弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

令和2年3月19日判決言渡
平成30年(行ウ)第138号情報非公開決定処分取消等請求事件
主文
1松原市長が平成30年3月8日付けで原告に対してした情報非公開決定の
うち,別紙公開請求情報目録記載の情報を公開しないとした部分を取り消5
す。
2松原市長は,原告に対し,別紙公開請求情報目録記載の情報を公開する旨
の決定をせよ。
3訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由10
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,原告が,松原市情報公開条例(平成11年松原市条例第21号。以15
下「本件条例」という。)5条1項1号に基づき,本件条例上の情報公開の実施
機関である松原市長に対し,「平成29年度において,松原市が一般廃棄物の収
集運搬業を無許可で行っていた事業者に対し,指導等を行った報告書,起案文
書,無許可営業を行っていた事業者から提出された顛末書等,これらに関係す
る一切の書類」の公開の請求(以下「本件情報公開請求」という。)をしたとこ20
ろ,松原市長が,本件情報公開請求の対象となる文書に記録されている情報は
本件条例6条3号ウに該当するとして,全部を公開しない旨の決定(以下「全
部非公開決定」という。)をしたため,原告が,同決定は違法であると主張して,
同決定のうち,別紙公開請求情報目録記載の情報(以下「本件非公開情報」と
いい,当該情報が記録された文書を「本件非公開文書」という。)を公開しない25
とした部分の取消しを求めるとともに,松原市長に対して本件非公開情報を公
開する旨の決定をすることの義務付けを求める事案である。
2本件条例の定め(甲1)
(1)1条
この条例は,情報の公開を求める権利を明らかにして,市の保有する情報
の公開に関し必要な事項を定めることにより,「知る権利」の保障に資すると5
ともに市民の市政への参加を推進し,もって市民本位の市政の発展に寄与す
ることを目的とする。
(2)2条
この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に
定めるところによる。10
1号
実施機関市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,
農業委員会,固定資産評価審査委員会,水道事業管理者,消防長及び議会を
いう。
2号15
情報実施機関又は指定管理者が職務上作成し,又は取得した文書,図画
及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識す
ることができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該実施機関又
は指定管理者が組織的に用いるものとして実施機関又は実施機関に代わっ
て指定管理者が保有しているもの(以下「文書等」という。)に記録されて20
いる情報をいう。
3号
公開実施機関がこの条例の規定により,情報を閲覧若しくは視聴に供し,
又はその写しを交付することをいう。
(3)5条1項25
次に掲げるものは,実施機関に対して,情報の公開(中略)の請求(以下
「公開請求」という。)をすることができる。
1号
市の区域内に住所を有する者
2~5号(略)
(4)6条5
実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報については,情報の公開
をしないことができる。
1号
法人(国及び地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)を除
く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む10
個人の当該事業に関する情報であって,情報の公開をすることにより,当該
法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認め
られるもの(人の生命,身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある
事業活動又は人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼす違法な若し
くは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)15
2号(略)
3号
事務事業の執行過程において,実施機関が作成し,又は取得した情報であ
って,次に掲げるもの
ア,イ(略)20
ウ実施機関又は国等の機関が行う取締り,立入検査,許可,認可,試験,
入札,交渉,渉外,争訟等の事務に関する情報であって,情報の公開をす
ることにより,当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり,又は
これらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすと認められるも
の25
4号(略)
(5)8条1項
実施機関は,公開請求に係る文書等に次の各号のいずれかに該当する情報
とそれ以外の情報とが合わせて記録されている場合において,これらを容易
に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,当該該当
する情報が記録されている部分を除いて,当該情報を公開しなければならな5
い。
1号
第6条各号のいずれかに該当し,そのことを理由として公開されない情報
2号(略)
3前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によ10
り容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)本件情報公開請求
原告は,松原市の区域内に住所を有する者であるところ,平成30年2月
22日付けで,本件条例5条1項1号に基づき,本件条例上の実施機関であ
る松原市長に対し,「平成29年度において,松原市が一般廃棄物の収集運搬15
業を無許可で行っていた事業者に対し,指導等を行った報告書,起案文書,
無許可営業を行っていた事業者から提出された顛末書等,これらに関係する
一切の書類」の公開の請求(本件情報公開請求)をした(甲2)。
(2)全部非公開決定
松原市長は,平成30年3月8日付けで,原告に対し,本件情報公開請求20
の対象となる文書に記録されている情報は本件条例6条3号ウに該当する
として,全部を公開しない旨の決定(全部非公開決定)をし,原告は,その
頃,同決定に係る通知書を受領した(甲3,弁論の全趣旨)。
(3)本件訴えの提起等
ア原告は,平成30年5月30日付けで,全部非公開決定を不服として,25
松原市長に対し,審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした(乙3)。
イ原告は,平成30年9月3日,全部非公開決定は違法であると主張して,
本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
ウ松原市長は,平成31年1月18日付けで,本件審査請求に対し,本件
情報公開請求の対象となる文書に記録されている情報は本件条例6条3号
ウに該当するものではないとした上で,その一部は,本件条例6条1号本5
文に該当するなどとして,全部非公開決定を変更し,一部を公開する旨の
裁決(以下「本件裁決」という。)をした。
本件非公開文書には,本件裁決で非公開とすべきものとされた情報の一
部が記録されている。すなわち,本件非公開文書には,松原市において廃
棄物の処理及び清掃に関する法律(令和元年法律第37号による改正前の10
もの。以下「廃棄物処理法」という。)に違反して一般廃棄物収集運搬業を
無許可で行っていた事業者(以下「本件事業者」という。)の名前,所在地,
電話及びFAX番号,設立年月,代表者名,従業員数,グループ企業,取
得許可一覧,取引先,使用車両の種類と台数,様式(フォーム)等の本件
非公開情報が記録されている。(以上につき,乙3,弁論の全趣旨)15
エ原告は,本件裁決を受けて,令和元年6月14日,本件訴えのうち,全
部非公開決定のうち本件非公開情報を除く情報の公開を求める部分の訴え
を取り下げた(当裁判所に顕著な事実)。
(4)本件事業者に対する不起訴処分等
本件事業者は,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者である20
ところ,松原市においては一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うための
許可(廃棄物処理法7条1項)並びに浄化槽清掃業の許可(浄化槽法35条
1項)を受けていなかったものの,他市においては上記各許可を受けていた
(乙3)。
なお,本件事業者は,浄化槽法違反の被疑事実について,平成31年4月25
5日付けで不起訴処分となった(乙4)。
4争点
(1)本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性(争点1)
(2)本件非公開情報の本件条例6条1号括弧書き該当性(争点2)
5争点に関する当事者の主張
(1)争点1(本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性)について5
(被告の主張)
ア本件事業者は,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者であ
るところ,運搬範囲と運送経費等を勘案すれば,松原市域を営業エリアと
していると想定される業者は,松原市から10km圏内の事業者に限定さ
れるところ,そのうち,被告が上記各事業の許可をしていない業者は,110
0km圏内で28業者,7km圏内で22業者,5km圏内で6業者とい
う極めて少数の業者となるため,上記前提事実(3)ウの各情報のいずれか
1つでも公開されれば,各事業者のホームページ等を検索することにより,
本件事業者を特定することができる。
イ本件事業者は,全部非公開決定当時,廃棄物処理法違反の被疑者になっ15
ていたにすぎないのに,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定さ
れると,既に有罪判決を受けたかのような誤解を与えるし,本件事業者と
競争関係にある事業者が当該情報を利用してあたかも本件事業者が有罪
判決を受けた業者であるかのように宣伝することで,本件事業者の公正な
競争上の地位を害するおそれがある。20
また,本件事業者は,浄化槽法違反の被疑事実について不起訴処分とな
ったため,本件事業者の不起訴事件記録は,刑事訴訟法47条本文又は同
法53条の2により,非公開となっている。不起訴事件記録が非公開とさ
れる趣旨が,被疑者等の名誉,プライバシーが侵害されるなどの弊害が生
じることを防止することにあるにもかかわらず,本件非公開情報が公開さ25
れ,本件事業者が特定されると,本件事業者の名誉,信用,社会的評価及
び事業活動が損なわれ,本件事業者の正当な利益が害される。とりわけ,
松原市に参入可能な業者は本件事業者を含め32社と極めて少数の業者に
限られていることからすれば,本件非公開情報が公開され,本件事業者が
特定されると,本件事業者の公正な競争関係に大きな影響を及ぼし,本件
事業者の正当な利益を害するものといわなければならない。5
したがって,本件非公開情報は,公開されることによって本件事業者が
特定され,本件事業者の権利,競争上の地位,その他正当な利益を害する
ものと認められるから,本件条例6条1号本文に該当する。
なお,原告は,本件事業者を特定することができたとしても,本件事業
者はそのことによる社会的不利益は甘受すべきであると主張するが,同主10
張は,本件事業者が廃棄物処理法に違反し有罪であることを前提とするも
のであり,失当である。
(原告の主張)
ア本件非公開文書は,本件事業者の企業情報が記載されているパンフレッ
ト又はホームページの該当ページを印刷したものと思われるところ,本件15
非公開情報のうち,設立年月,資本金,取引銀行,従業員数,事業内容,
取得許可一覧,使用車両,取引企業に関する情報,様式(フォーム)は,
公開したとしても,直ちに本件事業者を特定できることにはならない。
また,本件非公開情報のうち,取引銀行欄の「銀行」,事業内容欄の「一
般廃棄物収集運搬業」,使用車両欄の「台」などの情報は一般的な記載であ20
り,これらの情報を公開したとしても,本件事業者を特定することはでき
ない。
したがって,本件非公開情報のうち上記各情報については,本件条例6
条1号本文に該当しない。
イ今日では法令遵守が強く求められているところ,一般廃棄物の無許可収25
集運搬により廃棄物処理法に違反した本件事業者に関する情報は,たとえ
その情報を公開したことにより,本件事業者を特定することができたとし
ても,本件事業者はそのことによる社会的不利益を甘受すべきであり,そ
もそも正当な権利,競争上の地位,利益には該当しない。
また,本件条例6条1号本文所定の「競争上の地位」とは,法人等の公
正な競争関係上の地位をいうところ,一般廃棄物の処理に関する責任は市5
町村にあり,一般廃棄物処理業は,一般廃棄物処理計画に従って一般廃棄
物処理の適正な運営が継続的かつ安定的に確保される必要性からそもそも
自由競争に委ねられておらず,許可業者の濫立等によって事業の適正な運
営が害されることのないよう,一般廃棄物処理業の需給状況の調整が図ら
れる仕組みが設けられていることからすれば,一般廃棄物処理業者である10
本件事業者には「競争上の地位」は認められる余地がないか,ほとんど認
められない。
したがって,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文所定の「当該法
人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」
には該当しない。15
(2)争点2(本件非公開情報の本件条例6条1号括弧書き該当性)について
(原告の主張)
本件条例6条1号括弧書き所定の「違法な若しくは著しく不当な事業活動
に関する情報」とは,法の規定に違反しないまでも社会通念に照らして著し
く妥当性を欠く事業活動をいうところ,本件非公開情報は,一般廃棄物の収20
集運搬業を無許可で行い廃棄物処理法に違反した本件事業者に関する情報
であるから,これに該当する。また,廃棄物処理法は,生活環境の保全と公
衆衛生の向上という目的を実現するために,一般廃棄物処理業につき許可制
を採用しているところ,許可基準に違反した一般廃棄物処理業が行われた場
合,市町村の区域の衛生や環境が悪化する事態を将来し,ひいては一定の範25
囲で市町村の住民の健康や生活環境に被害や影響が及ぶ危険が生じ得る。
したがって,本件非公開情報が仮に本件条例6条1号本文に該当するとし
ても,同号括弧書き所定の「人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼ
す違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報」に該当する。
(被告の主張)
本件条例6条1号括弧書き所定の「人の生命,身体若しくは健康に対し危5
害を及ぼすおそれのある事業活動」又は「人の財産若しくは生活に対し重大
な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動」であるか否かは,一
般廃棄物収集運搬業における許可制の趣旨等を根拠に,一般論として抽象的
にその該当性を考えるのは適切ではなく,当該情報を公にすることにより保
護される人の生命,健康及び財産等の利益と,これを公にしないことにより10
保護される法人等の権利や利益との比較衡量によって判断すべきものと解
されるところ,前者については,人の生命,身体又は健康を害する可能性が
具体的かつ確実なものであることを要し,かつ特別な安全対策なしには社会
的には存立が許されない事業活動を意味し,後者にあっては,人の財産若し
くは生活に対し,具体的に重大な影響を及ぼす事業活動でこれを停止しなけ15
ればならないものと意味するものと解される。
本件事業者は,松原市では浄化槽汚泥収集運搬業及び浄化槽清掃業の各許
可を受けていないが,他市では上記各許可を受けており,収集運搬した浄化
槽汚泥を正規の汚泥処理施設で処理しているため,人の生命,身体若しくは
健康に対し危害を及ぼした事実や人の財産若しくは生活に重大な影響を及20
ぼした事実もなく,これらのおそれも認められないから,本件非公開情報は,
本件条例6条1号括弧書きに該当しない。
第3当裁判所の判断
1争点1(本件非公開情報の本件条例6条1号本文該当性)について
(1)本件非公開情報が,「法人等に関する情報」(本件条例6条1号本文)に該25
当することは明らかであるところ,「当該法人等(中略)の権利,競争上の地
位その他正当な利益を害すると認められるもの」(同号本文)に該当するか否
かを検討するに当たり,まず,本件非公開情報を公開することにより,本件
事業者を特定することができるか否かにについて検討する。
証拠(甲3,乙3,8)及び弁論の全趣旨によれば,①本件事業者は,一
般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者であるところ,松原市にお5
いては一般廃棄物の収集及び運搬を業として行うための許可(廃棄物処理法
7条1項)並びに浄化槽清掃業の許可(浄化槽法35条1項)を受けていな
かったが,他市においては上記各許可を受けていたこと,②本件事業者と同
様に,上記各事業を営む業者であって,松原市において上記各事業の許可を
受けていない業者は,松原市(中心部)から10km圏内に位置する市や区10
域内に28業者,7km圏内に位置する市や区域内に22業者,5km圏内
に位置する市や区域内に6業者が所在することが認められる。
そして,一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業を営む業者が,通常それ
らの各事業を営むことが想定される範囲は,当該事業者が所在する場所の近
隣地域に限られるから,本件事業者と同様の立場にある事業者の数は相当程15
度限られている。また,本件非公開情報は,いずれも各事業者のホームペー
ジ等から容易に把握することが可能な情報であるとともに,多数の項目に及
んでいるため,ホームページ等の記載等と比較対照することにより,本件事
業者を特定し得るといえる。さらに,原告が主張するように,本件非公開文
書が,本件事業者の企業情報が記載されているホームページ等の写しである20
とすれば,当該ホームページ等の様式や各情報の記載位置などを比較対照す
ることにより,より容易に本件事業者を特定し得るといえる。以上からする
と,本件非公開情報は,いずれも公開されることで,本件事業者を特定する
ことができるものといえる。
(2)次に,本件非公開情報が,本件事業者を特定することができる情報に該当25
するとして,以下,本件条例6条1号本文に該当するか否かについて検討す
る。
ア本件条例6条1号本文は,「当該法人等(中略)の権利,競争上の地位そ
の他正当な利益を害すると認められるもの」の公開をしないことができる
旨規定している。そして,これに該当すると認められるためには,単に当
該情報が通常他人に知られたくないというだけでは足りず,当該情報が公5
開されることによって,当該法人等の権利,競争上の地位その他の正当な
利益,すなわち法的保護に値する当該法人等の権利等が害されることを要
すると解するのが相当である。
イ上記(1)で説示したとおり,本件非公開情報が公開された場合,本件事業
者を特定することができるから,本件事業者が廃棄物処理法に違反し,許10
可を受けずに一般廃棄物の収集及び運搬を業として行っていたことが社
会全体に認識されることとなり,その結果,本件事業者に対する社会的評
価や信用等が一定程度低下するといった不利益を被ることが予想される。
もっとも,法人等が事業活動を行うに当たっては各種法令を遵守するこ
とが当然に求められる。そして,廃棄物処理法は,一般廃棄物の収集及び15
運搬が市町村の住民の生活に必要不可欠な公共性の高い事業であり,その
遂行に支障が生じた場合には,市町村の区域の衛生や環境が悪化する事態
を招来し,ひいては一定の範囲で市町村の住民の健康や生活環境に被害や
影響が及ぶ危険が生じ得るものであることなどから,市町村がその区域内
における一般廃棄物の収集及び運搬の実施に関する責務を負うものとしつ20
つ,①当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること,②
許可を求める申請の内容が市町村の定める一般廃棄物処理計画(同法6条
参照)に適合するものであること,③その事業の用に供する施設及び申請
者の能力がその事業を的確に,かつ,継続して行うに足りるものとして環
境省令で定める基準に適合するものであることなど,同法7条5項所定の25
厳格な要件を満たす場合に限り,事業者は市町村長から許可を受けて一般
廃棄物の収集又は運搬を業として行うことができるものとしている。これ
に加え,許可を受けずに一般廃棄物の収集又は運搬を業として行った者は,
5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科
する旨(同法25条1項1号),法人の場合であれば3億円以下の罰金刑を
科する旨(同法32条1項1号)規定されており,無許可で一般廃棄物の5
収集又は運搬を業として行うことについて,同法が厳しい態度で臨んでい
ることに鑑みれば,事業者が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行うに
当たっては,同法を遵守し,許可を得てこれを行うべきであるとする社会
一般からの要請は,強いものであるというべきである。
このように,廃棄物処理法が一般廃棄物の収集又は運搬を業として行う10
ことにつき厳格な要件を定めて許可にかからしめるものとし,その違反に
対しては厳しい態度で臨んでいることに加え,本件事業者が許可区域外の
松原市で浄化槽の清掃等を行っていたことは本件事業者も認めていること
(乙3,公開された文書の1枚目,3枚目),本件事業者は,あくまでも自
ら法令遵守を怠ったことによって社会的評価や信用等が一定程度低下する15
などの不利益を被ることが予想されるにすぎないことからすれば,本件事
業者が上記不利益を被ったとしてもそれは本件事業者において受忍すべき
範囲内のものといわざるを得ない。
そうすると,本件非公開情報が公開されることによって,本件事業者の
権利,競争上の地位その他正当な利益,すなわち法的保護に値する権利等20
が害されるということはできないから,本件非公開情報は,本件条例6条
1号本文所定の「当該法人等(中略)の権利,競争上の地位その他正当な
利益を害すると認められるもの」に該当するとはいえないというべきであ
る。
ウ被告は,本件事業者は,全部非公開決定当時,廃棄物処理法違反の被疑25
者になっていたにすぎないのに,本件非公開情報が公開され,本件事業者
が特定されると,既に有罪判決を受けたかのような誤解を与えるし,本件
事業者と競争関係にある事業者が当該情報を利用してあたかも本件事業者
が有罪判決を受けた業者であるかのように宣伝することで,本件事業者の
公正な競争上の地位を害するおそれがある旨主張する。しかしながら,行
政機関から指導等を受けることと有罪判決を受けることとは全く異質のも5
のであることが明らかであることからすると,本件非公開情報が公開され
ることによって,本件事業者が,被告から指導等を受けた事業者であると
認識される以上に,有罪判決を受けた事業者であるという誤解を招くおそ
れがあることを想定することは相当ではない。また,被告が主張するよう
に,競争関係にある事業者があたかも本件事業者が有罪判決を受けた業者10
であるかのように宣伝したとしても,本件事業者は,そのようなことはな
いことを容易に反論し得るし,名誉棄損に該当するとして不法行為責任等
を追及し得ることからすると,そもそも被告が主張するような事態に至る
可能性は乏しいものといわざるを得ず,その競争上の地位を害されるおそ
れが客観的に認められるとはいえない。したがって,被告の上記主張は,15
採用することができない。
また,被告は,不起訴事件記録が非公開とされる趣旨が,被疑者等の名
誉,プライバシーが侵害されるなどの弊害が生じることを防止することに
あるにもかかわらず,本件非公開情報が公開され,本件事業者が特定され
ると,本件事業者の名誉,信用,社会的評価及び事業活動が損なわれ,本20
件事業者の正当な利益が害される旨主張する。しかしながら,本件条例1
条の目的に加え,上記イで述べた廃棄物処理法が一般廃棄物の収集又は運
搬を業として行うことにつき許可制を採用し,厳格な態度で臨んでいるこ
とに鑑みれば,本件事業者が浄化槽違反の被疑事実について不起訴処分を
受けたことを踏まえても,本件事業者の名誉,社会的評価等を法的に保護25
すべきであるとはいえないから,被告の上記主張は,採用することができ
ない。
エよって,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文に該当しないから,
全部非公開決定のうち本件非公開情報を公開しないとした部分は違法で
あり,取消しを免れない。
2本件義務付けの訴えについて5
(1)上記1で説示したとおり,全部非公開決定のうち本件非公開情報を公開
しないとした部分は違法であり,取り消されるべきであるところ,本件条例
6条柱書は,実施機関は,同条各号のいずれかに該当する情報については,
情報の公開をしないことができる旨規定しており,本件条例には,当該情報
に非公開情報が記録されていない場合に,あえてこれを非公開とする処分が10
できるとする行政裁量を定めた規定はない。そして,上記1で説示したとお
り,本件非公開情報は,本件条例6条1号本文に該当せず,また,その内容
も当該事業者のホームページ等に法人の概要として掲載されている公開情
報であること(乙3の4頁)からすれば,これが同条各号に該当することを
うかがわせる事情も存在しない。15
したがって,本件において,本件条例上の実施機関である松原市長は,本
件非公開情報を公開する旨の決定をすべきことが明らかであると認められ
る。
(2)よって,行政事件訴訟法37条の3第5項に基づき,松原市長に対し,本
件非公開情報を公開すべき旨を命ずる判決をするのが相当である。20
3結論
以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求はいず
れも理由があるから,これらを認容することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官松永栄治
裁判官宮端謙一5
裁判官渡邊直樹10
別紙
公開請求情報目録
松原市長が平成30年3月8日付けで原告に対してした情報非公開決定により
公開しないとされた文書のうち平成31年1月18日付け裁決書(松企第〇号)で5
61枚目と特定されたもの(ただし,末尾の行に「2016/12/27」と記録
された部分を除く。)に記録された情報

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛