弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人牧野寿太郎、戸田正直の上告趣意第一点について。
 原審各公判調書を通覧すれば、原審第四回公判調書及び原判決に被告人Bと記載
されているのは、被告人Aの誤記であることが明瞭である。そして原判決は右被告
人の本籍、住居、職業及び年令を表示しているから、「富」を「留」と誤記したこ
とによつて、たゞちに被告人の特定を欠くということもできない。それゆえ原判決
には所論のような違法はないから論旨は採ることができない。
 同第二点について。
 原判決挙示の各証拠によつて、所論知情の事実を認定することは不可能でない。
すなわち原判決摘示の第五の(一)(二)の買受けの事実については、被告人Aの
原審公判廷における、本件取引は商業帳簿に記入しなかつた旨の供述があるほか、
昭和二三年九月三〇日附司法警察官の同被告人に対する聴取書中には、買受けた相
手方の性格、品物の種類、数量、値段の定め方その他の取引をめぐる諸情況があら
われているし、また買受けた品物をふだん出す市場えはもつてゆかずに名古屋え売
つたというような事実も述べられている。原審がこれらの情況を綜合して知情の事
実を認定しても、経験則に違反すると非難するわけにはいかない。また同第五の(
三)の買受けの事実に関しては、昭和二三年一〇月四日附司法警察官の同被告人に
対する聴取書中に、知情の点の自供がある。結局原判決には、所論のような理由の
不備またはくいちがいの違法はないのである。論旨は理由がない。
 被告人Cの弁護人高田完の上告趣意第一点について。
 所論は、公判調書に記載せられた訴訟手続を争うものであり、しかも原判決は所
論の押収品を証拠に引いているわけではないから、それが被告人Cに関する事件と
関係のないものであるとしても、原判決には何等の影響を及ぼさない。それ故所論
は採ることができない。
 同第二点について。
 被告人の妻が直接衣類を受取つたのであつても、被告人に代つて受取つたのであ
れば、それは被告人が預つたという事実と矛盾するわけではない。そして原判決の
挙示する他の証拠と綜合すれば、そのように認めることも可能であるから、原判決
には所論のような理由のくいちがいはないから、論旨は理由がない。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 右は全裁判官一致の意見である。
 検察官長部謹吾関与
  昭和二五年一一月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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