弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し平成一一年三月一七日付け一〇財経二第一五八号をも
ってした控訴人の競争入札参加資格申込みについて等級をCとした決定を取り消
す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
 主文第一項同旨
第二 事案の概要
次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に
記載のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人の補充主張
1 本件決定は行政処分である。物品買入れ契約等が私法上の行為であっても、同
契約等締結の一過程を構成する行政庁の行為が当然に行政処分性のない私法上の行
為となるものではない。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下
「補助金適正化法」という。)には本来私法上の贈与である補助金の交付・不交付
の決定を行政処分とする(擬制する)旨の明文規定はないが、右決定は行政処分で
あるとされている。
 行政処分性の有無の決定要素とされる優越的な意思の発動及び個人の権利又は法
的利益への直接の影響については具体的に検討されるべきであり、判例上も税務署
長が行う国税通則法五七条所定の充当、登記官が行う不動産登記簿の表題部に所有
者を記載する行為の行政処分性が肯定され、税関長が行う関税定率法二一条三項に
基づく通知についても行政処分性が肯定されている。右判決によると、①行政機関
としての立場から法定の要件の下に一方的に行う行為であること、②行政庁の権限
の行使が法律に根拠があること、③根拠法規の規定の仕方からは法律上の効果があ
るといえなくても、行為の実質からみて処分性を肯認しなければ国民に酷な結果と
なること、④その行為が国民の何らかの権利を基礎付けることになることのいずれ
かに該当すれば、右行為の行政処分性(行為の公権力性)は肯定されることにな
る。また、⑤直接の影響の点は、行政庁の行為によって個人の法律上の地位に何ら
の影響が生じない行為を行政処分から除外する消極要件として機能するにすぎな
い。
2 本件決定は、地方自治法等の法令に基づき被控訴人が一方的に行ったもので右
①②に該当する。また本件決定により控訴人はそれまで有していた等級Bの資格を
失い、その要件充足を条件とする競争入札から確
定的に排除され、入札しても参加資格のないものとして無効とされ(地方自治法一
六七条の六第二項)、東京都との間で適法に契約を締結し得なくなる法律上の効果
が生ずる。控訴人は設立当初から五〇年以上一貫して実質的に東京都水道局専属の
水道メータの修理・改造を行っている事業所であり、控訴人の設備、人員、資格、
経験、ノウハウ等のすべてが被控訴人との取引継続の目的で統合され存在している
のであるから、本件決定は控訴人の存在に影響を与えるものである。控訴人と東京
都との間の専属的継続的契約関係は、それが私人間の契約であれば法的保護の対象
となるのは自明であるが(不当破棄は効力を生じず、損害の賠償や契約上の地位確
認を求める民事訴訟が可能である。)、私人間の契約ではないため本件決定に対す
る取消訴訟以外にその違法を是正する手段はないのであって、右③の要件も充足す
る。
 本件決定は控訴人が有し続けていた入札資格を失わせ、以降の入札から控訴人を
排除し、控訴人のした入札を無効とする法的効果をもたらし、地方公共団体との間
で競争入札を通して契約を締結する機会を制度的に奪うものであるが、それは一般
的・抽象的な規範を定立したり引き続き具体的な行政処一分が行われることを予定
しておらず、本件決定自体が入札の有効・無効に直接結びつくものであって、本件
決定以外に入札参加への障害はなく、競争入札に参加する地位は本件決定のみにか
かっている。したがって本件決定は右⑤の消極的要件にも当たらない。
 控訴人が東京都と契約を締結する権利ないしその機会を与えられる権利の有無の
問題と、行政庁が参加資格の審査・等級付けを一方的に行うことの行政処分性の有
無の問題とは論理必然的に結びつくものではない。個人タクシー事業者につき利用
者である国民との間で運送契約を締結する権利ないしその機会を与えられる権利は
一般に認められないが、同事業を営むのに必要な事業免許の許否の決定が行政処分
であることに異論は存しない。
二 被控訴人の補充主張
1 本件決定は公権力性がなく、行政処分ではない。補助金適正化法は立法政策上
形式的な行政処分性を付与しているにすぎず、本件決定に関してはそのような趣旨
の法令の規定はないからこれを補助金の交付・不交付の決定と同一に論ずることは
できない。
2 東京都と契約を締結する権利ないしその機会を与えられる権利は一般に認めら
れていない。したがって
被控訴人が控訴人の競争入札参加資格を審査し、本件決定により等級付けを行った
ことによって控訴人の権利には何らの変動がない。控訴人と東京都との間に専属的
継続的契約関係はなく、控訴人には何らの法律上の利益もない。控訴人が援用する
最高裁判所判決は、いずれも本件決定の対等当事者間における契約締結の準備的行
為とは性格を異にし、法律上の地位に対する影響も異なるものである。
第三 証拠関係
 本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四 当裁判所の判断
 当裁判所は本件決定は行政処分ではなく本件訴えは不適法であると判断する。そ
の理由は次のとおり加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の
判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人の補充主張に対する判断)
1 控訴人は、本件決定によって東京都との間の専属的継続的契約関係を奪われた
等と主張する。
 しかし、控訴人がその設立以来行ってきた水道メータの販売及び修理の契約相手
が東京都であり、控訴人の設備や人員等が東京都との取引継続を目的として存在し
ているとしても、それらは控訴人の従来の営業内容や組織等の実態をいうにすぎ
ず、右実態によって控訴人と東京都との間で専属的契約関係が存したということは
できないし、他に右主張に係る契約関係が存したことを認めるべき証拠もない。ま
た前記のとおり控訴人が東京都と契約を締結する権利ないしその機会を与えられる
権利を有しているということもできない。そもそも被控訴人が競争入札参加資格審
査を実施する目的は、前記のように私法上の法律関係である物品買入れ契約等の締
結により東京都に損失が生ずる事態を未然に防ぐことにあるのであって、特定の業
者を保護したりその既得権といったものを尊重することを目的とするものではな
い。私法上の契約を締結したことのある一方当事者(それが普通地方公共団体であ
る場合を含む。)が、自己の損失防止のために他方当事者との間のその後の契約に
つき自ら一定の制限を設け、あるいは契約の締結自体をしないとすることは本来的
に自由であり、これを一方当事者の優越的意思の発動であるということはできない
し、他方当事者の存立が一方当事者に依存していることによって直ちに右制限を設
けることなどが許されないとすることもできない。したがって、以上と異なる前提
に立つ控訴人の主張はいずれも採用できない。

 控訴人は前記補充主張記載①ないし④のいずれかに該当すれば行政処分性が肯定
され、同⑤は消極要件として機能するにすぎない旨主張する。
 しかし、控訴人の引用する判例の示す見解によっても控訴人主張のような解釈を
とることはできず、右主張は独自の見解といわざるを得ない。本件決定に係る等級
の決定は前記のように地方自治法及び東京都水道局における管理規程を含む法令の
根拠に基づくものであるが、それは契約の準備的行為として行われる普通地方公共
団体の内部行為にすぎないものであって、右決定が被控訴人の優越的意思の発動と
して一方的に行われたものであるとすることはできない。また控訴人が被控訴人に
対し法的保護の対象となる契約上の地位を有していたといえないことも前記のとお
りであって、右主張は採用できない。
第五 結論
 よって、原判決は正当であり本件控訴は理由がないからこれを棄却することと
し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項本文、六一
条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一七民事部
裁判長裁判官 新村正人
裁判官 笠井勝彦
裁判官 田川直之

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