弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 本来刑事裁判の公判期日は、被告人の責任ありとされる行為につき審判を行うも
のであるから、その期日の召喚状が一たん適法に被告人に送達された以上、被告人
はその公判期日に出頭しない場合でも、当該事件の審判の進行状況に注意し、その
後に指定告知される公判期日ないし判決宣告期日についても自らこれを了知すべき
手段を講ずべきである。原決定の示すところによれば、控訴審が、被告人に第一回
公判期日の召喚状を適法に送達したところ、被告人がその公判期日に出頭しなかつ
たので、そのまま開廷審理の上結審し判決宣告期日を指定告知し、さらにその宣告
期日にも被告人が出頭しないのでそのまま判決を宣告したというのであつて、かか
る場合判決の宣告は被告人に対し効力を生じ、上訴期間は判決の通知をまたずその
翌日より進行すると解すべきこと、大審院以来また当裁判所においても判例の趣旨
とするところであり、新刑訴法の解釈としても、なおこれを変更するの要を認めな
い。(昭和二四年(れ)第九八六号同年六月七日第三小法廷判決、集三巻七号九五
三頁参照。)次に刑訴規則二二二条の判決の通知は、第一審における被告人が本来
公判期日に出頭すべき義務があるにかかわらず、刑訴二八四条が所定の軽微な事件
につき特にその義務を免除したのに対応し、被告人のためを慮つた特別の規定に過
ぎないのであつて、この規定があるからといつて、そのため被告人が右通知を受け
た時から上訴期間が進行するものではなく、通常の場合と同じく判決言渡の時から
進行するのであり、被告人自ら訴訟進行の状態を知る手段を講ずることを要するこ
とも変りはないのである。そしてこのような被告人の責任は、控訴審においてもな
んら異なるところはないのであるから、本件における被告人が、所論自体認めてい
るように、判決通知を予期し、なんら期間内にその経過を知る努力を尽さないで、
単に右通知がなかつたというだけの理由をもつて、上訴権回復を請求してもこれを
認めることはできない。従つて原決定は結論において正当であつて、所論憲法三二
条違反の主張は、名をこれに藉り、原審の訴訟手続を非難するに過ぎず、適法な特
別抗告理由と認められない。
 よつて被告人の本件特別抗告を棄却すべきものとし刑訴四三三条一項、四二六条
一項を適用し、裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり決定する。
  昭和二九年九月二一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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