弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役1年6月に処する。
未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
押収してある覚せい剤1袋(平成24年押第48号の13)
を没収する。
訴因変更後の本件公訴事実中覚せい剤営利目的輸入及び関
税法違反の点については,被告人は無罪。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,みだりに,平成24年2月7日,埼玉県鴻巣市a町b番地
所在の被告人方において,覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプ
ロパンを含有する白色結晶状粉末約0.017グラム(主文掲記の覚せ
い剤はその鑑定残量)を所持した。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示所為は,覚せい剤取締法41条の2第1項に該当す
るので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,刑
法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑に算入するこ
ととし,所持していた覚せい剤が微量であること及び被告人には本邦
における前科がないことを考慮し,同法25条1項を適用してこの裁
判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,押収してある覚
せい剤1袋(平成24年押第48号の13)は,判示の罪に係る覚
せい剤で犯人の所有するものであるから,覚せい剤取締法41条の
8第1項本文によりこれを没収し,訴訟費用については,刑訴法1
81条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(一部無罪の理由)
訴因変更後の本件公訴事実中覚せい剤営利目的輸入及び関税法違反
の事実の要旨は,「被告人は,営利の目的で,みだりに,平成24年1
月27日,中華人民共和国上海浦東国際空港から航空機に搭乗し,覚せ
い剤合計約181グラムを自己の着衣内又はその内側に隠したまま成
田国際空港に到着して降り立ち,前記覚せい剤を本邦に輸入するととも
に,税関を通過しようとしたが,同空港内の旅具検査場において,税関
職員に前記覚せい剤を発見されそうになったことから,同検査場検査室
内に設置された便所の便器内に前記覚せい剤を隠して放置したため税
関を通過して輸入することができなかった。」というものであるが,関
係証拠を総合しても,これらの事実を認定することはできない。
すなわち,被告人が上記便器(以下「本件便器」という。)内に覚せ
い剤を隠した事実及び上記便器内から発見された覚せい剤3袋(以下
「本件覚せい剤」という。)を携帯していた事実を目撃した者はおらず,
これらの事実を直接証明する証拠はない。検察官は,被告人が本件便器
内に本件覚せい剤を隠すことが可能であったとした上で,被告人の当日
の不自然な行動と被告人が本件便器を使用した直後に本件便器内から
覚せい剤が発見されたことなどの使用後の状況は被告人が犯人でなけ
れば説明が付かないと主張するが,被告人が本件便器内に覚せい剤を隠
すことが可能であったとしても,被告人以外の者が本件覚せい剤を隠し
た可能性があれば,被告人が犯人でなくても説明が付くことになる。本
件においては,その可能性を否定することができないから,被告人が犯
人であると認めるには合理的な疑いが残るということになる。
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。本件便器は,一般人が
勝手に入ることのできない旅具検査場検査室内に設置されている。被告
人は,平成24年1月27日に同検査室で検査を受けることとなり,同
日午後2時過ぎ頃から午後3時過ぎ頃まで本件便器を使用した。被告人
の使用後,同日午後4時10分頃税関職員が本件便器の水を流したとこ
ろ排水障害があったため,清掃員を呼んで詰まりを取り除いてもらうと,
同日午後6時55分頃本件便器の奥から本件覚せい剤のうち2袋が発
見され,さらに,同日午後10時55分頃残りの1袋が発見された。そ
の前日に清掃員が本件便器を清掃したときには,排水障害はなかった。
その清掃後,本件覚せい剤が発見されるまでの間,本件便器を使用した
のは被告人のみであった。
検察官は,前日の清掃のときは排水障害がなかったのに,被告人の使
用後に排水障害が起きた原因としては,本件覚せい剤しか考えられない
と主張するが,本件覚せい剤だけで排水障害が起こると断定することは
できない。税関職員であるA証人は,本件覚せい剤を模した物を本件便
器に隠して水を流してみたところ,排水障害はなく,さらに2袋を追加
して合計5袋を隠して水を流しても排水障害はなかったと供述してい
る。実際に,同証人が公判廷で本件覚せい剤を模した物(甲51)を本
件便器と同型の便器(甲40,弁1)に隠してみたところ,便器後ろの
排水口には水が流れるだけの透き間があったことが認められる。そうす
ると,前日,清掃員が便器を清掃したときに,既に本件覚せい剤が本件
便器内に隠されていたが排水障害が起きなかったため発見されなかっ
たという可能性があることを否定できない。
検察官は,被告人が身体検査を受ける前に検査室内の便所に駆け込む
など極めて不自然な行動をとっていたとして,今回のような特殊なケー
スが2度続いて起こったとは考えられないと主張する。しかし,検査室
内で検査を受ける者が身体検査を受ける前に便所に駆け込むというこ
とは,任意の検査である以上ありうることであり,税関職員であるB証
人は,過去にも,身体検査を受ける前に便所を使用した者がいたことを
認めている。このような検査の実態に照らせば,被告人以外の者が税関
職員の検査をすり抜けて本件覚せい剤を本件便器内に隠すことのでき
るケースがなかったなどとはいえない。
以上によれば,覚せい剤営利目的輸入及び関税法違反の点については,
被告人が犯人であることについて合理的な疑いが残るので,結局,犯罪
の証明がないことになるから,刑訴法336条により,無罪の言渡しを
する。
(求刑懲役7年及び罰金300万円,覚せい剤4袋の没収)
平成24年10月9日
さいたま地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官井口修
裁判官栗原正史
裁判官浅江貴光

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