弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉野作馬の昭和四六年一二月一日付上告理由書記載の上告理由第一点、
第二点、第三点一について
 債務超過の状態にある債務者が、特定の債権者に対する債務の弁済に代えて第三
者に対する自己の債権を譲渡することは、譲渡される債権の額が債権者に対する債
務の額を超えない場合であつても、詐害の意思がある限り、詐害行為として取消の
対象となることは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和四八年(オ)
第二三五号同年一一月三〇日第二小法廷判決・民集二七巻一〇号一四九一頁)、こ
のことは、右債権譲渡が債権者に対する債務について譲渡担保を設定する趣旨であ
る場合であつても、また、右譲渡される債権を目的として予め債務者より債権者に
対しいわゆる代理受領の委任がなされ第三債務者の承認を得ている場合であつても、
異なるところはない。けだし、債務者がその一般財産を特定の債権者のための譲渡
担保に供するときは.その結果として他の債権者の共同担保が減少することに変わ
りはなく、また、債務者が特定の債権者に対する債務の担保として自己の第三者に
対する金銭債権につき右債権者を受任者とする代理受領委任契約を締結し、第三者
がこれを承認したときは、債務者及び第三者は、右契約の効力として、受任者に対
してのみ弁済の受領を得さしめる義務を負うこととなるが(最高裁昭和四一年(オ)
第六一一号同四四年三月四日第三小法廷判決・民集二三巻三号五六一頁参照)、他
の一般債権者との関係においては、受任者はなんら優先的な地位を有することを主
張できるものではなく、債務者の右債権は総債権者のための共同担保を構成してい
ることに変わりはないと解すべきだからである(最高裁昭和二六年(オ)第七四四
号同二九年四月二日第二小法廷判決・民集八巻四号七四五頁参照)。これと同趣旨
の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することがで
きない。
 同第三点二、三、第四点、第五点及び昭和四六年一二月六日付上告理由書記載の
上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はなく、原判決に所論の違法がある
ことを前提とする違憲の主張は失当である。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    本   林       讓
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    吉   田       豊
            裁判官    栗   本   一   夫

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