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裁判例


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               主         文 
 1 控訴人の本件控訴に基づき,原判決主文第1項を次のとおり変更する。
  「1(1) 被控訴人は,控訴人に対し,金2145万4285円を支払え。
    (2) その余の控訴人の請求(当審における請求拡張部分を含む。)を棄却する。」
 2 控訴人のその余の本件控訴を棄却する。
 3 被控訴人の本件控訴に基づき,原判決主文第3項を次のとおり変更する。
  「3 控訴人は,被控訴人に対し,金1464万8440円及び平成15年10月8日から別
紙物件目録記載1(3),3ないし6,12ないし25及び27ないし30の各土地の明渡し済み
まで,1か月当たり,それぞれ別紙「賃料相当損害金一覧表」の「認容額」欄に記載の金
員(合計月額金84万2488円)の割合による金員を支払え。」
 4 被控訴人のその余の本件控訴を棄却する。
 5 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを4分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人
の各負担とする。
 6 本判決主文第1項(1)及び第3項は,仮に執行することができる。
               事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
 (1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
 (2)ア 控訴人と被控訴人との間において,控訴人が被控訴人に対し,別紙物件目録記
載1(1),2ないし36(34ないし36の各土地に関する請求は,当審で拡張されたもの。以
下,同じ。)の各土地建物について,期間の定めがなく,賃料が合計1か月10万6000
円,修理代金の費用は被控訴人の負担とするとの内容の賃借権を有することを確認す
る。
  イ((2)アについての予備的請求①)
    控訴人と被控訴人との間において,控訴人が被控訴人に対し,別紙物件目録記載
1(1),2ないし8及び34ないし36の各土地を敷地とする同33の各建物,同9の土地を敷
地とする同32の各建物並びに同10ないし30の各土地を敷地とする同31の各建物につ
いて,期間の定めがなく,賃料が合計1か月10万6000円,修理代金の費用は被控訴
人の負担とするとの内容の賃借権を有することを確認する。
  ウ((2)アについての予備的請求②)
    控訴人と被控訴人との間において,控訴人が被控訴人に対し,別紙物件目録
1(1),2ないし36の各土地建物について,期間が昭和49年1月1日から平成25年12月
31日まで,賃料が合計1か月10万6000円,修理代金の費用は被控訴人の負担とする
との内容の賃借権を有することを確認する。
  エ((2)アについての予備的請求③)
    控訴人と被控訴人との間において,控訴人が被控訴人に対し,別紙物件目録
1(1),2ないし36の各土地建物について,期間が昭和49年1月1日から平成34年11月
30日まで,使用料が合計1か月10万6000円,修理代金の費用は被控訴人の負担と
するとの内容の使用借権を有することを確認する。
 (3) 被控訴人は,控訴人に対し,別紙物件目録記載1(2),7及び8の各土地(面積合計
1178.99㎡)を引き渡せ。
 (4) 被控訴人は,控訴人に対し,平成9年3月1日から前記引渡し済みまで1か月当た
り41万3000円の割合による金員を支払え。
 (5) 被控訴人は,控訴人に対し,9051万7404円並びにうち3324万0649円に対す
る昭和54年1月1日から支払済みまで年1割の割合による金員,うち5585万3299円
に対する平成9年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち142万34
56円に対する平成14年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞ
れ支払え。
 (6) 被控訴人の本件控訴を棄却する。
 2 被控訴人
 (1) 控訴人の本件控訴を棄却する。
 (2) 控訴人の当審において拡張された請求を棄却する。
 (3) 原判決主文第3項を次のとおり変更する(当審における請求の拡張部分を含
む。)。
  「控訴人は,被控訴人に対し,別紙『賃料相当損害金一覧表』記載の各土地につい
て,平成3年4月16日から明渡し済みまで,1か月当たりそれぞれ同表『請求額』欄記載
の金員(合計165万9654円)の割合による金員を支払え。」
第2 事案の概要
 1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,主位的には昭和49年1月1日締結の土地建
物に係る賃貸借契約(後記本件契約)が更新されたとして,予備的にはこれと異なる内容
の賃貸借契約及び使用貸借契約に基づいて,土地建物の使用権(賃借権又は使用借
権)の確認,被控訴人が占有している一部の土地の引渡し及び引渡しまでの損害金の支
払を求めるとともに,貸金,立替金等の支払を求めた(本訴)のに対し,被控訴人が,控
訴人に対し,控訴人には使用権が存在しないとして,所有権に基づき,各不動産の明渡
し及び不法行為に基づき,賃料相当損害金等の支払を求めた(反訴)事案である。
 2 原審は,被控訴人代表者清算人A(以下「A清算人」という。)が昭和54年2月20日
にした解除の意思表示により,本件契約は有効に解除されたとして(控訴人と被控訴人と
の間における金銭貸付けの事実は認められず,修繕費用の立替金も前記契約解除後に
負担したことになるとして,被控訴人の相殺の抗弁を排斥した。),控訴人の本訴請求を
すべて棄却し,被控訴人の反訴請求のうち,土地建物の明渡しを求める部分について
は,被控訴人の所有に属さない土地部分及び既に被控訴人が占有を回復している土地
部分を除き理由があるとして認容し,また,賃料相当損害金支払請求についても,一部を
理由があるとして認容したが,その余は理由がないとして棄却した。これらを不服として
当事者双方から提起されたのが,本件各控訴事件である。
   なお,当審において,控訴人は,賃借権あるいは使用借権の確認の対象土地の範
囲を拡大し(別紙物件目録記載34ないし36の各土地を追加),被控訴人は,不当利得
返還請求権(民法703条)を請求原因として追加するとともに,賃料相当損害金の支払
請求を前記のとおり拡張した。
 3 前提となる事実(争いがないか,掲記の証拠により容易に認定できる事実)
 (1) 被控訴人は,昭和5年3月28日,控訴人の祖父であり,医師であったBが,当時所
有していた多くの土地建物等を実質的に1人で現物出資するなどして,「合資會社C病
院」の商号で一般の医業等及びこれに付随する一切の業務の経営を目的として設立され
た同族会社である(設立登記は昭和5年4月2日に経由されている。)。
 (2) 昭和27年12月21日,被控訴人は,戦後の医療法の改正に伴い,現在の商号で
ある「C合資会社」に変更されることとなり,目的も,動産及び不動産の賃貸業並びにこれ
に附帯する一切の業務と変更された。同時に,昭和23年2月25日より被控訴人の無限
責任社員であった,Bの長男であり控訴人の実父であるD(医師。)は有限責任社員とな
り(Bも有限責任社員であった。),有限責任社員であった,Bの妻Eが唯一の無限責任社
員となった(ただし,これらの変更登記については,昭和31年10月5日付けで各変更が
されたとして,同月18日に経由されている。)。
 (3) 被控訴人は,昭和27年12月21日,全社員の同意を得た上,被控訴人所有の土
地建物(土地面積合計3402.75坪〔約1万1230㎡〕,建物床面積合計980.25坪〔約
3235㎡〕。一部にBの所有土地を含む。)及び医療機器等について,D(同人はC病院の
院長を務める。)との間で,①同物件を同病院のために使用すること,②賃料月額10万
円,③期間20年,④同物件に破損又は故障が生じた時は速やかに被控訴人の費用で
原状回復することを原則とすること,等を内容とする賃貸借契約を締結した(甲1。以下
「前契約」という。)。
 (4) 昭和45年2月13日,Bが死亡した。
 (5) 前契約の賃貸物件のうち,約3800㎡の土地が昭和37年ないし39年ころにa町に
寄附され,また,昭和47年1月ころには,約2,600㎡の土地がその上の建物を取り壊し
た上で同町へ売却され,これらの所有権移転に伴い,同契約の対象物件も当然ながらそ
の分減少した。
 (6) 前契約が20年の期間満了で終了することとなるのを受け,これに先立ち,昭和47
年9月1日,引き続き前契約の両当事者である被控訴人(無限責任社員はE)とDとの間
で,前記減少した残りの土地建物(別紙物件目録記載の土地建物,以下「本件各土地建
物」という。面積は,土地が合計約5500㎡〔当審において拡張された土地部分を含める
と約6650㎡〕,建物〔床面積〕が合計約2400㎡。なお,別紙「賃貸物件概況図(1)」及び
「賃貸物件概況図(2)」参照)及び医療機器について,賃料月額5万円,期間同年12月1
日から30年とするほか,前契約と同一内容の賃貸借契約を締結した(甲14。以下「昭和
47年契約」という。)。
 (7) 昭和47年12月22日,Dが死亡した。
 (8) Eは,昭和52年12月2日に死亡し,被控訴人の無限責任社員がいなくなったた
め,被控訴人は解散することとなり,清算人としてA清算人が就任した(就任登記は昭和
53年5月1日に経由されている。)。
 (9) 被控訴人は,昭和53年7月分以降の賃料支払を遅滞している。
 (10) A清算人は,昭和54年2月20日到達の書面で,控訴人に対し,本件契約(後記
参照)を解除する旨の意思表示をした(甲27の1,2,乙15ないし17)。
 (11) A清算人は,昭和55年5月30日に解任され,同日,代わって現清算人が就任し
た(就任登記は同年8月29日に経由されている。)。
 (12) 平成9年3月4日,被控訴人は,別紙物件目録記載1(2),7及び8の各土地(合計
面積1178.99㎡。以下「被控訴人占有土地」という。)上にあった別紙物件目録記載3
3のうち主たる建物(以下「旧F荘」という。)を控訴人に無断で取り壊し,その後被控訴人
占有土地周辺をフェンスで囲むなどして,同土地を占有している。
 (13) 平成13年3月19日,被控訴人は,控訴人に対し,本件契約の解約申入れをした
(当裁判所に顕著な事実)。
 (14) 別紙物件目録記載1(3),3ないし6及び9ないし33の各土地建物は,被控訴人の
所有である。
 (15) 別紙物件目録記載2,34ないし36の各土地は,控訴人,補助参加人G,同H,同
I,同J及び同参加人K並びにLの共有である(34ないし36の各土地については弁論の
全趣旨)。
    なお,控訴人や前同補助参加人ら(個人)をはじめとする関係者の身分関係は,別
紙「身分関係図」記載のとおりである。また,補助参加人Gは,同身分関係図記載のMら
9名から,平成元年7月24日から同年8月6日までの間に,被控訴人の各出資持分(合
計93万7140円)の譲渡を受け,本件訴訟について利害関係を有するに至った。
 (16) 本件各土地建物は,控訴人が昭和53年7月1日以降占有している(ただし,前
記(12)のとおり平成9年3月4日以降は,被控訴人占有土地については,被控訴人が占
有を回復しており,同目録記載1(1),2及び3の各土地の一部については後記のとおり争
いがある。)。
 4 当審における争点は,原審とほぼ同様であり,次のとおりである。
 (1) 昭和49年1月1日,控訴人と被控訴人(当時Eが無限責任社員)との間で,本件各
土地建物につき,賃貸借契約(賃料合計10万6000円,期間昭和47年12月1日より5
0年間,以下「本件契約」という。)あるいは同条件での使用貸借契約が締結されたか(主
位的主張)。
 (2) 控訴人は,本件各土地建物について賃借権あるいは使用借権を時効取得したか
(予備的主張)。
 (3) 本件契約の有効性
  ア 本件契約締結当時,Eに意思能力があったか。
  イ 本件契約は,商法72条違反により無効か。
  ウ 本件契約は,被控訴人の定款違反により無効か。
  エ 本件契約は,商法75条2項違反により無効か。
  オ 控訴人が本件契約の効力を主張することは,信義則に反し無効か。
 (4) 昭和54年2月20日,A清算人のした本件契約解除の意思表示は有効か。
 (5) 控訴人の被控訴人に対する貸付金債権があるか。また,控訴人に被控訴人に対
する修繕費用負担特約に基づく立替金債権が認められるか。
 (6) 仮に,貸付金及び立替金が存在するとして,時効により消滅しているか。
 (7) 平成13年3月19日に被控訴人がした本件契約についての解約申入れは有効か。
 (8) 平成9年3月4日に被控訴人がした旧F荘の取壊しによって,控訴人に損害が発生
したか。発生したとしてその金額は幾らか。
 (9) Nは,別紙物件目録記載1(1),2及び3の各土地の一部を占有しているか。
 (10) 本件各土地建物の賃料相当損害金額あるいは不当利得金額は幾らか。
 5 争点に関する各当事者の主張
 (1) 争点(1)(本件契約あるいは使用貸借契約の成否)について
 【控訴人】
  ア 控訴人は,被控訴人との間で,昭和49年1月1日,以下の約定で本件契約を締
結した(主位的請求)。
   (被控訴人は,昭和27年12月21日,C病院を経営するDとの間で前契約を締結
し,Dに対して同年以降そのすべてを賃貸してきたところ,Bが死亡した昭和45年2月13
日の後である昭和47年9月1日,前契約を更新する形でDとの間で昭和47年契約を締
結したが,同年12月22日,Dが死亡したため,被控訴人の唯一の無限責任社員であっ
たEは,C家の財産が分散することを恐れ,被控訴人が所有するC家の財産を実質的に
Dの長子である控訴人に取得させるため,本件契約を締結したものである。)
  (ア) 目的物件 本件各土地建物
     ただし,旧F荘およびその附属建物のうちの符号7の建物は,現在存在しない。
     なお,別紙物件目録記載2及び34ないし36の各土地は,被控訴人所有のもの
ではないため契約書(甲14)には記載されていないが,本件契約の目的物件には含まれ
ている。すなわち,これらの土地は,前契約当時はBの所有であって(現在は,いずれも
控訴人,補助参加人ら及びLの共有),前契約の対象となっていたところ(前契約書添付
の「賃貸借物内譯明細書」記載の「土地 b村c所在宅地 二、一一三・三九坪」「同 畑地
 四五一・〇〇坪」に含まれているものであり,これが同明細書記載の「建物 b村cd-7
番地所在家屋 木造瓦葺弐階建畳建具付」及び附属建物の敷地である。),前契約を引
き継ぐ形で契約された昭和47年契約では,賃貸借物件は,a町に売却された土地(d-7
番eほか)が除かれ,新たにd-8番地のgの建物とその敷地が加わったもののその他は
同一であり,本件契約は更にこれを引き継ぐ形で締結されたものであるから,賃貸借の
対象物件には変わりがなく,当然これに含まれているものである(仮に,前契約当時から
別紙物件目録記載2及び34ないし36の各土地が含まれていなかったとしても,昭和46
年ころ,いわゆる「中病棟」を前記各土地上に移転した時に,当時の一相続人らと被控訴
人との間で使用貸借契約が成立した。)。
  (イ) 期間   昭和47年12月1日から50年
     ただし,本件契約は,期間20年を超える部分は無効であるから(民法604条),
平成6年1月1日に期間が満了した。しかしながら,本件契約は,実質的には建物の賃貸
借であり,借家法(借地借家法〔平成3年法律第90号〕付則2条による廃止前のもの。以
下「旧借家法」という。)の適用がある(契約書〔甲2〕)。なお,本件契約書(甲14)では,
土地と建物とを分けて表示されているが,これは,土地の筆数が非常に多い上,面積も
広く,また建物の戸数も多いので,すべてを記載した方が明確になると考えたからであ
る。賃料についても,「借地料」と「借家料」を分けて書いてあるのは,単に賃貸物件を前
記理由により土地と建物とに分けたことから便宜上そのような形式を採ったに過ぎず,法
律的な意味をもってされたものではない。そして,被控訴人は,控訴人に対して期間満了
前6か月ないし1年以内に更新拒絶の通知又は条件を変更するにあらざれば更新せざる
旨の通知をしなかったから,本件契約は法定更新され,期間の定めのないものとなった
(旧借家法2条1項)。
  (ウ) 賃料   1か月10万6000円
     ただし,土地分の賃料が7万6000円,建物分の賃料が3万円である。
  (エ) 特約   本件物件の修理費用は被控訴人の負担とする。
  イ(予備的請求①)
    仮に,本項前記アの主張が認められないとしても,控訴人と被控訴人は,前同日,
同内容の建物賃貸借契約を締結した。前記各土地は,その敷地である。
    前契約当時の状況からすれば,本件各土地は必ずしも建物敷地として広すぎるこ
とはない。すなわち,本件各建物が建築されたのは大正から昭和初期にかけてのことで
あり,前契約を締結したのは昭和27年のことであるが,当時,この地区は市街化が進ん
でおらず,一帯が農地であり,建物に比して敷地が必ずしも広いとはいえないところ,別
紙物件目録記載31の各建物は,控訴人家族が居住している家屋であるが,その敷地
(同目録記載10ないし30の各土地)は,塀で囲まれており,独立したひとつの居住空間
を形成している。そして,面積的にも同敷地部分の面積合計は2787.01㎡であるのに
対し前記建物の1階床面積の合計は972.69㎡であり,敷地の約3分の1の地面に建
物が建っていることになるが,これは現在でも全く不自然なことではない。また,同物件目
録記載32の各建物(1階床面積110.74㎡)は,その敷地である同目録記載9の土地
(500.85㎡)とともに,転借人家族が居住しており,ひとつの独立した居住空間を形成
している。さらに,同目録記載33の建物群(1階床面積合計755.33㎡)は,かつての病
棟や風呂であるが,火事の際の延焼防止のためかなり離して建てられ,病棟間には,産
婦人科の患者の気持ちが安らぐよう,庭園のように樹木が植えられていたのであり,それ
らが塀で囲まれていたこともあって,その敷地も広大なものとなっていたが,これらはすべ
て敷地と考えるべきである。
  ウ(予備的請求②)
    仮に,本件各土地の一部が,建物の敷地とはいえない場合には,当該土地部分に
ついての賃借権は20年に制限されるため(民法604条),契約の存続期間は,昭和49
年1月1日から平成5年12月31日までとなるところ,この期間満了後も控訴人が同土地
部分の使用を継続していたのに対し,被控訴人はこれを知りながら異議を述べなかっ
た。よって,前と同一の条件(期間20年)をもって更に賃貸借をしたものと推定される。よ
って,控訴人は,被控訴人に対し,前記建物及びその敷地部分を含む本件各土地全体
につき,昭和49年1月1日から平成25年12月31日まで(更新後の平成6年1月1日か
ら20年後である。),賃貸借契約上の地位を有することになる。
  エ(予備的請求③)
    仮に,本項前記アが認められないとしても,控訴人と被控訴人との間には,前同日
(昭和49年1月1日),期間を昭和47年12月1日から平成34年11月30日までの50年
間とし,その他は前記と同様の使用貸借契約が締結されたものである(なお,控訴人は,
同使用貸借の始期を昭和49年1月1日とするが,甲2の契約書第4条の文言から,これ
は昭和47年12月1日の誤記と認める。)。
  オ 本件契約が存在しないとの被控訴人及び補助参加人らの後記主張に対する控訴
人の反論
  (ア) 被控訴人の伝票には,控訴人から被控訴人に対する賃料支払の事実が記載さ
れている。
  (イ) 前契約当時から本件各建物のうちの相当部分は病院以外の目的(居住用など)
としても使用されており,前契約が更新されることはあり得ないことではない。
  (ウ) 控訴人は,参加人Gとの交渉過程において本件契約の存在について言及してい
る。ただし,控訴人は,被控訴人を存続させるために早期に合意を成立させることを優先
させたため,あえて合意の内容に本件契約の存在を盛り込むことを主張しなかっただけ
のことである。
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア 本項前記(1)ア(主位的請求)について
  (ア) 本件契約は存在しない。本件契約に係る契約書(甲2)は,控訴人が勝手に作成
したものである。このことは,次の事情から明らかである。
   a 被控訴人の伝票には,本件契約に基づく賃料支払の事実は全く記載されていな
い。
   b 控訴人は,本件契約が前契約を一部変更して更新したものであると主張するが,
前契約においては対象物件を病院以外の目的に使用することは認められておらず,その
実質的な借主はC病院であったところ,C病院の院長であったDの入院によってC病院は
昭和47年6月に閉鎖され,以後,本件各土地建物は病院として使用されないまま同年1
2月20日に前契約の期間が満了し,さらに,同月22日Dも死亡した。
     このような状況にあって,前契約が更新されることはあり得ない。
   c 控訴人と参加人Gとの間では,平成8年6月29日,被控訴人の事業を継続させ,
被控訴人所有土地の有効利用を図る内容の合意が成立したが,控訴人は,その交渉の
過程において,本件契約ないし控訴人の賃借権・使用借権の存在について全く言及して
いなかった。
  (イ) 仮に,本件契約が存在したとしても,賃料が低廉であることなどからすると,賃貸
借契約ではなく使用貸借契約と見るべきである。
  イ 本項前記(1)イ(予備的請求①)について
  (ア) 争う。
  (イ) 住宅に使用するための家屋の賃貸借契約において,その家屋に居住し,これを
利用するために必要な限度でその敷地の通常の用法による使用が随伴することは当然
であるが,たとえ垣根,塀で囲まれている場合であっても,敷地の範囲が広い場合には
建物の利用に必要と考えられる部分とそれを超える部分とに分け,後者については,借
家人の利用が制限され,その部分はそもそも賃貸借の目的ではないというべきである。
敷地部分が建物賃借権の行使の範囲内に含まれるかどうかは,建物の通常の使用に必
要とされる部分か否かという観点から客観的に判断されるべきであり,農地であり,敷地
が広いということが全体として建物の賃貸借契約であることの根拠となるものではない。
さらに,仮に賃貸借契約が成立しているとしても,昭和49年1月1日の成立であり,ある
程度近代化,土地の高度利用化が進んでいたはずである。また,塀は,単に敷地と隣地
や公道との境界を示す目的で設置されたものに過ぎず,それにより独立した居住空間を
形成するものではないし,建物が延焼防止のために分離されて建築されている以上,建
物間の間隔は広く,その土地全体の利用が建物賃貸借の範囲に含まれるとは考えられ
ない。
  (ウ) 本件においては,控訴人が別紙物件目録記載33の建物(1階床面積合計75
5.33㎡)の敷地と主張する物件目録記載1(1),2ないし8及び34ないし36の各土地の
面積は合計3366.30㎡であり,同目録記載32の建物(1階床面積合計110.74㎡)
の敷地と主張する同目録記載9の土地面積は500.85㎡であり,同目録記載31の建物
(1階床面積合計972.69㎡)の敷地と主張する同目録記載10ないし30の各土地の面
積は合計2787.01㎡であって,建物の面積に比し土地面積が広大であり,建物の敷地
と見ることはできない。むしろ別個の対象として賃貸する意思があったからこそ,土地建
物が明確に分けて記載されたのである。
  (エ) 筆数が多く,面積が広い土地及び多数の建物を一体的に借りる場合は,むしろ
一体的に記載することが通常であるから,控訴人の主張は経験則に反するものである。
  ウ 本項前記(1)ウ(予備的請求②)について
  (ア) 争う。仮に,本件契約が賃貸借契約として存在したとしても,土地と建物は別個
独立の不動産であり,建物の敷地部分ではない土地部分については旧借家法の適用は
ない。
  (イ) 仮に,控訴人・被控訴人間に本件各土地建物の使用に関する契約が存在したと
しても,被控訴人は,契約の存在を知らなかったのであるから,民法619条の「これを知
りて」という要件に該当せず,黙示の更新が成立しないことは明らかである。
  エ 本項前記(1)エ(予備的請求③)について
    争う(ただし,控訴人に何らかの本件各土地建物を使用する権原があるとした場合
には,使用料が低廉なことからしてせいぜい使用借権であることは認める。)。
 (2) 争点(2)(賃借権あるいは使用借権の時効取得の成否)について
 【控訴人】
  ア 仮に,本項前記(1)記載の各契約が認められないとしても,控訴人は,昭和49年1
月1日から,被控訴人に同記載の使用料を支払い,本件各土地建物を占有してきた。し
たがって,控訴人は,平成6年1月1日(控訴人は,平成13年2月6日付け第9準備書面
で時効期間の終期を平成6年12月31日と主張するが,違算による誤記と認める。)の経
過をもって本件各土地建物の賃借権又は使用借権を時効取得した。
  イ 控訴人は,平成9年11月6日の原審第5回口頭弁論期日において,本件各土地
建物の賃借権又は使用借権の取得時効を援用する旨の意思表示をした。
 【被控訴人及び補助参加人ら】
   否認する。
 (3) 争点(3)(本件契約の有効性)について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア Eの意思無能力
    本件契約が締結された当時,被控訴人の代表者であったEは,88歳と高齢の上,
痴呆の進行により心神喪失状態となっており,意思能力がなかった。
  イ 商法72条違反による無効(目的外の行為)
    商法147条は同法72条を準用しているところ,本件契約は,C家の財産の実質的
長子相続を図るために締結されたものであって,被控訴人の目的外の行為であり,総社
員の同意を得ていないから無効である。
  ウ 定款違反による無効
    被控訴人は,不動産賃貸業を目的とするものであるが,被控訴人が控訴人に土地
建物を賃貸し,控訴人がこれを他に転貸することは定款第7条の規定に反し無効であ
る。
  エ 商法75条2項違反による無効
    商法147条は同法75条2項を準用しているところ,本件契約は,被控訴人の有限
責任社員である控訴人が,他の社員の過半数の決議を得ることなく締結したものである
から,無効である。また本件契約をEが長子相続実現のために締結したのであれば,同
人にも同条の適用がある。
  オ 信義則違反
    控訴人は,昭和47年8月30日付けで支配人登記されており,被控訴人に対し善
管注意義務を負っているから,本件契約の締結を拒絶すべき義務を負っていた。したが
って,控訴人が本件契約の効力を主張することは,信義則に反し許されない。
 【控訴人】
  ア Eが無能力者であったとの点について
    争う。本件契約当時,Eには意思能力はあった。
  イ 商法72条違反について
  (ア) 本件契約においては,低廉ながらも賃料が徴収されており,これが被控訴人の
目的外の行為であるとはいえない。
  (イ) 被控訴人が,自ら本件契約を締結しておきながら,20年以上経過した現在に至
ってその無効を主張することは,権利の濫用である。
  ウ 定款違反であるとの点について
    争う。控訴人の転貸行為は,被控訴人の定款に違反するものではない。
  エ 商法75条2項違反について
    合資会社においては,商法75条は無限責任社員にのみ準用され,有限責任社員
である控訴人には適用がない。被控訴人は,無限責任社員であるEについて同条2項の
適用がある旨主張するが,本件契約は,合資会社である被控訴人と有限責任社員であ
る控訴人との間の契約であり,同条の適用はない。
 (4) 争点(4)(A清算人の昭和54年2月20日付け本件契約解除の意思表示の有効性)
について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
   被控訴人の清算人であったA清算人は,昭和54年2月20日到達の書面によって,
控訴人に対し,以下の事由を理由として本件契約を解除する旨の意思表示をした(以下
「本件契約解除」という。)。
  (ア) 賃料不払い
     控訴人は,昭和53年7月分以降の賃料を支払わず,被控訴人の数度の催告に
も応じない。
  (イ) 賃貸物件の滅失
     控訴人は,昭和53年9月ころ,賃貸物件の一部である建物を被控訴人の許可な
く取り壊し,滅失させた。
  (ウ) 無断転貸
     控訴人は,本件各土地建物の相当部分を無断で第三者に対し転貸した。なお,
控訴人は前契約当時にEの承諾を得ていたと主張するが,本件契約は前契約とは別個
の契約であるから,仮に前契約時にEが承諾していたとしても本件契約について承諾が
あったことにはならない。
 【控訴人】
   争う。以下の理由により,本件契約解除は無効である。
  ア 賃料不払いについて
    控訴人は被控訴人に対して後記(5)記載の貸付金債権及び立替金債権を有してい
るところ,昭和53年7月24日,控訴人は,A清算人に対し,同月分以降の賃料と控訴人
の被控訴人に対する貸付金債権(利息を含む。)とを対当額で相殺する旨の意思表示を
した。また,A清算人は,昭和54年10月30日,台風で倒壊したブロック塀の修繕をめぐ
る控訴人とのやりとりの中で,ブロック塀修繕費用及びそれまでの貸付金債権及び立替
金債権と賃料とを対当額で相殺することを承諾した。したがって,賃料不払いはない。
  イ 賃貸物件の取壊しについて
    控訴人は,昭和53年9月ころ,老朽化の激しい建物を取り壊したが,これは,被控
訴人が防災,防犯上の措置を何ら講じなかったため,控訴人がやむなく取り壊したもので
ある。これにより被控訴人には何らの損害も生じていない。
  ウ 無断転貸について
    Dないし控訴人は,昭和27年の前契約締結当時から,Eの承諾を得て本件各土
地建物の相当部分を第三者に転貸していたのであって,無断転貸ではない。
  エ A清算人による解除の意思表示の撤回
    A清算人は,昭和54年10月30日,台風で倒壊したブロック塀の修繕をめぐる控
訴人とのやりとりの中で,ブロック塀修繕費用及びそれまでの貸付金・立替金と賃料との
相殺を承諾し,同年2月20日の本件契約解除の意思表示を撤回した。
 (5) 争点(5)(控訴人の被控訴人に対する貸付金及び立替金の有無)について
 【控訴人】
  ア 控訴人は,被控訴人に対し,昭和53年12月31日までに,3324万0649円を年
利10%の約定で貸し付けた(以下「本件貸付金」若しくは「本件貸付金債権」という。)。
  イ 控訴人は,被控訴人が負担すべき以下の金員を立て替えて支払った。
   a 本件各土地建物の固定資産税(都市計画税を含む。以下同じ。)
     昭和53年分から昭和62年分まで計1458万1290円(この立替えの事実は当
事者間に争いがない。)。
   b 本件各土地建物の修理代金
     控訴人は,昭和62年3月30日から現在までの間に,本件各土地建物の修理代
金6686万3465円を負担した。これは,本件契約の特約により,貸主である被控訴人
が負担すべきものである。なお,これらの修繕代金等を請求するのに,貸主の事前承諾
を必要とする法的根拠はない。
  ウ 控訴人は,平成9年5月9日の原審第1回口頭弁論期日において,被控訴人に対
する昭和53年7月分から平成9年6月分までの本件各土地建物の賃料債務合計2416
万8000円を受働債権とし,前記イ記載の立替金債権(固定資産税分1458万1290円
と修理代金分のうち958万6710円)を自働債権として対当額で相殺する旨の意思表示
をした。
    したがって,控訴人の被控訴人に対する修理代金立替金の残金は5727万6755
円となる。
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア いずれも否認する。
  イ また,仮に修理代金が支出されていたとしても,事前に賃貸人である被控訴人に
通知して承諾を得るべきであるし,賃貸人は目的物の使用収益に必要な修繕をする義務
を負うにとどまり,さらに,その修繕義務も目的物が居住の用に堪えないか,著しい支障
が生ずるに至っていない限りは発生しない。
    控訴人が主張する修繕は,控訴人が居住する母屋ないし無断転貸していた建物
の増改築であって,法人の資産の保全の範囲を逸脱しているから,被控訴人が負担すべ
き理由はない。
  ウ 権利濫用
    仮に本件契約が存在するとしても,その締結に至る事情,その他の前記事情を考
慮すると,控訴人が本件契約の存続や立替金の支払を主張することは権利の濫用であ
る。
  エ 相殺
  (ア) 仮に,控訴人に何らかの金銭支払請求権があるとしても,被控訴人は,控訴人
に対し,後記(10)記載のとおりの賃料相当損害金債権ないし不当利得返還請求権を有す
る。
  (イ) 被控訴人は,控訴人に対し,平成14年6月21日の原審第22回口頭弁論期日
において,前記債権のいずれかをもって,控訴人の金銭支払請求債権とその対当額にお
いて相殺する旨の意思表示をした。
 (6) 争点(6)(前記貸付金等の消滅時効の成否)について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア 控訴人が主張する立替金及び貸金の返還請求権のうち,その発生から既に5年
が経過しているものについては,被控訴人は,控訴人に対し,平成9年9月12日の原審
第4回口頭弁論期日において,商事消滅時効を援用した。仮に商事債権でないとしても,
被控訴人は,控訴人に対し,その発生から既に10年が経過しているものについては,同
年11月6日の原審第5回口頭弁論期日において,10年の民事消滅時効を援用した。
  イ 控訴人は,貸借対照表への記載及び裁判所への提出が債務の承認になると主張
するが,本件の貸借対照表は,裁判所に対して提出されたものであり,控訴人に対してさ
れたものでないこと,貸借対照表は,清算人が控訴人から引き継いだ帳簿や控訴人の主
張をもとにして記載したものに過ぎず,被控訴人が債務の存在を知って記載したものとは
いえないこと,から債務の承認とはならない。
  ウ 決算報告書は,清算人が当時存在した資料に基づき形式的に作成したものにす
ぎないから,債務の承認とはいえず,仮にそうであるとしても債務の承認は,債権者に対
してされなければならないところ,決算報告書は裁判所に対して提出するためのものであ
り,控訴人に対するものではないから,時効中断効は発生していない。
 【控訴人】
   被控訴人は,平成6年12月31日時点において,被控訴人清算人作成の貸借対照
表に控訴人が主張する貸金及び立替金債務を記載することにより,これらの債務を承認
した。
   なお,前記貸借対照表は裁判所に対して提出されたもので,控訴人には交付されて
いないが,清算人は就職後遅滞なく貸借対照表を作成して社員に交付する義務を負い,
かつ社員の請求により毎月清算の状況を報告する義務を負う(商法164条,130条1,
2項)のであって,控訴人の度重なる請求にもかかわらずこれらの義務を尽くしていない
被控訴人清算人が,前記のように控訴人に対する債務承認に当たらない旨主張すること
は許されない。
 (7) 争点(7)(被控訴人の平成13年3月19日付け解約申入れの有効性)について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア 本件契約のうち,土地の賃貸借契約には旧借家法の適用はなく,期間の定めが
なくなった以上いつでも解約申入れができる。被控訴人は,控訴人に対し,平成13年3
月19日の原審第10回口頭弁論期日において,本件契約のうち土地の賃貸借契約を解
約する旨の意思表示をした。
  イ 本件契約に旧借家法の適用があるとしても,被控訴人は,控訴人に対し,平成13
年3月19日の原審第10回口頭弁論期日において,正当事由による解約申入れをした。
    既に契約開始から27年以上経過していること,被控訴人所有土地建物は本来各
社員に持分に応じ公平に分配されるべきであること及び控訴人が本件契約の存続を主
張することが権利濫用に該当することからすれば,解約申入れには正当事由がある。
  ウ(本件契約が使用貸借契約として存在している場合の予備的主張)
  (ア) 昭和47年12月22日にDが死亡したので,使用貸借契約は終了した。
  (イ) 前契約は,病院経営目的のために締結されたものであり,Dが入院ないし死亡し
たことにより,C病院が閉鎖されたのであるから契約の目的も終了した。
  (ウ) 前記3(10)のとおり,A清算人は昭和54年2月20日到達の書面によって本件契
約を解除する旨の意思表示をしているが,これは民法597条3項の使用貸借の返還請
求としての意味も有する。
  (エ) 被控訴人は,控訴人に対し,平成9年11月6日の原審第5回口頭弁論期日にお
いて,以下の理由により本件契約を解除する旨の意思表示をした(なお,被控訴人は,控
訴人の使用借権の時効取得の主張が認められた場合に備え,平成10年2月3日の原審
第1回弁論準備期日においても同様の意思表示をした。)。
   a 前記争点(3)に係る被控訴人主張イないしオの事情に加え,本件契約が実質的に
長子相続を図るという不当な目的で締結されたものであること,賃料が低額で期間が長
期にわたっていること,被控訴人が清算段階に入っていることを考慮すれば,本件契約を
解除すべきやむを得ない事情がある(民法628条の準用)。
   b A清算人と控訴人との関係に照らせば,昭和54年ころの時点において,控訴人
と被控訴人の信頼関係は完全に破綻している。
 【控訴人】
  ア 争う。
  イ やむを得ない事由ないし信頼関係破壊による解除について(被控訴人及び補助参
加人らの本項(7)ウ(エ)に対する反論)
  (ア) Eには本件契約によって何らかの経済的利益を得る意思はなかったから,期間
が長期間にわたることは解除の理由とはならない。また,会社が解散したことは何ら解除
の理由にはならない。
  (イ) 本件契約を自ら締結した被控訴人が,控訴人の善管注意義務違反等を持ち出し
て解除の理由とすることは,権利の濫用である。
  (ウ) 控訴人が,A清算人からの帳簿引渡し要求を拒否したことはない。控訴人が渡
すつもりでいたところ,突然執行をかけられたものである。
 (8) 争点(8)(旧F荘取壊しによる損害の有無)について
 【控訴人】
  ア 被控訴人は,平成9年3月4日,被控訴人占有土地上にあった旧F荘を控訴人に
無断で取り壊し,その後被控訴人占有土地周辺をフェンスで囲むなどして,被控訴人占
有土地を占有している。
  イ 控訴人の先代Dは,本件契約が締結される以前である昭和27年ころから,被控
訴人より本件各土地建物を含む不動産等を借り受け,その相当部分を被控訴人の承諾
を得て第三者に転貸していた。そして,被控訴人は,本件契約後も控訴人が引き続き第
三者に転貸することにつき異議を述べなかった。
  ウ 控訴人は,別紙「転貸借目録」記載のとおり,旧F荘を第三者に転貸することによ
り月額20万5000円の,被控訴人占有土地を第三者に駐車場として転貸することにより
月額20万8000円の各収入を得ていた。しかしながら,被控訴人の前項記載の行為に
より,控訴人の使用収益が不可能となり,控訴人は月額41万3000円の収入を失った。
 【被控訴人及び補助参加人ら】
   被控訴人が,平成9年3月4日,旧F荘を取り壊し,以後被控訴人占有土地を占有し
ていることは認めるが,損害の発生については否認する。
 (9) 争点(9)(Nの土地占有の有無)について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
   控訴人は,昭和53年7月1日以降,別紙物件目録記載1(3),3ないし6及び9ないし
33の各土地建物を占有している。
 【控訴人】
  ア 別紙物件目録記載1(1)の土地(d-1番i)のうち,控訴人が占有している部分は別
紙図面3記載のイ,ロ,ハ,ニ,イを順次結んだ直線で囲まれた部分である。同土地のそ
の余の部分については,Nが自動車や建築廃材を山積みにして占有している(また,同
土地の形状は,別紙物件目録添付の図面2とは異なる。)。
  イ さらに,同目録記載2の土地並びに同目録記載3の土地(1095番5)のうち別紙
図面3のト,チ,リ,ヌ,トを順次結んだ直線で囲まれた部分及び同目録記載6の土地(1
101番2)のうち別紙図面3のホ,ヘ,ト,チ,ホを順次結んだ直線で囲まれた部分の土地
も,前記アと同様にNが占有している。
  ウ その余の土地建物は控訴人が占有しているが,それは控訴人の主張において述
べた賃借権ないし使用借権に基づくものである。
 (10) 争点(10)(本件各土地建物の賃料相当損害額)について
 【被控訴人及び補助参加人ら】
  ア 控訴人は,別紙物件目録記載1(2)及び(3),3ないし33の各土地建物(ただし,被
控訴人占有土地に係る部分〔同目録1(2),7,8〕については,昭和54年2月20日〔本件
契約解除日〕から平成9年3月4日〔被控訴人が旧F荘を取り壊し,被控訴人占有土地の
占有を回復した日〕までの間に限る。)を法律上の原因なく占有し,この各土地建物の賃
料相当額の利得を得ていることになる。本件各土地建物に関する賃料相当損害金は,少
なくとも,別紙「賃料相当損害金一覧表」の「請求額」欄に記載のとおり,月額合計165万
9654円(年額1991万5848円)を下らない(したがって,被控訴人としては,同一覧表
記載の土地のみを根拠として,控訴人に対し,賃料相当損害金の請求をするものであ
る。)。
  イ 被控訴人は,控訴人に対し,不法行為あるいは不当利得に基づき,反訴提起日
(平成13年4月16日)より10年前である(それ以前は時効消滅している)平成3年4月1
6日から明渡し済みまで,毎月165万9654円の割合による金員の支払を請求する権利
がある。
  ウ 仮に,前記金額が高額であるとしても,控訴人が本件各土地建物につき月額10
万6000円の賃料あるいは使用料を主張していることに照らすと,昭和53年7月分から
平成14年6月分までの賃料相当損害金として少なくとも3052万8000円及びこれに対
する遅延損害金1908万円の合計4960万8000円の債権を有する。
    106,000円×12か月×24年=30,528,000円
    (遅延損害金については,別紙「遅延損害金計算書」のとおり)
  エ 被控訴人は,控訴人に対し,平成14年6月21日の原審第22回口頭弁論期日に
おいて,前記債権のいずれかをもって,控訴人の金銭請求債権とその対当額において相
殺する旨の意思表示をした。
 【控訴人】
  ア 争う。
  イ 仮に,控訴人の本件各土地建物の占有が不法占有であるとしても,反訴状の提
出された平成13年4月16日から3年前である平成10年4月15日以前の賃料相当損害
金債権は時効消滅している。
    控訴人は,被控訴人に対し,平成13年7月31日到達の準備書面において,前記
時効を援用する旨の意思表示をした。
  ウ また,被控訴人の不当利得返還請求権については,被控訴人が同主張をした平
成14年11月29日から10年前である平成4年11月29日より前の分については時効に
より消滅している。
    控訴人は,平成15年7月25日の当審第5回弁論期日において,同時効の利益を
援用した。
第3 当裁判所の判断
   当裁判所は,控訴人の本件本訴請求は,被控訴人占有土地に係る損害賠償を求め
る部分の一部につき理由があるから認容すべきであるが,その余は理由がないからいず
れも棄却すべきであり,被控訴人の本件反訴請求のうち,土地建物の明渡しを求める部
分は,別紙物件目録記載2の土地を除き(同2の土地に関しては控訴の対象としておら
ず,また,同目録記載34ないし36の各土地についても反訴請求の対象としていない。)
理由があり,賃料相当損害金の支払を求める部分は,その一部(本判決主文第3項記載
の限度)につき理由があるから認容すべきであるが,その余は理由がないから棄却すべ
きであると判断する。その理由は,次のとおりである(なお,以下の説示においては,被控
訴人及び補助参加人らを含めて単に「被控訴人」ともいい,また,掲記する証拠の番号
は,特に記載のない限り,枝番を含む。)。
 1 争点(1)(本件契約あるいは使用貸借契約の成否)について
 (1) 前記争いのない事実に証拠(甲2,3,13,14,16,38,40,52,58の1ないし
3,59,乙5,24ないし27,原審控訴人本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると,以下
の事実が認められる。
  ア 昭和47年契約が締結された後である昭和47年12月22日にDが死亡したが,昭
和45年に死亡した一の相続をめぐっては,昭和47年中にD以外の相続人から「土地所
有権移転登記抹消登記手続請求事件」(広島地方裁判所昭和47年(ワ)第744号事件)
が提訴され,あるいは同年10月6日には,「C合資会社土地所有権抹消請求事件」(同
裁判所昭和47年(ワ)第745号事件)が提訴されるなど,Bの相続人間で紛争が生じるよ
うになっていた。
  イ Eは,元々長子相続の考えが強かったところ,このようなC家の遺産をめぐる紛争
に心を痛め,C家の将来に危機感をもったことから,C家の財産はBの長男であるDある
いはDの長男である控訴人にできるだけゆだねようと考えた。
  ウ このような事情のもと,Eは,昭和47年10月19日には,D,O(Dの妻)及び控訴
人に対して株券等を遺贈する内容の公正証書遺言を作成し(甲13),昭和48年6月16
日には,Eが有する被控訴人の持分全部を控訴人に対して遺贈する内容の公正証書遺
言を作成した(甲16)。
  エ 昭和49年1月1日,Eは,控訴人に対し,昭和47年契約(Dと被控訴人との間の
契約)を新たに控訴人と被控訴人との間の契約として締結し直すよう指示し,本件契約締
結に向けた諸準備が開始された。賃料については,控訴人とEが相談し,固定資産税を
超える必要があることや付近の賃料とのバランスなどを考慮し,昭和47年契約と比較し
て約2倍である10万6000円(土地分及び建物分の合計)とすることとした。控訴人は,
昭和47年契約の契約書(甲14)を参考にしながら条項を手書きし,司法書士Pにタイプ
してもらうなどし,その結果,甲2(本件契約書)の原案が作成された。タイプ打ちされた契
約書原案には不備があったので,控訴人は,手書きで補足した上,これをEに見せたとこ
ろ,Eから,契約期間はもっと長い方がよいなどと言われため,期間を「満参拾年」から
「満五拾年」に訂正し,最終的にはEと控訴人が内容をすべて確認した上,それぞれ押印
し,本件契約書(甲2)を作成した。
  オ なお,昭和49年1月分ないし昭和53年6月分の被控訴人の仕訳伝票あるいは振
替伝票に,控訴人が主張する月額賃料10万6000円が被控訴人の収入として記載され
ており,また,少なくとも昭和50年1月分ないし12月分については,控訴人の仕訳伝票
に,被控訴人に対して賃料10万6000円を毎月支払ったことが記載されている。さらに,
昭和53年分の被控訴人の固定資産税(控訴人による立替え分)は80万1000円であっ
て,本件契約締結時においては,本件の契約賃料とされた年額127万2000円はその
時点の前記固定資産税を上回っている。
    以上の各認定事実に甲2を併せ考慮すれば,控訴人は,被控訴人との間で,昭和
49年1月1日,本件各土地建物(土地部分の面積合計約5520㎡〔当審において拡張さ
れた土地部分を含めると約6650㎡〕,建物部分の床面積合計約2418㎡)につき,①賃
料月額10万6000円,②期間昭和49年1月1日から平成5年12月31日までの20年
間,③被控訴人は,賃貸借物件に破損又は故障が生じたときは,速やかに被控訴人の
費用で原状回復すること,などを内容とする本件契約を締結したと認めることができる。
    なお,証拠(甲2,3)並びに弁論の全趣旨によれば,当審において拡張された土
地部分(別紙物件目録記載34ないし36の各土地)は,被控訴人占有土地とともに旧F荘
を含む別紙物件目録記載33の建物(以下「d-7番建物」ともいう。)の敷地であったと認
められるから,本件契約の対象となっているものと見るのが相当である。被控訴人は,d
-7番建物の1階部分床面積合計に比して土地面積が広大であるから,同建物の敷地と
見ることはできない旨主張するが,後述するように,本件契約を全体としてみるならば,
必ずしも建物床面積と土地面積との間においてそのようにはいえないことは明らかであ
るから,被控訴人の前記主張は採用できない。また,甲2(本件契約書)には,契約の存
続期間の始期が昭和47年12月1日と記載されてはいるが,本件契約が昭和49年1月
1日に締結されているものである上,本件契約よりも約1年4か月も前に締結された昭和
47年契約の存続期間の始期も本件契約書のそれと同じ昭和47年12月1日であること
に照らすと,本件契約書上の前記始期の記載は誤記と認めるのほかはなく,したがって,
本件の存続期間は,前記のとおり,昭和49年1月1日から平成5年12月31日までの20
年間であると認めるのが相当である。
    この点,被控訴人は,賃料が低廉であることなどを理由に本件契約は賃貸借契約
ではなく使用貸借契約と見るべきである旨主張するが,そもそも本件契約は,いずれも賃
貸借である前契約及び昭和47年契約を事実上引き継ぐ趣旨で締結されたものである
上,前記エのとおり,控訴人は,本件各土地建物の使用収益の対価として月額10万60
00円を支払う旨被控訴人に約したものであり,また,前記エ及びオのとおり,本件契約
の使用料は当時の固定資産税を超えるものであり,賃貸借締約である昭和47年契約の
2倍以上の額であることに照らすと,本件契約が賃貸借契約であることは明らかである。
なお,被控訴人は,甲2(本件契約書)は,控訴人が勝手に作成したものであり,本件契
約は存在しない旨主張するが,前記認定事実に照らし,到底採用することはできない。
 (2) 本件契約の性質について
   本件契約は,建物と土地とをその賃貸借の対象としているものではあるが,土地に
ついては建物の敷地部分として賃借人が使用することが予定され許容されているもので
あって,建物と別個独立に契約の対象としているものではないと解するのが相当である。
確かに,本件契約に係る契約書(本件契約書。甲2)では,土地と建物との賃料を区別し
て記載されており,この点だけを考慮すれば,建物と土地との別個の二つの契約が存在
しているかのように考えられなくもない。しかしながら,本件契約の対象物件である土地
の面積と建物の床面積との割合はおおよそ3対1程度(約6650㎡対約2400㎡)であ
り,建物が建っている敷地部分と建物との面積割合に関する通常の割合と特に異なるも
のではなく,しかも,本件契約締結当時の建物はいずれも当該各土地を敷地として建て
られていると見るのが自然な形態で位置していたとも認められ(別紙「賃貸物件概況
図(1)」及び「賃貸物件概況図(2)」参照),土地だけが建物と全く別個に独立した存在とし
て契約の対象として使用にも供していた状態とは認められないというべきである。契約当
事者としては,賃貸借対象物件が広大な土地とその上の建物であることから,全体の賃
料の内訳として土地部分と建物部分とに区分けして記載したとも考えられるのであって,
そのような区分けした記載があるからといって,土地と建物との二つの契約が存在したと
考えなければならない必然性までは認められないというべきである。したがって,本件契
約は建物に関する賃貸借であり,それを規制するのは旧借家法もしくは借地借家法の中
の借家に関する条項であると解するのが相当である。
 2 争点(3)(本件契約の有効性)について
 (1) Eの意思無能力
   被控訴人は,Eが88歳と高齢であったこと,痴ほう症状が進行していたことなどを理
由に,本件契約締結時である昭和49年1月1日の時点において,Eには意思能力がな
かった旨主張し,被控訴人の主張に沿う証拠(丙1,戊1,原審証人K,証人H)も存する
ところである。
   しかしながら,Eの意思能力を疑わせないOの本人調書(甲21)も存すること,Eは
昭和47年10月19日(甲13)及び本件契約締結の直前である昭和48年6月16日(甲1
6)に公正証書遺言を作成しており,公証人役場まで自ら出向いていること,本件契約締
結後である昭和50年7月10日には自筆証書遺言をも作成していること(甲15),昭和4
9年10月あるいは11月ころには妹のQと文通していること(甲22の1・2,44),これらの
認定事実に照らすと,前記被控訴人の主張に沿う各証拠はにわかに採用することができ
ず,本件契約の締結時である昭和49年1月1日の時点において,Eに意思能力はあった
と認めるのが相当である。この点についての被控訴人の主張は採用できない。
 (2) 商法72条違反(目的外の行為)
   被控訴人は,本件契約は,C家の財産の実質的長子相続を図るために締結された
ものであるから商法72条に違反して無効である旨主張する。
   しかしながら,当事者の主観的意図がどのようなものであったにせよ,本件契約は,
控訴人に対して本件各土地建物の使用収益を許す契約なのであるから,前記第2の3(2)
で認定した被控訴人の目的である「動産及び不動産の賃貸業並びにこれに附帯する一
切の業務」の範囲外であるとは認め難い。
 (3) 定款違反
   被控訴人は,他の社員の承諾を得ることなく,被控訴人が控訴人に土地建物を賃貸
し,控訴人がこれを第三者に転貸することは被控訴人の定款7条に違反して無効である
旨主張する。
   しかしながら,被控訴人の定款がどのような内容のものであるのか的確に立証する
証拠はなく,また,仮に被控訴人主張のような内容の定款であったとしても,控訴人の第
三者に対する転貸が会社の営業の部類に属する商行為に該当する可能性はあるもの
の,控訴人が被控訴人から本件各土地建物を賃借することが会社の営業の部類に属す
る商行為に該当しないことは明らかであるから,この点の被控訴人の主張は採用できな
い。
 (4) 商法75条2項違反
   被控訴人は,本件契約は,被控訴人の有限責任社員である控訴人が,他の社員の
過半数の決議を得ることなく締結したものであり,商法75条2項に違反して無効である旨
主張する。
   しかしながら,有限責任社員には業務執行権がなく,監督権も限られていることから
すると,合資会社においては,商法75条は無限責任社員にのみ準用されると解するの
が相当であり,同条は有限責任社員である控訴人には適用(準用)がない。また,被控訴
人は,無限責任社員であるEについては同条の適用(準用)がある旨主張するが,本件
契約は,合資会社である被控訴人と有限責任社員である控訴人との間に締結された契
約なのであり,この点の被控訴人の主張は失当である。
 (5) 信義則違反
   被控訴人は,控訴人が昭和47年8月30日付けで支配人登記されており,被控訴人
に対し善管注意義務を負っているから,本件契約の締結を拒絶すべき義務を負っていた
として,控訴人が本件契約の効力を主張することは信義則違反である旨主張する。
   しかしながら,善管注意義務を負っている控訴人がなぜ本件契約締結を拒絶すべき
義務を課されるのか不明であり,本件契約が有効なものである以上,控訴人が被控訴人
に対し,本件契約の効力を主張すること自体が信義則違反になるとは解し難い。
 (6) 以上の次第であり,本件契約が無効であるとの被控訴人の主張はいずれも失当で
あり,本件契約は有効に締結されたものと認められる。
 3 争点(4)(A清算人のした本件契約解除の意思表示の有効性)について
   証拠(甲27の1・2,乙15ないし17)によれば,A清算人は,昭和54年2月20日到
達の書面によって,控訴人に対し,①賃料不払い,②賃貸物件の滅失,③無断転貸,の
各事由を理由として本件契約を解除する旨の意思表示をしたことが認められる。そこで,
これらの各事由の有無及びこれらを理由とした解除の有効性につき検討する。
 (1) 賃料不払いについて
   証拠(甲11の1,27の1・2,38,乙15ないし17,原審証人A,原審控訴人)によれ
ば,控訴人は,昭和53年7月24日,A清算人に対し,同月分以降の賃料と控訴人の被
控訴人に対する貸付金・利息とを相殺する旨の意思表示をしたこと,控訴人は,昭和53
年7月分以降の賃料を支払っていないこと,及び控訴人は被控訴人からの数度の催告に
も応じなかったことが認められる。
   そこで,当時,控訴人に相殺適状となっていた自働債権が存在したかどうかにつき
検討すると,後記4のとおり,控訴人が主張する本件貸付金のうち919万5400円(元
金)が存在し,前記相殺の意思表示をした昭和53年7月24日の時点では,別紙「貸付金
元利一覧表」記載のとおり,元利合計1000万6027円が相殺適状にあったことを認める
ことができる。したがって,控訴人の前記相殺の意思表示により,同月分以降の賃料債
務は,自働債権額である1000万6027円に満つるまでの期間分が消滅したこととなり,
いずれにしても前記解除の意思表示時点(昭和54年2月20日)において,控訴人に賃
料の不払い状態のないことは明らかであるから,賃料不払いを理由とした本件契約解除
は無効である(なお,控訴人は,A清算人が昭和54年10月30日,台風で倒壊したブロッ
ク塀の修繕をめぐる控訴人とのやりとりの中で,ブロック塀修繕費用及びそれまでの貸付
金・立替金と賃料とを相殺することを承諾した旨主張し,主張に沿う控訴人本人の供述が
あるが,証人Aの証言と対比してにわかに信用することができず,その他,この事実を認
めるに足りる証拠はないが,この点は,前記判断に影響を及ぼすものではない。)。
 (2) 賃貸物件の滅失について
   控訴人が,昭和53年9月ころ,賃貸物件の一部である建物を被控訴人の許可なく
取り壊し,滅失させたことは当事者間に争いがない。しかしながら,本件全証拠によって
も,この建物取壊しが本件契約解除を認めるに足りるものであったのか否かを明らかに
する証拠は認められず,かえって,証拠(甲38,原審控訴人本人)及び弁論の全趣旨に
よれば,これは防災,防犯上の観点から控訴人が老朽化の激しい建物を取り壊したもの
であることが認められるのであって,この点についての被控訴人の主張は採用できない。
 (3) 無断転貸について
   控訴人が本件各土地建物の相当部分を第三者に転貸した事実は当事者間に争い
がない。ところで,証拠(甲20,25,原審控訴人)及び弁論の全趣旨によれば,昭和27
年の前契約締結当時から,Dないし控訴人が,被控訴人の無限責任社員であるEの承諾
を得て同土地の相当部分を他に転貸していた事実が認められる。そうすると,本件契約
と前契約は形式上別個の契約であるとしても,いずれも被控訴人代表者であったEとの
合意に基づき締結されたものであるから,Eが昭和47年契約や本件契約において,転貸
につき,これまでとは異なり,許可なく転貸することを許さないとの意思を有していたとは
認め難く,前契約時においてEの承諾を得ていた控訴人は,本件契約に基づく転貸につ
いても被控訴人の承諾を得ていたと見るのが相当である。このことは,Eの死亡(昭和52
年12月2日没)によって被控訴人が解散となり,清算段階に入ったことによって変わるも
のではないというべきである。したがって,無断転貸を理由とする被控訴人の解除の意思
表示も無効というべきである。
   以上の次第であり,本件契約解除の意思表示は無効である。
 4 争点(5)(控訴人の被控訴人に対する貸付金,立替金の有無)について
 (1) 貸付金について
  ア 控訴人の主張する貸金額の推移は次のようなものである。
  (ア) 被控訴人の昭和49年12月31日付け貸借対照表(以下の「貸借対照表」等は,
いずれも被控訴人に関するものである。)には,「社員借入金」として「210,000円」の記
載が,同年の損益計算書の「支払利息割引料」欄には「21,000円」の記載がある(甲2
8の1,2)。
  (イ) 昭和50年12月31日付け貸借対照表には,「社員借入金」として「2,910,48
2円」の記載が,同年の損益計算書の「支払利息割引料」欄には「62,000円」の記載が
あり,昭和51年6月12日j税務署収受の被控訴人確定申告書(昭和50事業年度分期限
後確定申告書の控え)の「借入金及び支払利子の内訳書」には,「借入先」として「控訴
人」の記載のほか,それぞれ前各同額が記載されているとともに,利率として「年10%」,
「借入理由」として「運転資金」と記載されている(甲28の3)。
  (ウ) 昭和52年2月20日付け確定申告書(昭和51事業年度分の確定申告書の控
え)の「借入金及び支払利子の内訳書」には「5,469,222円」との記載がある(借入先
のほか,利率及び借入れ目的は前記と同様の記載。甲28の4)。
  (エ) 清算第2期(昭和53年1月1日から同年12月31日までの分)の貸借対照表・事
務報告書及び付属明細書(甲10の2)には,「借入金及び支払利子の内訳書」欄に,控
訴人からの借入金の期末現在高として3324万0649円,期中の支払利子額として385
万7827円,借入理由として諸経費等の支払,との各記載があり(なお,清算第3期から
第21期〔昭和54年度から平成9年度分まで〕の貸借対照表等〔甲10の3ないし21〕の
同欄にも,同様に3324万0649円との記載がある。),被控訴人の昭和53年2月28日
付け確定申告書控(甲28の5)の同欄には,利率として10%の記載があることが認めら
れる。
  イ そこで,貸付金とされているこれらの金員の形成経緯につき検討すると,証拠(甲
58,66,乙24ないし27)によれば,被控訴人においては,控訴人からの借入金である
として次のような帳簿や仕訳伝票での処理のされている事実が認められる(なお,貸主と
して控訴人の記載がないものもあるが,前記アでみた経緯に照らすと,いずれも控訴人
を貸主とする趣旨のものであると解するのが相当である。)。
  (ア)①昭和50年1月20日 210,000円 昭和49年度繰越し 
    ②同年8月5日     100,000円 
    ③同月20日       30,000円
    ④同年10月1日    100,000円
    ⑤同月25日      130,000円
    ⑥同年11月30日   100,000円
    ⑦同年12月24日 1,271,750円
    ⑧同日           58,250円
    ⑨以上小計     2,000,000円
  (イ)①昭和51年1月31日 118,410円
    ②同年2月20日    300,000円 R弁護士への支払
    ③同年2月29日    118,410円
    ④同年3月31日    118,410円
    ⑤同年4月30日    118,410円
    (なお,同仕訳伝票の日付は昭和54年となっている。)
    ⑥同年5月31日    118,410円
    ⑦同年6月20日    100,000円 固定資産税上期分
    ⑧同月30日      119,300円
    ⑨同年7月31日    116,190円
    ⑩同年8月20日     200,000円 固定資産税Ⅱ分
    ⑪同月31日      116,240円
    ⑫同年9月10日     50,000円 Sへ支払S50年分
    ⑬同月30日      116,240円
    ⑭同日         200,000円 Ⅲ固定資産税
    ⑮同年10月31日   116,240円
    ⑯同年11月20日   116,240円
    ⑰同年12月10日   200,000円 Ⅳ期固定資産税
    ⑱同月20日      116,240円
    ⑲同月31日      100,000円
    ⑳以上小計     2,558,740円
    ・〔累計〕    〔4,558,740円〕
  (ウ)①昭和52年1月31日 135,390円
    ②同日          546,922円 昭和51年借入れ分利息
    ③同年2月28日    135,390円
    ④同年3月31日    135,390円
    ⑤同年4月27日  1,900,000円 家屋修理
    ⑥同月30日      135,390円
    ⑦同年5月31日    135,890円
    ⑧同年6月30日    137,850円
    ⑨同年7月31日    136,410円
    ⑩同年8月1日     200,000円 固定資産税Ⅱ期
    ⑪同月18日      100,000円
    ⑫同月27日      134,130円
    ⑬同月31日      150,000円
    ⑭同年9月27日    134,130円
    ⑮同月30日      200,000円 固定資産税Ⅲ
    ⑯同年10月31日   134,130円
    ⑰同年11月29日   200,000円 固定資産税Ⅳ
    ⑱同月30日      134,130円
    ⑲同年12月3日    509,488円 E葬儀費用
    ⑳同月26日      100,000円
    ・同月25日      398,270円  
    ・同日         120,500円
    ・以上小計     5,913,410円
    ・〔累計〕   〔10,472,140円〕
  (エ)①昭和53年1月10日  20,000円
    ②同月31日    1,138,263円 支払利息分
    ③同日         145,650円
    ④同年2月10日  8,000,000円 E退職金
    ⑤同月28日      145,650円
    ⑥同年3月31日    145,650円
    ⑦同年4月27日    100,000円
    ⑧同月30日      145,650円
    ⑨同年5月8日   4,100,000円 T工務店支払
    ⑩同月20日       31,351円 自動車税
    ⑪同月24日    4,100,000円 T工務店支払
    ⑫同月27日      145,650円
    ⑬同月31日       12,420円 交通費等
    ⑭同日         491,060円 下水道修理費,固定資産税Ⅰ期
    ⑮同年6月27日    426,050円
    ⑯同月          15,900円 市民税
    ⑰同月          68,400円 所得税
    ⑱同月       2,719,564円 支払利息分
    ⑲同月           3,050円
    ⑳以上小計    21,954,308円
    ・〔累計〕   〔32,426,448円〕
  ウ これらイでみた各金員のうち,以下に摘示するものについては,次のように考える
ことができる。
  (ア) 次のものについては,本項イに掲記の各証拠により,各記載のとおりの控訴人
からの借入金(消費貸借)であると認めることができ,これを覆すに足りる的確な証拠は
ない。
   a 前項(ア)①ないし⑧(ただし,同⑦を除く。)
   b 前項(イ)②⑲
   c 前項(ウ)⑪⑬⑳・
   (aないしcの小計 159万8750円)
  (イ) 次のものについては,前記イに掲記の各証拠及び乙62によれば,控訴人が,そ
の報酬ないし給料につき税金を源泉徴収した残額を受領せず,被控訴人に対する貸付
金の形式を採って処理した形跡がうかがわれる。
   a 前項(ア)⑦
   b 前項(イ)①③④⑤⑥⑧⑨⑪⑬⑮⑯⑱
   c 前項(ウ)①③④⑥⑦⑧⑨⑫⑭⑯⑱・
   d 前項(エ)③⑤⑥⑧⑫⑮
   (aないしdの小計 572万1290円)
     ところで,丙14(被控訴人の昭和43ないし50年度についての確定申告書及び
これに添付された各資料)によれば,その中の損益計算書は,控訴人が被控訴人の支配
人となる以前(控訴人が支配人に就任したのは昭和47年8月30日。弁論の全趣旨)で
ある昭和43ないし46年度の給料賞与として,それぞれ①58万8000円,②83万250
0円,③108万2000円,④95万9000円が支給された旨の記載がされており,昭和4
7年度及び昭和48年度の各損益計算書には,人件費が含まれていると思われる「販売
費及び一般管理費」欄に前記各金額(給料賞与)を上回る金額が記載されている(丙14)
ことも併せ考慮すると,控訴人が被控訴人から前記各金員(aないしdの各金員)を受領し
ていたとしても不自然ではないというべきであり,これらの諸事情によれば,結局,控訴
人は,被控訴人に対し,前記aないしdに係る各金員相当の報酬ないし給料請求権を有し
ていたと認めるのが相当である。
    (なお,これらの金員に係る貸借は,準消費貸借に基づくものとも思われるが,金
銭消費貸借に基づく主張について準消費貸借に基づく貸付金を認めることは差し支えな
いものと解される〔最高裁第一小法廷判決昭和41年10月6日・判例時報473号31頁
参照〕)。
  (ウ) 次のものについても,被控訴人が支払うべき固定資産税等及び必要修繕費につ
いて控訴人が立て替えた金員を,被控訴人に対する貸付金の形式を採って処理したと認
められるから,これらの各金員についても,控訴人の被控訴人に対する貸付金と認める
のが相当である。
   a 前項(イ)⑦⑩⑭⑰
   b 前項(ウ)⑩⑮⑰
   c 前項(エ)⑭⑯⑰
   (aないしcの小計 187万5360円)
  エ しかしながら,イでみた各金員のその余のものについては,以下のとおり,控訴人
の貸付金と認めることはできない。
  (ア) 前記イ(ウ)⑤並びに(エ)⑨及び⑪については,いずれも建物の大修繕費用と認
められ,後記(3)についての判断の趣旨に照らし,被控訴人の負担すべきものと認めるこ
とはできない。
  (イ) 前記イ(ウ)⑲(E葬儀費用)については,被控訴人が負担すべき理由が不明であ
り,認めることはできない。
  (ウ) 前記イ(エ)④の800万円(Eの退職金)については,本件各証拠によるも,Eの死
亡退職金額及び控訴人が受領権者である事実のいずれをも認めるに足りない。したがっ
て,同金員を控訴人の被控訴人に対する貸付金と認めることができない。
  (エ) その他のものについても,控訴人個人の費消した費用である疑いがあるなど,
被控訴人の負担すべきものを控訴人が出費したものであるとは認めることはできない(例
えば,控訴人は,前記イ(エ)①につき甲66の1,2を,同⑦につき甲66の3を,同⑩につ
き甲66の5を,同⑬につき甲66の7をそれぞれ援用して,これらの費用は被控訴人の負
担すべきものである旨主張するが,これらのあて先はいずれも控訴人個人であるか白地
であって,被控訴人のためのものとは認定できないから,採用しない。)。
  オ 以上の結果,貸金(準消費貸借を含む。)として認められるのは,9,195,400円
(元本部分)となる。
    なお,控訴人は,被控訴人との前記消費貸借に係る利率は年利10%である旨主
張し,前記のとおり,甲28の3及び同号の5の「借入金及び支払利子の内訳書」並びに
昭和49年度の損益計算書(甲28の1)には,利率として年10%と記載されていることが
認められる。しかしながら,これらは,控訴人が被控訴人の支配人に就任してから作成さ
れたもの(弁論の全趣旨)であって信用性に乏しい上,控訴人と被控訴人との間での金
銭貸借証書等も見当たらないこと等を勘案すると,前記記載をもって直ちに前記各貸付
金に係る利息が年10%であると認めることは相当でない。そして,被控訴人は商人であ
るから控訴人との取引も商行為となることを考慮すると,その利息は商事法定利率であ
る年6分と解するのが相当である。
 (2) 固定資産税等の立替金請求について
   控訴人が,被控訴人が負担すべき本件各土地建物の固定資産税のうち,昭和53
年分から昭和62年分まで合計1458万1290円を立て替えて支払ったことは当事者間
に争いがない。したがって,控訴人に対し,前同額の立替金請求債権を有すると認めるこ
とができる。
 (3) 建物修繕費用負担特約に基づく立替金について
  ア 控訴人は,本件契約書(甲2)の第3条(「被控訴人は,賃貸借物件に破損又は故
障が生じた時は,速やかに被控訴人の費用をもって原状回復させるものとする」との趣旨
の条項)に基づき,被控訴人は控訴人が本件各建物及びその敷地部分の修繕等に出捐
した費用につき負担する義務があり,その費用の合計額(昭和62年3月以降の分)は66
86万3465円である旨主張する。そして,証拠(甲9,37,57,原審控訴人)によれば,
控訴人は,本件契約締結後,本件各土地建物につき,別紙「立替金一覧表」記載のとお
りの金員(合計6501万9583円)を支出したことが認められる。
  イ しかしながら,本件契約の賃料は,月額10万6000円であって,本件契約締結時
においてもその目的たる本件各物件の固定資産税の年額を上回る程度のものでしかなく
(本件契約時点における賃貸対象物件のみの固定資産税の正確な額を把握するに足り
る的確な証拠はないが,本件記録から窺われる諸事情を総合すると,おおむねこのよう
にいうことができる。),昭和57年分からはこれを下回っている上(清算人作成の清算第
6期貸借対照表〔甲10の6〕によれば,同年の固定資産税年額は135万8470円であ
る。),賃貸対象物件が,土地部分約5500㎡(当審において拡張された土地部分を含め
ると,約6650㎡),建物床部分約2400㎡と広大なものであることをも考慮すると,通常
の市場賃料に比し格段に低廉であるというべきである。このような場合に,前記条項を形
式的に当てはめ,賃借人である控訴人が支出した金額のすべてを被控訴人に負担させ
ることは,明らかに公平を失するものといわなければならない。前記特約は,本件におけ
る低廉な賃料と均衡する限度で必要費償還義務を負うことを定めた規定であると解する
のが公平の原則の観点からも相当というべきであって,それを超えて,賃借人である控
訴人が出捐したすべての費用を被控訴人に負担させることを定めた規定であるとまで解
することはできないというべきである。
    したがって,通常の使用収益において発生したと考えられる必要修理費用につい
ては被控訴人が負担すべきであるが,建物の大修繕等,その耐用年数にも多大の影響
を及ぼすような工事については,被控訴人のその都度の同意がない限り,前記条項を根
拠として被控訴人に対してその負担を求めることはできないものと解するのが相当であ
る。
  ウ このような観点から,前掲証拠(甲9,32,原審控訴人)及び弁論の全趣旨に基づ
き,本件における控訴人の負担した費用の内容を検討すると,まず,次の①ないし⑥に
掲げるものは,大修理に関する支払に該当すると解されるから,通常の必要修理費用と
は認められないというほかはなく,これらを被控訴人に負担させることはできない(被控訴
人からのその都度の同意も認められない。)。
     (費用を支出した日)    (金    額)  
    ①昭和62年 3月30日  5,440,000円(甲9の1の2)
    ②昭和63年12月29日  2,670,000円(甲9の2の4)
    ③平成2年 12月 6日 12,000,000円(甲9の4の7)
    ④平成3年  4月 5日 25,500,000円(甲9の5の3)
    ⑤平成5年  8月23日  6,800,000円(甲9の7の4)
    ⑥同年    8月31日  5,650,000円(甲9の7の5)
  エ また,平成3年8月2日の169万円(甲9の5の5,6)は,控訴人の経営する塾の
教室に設置されたエアコン5台の代金であるが,これを被控訴人が負担すべき必要費と
解することはできない(控訴人は,これらを被控訴人の備品である旨主張するが,同号証
〔領収書〕のあて先は控訴人の経営する「C塾」となっていることから,控訴人個人の所有
物と見るべきである。)。
  オ 以上の合計額は5975万円となり,結局,被控訴人が負担すべき立替え費用は5
26万9583円となる(65,019,583円-59,750,000円)。
    なお,被控訴人は,控訴人が立替金の支払を主張することは権利の濫用である旨
主張するが,公平の原則に基づいて本件契約第3項を前記のとおり解するときは,権利
の濫用とまではいえないし,その他本件全証拠によってもこれを認めるに足りないから,
この点の被控訴人の主張は採用できない。
 (4) 相殺について
  ア 控訴人の相殺の意思表示
  (ア) 控訴人が,被控訴人に対し,平成9年5月9日の原審第1回口頭弁論期日にお
いて,被控訴人に対する昭和53年7月分から平成9年6月分までの本件各土地建物の
賃料債務合計2416万8000円を受働債権とし,前記争点(5)控訴人の主張欄イ記載の
立替金債権(固定資産税分1458万1290円と修理代金分のうち958万6710円)を自
働債権として相殺する旨の意思表示をしたことは,当裁判所に顕著な事実である。
     しかしながら,本項(3)に説示したように,立替金のうち修理代金などとして認めら
れるのは526万9583円に止まること(その結果,立替金総額は1985万0873円とな
る。)に加え,前記争点(4)につき説示したように,控訴人は,昭和53年7月24日,A清算
人に対し,同月分以降の賃料債務と被控訴人に対する貸金債権(認容元本919万540
0円,利息81万0627円,合計1000万6027円)とを対当額で相殺する旨の意思表示
をしているのであるから,賃料債務のうち,前記貸金債権に相当する部分は,同相殺によ
り順次消滅していることになる(ただし,各振込伝票類〔甲52,乙24〕によれば,本件契
約による賃料支払は,当月分当月末払いであると認められるから,同月分の賃料の支払
時期は同月末であり,同月末に相殺適状となると解される。)。そこで,同相殺により消滅
した賃料債務につき検討すると,別紙「相殺処理一覧表(1)」記載のとおり,平成元年1月
分(ただし,そのうち10万0463円)までの賃料債務は,前記貸付金(利息を含む。)との
相殺により既に消滅していることになる。
     したがって,同月分(ただし,残額である5537円)から平成9年4月分(控訴人
は,平成9年5月9日に同年6月分までの賃料債務との相殺を主張しているが,前記のと
おり,本件契約に基づく賃料の支払時期は,当月分当月末払いであると認められるか
ら,控訴人が前記相殺の意思表示をした平成9年5月9日時点では4月分までしか支払
期日が到来しておらず,5月分及び6月分はまだ相殺適状にない。)までの賃料債務額を
算出すべきことになる。
     ただし,平成9年3月4日に,控訴人が旧F荘及び被控訴人占有土地の占有を失
ったことにより,後記7(争点(8)に対する判断)において説示するとおり,同日以降の賃料
は,その分(1万9583円)減額され,8万6417円となる(106,000円-19,583円)
から,平成9年5月9日時点での未払賃料債務は,以下のとおり,1046万2266円とな
る。
     ①平成元年1月分のうちの残額   5,537円
     ②平成元年2月分から平成9年2月分まで(8年1か月) 97か月
      106,000円×97か月=10,282,000円
     ③平成9年3月分賃料       88,312円
      106,000円×3日/31日=10,258円
      86,417円×28日/31日=78,054円
     ④平成9年4月分賃料       86,417円
     ⑤以上計           10,462,266円
  (イ) よって,控訴人の被控訴人に対する貸付金は,平成元年1月時点ですべて消滅
しており,平成9年5月9日の相殺の意思表示により,前記立替金1985万0873円のう
ち1046万2266円が消滅し,残額は938万8607円となる(別紙「相殺処理一覧表(2)」
参照)。
     19,850,873円-10,462,266円
    = 9,388,607円  
  (ウ) なお,立替金債権については,弁済期の定めのない債権であるから,請求によ
り期限が到来することになるが(民法412条3項),相殺の意思表示は支払請求には該
当しないと解されるものの,控訴人が同期日において前記立替金の支払請求をしている
ことは当裁判所に顕著な事実であるから,前記残額につき,以後,年5%の利息が発生
することになると解される。また,控訴人の前記各相殺の意思表示を合理的に解釈すれ
ば,平成9年7月分以降の賃料債務についても,前記立替金債権の残額と対当額で順次
相殺する旨の意思を含んでいるものと解されるから,前記立替金(利息を含む。)が存在
する間は,賃料不払いの状態は生じないものというべきである(その結果,同月以降の相
殺の状況は,別紙「相殺処理一覧表(2)」のとおりとなる。)。
  イ 被控訴人の相殺の意思表示
    後記争点(10)についての判断において述べる。
 5 争点(6)(前記貸付金等の消滅時効の成否)について
 (1) 被控訴人は控訴人に対し,控訴人の被控訴人に対する貸付金のうち,その発生か
ら既に5年が経過しているものについては商事消滅時効が完成したとして平成9年9月1
2日の原審第4回口頭弁論期日においてこれを援用し,仮に商事債権でないとした場合
においても,その発生から既に10年が経過しているものについては10年の民事消滅時
効が完成したとして同年11月6日の原審第5回口頭弁論期日においてこれを援用した。
これに対し,控訴人は,被控訴人清算人作成の貸借対照表にこれらの固定資産税立替
金が記載され(甲10の18「借受金(前受金・預り金)の内訳書」欄参照),裁判所へ提出
されたことをもって債務の承認があった旨主張する。
 (2) しかしながら,控訴人の主張する各債権のうち,貸金債権の認定部分は,前記のと
おりすべて相殺により消滅しているし,立替金債権の認定部分は,たとえ消滅時効が完
成している部分があるとしても,控訴人がこれを含めて立替金債権を自働債権とし,被控
訴人からの賃料支払請求権を受動債権として相殺の主張をすることは可能であるから
(民法508条),特にこの点につき論じる実益はないというべきである。
 6 争点(7)(被控訴人の平成13年3月19日付け解約申入れの有効性)について
 (1) 本件契約は,約定期間が50年となっているが(甲2),民法604条第1項により20
年に短縮されるから,昭和49年1月1日から20年を経過した平成5年12月31日の経過
をもって満了したことになる。そして,借家及びその敷地部分と認められる範囲の土地に
関しては,その6月ないし1年前に被控訴人から更新拒絶の通知をしたと認められる証拠
はないから,同一条件で法定更新されたものと認められる(借地借家法26条1項)。この
ような場合,当該賃貸借契約は期限の定めのないものとなり,賃貸人である被控訴人
は,正当事由が発生すればいつでも解約の申入れができると解すべきである(最高裁判
所昭和28年3月6日判決・民集7巻4号267頁)。
 (2) そこで,検討するに,前記争いのない事実及びこれまでに認定したところによれば,
次のとおり認められる。
  ア 前契約及び昭和47年契約は,被控訴人とDとの間で,主にC病院の経営を目的
として締結されたものであった。
  イ 昭和47年12月22日,Dが死亡したことにより病院経営は廃止され,控訴人との
間で本件契約が締結されたが,その賃料は月額10万6000円と,非常に低廉なもので
あった。また,控訴人は,医師ではなく,病院経営をも意図しなかったため,本件契約締
結の結果,実質上控訴人の単独相続と同様の結果が招来されており,これまで控訴人
は,本件各建物の一部において自ら学習塾を経営し,また住居として第三者に転貸し,
更に敷地の一部を駐車場として転貸するなどして個人的な収益を図ってもいる。
  ウ 被控訴人の唯一の代表社員であったEが昭和52年12月2日に死亡したことによ
り,被控訴人は解散することになった。その後,控訴人及び補助参加人らとの間で,被控
訴人を存続させ,経営を再開するべく協議がもたれたが,結局最終的合意には至らなか
った(乙2,丁1,弁論の全趣旨)。したがって,本来,被控訴人は,速やかに清算手続を
進行させ,社員に残余資産を分配すべきものである。
  エ 前記のとおり,控訴人は,被控訴人に対し,年利10%で3324万円余もの貸付金
があると主張し,また,本件契約書第3項を根拠として,これまで本件各建物に支出した
修繕費用等6686万円余の立替金があるなどと主張し,その返還を請求している上,そ
の主張の一部は理由があり(前記のとおり),しかも,本件各建物の老朽化が進んでいる
と推認できることをも勘案すると,本件契約の継続により,修繕費用はかさむ一方となり,
今後,本件契約を継続しても,被控訴人の資産が増加するとは到底考えられないところ
である。
 (3) 以上のような点に加え,①控訴人の本件各物件の賃借年数も30年を超え,相当
の長期間に達しており,控訴人が使用収益する期間として十分なものであると評価し得
ること,及び②控訴人が被控訴人に対して平成9年3月27日に本件訴訟を提起した上
(当裁判所に顕著な事実),それまでにも控訴人を含むB,E及びDらの共同相続人間に
は多数の訴訟が継続していたこと(甲41)などから,同相続人間のみならず本件各当事
者間ですら信頼関係はほぼ完全に失われていると考えざるを得ないこと,③本件契約終
了の結果,控訴人が退去することになっても,現在の経済情勢を勘案すると代替物件を
得ることは容易であり,控訴人家族が住居に事欠くような事態には陥らないと推測される
こと,などの事情をも併せ考慮すると,被控訴人の行った本件解約申入れには正当事由
があるというべきである。
 (4) 以上の次第で,本件契約は,前記解約の申入れから6か月を経過した平成9年9
月19日の経過をもって終了したことになる(借地借家法27条1項)。なお,借地借家法2
7条2項及び26条2項によれば,解約申入れ後6か月を経過しても借家人が使用を継続
する場合において,賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは解除の効果は発生しな
いとされているが,被控訴人の前記解約の申入れは,控訴人が本件契約に基づく賃借
権等の確認などを求めた本訴に対し,被控訴人が反訴として,本件契約が解除されたこ
とを理由に本件各土地建物の明渡しなどを求めて提起した本件訴訟手続においてされた
ものであること,同日現在も,本件裁判が継続中であり,同日が経過した後である同年1
1月6日の原審第16回口頭弁論期日にも被控訴人清算人らが出頭していること,及び控
訴人に対し明渡しを求める姿勢に変化がないことはいずれも当裁判所に顕著な事実であ
って,これらのことからすれば被控訴人は,控訴人が同日以降も引き続き使用しているこ
とに対し,異議を述べていると同様に評価しうるから,被控訴人の同解約申入れは借地
借家法の定める前記要件を満たしていると解するのが相当である。
 7 争点(8)(旧F荘取壊しによる損害の有無)について
 (1) 被控訴人が平成9年3月4日に被控訴人占有土地上にあった旧F荘を控訴人に無
断で取り壊し,その後周辺をフェンスで囲むなどして,被控訴人占有土地を占有している
こと(以下「本件不法行為」ともいう。)は,当事者間に争いがない。
 (2) 前記争点(4)に対する判断で説示したように,昭和54年2月20日付けA清算人によ
る本件契約の解除は無効であるから,平成13年3月19日付けの被控訴人の解約申入
れにより,同年9月19日の経過をもって本件契約につき解除の効果が発生するまでの
間,控訴人は,旧F荘及び被控訴人占有土地を使用収益できたはずである。証拠(甲7,
8,29,30,原審控訴人)及び弁論の全趣旨によれば,同取壊し当時,控訴人は,旧F
荘及び被控訴人占有土地を別紙転貸借目録記載のとおり,第三者に転貸して収益(旧F
荘につき月20万5000円,被控訴人占有土地につき月20万8000円の合計41万300
0円)をあげていたと認められる。そして,先にみた本件契約締結の経緯等によれば,被
控訴人は,控訴人が行っていた前記転貸及びこれにより収益を得ていたことを認識し,
若しくは認識できる状況にあったことが推認できる。
   ただし,控訴人が旧F荘及び被控訴人占有土地の占有を失ったのは被控訴人の行
為によるものであり,その分の賃料の支払義務を控訴人は当然に免れると解される(最
高裁判所昭和36年7月21日第二小法廷判決・民集15巻7号1952頁)から,前各物件
の賃料に相当する金員を前記損害(収益)から控除した残額が,本件不法行為による控
訴人の受けた損害というべきである。そうすると,次の計算により,前各物件の賃料に相
当する金員は,それぞれ1万3467円,6116円(計1万9583円)となる。
   a 土地
    1178.99㎡÷6654.16㎡≒0.1772(小数点第5位四捨五入。以下同じ。)
    76,000円×0.1772≒13,467円(小数点以下切り捨て。以下同じ。)
   b 建物
    495.86㎡÷2432.12㎡円=0.2039
    30,000円×0.2039=6,117円
   c 合計
    13,467円+6,117円=19,584円
   d 損害額
    413,000円-19,584円=393,416円
 (注)本件契約の対象物件 
      土地全体       6654.16㎡
      建物全体(全床面積) 2432.12㎡
 (3) よって,控訴人は,被控訴人に対し,本件不法行為に基づき,平成9年3月4日から
平成13年9月19日までの間,1か月当たり39万3416円の割合による損害賠償請求
権を有すると認めることができる。
    その額は,以下のとおり,合計2145万4285円となる。
    平成9年3月4日から平成13年9月19日まで 54か月と16日
    393,416円×54か月=21,244,464円
    393,416円×16日/30日=209,821円
    21,244,464円+209,821円=21,454,285円
 8 争点(9)(Nの一部土地占有の有無)について
   控訴人は,争点(9)について,本件契約で賃貸物件とされた土地の一部は,控訴人
の占有下にはなく,Nが占有している旨主張する。
   しかしながら,証拠(甲39,丙13,丁1,原審証人U)によれば,控訴人主張に係る
土地はいずれも控訴人が占有していることが認められる。控訴人の主張は採用できな
い。
 9 争点(10)(本件各土地建物の賃料相当損害額等)について
 (1) 控訴人が,本件各土地建物を占有していることは争いがない。
 (2) 前記争点(7)につき説示したとおり,被控訴人の平成13年3月19日付け本件契約
解除の意思表示は有効であるから,同契約は同年9月19日の経過をもって終了したと
認められる。そして,本件各証拠によるも,控訴人が引き続き本件各土地建物を占有す
る正当な権原を有することを認めることはできないから,本件契約終了後の占有は不法
占有となり,これに伴い,控訴人は,被控訴人に対し,賃料相当額の損害(民法709条)
を支払う義務があることになる。
   ところで,前記争点(1)につき説示したように,本件契約は借家契約と解されるとこ
ろ,本件各建物は,既に築後数十年を経たものであり(甲12,38,弁論の全趣旨),経
済的耐用年数を優に超過していると思われること,仮に,今後相当年数貸家として使用
できるとしても,本件においては建物に比較して敷地部分が広大であることから,今後は
本件各建物を賃貸することによる収益よりもこれらを取り壊し,更地としての使用収益を
図ることが合理的であると認められること,被控訴人もその意向を有していると推測され
ること,控訴人もこれらのことを予測可能であること,などの事情から判断すれば,本件
における賃料相当損害金の算出に当たっては,本件各建物に係る賃料(家賃)相当額で
はなく,本件各土地に係る賃料(地代)相当額をもって,被控訴人の被った損害金とすべ
きである(被控訴人も,賃料相当損害金の発生根拠としては,土地のみに限定する旨主
張していることは前記のとおりである。)。
 (3) ところで,被控訴人は賃料相当損害金発生の根拠としては,別紙「賃料相当損害
金一覧表」記載に係る土地に限定する旨の主張をしている(前記のとおり)上,被控訴人
占有土地は既に(平成9年3月4日)被控訴人に占有が移転している。したがって,同損
害金発生の根拠となるべき対象土地は,同一覧表の各土地から更に被控訴人占有土地
を除いた残りの土地(ただし,別紙物件目録1(2)の土地は同一覧表の土地に含まれてい
ない。以下「賃料相当損害金発生土地」ともいう。)ということになる。
   これらの賃料相当損害金発生土地の賃料相当額につき検討すると,株式会社Yの
鑑定(乙32ないし34)によれば,本件各土地の平成15年5月6日時点の地代評価月額
は,合計177万7000円とされている。
   これは,別紙物件目録記載12ないし30(ただし,26を除く。)の各土地については,
平方メートル当たり408円(坪当たり1350円)と,同目録記載1(3),3ないし5の各土地
については,平方メートル当たり318円(坪当たり1050円)と評価するものである。
 (4) しかしながら,同社の鑑定方法は,「地上建物を取り壊し更地の最有効利用を実現
すること」を前提としたものであるところ,被控訴人が本件各土地をすべて最有効利用で
きるとは限らないから,これを直ちに本件における賃料相当損害金と認定することは困難
である。
   そこで検討するに,本件各土地はいずれも宅地であり,JRj線「k駅」及び「b駅」,山
陽自動車道lインターチェンジ及びVb店にもほど近い位置にあり,本件各証拠によるも,
面積,形状的その他の点において使用収益に障害となる特段の事由は見当たらないこ
と,その他本件に関する諸般の事情を総合考慮すると,少なくとも前記鑑定評価額の約6
割に相当する額(別紙物件目録記載12ないし30〔26を除く。〕の各土地については平方
メートル当たり245円,同目録1(3),3ないし6の各土地については平方メートル当たり1
91円)をもって被控訴人の賃料相当損害金と認めるのが相当である(民訴法248条も参
照)。そして,証拠(乙35ないし65)及び弁論の全趣旨によれば,本件契約が解除された
平成13年当時の鑑定額も,前記の額を下回ることはないと認めるのが相当である。
   よって,各土地ごとの損害額(各建物の損害額は,存在する敷地に係る損害額に含
まれる。)は,別紙「賃料相当損害金一覧表」の「認容額」欄に記載のとおりとなるから,控
訴人は,被控訴人に対し,平成13年9月20日以降本主文第3項記載の各土地の明渡し
に至るまで,別紙「賃料相当損害金一覧表」の各土地ごとに同表の「認容額」欄記載の額
(合計月額84万2488円)を支払うべき義務を負う。
 (5) 被控訴人は,これらと控訴人の被控訴人に対する金銭支払請求権との相殺を主張
するので,この点につき検討する。
   まず,被控訴人が,控訴人に対し,平成14年6月21日の原審第22回口頭弁論期
日において,上記賃料相当損害金あるいは不当利得返還債権のいずれかをもって,控
訴人の主張する金銭請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をしたこと
は当裁判所に顕著な事実である。
   ところで,控訴人の被控訴人に対する貸金債権は,前記のとおり,控訴人が昭和53
年7月24日にした相殺の意思表示により(平成元年1月分〔ただし,その一部〕までの賃
料債務との相殺により),その全部が消滅している。また,控訴人の被控訴人に対する立
替金債権については,前記のとおり,控訴人のした平成9年5月9日の相殺の意思表示
により,一部(938万8607円)を残して消滅している。そして,同相殺に至る経緯及び内
容にかんがみると,控訴人としては,少なくとも賃料債務の発生する限りにおいて自己の
有する立替金債権と対当額で相殺するとの意思を有していたと認めるのが相当であるか
ら,賃料債務の消滅した時点(すなわち,本件契約が終了した時点である平成13年9月
20日)までの賃料債務に対応する立替金債権は同相殺の意思表示により消滅したこと
になる(別紙「相殺処理一覧表(2)」記載のとおり,同時点における立替金債権額は659
万8746円である。)。そして,被控訴人がした前記平成14年6月21日の相殺の意思表
示は,本件賃料相当損害金請求債権を自働債権として控訴人の金銭債権(前記残存す
る立替金債権)とを対当額で相殺するというものであり,これにより,別紙「相殺処理一覧
表(2)」記載のとおり,平成14年5月分(ただし,そのうちの一部である51万6343円。利
息を含む。)までの賃料相当損害金債権と前記残存立替金債権が対当額で相殺により
消滅したと認められる。
   しかしながら,前記争点(8)に対する判断において説示したとおり,被控訴人が理由
なく旧F荘を取り壊し,本件契約が解除されるまでの間被控訴人占有土地を占有していた
ことにより控訴人に与えた損害は,不法行為に基づくものであるから,これを受働債権と
する被控訴人からの相殺は許されない(民法509条)。よって,この点に関する被控訴人
の主張は失当である。
 (6) 以上のところから,被控訴人は,控訴人に対し,前記相殺により控訴人の被控訴人
に対する立替金債権残額のすべてが消滅した平成14年5月(ただし,そのうち32万61
45円)以降,別紙物件目録記載1(3),3ないし6,12ないし25,27ないし30の各土地
の明渡しに至るまで,各土地ごとに別紙「賃料相当損害金一覧表」の「認容額」欄記載の
賃料相当損害金を請求できることになる(当審口頭弁論終結の日である平成15年10月
7日までの賃料相当損害金の額は,別紙「相殺処理一覧表(2)」記載の同日付け残額合
計欄のとおり,1464万8440円となる。)。
 10 まとめ
   以上の各争点に対する認定及び判断を前提として,控訴人及び被控訴人の各請求
につき判断する。
 (1) 控訴人の請求について
  ア 控訴人の本訴請求(2)及び(3)(前記「事実及び理由」の「第1 当事者の求めた裁
判」1。以下同じ。)については,前記争点(1)ないし(3)に説示したように,本件契約は,控
訴人と被控訴人との間で昭和49年1月1日に,期間50年(ただし,民法604条1項によ
り,20年に短縮),賃料10万6000円(土地分として7万6000円,建物分として3万円)
として締結されたが,平成13年3月19日の解除により,その6か月後である同年9月19
日の経過をもって有効に終了したものであると認められるから,理由がない。
  イ 控訴人の本訴請求(4)については,前記争点(4)ないし(8)につき説示したところによ
り,平成9年3月4日から当審における口頭弁論終結の日まで,月額39万3416円の限
度(合計2145万4285円)で理由があるから,これを認容する。
  ウ 控訴人の本訴請求(5)については,争点(5)及び(6)に説示したところにより,その一
部については認められるが,被控訴人に対する賃料債務及び前記賃料相当損害金債務
との相殺により既に全額が消滅しているから,結局理由がないことに帰し,棄却を免れな
い。
 (2) 被控訴人の請求について
  ア 前記争点(1)ないし(7)で認定したとおり,本件各土地建物につき,本件契約が解除
された日の翌日である平成13年9月20日以降の控訴人の占有は不法占有となる。
    したがって,控訴人は,被控訴人に対し,別紙物件目録記載1(3),3ないし6及び9
ないし33の各土地建物を明け渡す義務があるところ,争点(10)につき説示したところによ
り,控訴人は,被控訴人に対し,同目録記載1(3),3ないし6,12ないし25,27ないし30
の各土地につき,本件契約終了の翌日である平成13年9月20日から当審口頭弁論終
結の日である平成15年10月7日まで(ただし,平成14年5月分〔そのうち51万6343
円〕までの分は相殺により消滅している。)の額である1464万8440円及び平成15年1
0月8日から明渡しに至るまで,毎月合計84万2488円(具体的には,別紙「賃料相当損
害金一覧表」の「物件目録の番号」欄記載の各土地につき,同別紙の「認定額」欄記載の
額)の割合による金員を支払うべきことになる。
    以上の次第で,控訴人及び被控訴人の本件各控訴は,それぞれその一部につき
主文の限度で理由があるが,その余は理由がない。
    よって,これと異なる原判決は相当ではないから変更することとし,主文のとおり判
決する。
    広島高等裁判所第2部
       裁判長裁判官    鈴   木   敏   之
           裁判官    松   井   千 鶴 子
           裁判官    工   藤   涼   二
(別紙)
               物 件 目 録 
1(1)所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-1番i
  地  目  宅地
  地  積  694.32平方メートル
 (2) 上記(1)のうち別紙図面1のオ,イ,ウ,カ,オを順次結んだ直線で囲まれた部分3
71.69平方メートル
 (3) 上記(1)のうち別紙図面2のイ,ロ,ハ,ニ,ホ,へ,ト,チ,リ,ヌ,イを順次結んだ
直線で囲まれた部分322.63平方メートル
2 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-2番i
  地  目  宅地
  地  積  135.53平方メートル
3 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-3番g
  地  目  宅地
  地  積  314.04平方メートル
4 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-4番i
  地  目  宅地
  地  積  61.90平方メートル
5 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-4番f
  地  目  宅地
  地  積  92.28平方メートル
6 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-5番f
  地  目  宅地
  地  積  127.24平方メートル
7 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-6番f
  地  目  宅地
  地  積  322.98平方メートル
8 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-7番h
  地  目  宅地
  地  積  484.32平方メートル
9 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-8番g
  地  目  宅地
  地  積  500.85平方メートル
10 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-9番h
  地  目  宅地
  地  積  29.75平方メートル
11 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-9番o
  地  目  宅地
  地  積  33.71平方メートル
12 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-10番
  地  目  宅地
  地  積  280.99平方メートル
13 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-11番i
  地  目  宅地
  地  積  126.94平方メートル
14 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-11番f
  地  目  宅地
  地  積  58.18平方メートル
15 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-11番h
  地  目  宅地
  地  積  86.67平方メートル
16 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-11番o
  地  目  宅地
  地  積  89.45平方メートル
17 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-12番i
  地  目  宅地
  地  積  216.92平方メートル
18 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-12番f
  地  目  宅地
  地  積  16.52平方メートル
19 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-12番h
  地  目  宅地
  地  積  269.75平方メートル
20 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-13番i
  地  目  宅地
  地  積  234.71平方メートル
21 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-13番h
  地  目  宅地
  地  積  109.09平方メートル
22 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-14番f
  地  目  宅地
  地  積  152.06平方メートル
23 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-14番h
  地  目  宅地
  地  積  102.47平方メートル
24 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-15番i
  地  目  宅地
  地  積  275.20平方メートル
25 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-16番i
  地  目  宅地
  地  積  157.15平方メートル
26 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-17番n
  地  目  公衆用道路
  地  積  0.56平方メートル
27 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-18番i
  地  目  宅地
  地  積  163.93平方メートル
28 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-18番f
  地  目  宅地
  地  積  119.60平方メートル
29 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-19番i
  地  目  宅地
  地  積  255.10平方メートル
30 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-20番i
  地  目  宅地
  地  積  8.26平方メートル
31 (主たる建物)
  所  在  広島市m区bn丁目d-10番地
  家屋番号  87番
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階225.61平方メートル
        2階104.13平方メートル
  (附属建物)
  符号1
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階106.61平方メートル
        2階110.74平方メートル
  符号2
  種  類  倉庫
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階28.92平方メートル
        2階28.92平方メートル
  符号3
  種  類  医務室
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  323.96平方メートル
  符号4
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  135.53平方メートル
  符号5
  種  類  炊事場
  構  造  木造亜鉛メッキ鋼板瓦葺平家建
  床面積  6.61平方メートル
  符号6
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階99.17平方メートル
        2階66.11平方メートル
  符号7
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  46.28平方メートル
32 (主たる建物)
  所  在  広島市m区bn丁目d-8番地g
  家屋番号  121番
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  104.13平方メートル
  (附属建物)
  符号1
  種  類  便所
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  6.61平方メートル
33 (主たる建物)
  所  在  広島市m区bn丁目d-7番地
  家屋番号  86番
  種  類  病室
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階257.85平方メートル
        2階238.01平方メートル
  (附属建物)
  符号3
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺2階建
  床面積  1階75.20平方メートル
        2階45.45平方メートル
  符号6
  種  類  病室
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  225.61平方メートル
   なお,現況所在地は,広島市m区bn丁目d-2番f,同d-3番i,同d-21番i(本物
件目録34ないし36)
  符号7 
  種  類  病室
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  95.86平方メートル
  符号9 
  種  類  浴室
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  61.15平方メートル
  符号11  
  種  類  居宅
  構  造  木造瓦葺平家建
  床面積  39.66平方メートル
  ただし,主たる建物及び符号7の附属建物は滅失
34 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-2番f
  地  目  宅地
  地  積  313.85平方メートル
35 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-3番i
  地  目  宅地
  地  積  423.15平方メートル
36 所  在  広島市m区bn丁目
  地  番  d-21番i
  地  目  宅地
  地  積  396.69平方メートル
                                                      
               以上
別   紙
甲号証
番号支払日金額認容額除外額
9・1・1S62.1.30請求対象外
9・1・2S62.3.3087番主たる建物屋根の修理 (建物の主要構造)54400005440000
9・1・3S62.4.186番附属建物フスマの修理23002300
9・1・4S62.4.587番主たる建物畳の修理35003500
9・1・5S62.10.31同上     フスマの修理4200042000
9・1・6S62.12.29同上   屋根の修理(建物の主要構造物)370000370000
9・2・1S63.2.29同上   電気メーター工事3000030000
9・2・2S63.3.25d-10番地植木工事2250022500
9・2・3S63.11.3086番附属建物上水道修理55005500
9・2・4S63.12.2987番主たる建物屋根修理工事(建物の主要構造物)26700002670000
9・3・1H1.1.31同上水道工事40604060
9・3・2H1.4.14同上屋根修理工事(建物の主要構造物)880000880000
9・3・3H1.5.17同上雨戸のガラス工事72107210
9・3・4H1.5.13d-10番地植木工事4200042000
9・3・5H1.5.31同上土入れ工事3900039000
9・3・6H1.6.30同上土砂の運搬154500154500
9・3・7H1.6.25同上土入れ工事
9・3・8H1.11.186番附属建物屋根修理(建物の主要構造物)9500095000
9・3・9H1.11.186番主たる建物 同上(同上)125000125000
9・4・1H2.4.2786番附属建物上水道修理30903090
9・4・2H2.6.2087番主たる建物建物床工事2500025000
9・4・3H2.6.28同上水道工事39963996
9・4・4H2.7.8d-10番地植木工事7000070000
9・4・5H2.8.2187番主たる建物雨戸ガラス工事13501350
9・4・6H2.8.21同上同上540540
9・4・7H2.12.6同上
建物の屋根,根太工事
(建物の主要構造)1200000012000000
9・5・1H3.3.d-10番地建物敷地改修工事114700114700
9・5・2H3.3.同上同上5950059500
9・5・3H3.4.587番主たる建物
建物の屋根,根太工事
(建物の主要構造)2550000025500000
9・5・4H3.4.27d-10番地建物敷地改修工事8500085000
9・5・5H3.8.287番主たる建物エアコンの設置と工事費16900001690000
9・5・6同上同上(請求書)
9・5・7H3.12.2986番附属建物ボイラーの修理(生活必需品)3090030900
9・6・1H4.2.8d-7番地廃棄物処理4000040000
9・6・2H4.11.1187番主たる建物ポンプ修理71077107
9・7・1H5.5.31d-10番地外構の修理3800038000
9・7・2H5.7.30d-7番地排水桝の設置2200022000
9・7・3H5.6.30同上 巨木の伐採420000420000
9・7・4H5.8.2386番建物68000006800000
9・7・5H5.8.3186番主たる建物 屋根修理56500005650000
9・8・1H6.8.4同上上水道工事2502925029
9・8・2H6.9.29同上廃棄物処理5283952839
9・8・3H6.10.2486番附属建物建物修理,上水道工事150000150000
9・9・1H7.1.30同上フスマ修理 借家(アパート)2260022600
9・9・2H7.2.6同上建物修理 (借家)110000110000
9・9・3H7.9.21同上同上105000105000
9・9・4H7.10.2d-10番地外構の修理4900049000
9・10・1H8.2.1986番附属建物建物修理借家144200144200
9・10・2H8.7.1087番主たる建物建物附属設備修理1050610506
9・10・3H8.7.1d-10番地外構の修理52005200
9・10・4H8.8.30同上建物入口舗装修理 駐車場ホソウ他380000380000
9・10・5H8.9.25同上庭木の伐採4800048000
57・1H9.3.28庭園関係100000100000
57・2H9.4.30駐車場整備代金130000130000
57・3H9.8.30母屋2階雨漏れ修理代金9700097000
57・4H9.9.22修理代金58915891
57・5H9.9.22減圧弁取り替え等1396513965
立 替 金 一 覧 表  (単位;円)
内容
9・9・4H7.10.2d-10番地外構の修理4900049000
9・10・1H8.2.1986番附属建物建物修理借家144200144200
9・10・2H8.7.1087番主たる建物建物附属設備修理1050610506
9・10・3H8.7.1d-10番地外構の修理52005200
9・10・4H8.8.30同上建物入口舗装修理 駐車場ホソウ他380000380000
9・10・5H8.9.25同上庭木の伐採4800048000
57・1H9.3.28庭園関係100000100000
57・2H9.4.30駐車場整備代金130000130000
57・3H9.8.30母屋2階雨漏れ修理代金9700097000
57・4H9.9.22修理代金58915891
57・5H9.9.22減圧弁取り替え等1396513965
57・6H9.10.15庭園関係2700027000
57・7H10.2.26給排水関係8400084000
57・8H10.3.4給排水修理代金121500121500
57・9H10.3.31給排水関係2835028350
57・10H10.6.2ウヲシュレット修理代金1654816548
57・11H10.7.1蛇口2個26672667
57・12H10.11.18修理費(桝代)8754287542
57・13H11.7.16給排水関係40004000
57・14H11.7.16給排水関係20002000
57・15H11.10.11台風による車庫修理45004500
57・16H11.11.20ブロック塀撤去代180000180000
57・17H11.12.16水洗トイレ部品(蛇口)15541554
57・18H11.12.26トイレ・金具取替代金90009000
転借人家賃月額(円)駐車料月額(円)転借人駐車料月額(円)
w-150,00035,000x-134,000
w-210,000x-27,000
w-310,000x-37,000
w-420,0007,000x-414,000
w-510,000x-514,000
w-639,00024,000x-67,000
合計139,00066,000x-77,000
x-87,000
建物アの合計205,000x-97,000
x-107,000
x-117,000
x-127,000
x-137,000
x-147,000
x-157,000
x-167,000
x-177,000
x-187,000
x-1927,000
x-207,000
x-217,000
合計208,000
本件土地の合計208,000
         建 物 ア       本件土地
別紙
物件目録
の番号
地番面積(㎡)
請求単価
(円)
(㎡当たり)
請求額
(円)
認容単価
(円)
(㎡当たり)
認容額(円)
(四捨五入)
11ðCd-1番iの一部322.63318102,59619161,622
23d-3番g314.0431899,86519159,982
34d-4番i61.9031819,68419111,823
45d-4番f92.2831829,34519117,625
56d-5番f127.2431840,46219124,303
67d-6番f322.98318102,70800
78d-7番h484.32318154,01400
812d-10番280.99408114,64424568,843
913d-11番i126.9440851,79224531,100
1014d-11番f58.1840823,73724514,254
1115d-11番h86.6740835,36124521,234
1216d-11番o89.4540836,49624521,915
1317d-12番i216.9240888,50324553,145
1418d-12番f16.524086,7402454,047
1519d-12番h269.75408110,05824566,089
1620d-13番i234.7140895,76224557,504
1721d-13番h109.0940844,50924526,727
1822d-14番f152.0640862,04024537,255
1923d-14番h102.4740841,80824525,105
2024d-15番i275.20408112,28224567,424
2125d-16番i157.1540864,11724538,502
2227d-18番i163.9340866,88324540,163
2328d-18番f119.6040848,79724529,302
2429d-19番i255.10408104,08124562,500
2530d-20番i8.264083,3702452,024
合    計4448.381,659,654842,488
賃 料 相 当 損 害 金 一 覧 表
(別紙)
貸金元金(円)利息(円)
昭和50年1月20日21000044220
昭和50年8月5日10000017835
昭和50年8月20日300005276
昭和50年10月1日10000016898
昭和50年10月25日13000021455
昭和50年11月30日10000015912
昭和50年12月24日1271750197347
昭和50年12月24日582509039
昭和51年1月31日11841017634
昭和51年2月20日30000043693
昭和51年2月29日11841017070
昭和51年3月31日11841016467
昭和51年4月30日11841015883
昭和51年5月31日11841015279
昭和51年6月20日10000012575
昭和51年6月30日11930014806
昭和51年7月31日11619013828
昭和51年8月20日20000023145
昭和51年8月31日11624013241
昭和51年9月30日11624012668
昭和51年9月30日20000021797
昭和51年10月31日11624012076
昭和51年11月20日11624011694
昭和51年12月10日20000019463
昭和51年12月20日11624011120
昭和51年12月31日1000009386
昭和52年1月31日13539012018
昭和52年2月28日13539011395
昭和52年3月31日13539010705
昭和52年4月30日13539010037
昭和52年5月31日1358909381
昭和52年6月30日1378508837
昭和52年7月31日1364108050
昭和52年8月1日20000011769
昭和52年8月18日1000005605
昭和52年8月27日1341307320
昭和52年8月31日1500008087
昭和52年9月27日1341306636
昭和52年9月30日2000009797
昭和52年10月31日1341305887
昭和52年11月29日2000007824
昭和52年11月30日1341305225
昭和52年12月26日1000003468
昭和52年12月25日39827013879
昭和52年12月25日1205004199
昭和53年1月31日1456504189
昭和53年2月28日1456503519
昭和53年3月31日1456502777
昭和53年4月30日1456502059
昭和53年5月27日1456501412
昭和53年5月31日4910604439
昭和53年6月27日4260501960
昭和53年6月30日1590065
昭和53年6月30日68400281
合  計9195400810627
元 利 合 計10006027
貸付金元利一覧表
(別  紙)
元  金日数発生利息充当額残元金残利息残額合計
昭和53年7月24日9,195,400810,62709,195,400810,62710,006
昭和53年7月31日9,195,400710,581106,0009,195,400715,2089,910
昭和53年8月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400656,0669,851
昭和53年9月30日9,195,4003045,347106,0009,195,400595,4139,790
昭和53年10月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400536,2719,731
昭和53年11月30日9,195,4003045,347106,0009,195,400475,6189,671
昭和53年12月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400416,4769,611
昭和54年1月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400357,3349,552
昭和54年2月28日9,195,4002842,324106,0009,195,400293,6589,489
昭和54年3月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400234,5169,429
昭和54年4月30日9,195,4003045,347106,0009,195,400173,8639,369
昭和54年5月31日9,195,4003146,858106,0009,195,400114,7219,310
昭和54年6月30日9,195,4003045,347106,0009,195,40054,0689,249
昭和54年7月31日9,195,4003146,858106,0009,190,32609,190
昭和54年8月31日9,190,3263146,832106,0009,131,15809,131
昭和54年9月30日9,131,1583045,030106,0009,070,18809,070
昭和54年10月31日9,070,1883146,220106,0009,010,40809,010
昭和54年11月30日9,010,4083044,434106,0008,948,84208,948
昭和54年12月31日8,948,8423145,602106,0008,888,44408,888
昭和55年1月31日8,888,4443145,170106,0008,827,61408,827
昭和55年2月29日8,827,6142941,967106,0008,763,58108,763
昭和55年3月31日8,763,5813144,536106,0008,702,11708,702
昭和55年4月30日8,702,1173042,797106,0008,638,91408,638
昭和55年5月31日8,638,9143143,902106,0008,576,81608,576
昭和55年6月30日8,576,8163042,181106,0008,512,99708,512
昭和55年7月31日8,512,9973143,262106,0008,450,25908,450
昭和55年8月31日8,450,2593142,943106,0008,387,20208,387
昭和55年9月30日8,387,2023041,248106,0008,322,45008,322
昭和55年10月31日8,322,4503142,294106,0008,258,74408,258
昭和55年11月30日8,258,7443040,616106,0008,193,36008,193
昭和55年12月31日8,193,3603141,638106,0008,128,99808,128
昭和56年1月31日8,128,9983141,424106,0008,064,42208,064
昭和56年2月28日8,064,4222837,118106,0007,995,54007,995
昭和56年3月31日7,995,5403140,744106,0007,930,28407,930
昭和56年4月30日7,930,2843039,108106,0007,863,39207,863
昭和56年5月31日7,863,3923140,070106,0007,797,46207,797
昭和56年6月30日7,797,4623038,453106,0007,729,91507,729
昭和56年7月31日7,729,9153139,390106,0007,663,30507,663
昭和56年8月31日7,663,3053139,051106,0007,596,35607,596
昭和56年9月30日7,596,3563037,461106,0007,527,81707,527
昭和56年10月31日7,527,8173138,360106,0007,460,17707,460
昭和56年11月30日7,460,1773036,789106,0007,390,96607,390
昭和56年12月31日7,390,9663137,663106,0007,322,62907,322
昭和57年1月31日7,322,6293137,315106,0007,253,94407,253
昭和57年2月28日7,253,9442833,388106,0007,181,33207,181
昭和57年3月31日7,181,3323136,595106,0007,111,92707,111
昭和57年4月30日7,111,9273035,072106,0007,040,99907,040
昭和57年5月31日7,040,9993135,880106,0006,970,87906,970
昭和57年6月30日6,970,8793034,376106,0006,899,25506,899
昭和57年7月31日6,899,2553135,157106,0006,828,41206,828
昭和57年8月31日6,828,4123134,796106,0006,757,20806,757
昭和57年9月30日6,757,2083033,323106,0006,684,53106,684
昭和57年10月31日6,684,5313134,063106,0006,612,59406,612
昭和57年11月30日6,612,5943032,610106,0006,539,20406,539
昭和57年12月31日6,539,2043133,323106,0006,466,52706,466
相 殺 処 理 一 覧 表(1)
昭和57年1月31日7,322,6293137,315106,0007,253,94407,253
昭和57年2月28日7,253,9442833,388106,0007,181,33207,181
昭和57年3月31日7,181,3323136,595106,0007,111,92707,111
昭和57年4月30日7,111,9273035,072106,0007,040,99907,040
昭和57年5月31日7,040,9993135,880106,0006,970,87906,970
昭和57年6月30日6,970,8793034,376106,0006,899,25506,899
昭和57年7月31日6,899,2553135,157106,0006,828,41206,828
昭和57年8月31日6,828,4123134,796106,0006,757,20806,757
昭和57年9月30日6,757,2083033,323106,0006,684,53106,684
昭和57年10月31日6,684,5313134,063106,0006,612,59406,612
昭和57年11月30日6,612,5943032,610106,0006,539,20406,539
昭和57年12月31日6,539,2043133,323106,0006,466,52706,466
昭和58年1月31日6,466,5273132,952106,0006,393,47906,393
昭和58年2月28日6,393,4792829,427106,0006,316,90606,316
昭和58年3月31日6,316,9063132,190106,0006,243,09606,243
昭和58年4月30日6,243,0963030,787106,0006,167,88306,167
昭和58年5月31日6,167,8833131,430106,0006,093,31306,093
昭和58年6月30日6,093,3133030,049106,0006,017,36206,017
昭和58年7月31日6,017,3623130,663106,0005,942,02505,942
昭和58年8月31日5,942,0253130,279106,0005,866,30405,866
昭和58年9月30日5,866,3043028,929106,0005,789,23305,789
昭和58年10月31日5,789,2333129,501106,0005,712,73405,712
昭和58年11月30日5,712,7343028,172106,0005,634,90605,634
昭和58年12月31日5,634,9063128,714106,0005,557,62005,557
昭和59年1月31日5,557,6203128,243106,0005,479,86305,479
昭和59年2月29日5,479,8632926,051106,0005,399,91405,399
昭和59年3月31日5,399,9143127,442106,0005,321,35605,321
昭和59年4月30日5,321,3563026,170106,0005,241,52605,241
昭和59年5月31日5,241,5263126,637106,0005,162,16305,162
昭和59年6月30日5,162,1633025,387106,0005,081,55005,081
昭和59年7月31日5,081,5503125,824106,0005,001,37405,001
昭和59年8月31日5,001,3743125,416106,0004,920,79004,920
昭和59年9月30日4,920,7903024,200106,0004,838,99004,838
昭和59年10月31日4,838,9903124,591106,0004,757,58104,757
昭和59年11月30日4,757,5813023,397106,0004,674,97804,674
昭和59年12月31日4,674,9783123,758106,0004,592,73604,592
昭和60年1月31日4,592,7363123,404106,0004,510,14004,510
昭和60年2月28日4,510,1402820,759106,0004,424,89904,424
昭和60年3月31日4,424,8993122,548106,0004,341,44704,341
昭和60年4月30日4,341,4473021,409106,0004,256,85604,256
昭和60年5月31日4,256,8563121,692106,0004,172,54804,172
昭和60年6月30日4,172,5483020,576106,0004,087,12404,087
昭和60年7月31日4,087,1243120,827106,0004,001,95104,001
昭和60年8月31日4,001,9513120,393106,0003,916,34403,916
昭和60年9月30日3,916,3443019,313106,0003,829,65703,829
昭和60年10月31日3,829,6573119,515106,0003,743,17203,743
昭和60年11月30日3,743,1723018,459106,0003,655,63103,655
昭和60年12月31日3,655,6313118,628106,0003,568,25903,568
昭和61年1月31日3,568,2593118,183106,0003,480,44203,480
昭和61年2月28日3,480,4422816,019106,0003,390,46103,390
昭和61年3月31日3,390,4613117,277106,0003,301,73803,301
昭和61年4月30日3,301,7383016,282106,0003,212,02003,212
昭和61年5月31日3,212,0203116,368106,0003,122,38803,122
昭和61年6月30日3,122,3883015,398106,0003,031,78603,031
昭和61年7月31日3,031,7863115,449106,0002,941,23502,941
昭和61年8月31日2,941,2353114,988106,0002,850,22302,850
昭和61年9月30日2,850,2233014,055106,0002,758,27802,758
昭和61年10月31日2,758,2783114,055106,0002,666,33302,666
昭和61年11月30日2,666,3333013,149106,0002,573,48202,573
昭和61年12月31日2,573,4823113,114106,0002,480,59602,480
昭和62年1月31日2,480,5963112,640106,0002,387,23602,387
昭和62年2月28日2,387,2362810,987106,0002,292,22302,292
昭和62年3月31日2,292,2233111,680106,0002,197,90302,197
昭和62年4月30日2,197,9033010,838106,0002,102,74102,102
昭和62年5月31日2,102,7413110,715106,0002,007,45602,007
昭和62年6月30日2,007,456309,899106,0001,911,35501,911
昭和62年7月31日1,911,355319,740106,0001,815,09501,815
昭和62年8月31日1,815,095319,249106,0001,718,34401,718
昭和62年9月30日1,718,344308,474106,0001,620,81801,620
(別  紙)
元  金日数発生利息充当額残元金残利息残額合計
平成9年5月9日19,850,8730010,462,2669,388,60709,388
平成9年5月31日9,388,6072228,29486,4179,330,48409,330
平成9年6月30日9,330,4843038,34486,4179,282,41109,282
平成9年7月31日9,282,4113139,41886,4179,235,41209,235
平成9年8月31日9,235,4123139,21886,4179,188,21309,188
平成9年9月30日9,188,2133037,75986,4179,139,55509,139
平成9年10月31日9,139,5553138,81186,4179,091,94909,091
平成9年11月30日9,091,9493037,36486,4179,042,89609,042
平成9年12月31日9,042,8963138,40186,4178,994,88008,994
平成10年1月31日8,994,8803138,19786,4178,946,66008,946
平成10年2月28日8,946,6602834,31586,4178,894,55808,894
平成10年3月31日8,894,5583137,77186,4178,845,91208,845
平成10年4月30日8,845,9123036,35386,4178,795,84808,795
平成10年5月31日8,795,8483137,35286,4178,746,78308,746
平成10年6月30日8,746,7833035,94586,4178,696,31108,696
平成10年7月31日8,696,3113136,92986,4178,646,82308,646
平成10年8月31日8,646,8233136,71986,4178,597,12508,597
平成10年9月30日8,597,1253035,33086,4178,546,03808,546
平成10年10月31日8,546,0383136,29186,4178,495,91208,495
平成10年11月30日8,495,9123034,91486,4178,444,40908,444
平成10年12月31日8,444,4093135,85986,4178,393,85108,393
平成11年1月31日8,393,8513135,64586,4178,343,07908,343
平成11年2月28日8,343,0792832,00086,4178,288,66208,288
平成11年3月31日8,288,6623135,19886,4178,237,44308,237
平成11年4月30日8,237,4433033,85286,4178,184,87808,184
平成11年5月31日8,184,8783134,75786,4178,133,21808,133
平成11年6月30日8,133,2183033,42486,4178,080,22508,080
平成11年7月31日8,080,2253134,31386,4178,028,12108,028
平成11年8月31日8,028,1213134,09286,4177,975,79607,975
平成11年9月30日7,975,7963032,77786,4177,922,15607,922
平成11年10月31日7,922,1563133,64286,4177,869,38107,869
平成11年11月30日7,869,3813032,33986,4177,815,30307,815
平成11年12月31日7,815,3033133,18886,4177,762,07407,762
平成12年1月31日7,762,0743132,87286,4177,708,52907,708
平成12年2月29日7,708,5292930,53986,4177,652,65107,652
平成12年3月31日7,652,6513132,40886,4177,598,64207,598
平成12年4月30日7,598,6423031,14186,4177,543,36607,543
相 殺 処 理 一 覧 表(2)
平成11年5月31日8,184,8783134,75786,4178,133,21808,133
平成11年6月30日8,133,2183033,42486,4178,080,22508,080
平成11年7月31日8,080,2253134,31386,4178,028,12108,028
平成11年8月31日8,028,1213134,09286,4177,975,79607,975
平成11年9月30日7,975,7963032,77786,4177,922,15607,922
平成11年10月31日7,922,1563133,64286,4177,869,38107,869
平成11年11月30日7,869,3813032,33986,4177,815,30307,815
平成11年12月31日7,815,3033133,18886,4177,762,07407,762
平成12年1月31日7,762,0743132,87286,4177,708,52907,708
平成12年2月29日7,708,5292930,53986,4177,652,65107,652
平成12年3月31日7,652,6513132,40886,4177,598,64207,598
平成12年4月30日7,598,6423031,14186,4177,543,36607,543
平成12年5月31日7,543,3663131,94586,4177,488,89407,488
平成12年6月30日7,488,8943030,69286,4177,433,16907,433
平成12年7月31日7,433,1693131,47986,4177,378,23107,378
平成12年8月31日7,378,2313131,24686,4177,323,06007,323
平成12年9月30日7,323,0603030,01286,4177,266,65507,266
平成12年10月31日7,266,6553130,77486,4177,211,01207,211
平成12年11月30日7,211,0123029,55386,4177,154,14807,154
平成12年12月31日7,154,1483130,29786,4177,098,02807,098
平成13年1月31日7,098,0283130,14286,4177,041,75307,041
平成13年2月28日7,041,7532827,00986,4176,982,34506,982
平成13年3月31日6,982,3453129,65186,4176,925,57906,925
平成13年4月30日6,925,5793028,46186,4176,867,62306,867
平成13年5月31日6,867,6233129,16386,4176,810,36906,810
平成13年6月30日6,810,3693027,98786,4176,751,93906,751
平成13年7月31日6,751,9393128,67286,4176,694,19406,694
平成13年8月31日6,694,1943128,42786,4176,636,20406,636
平成13年9月19日6,636,2041917,27254,7306,598,74606,598
平成13年9月30日6,598,746119,943308,9126,299,77706,299
平成13年10月31日6,299,7773126,752842,4885,484,04105,484
平成13年11月30日5,484,0413022,537842,4884,664,09004,664
平成13年12月31日4,664,0903119,806842,4883,841,40803,841
平成14年1月31日3,841,4083116,312842,4883,015,23203,015
平成14年2月28日3,015,2322811,565842,4882,184,30902,184
平成14年3月31日2,184,309319,275842,4881,351,09601,351
平成14年4月30日1,351,096305,552842,488514,1600514
平成14年5月31日514,160312,183842,488-326,1450-326
平成14年6月21日-326,14521589,741-915,8860-915
平成14年6月30日-915,8869252,746-1,168,6320-1,168
平成14年7月31日-1,168,63231842,488-2,011,1200-2,011
平成14年8月31日-2,011,12031842,488-2,853,6080-2,853
平成14年9月30日-2,853,60830842,488-3,696,0960-3,696
平成14年10月31日-3,696,09631842,488-4,538,5840-4,538
平成14年11月30日-4,538,58430842,488-5,381,0720-5,381
平成14年12月31日-5,381,07231842,488-6,223,5600-6,223

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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