弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
(控訴人ら)
1原判決を次のとおり変更する。
2第1,第3事件
()控訴人A1
ア第1次請求
被控訴人が控訴人Aに対し平成18年1月19日付けでした特別掛金2
298万6185円の納入告知処分が存在しないことを確認する。
イ第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
ウ第3次請求
上記の処分を取り消す。
()控訴人B2
アC営業所関係
(ア)第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成18年1月19日付けでしたC営業所
に係る特別掛金6053万6322円の納入告知処分が存在しないこと
を確認する。
(イ)第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
(ウ)第3次請求
上記の処分を取り消す。
イD営業所関係
(ア)第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成18年1月19日付けでしたD営業所
に係る特別掛金1億1121万6731円の納入告知処分が存在しない
ことを確認する。
(イ)第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
(ウ)第3次請求
上記の処分を取り消す。
ウE営業所関係
(ア)第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成18年1月19日付けでしたE営業所
に係る特別掛金4560万7639円の納入告知処分が存在しないこと
を確認する。
(イ)第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
(ウ)第3次請求
上記の処分を取り消す。
3第2事件
ア第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成18年7月19日付けでしたF営業所に
係る特別掛金4128万3053円の納入告知処分が存在しないことを確
認する。
イ第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
ウ第3次請求
上記の処分を取り消す。
4第4事件
()控訴人B1
アF営業所関係
(ア)第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成19年3月30日付けでしたF営業所
に係る特別掛金2405万5482円の納入告知処分が存在しないこと
を確認する。
(イ)第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
(ウ)第3次請求
上記の処分を取り消す。
イE営業所関係
(ア)第1次請求
被控訴人が控訴人Bに対し平成19年3月30日付けでしたE営業所
に係る特別掛金1924万9674円の納入告知処分が存在しないこと
を確認する。
(イ)第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
(ウ)第3次請求
上記の処分を取り消す。
()控訴人A2
ア第1次請求
被控訴人が控訴人Aに対し平成19年7月5日付けでした特別掛金11
54万1661円の納入告知処分が存在しないことを確認する。
イ第2次請求
上記の処分が無効であることを確認する。
ウ第3次請求
上記の処分を取り消す。
(被控訴人)
主文同旨
第2事案の概要
1事案の要旨
厚生年金保険法に基づいて設立され,一般乗用旅客運送事業(タクシー事
業)を営む事業所等を設立事業所とする厚生年金基金である被控訴人は,加入
員数が基準日と比較して20%以上減少した設立事業所の事業主から当該減少
した加入員数に係る未償却債務を特別掛金として一括して徴収することを規約
で定め,これに該当した設立事業所の事業主である控訴人らに対し,上記規約
に基づいて,特別掛金として一括徴収金の納入告知をした。本件は,控訴人ら
が,上記規約の定めは厚生年金保険法の許容する範囲を逸脱しており,これに
基づく特別掛金の納入告知は法律に基づく行政処分に該当しないから,控訴人
らに対する納入告知は行政処分としては不存在又は無効であり,仮にそうでな
いとしても,厚生年金保険法等に違反する違法な行政処分であるから,取り消
されるべきであると主張して,第1次的に納入告知処分の不存在確認,第2次
的にその無効確認,第3次的にその取消しをそれぞれ求めた事案である。
原判決は,控訴人らの各第1次請求及び各第2次請求をいずれも棄却し,各
第3次請求について,その一部を認容し,その余を棄却した。控訴人らは,こ
れを不服として控訴をした。
2争いのない事実は,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1
(原判決6頁7行目から12頁24行目まで)に記載のとおりであるから,こ
れを引用する。
3争点の概要及び争点に関する当事者の主張は,後記のとおり当審における控
訴人らの主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概
要」の2及び3(原判決12頁25行目から22頁17行目まで)に記載のと
おりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの各第1次請求及び各第2次請求はいずれも理由がな
いから棄却すべきものであり,各第3次請求については,原判決認容の限度で
理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断する。
その理由は,次の2に当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほ
か,原判決「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1ないし9(原
判決22頁19行目から43頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これ
を引用する。
2当審における控訴人らの主張について
()ア控訴人らは,本件規約の本規定は,厚生年金保険法138条5項の定1
める一括徴収事由に該当せず,また,加入員数の減少理由を問わず,設立
事業所の事業主が掛金負担を潜脱することを意図していない場合まで,包
括的に一括徴収事由に含めるものであり,同項の許容する範囲を超えるも
のであるとし,したがって,本規定を根拠とする本件納入告知は,厚生年
金保険法の規定に基づく行政処分に該当せず,行政処分として不存在であ
り,仮に行政処分としての外形を有するとしても,無権限の者によりされ
た行為であるから,重大かつ明白な違法を有する処分として無効である旨
主張する。
イしかし,基金は,加入者の老齢について給付を行い,もって加入員の生
活の安定と福祉の向上を図ることを目的とし,適用事業所の事業主及びそ
の適用事業所に使用される被保険者をもって組織する法人である(厚生年
金保険法106条ないし107条)ところ,基金を設立するか否かは加入
事業主の任意であり,その給付水準も各基金ごとに定められるものであっ
て,その運営は,基金が自主的に行うことができるものである。したがっ
て,基金は,法令で定められた基金の組織や業務に関する基本事項を定め
るほか,年金等の給付,掛金及びその負担区分などについて,法令に反し
ない範囲で,個々の基金の実情に応じて基金独自の事項を定めることがで
きるものというべきであり,厚生年金保険法115条1項はそのことを前
提にしているものと解される。
本規定7項は,設立事業所の事業主がその意思に基づいて加入員数を減
少させた場合,すなわち,事業主による意図的な加入員数の減少があった
場合,これを基金からの一部脱退とみて,当該減少した加入員数に厚生年
金保険法138条5項に準ずる計算方法で算定された額の掛金を,当該設
立事業所の事業主から一括徴収することができるとするものであり,同項
の趣旨に反しないものであって,被控訴人がその実情に応じて独自に定め
た規定として有効というべきである。
ウ厚生年金保険法は,基金の掛金の徴収については,国税徴収の例による
ものとし(141条1項において準用する89条),基金が掛金を徴収し
ようとするときは,国税の徴収手続における「納入の告知」(国税通則法
36条)に相当するものとして「納入の告知」をすべきことを規定し(1
41条1項において準用する83条2項,170条3項),「納入の告
知」に係る納期限までに掛金を完納しない場合には,滞納者に対し,督促
及び国税滞納処分の例による処分を許すこと(141条1項において準用
する86条1項,5項1号,国税通則法36条2項,37条1項),「納
入の告知」及び督促には,時効中断の効力があること(170条3項)を
規定している。
このように,厚生年金保険法が,基金の掛金の徴収について,国税徴収
の例による旨定めているのは,掛金が基金の事業運営のための重要な財源
であることから,その徴収が円滑に行われて,基金の財政の破綻を招かな
いようにすることが肝要であり,そのためには,一般債権の場合と異なり,
公権力を発動して強制徴収を行う仕組みを導入する必要があるとの考慮に
基づくものであると考えられるのであって,このことからすれば,同法の
明文の規定に基づかない基金が独自に規約で定めた特別掛金についても,
同法138条5項に定める特別掛金と同様,その徴収については,国税徴
収の例によるべきものと解される。
そして,本件納入告知は,本規定7項に基づく特別掛金の徴収のため,
厚生年金保険法が規定する「納入の告知」として行われたものであり,上
記のとおりの効力を有し,掛金の「徴収の処分」として処分の取消しの訴
えの対象となるものとされている(169条において準用する91条の
3)のであるから,本件納入告知は行政処分に該当すると解するのが相当
である。
また,上記によれば,本件納入告知は,法律上の権限に基づいて行われ
たものというべきである。
エこの点に関し,控訴人らは,社会保険審査会が,本件納入告知の行政処
分性を否定し,本件納入告知に対する審査請求を不適法として却下したこ
とを捉え,「本件納入告知は,法による督促及び滞納処分という強制力を
持ちながら,「処分」の相手方に対し法の予定する不服申立てが保障され
ない処分ということになり,社会保険審査会に対する審査請求制度を設け
た趣旨を没却するものである。」と主張する。
しかし,社会保険審査会は,参加行政庁の下に設置された行政機関では
あるが,参加行政庁から独立した第三者的立場で審査権限を行使するもの
であって,参加行政庁の通達や行政解釈に拘束されないものであるから,
本件納入告知の行政処分性について,参加行政庁と見解を異にすることは
あり得ることであり,また,下級裁判所の判断と異なることになっても,
行政処分に対する不服について審査権限を有する判断機関としてそれぞれ
独立性を有する以上,やむを得ないものである。
オ以上のとおりであって,控訴人らの上記イの主張は理由がない。
()控訴人らは,基金による掛金の徴収は国税徴収の場合と同様に行われる2
こととされており,基金の徴収権は,判決によらずに差押等の強制処分を行
うことができるという点で,厚生年金保険法に基づき基金に特別に授与され
た権限であることから,基金による徴収権の範囲は同法の明文上認められた
ものに限られなければならず,同法138条5項は,同項に規定された以外
の徴収権を認めるものではない旨,万一,基金の規約に定めることによって
同法に明文の規定がある場合以外の一括徴収が認められるとしても,それは,
設立事業所の事業主により正当な理由なくして大量の加入員の資格喪失が行
われることによって,同項の趣旨を潜脱するような例外的な場合に限られる
と解すべき旨主張する。
しかし,基金が,法令で定められた基金の組織や業務に関する基本事項を
定めるほか,年金等の給付,掛金及びその負担区分などについて,法令に反
しない範囲で,個々の基金の実情に応じて基金独自の事項を定めることがで
きるものと解すべきことは,前記()イで説示したとおりであり,厚生年金1
保険法138条5項が,基金が同項に規定された以外の一括徴収権を規約で
定めることを禁止する趣旨のものであるとか,例外的に同項に規定する場合
以外の一括徴収を規約に定めることができるのは,控訴人ら主張のような例
外的な場合に限られると解すべき根拠はない。そして,本規定7項が,厚生
年金保険法138条5項の趣旨に反しないものであって,被控訴人がその実
情に応じて独自に定めた規定として有効というべきことも,前記()イで説1
示したとおりである。
()控訴人らは,厚生年金保険法が掛金の具体的な賦課要件に関する定めを3
基金の規約に委ねていることが租税法律主義に反しないか否か等,その他の
争点についての原審の判断を種々論難しているが,これらの争点についての
原審の判断は正当なものとして是認することができ,原判決に控訴人ら主張
の誤りはない。
3以上の次第で,控訴人らの請求につき原判決認容の限度で認容し,その余を
棄却した原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないから棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第19民事部
裁判長裁判官青柳馨
裁判官長久保守夫
裁判官中嶋功

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