠償
請求とその基本的な請求原因事実を同じくする請求であり、また、同上告人が不法
に着服した預金払戻金及び株券売却代金につき被上告人らの相続分に相当する金額
の返還を請求する点において、前記損害賠償請求と経済的に同一の給付を目的とす
る関係にあるということができるから、前記損害賠償を求める訴えの提起により、
本件訴訟の係属中は、右同額の着服金員相当額についての不当利得返還を求める権
利行使の意思が継続的に表示されているものというべきであり、右不当利得返還請
求権につき催告が継続していたものと解するのが相当である。そして、被上告人ら
が第一審口頭弁論期日において、右不当利得返還請求を追加したことにより、右請
求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものというべきである。
 また、前判示のとおり、上告人Aが持ち出した前記E相互銀行の株券を既に売却
していたことを秘匿していたため、被上告人らは、当初、同上告人が右株券を所持
しているものとして右株券の引渡し等を求める訴えを提起したものであって、その
時点で右株券が売却されていることを知っていれば、訴え提起時に他の株券と同様、
相続分に応じた売却代金相当額の損害賠償請求権を行使する意思を有していたこと
は明らかというべきである。したがって、被上告人らのした右株券の引渡し等の請
求には、被上告人らの当該株券売却代金相当額の損害賠償又は不当利得の返還を求
める権利行使の意思が表れていたとみることができるから、本件訴訟の係属中、右
不当利得返還請求についても催告が継続していたものと解するのが相当であり、そ
の後の口頭弁論期日において被上告人らが不当利得返還請求を追加したことにより、
右請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものと解すべきである。
 2 原審は、被上告人Bが本訴を提起したのが昭和五八年六月六日であり、不当
利得返還請求権の消滅時効は本訴の提起により中断したというべきであるとして、
上告人Aの消滅時効の抗弁を排斥したものであるが、右に判示したところによれば、
原審の右判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論
旨は採用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しないで若しくは
原審の認定しない事実に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することがで
きない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    藤   井   正   雄
            裁判官    大   出   峻   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛