弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人中筋義一、同中筋一朗、同福田玄祥、同益田哲生の上告理由第一点に
ついて
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として
是認することができ、その過程に所論の違法は認められず、また、右判断は、所論
引用の各判例に違反するものでもない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつ
きよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判
決を正解しないでこれを非難するにすぎないものであつて、採用することができな
い。
 同第二点について
 地方税法(以下「法」という。)によれば、不動産取得税の課税標準は、不動産
を取得した時における不動産の価格であり(七三条の一三第一項)、この価格とは、
適正な時価をいうのであるが(七三条五号)、固定資産課税台帳に固定資産の価格
が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得
税の課税標準となるべき価格を決定するものとされ(七三条の二一第一項本文)、
固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は特別の事情があ
つて当該固定資産の価格により難い不動産については、道府県知事が自治大臣の定
める固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となる
べき価格を決定するものとされているのである(同条二項)。
 ところで、固定資産課税台帳の固定資産の価格登録の制度は、元来、固定資産税
の課税標準を定めるためのものであつて、法の固定資産税に関する規定の定めると
ころである。すなわち、基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(以下「
基準年度の土地又は家屋」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、基
準年度にあつては、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(以
下「基準年度の価格」という。)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(以下
「土地課税台帳等」という。)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(以下
「家屋課税台帳等」という。)に登録されたもの(三四九条一項)、第二年度、第
三年度にあつては、その賦課期日において、地目の変換、家屋の改築又は損かいそ
の他これに類する特別の事情等があるため基準年度の固定資産税の課税標準の基礎
となつた価格によることが不適当である等の場合を除いては、当該土地又は家屋の
基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課
税台帳等に登録されたもの(同条二項、三項)とされ(基準年度の固定資産税の課
税標準の基礎となつた価格によることが不適当である等の場合は、当該土地又は家
屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は
家屋課税台帳等に登録されたものとされている。同条二項、三項)、また、第二年
度において新たに固定資産税を課することとなる土地又は家屋(以下「第二年度の
土地又は家屋」という。)又は第三年度において新たに固定資産税を課することと
なる土地又は家屋に対して課する第二年度又は第三年度の固定資産税の課税標準は、
当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地
課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとするとされ(三四九条四項、六
項)、さらに第二年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税
標準についても、基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度又は第三年度の
固定資産税の課税標準と同様の取扱いがされ(三四九条五項)、いわゆる台帳課税
主義及び価格の据置制度がとられているのである。そして、これに伴い、市町村は、
固定資産の状況及び固定資産の課税標準である固定資産の価格を明らかにするため、
固定資産課税台帳を備え(三八〇条)、市町村長は、固定資産評価員の作成した評
価調書に基づき、自治大臣の定める固定資産評価基準によつて、固定資産の価格等
を毎年二月末日までに決定し(四〇九条、四〇三条一項、四一〇条)、直ちに当該
固定資産の価格等を固定資産課税台帳に登録しなければならないとされているので
あるが(四一一条一項)、第二年度又は第三年度において基準年度の土地又は家屋
に対して課する固定資産税の課税標準について基準年度の価格による場合にあつて
は、あらためて価格の登録の手続をすることなく、土地課税台帳等又は家屋課税台
帳等に登録されている基準年度の価格をもつて第二年度又は第三年度において土地
課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録された価格とみなしている(四一一条二項)
のである(第三年度において基準年度の土地若しくは家屋又は第二年度の土地若し
くは家屋に対して課する固定資産税の課税標準について比準価格による場合にあつ
ても、右と同様に、登録された比準価格をもつて第三年度において土地課税台帳又
は家屋課税台帳等に登録された比準価格とみなしている。同条二項)。
 思うに、前記のように、法が固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されてい
る不動産については原則として当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課
税標準となるべき価格を決定するものとしているのは、固定資産税の課税対象とな
る土地及び家屋の範囲は、発電所及び変電所が家屋に含まれることを除けば、不動
産取得税の課税対象となる不動産と同一であり(三四一条二号、三号、七三条一号
ないし三号)、固定資産税の課税標準となる価格も不動産取得税のそれと同じく適
正な時価をいうとされ(三四一条五号)、両税に用いられる固定資産の評価基準も
ともに自治大臣の定める同一の固定資産評価基準であるところからみると、不動産
の価格の評価の統一と徴税事務の簡素合理化をはかるためであると考えられるので
あつて、要するに、固定資産税の課税標準となるべき固定資産課税台帳に登録され
た固定資産の価格が、原則として、不動産取得税の課税標準である当該不動産の適
正な時価をあらわしていると認められるからにほかならない(七三条の二一第一項
但書参照)。そして、各年度の固定資産税の課税標準は、前述のように、各年度の
登録価格又はみなされた登録価格によるものであつて(課税標準の基礎となる価格
については価格の据置制度がとられているのであるが、第二年度又は第三年度にお
いて基準年度の価格によるべき場合又は第三年度において比準価格によるべき場合
には、登録された基準年度の価格又は比準価格が第二年度又は第三年度の登録価格
とみなされ、そのみなされた各年度の登録価格により課税標準が定まる。)、登録
価格(又はみなされた登録価格)自体は当該年度限りのものとされているのであり、
また、基準年度においては、あらためて当該年度の固定資産税の賦課期日における
土地又は家屋の価格が評価、決定され、それが固定資産課税台帳に登録され、基準
年度の固定資産税の課税標準は、右登録価格によるのであつて、前年度の価格によ
ることはないのである。これらのことを考慮すると、法七三条の二一第一項にいう
「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産」とは、不動産を取
得した時において、その取得の日の属する年の固定資産税の賦課期日における不動
産の価格が固定資産課税台帳に登録されている不動産を指し、基準年度に不動産を
取得した場合において、右取得時までに基準年度に係る当該不動産の価格の決定及
び当該価格の固定資産課税台帳への登録が行われず、固定資産課税台帳に前年度の
価格が記載されたままになつているにすぎないときは、法七三条の二一第二項にい
う「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産」として、道府
県知事は、自治大臣の定める固定資産評価基準により、当該不動産に係る不動産取
得税の課税標準となるべき価格を決定すべきものと解するのが相当である。
 本件についてこれをみるに、昭和三九年度は基準年度にあたり、しかも市町村長
が固定資産の価格を決定すべき期間は三月三一日までとされていたのであるが(昭
和三九年法律第二号参照)、上告人が本件第二土地を取得した昭和三九年三月二八
日当時、固定資産課税台帳に昭和三九年度の右土地の価格が登録されていたかどう
かは必ずしも明らかではない。しかしながら、仮に右価格が登録されていたとすれ
ば、当然、右登録価格により本件第二土地に係る不動産取得税の課税標準となるべ
き価格が決定されるべきものであるし、また、右価格が登録されていなかつたとす
れば、前記説示のとおり法七三条の二一第二項に基づき都知事が自治大臣の定める
固定資産評価基準によつて右土地に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を
決定すべきものであるが、この価格は、前記のような不動産取得税及び固定資産税
に関する不動産の価格の評価のしくみから考えれば、のちに昭和三九年度の固定資
産税の課税標準となるべき価格として固定資産課税台帳に登録されるにいたつた価
格と同一になるべきものであるから、右登録価格を課税標準としてした本件賦課処
分は違法とはいえない。原審の判断は、右と理由を異にするが、その結論において
正当である。論旨は採用することができない。
 同第三点について
 所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論
の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するにすぎないものであ
つて、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光

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