弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意について。
 しかし、所論は要するに被告人の生立、境遇、犯罪前後の心境、情状等を詳述し、
寛大な処分を求むと云うにあるのであるから、適法な上告理由とならない。
 弁護人橋本順の上告趣意第一点について。
 しかし、かりに所論の如く、昭和二三年一月二一日の一日間の勾留が不当である
としても、勾留手続の不当が当然に原判決の違法を来すものではないから、所論は
採用できない。
 同第二点について。
 記録を調査してみると、第一審判決に関与した裁判長判事佐藤智彦は、被告人に
対し、本件起訴前たる昭和二二年九月二二日に勾留訊問をしており、又同じく関与
判事の他の一人の古田富彦は同月二〇日被告人方に臨み証拠物の押収手続をしてい
るのである。しかしそれは第一審の判決に関することで、第二審の判決に関するこ
とではない。それ故第一審判決に、たとえ所論の如き違法ありとの論を是認し得る
としても、そのために第二審判決を違法とすべき筋合はない。従つて論旨は理由が
ない。
 同第三点について。
 しかし、原審が所論鑑定書の証拠調に関し、その要旨を告げとは所論鑑定書附図
についても之を被告人に展示し鑑定書本文と共にその要旨を告げたものであること
を表示した意味であることは明らかと云うべきである。次に押収物についての証拠
調を非難する所論については、原審第四回公判調書をみると、「押収物は之を示し」
とあつて、押収物について適法に証拠調をしていることが明かであるから、論旨は
理由がない。
 同第四点について。
 しかし、原判決の「同法第十九条第一項第二号第二項」とあるのは「刑法第十九
条云々」の誤記であること判文の全趣旨から明白である。従つて論旨は理由がない。
 同第五点について、
 しかし、原審は第二回公判において証第一一号を被告人に示し、被告人から「本
件で盗んで来た叺であります」との供述を聴いたので、右証第一一号が本件の被害
物件たることの心証を得たものとみることができるのである。そして判決において
これを粳精米(証第一一号)と記載しているのである。右の如く審理において被害
者に還付すべき理由明白なりとの心証を得た以上、判決において還付の言渡をする
のは当然で、原判決には所論の如き違法なく、論旨は理由がない。
 よつて、刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条により主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二四年六月四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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