弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成25年5月23日判決言渡
平成24年(行コ)第31号,平成25年(行コ)第12号土壌汚染対策法による土
壌汚染状況調査報告義務付け処分取消請求控訴事件
主文
1本件控訴を棄却する。
2当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
3平成○年(行コ)第○号事件を旭川地方裁判所へ移送する。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2旭川市長が控訴人に対し平成20年8月21日付けでなした土壌汚染対策法
3条2項の通知に基づく同法3条1項の規定による土壌汚染状況の調査及び報
告を義務付ける旨の処分を取り消す。
3訴訟の総費用(ただし,上告審において負担を命じられた分を除く。)は,
被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1次のとおり補正し,後記2に当審における訴えの追加的変更等に関する当事
者の主張を加えるほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」
に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決2頁7行目の「本件通知」を「本件処分」と,16行目の「同
庁」を「札幌高等裁判所」と,18行目の「平成24年」を「平成23年」
とそれぞれ改める。
(2)同2頁19行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「原審が控訴人の本件訴えを却下したところ,控訴人が,控訴を提起すると
ともに,当審において,民事訴訟法143条1項及び行政事件訴訟法19条
1項に基づき,旭川市長が控訴人に対し平成24年11月19日付けでなし
た土壌汚染対策法3条2項の通知に基づく同法3条1項の規定による土壌汚
染状況の調査及び報告を義務付ける旨の処分(以下「本件追加処分」とい
う。)を取り消すとの請求を追加した(以下民事訴訟法143条1項に基づ
くものを「本件追加的変更」といい,行政事件訴訟法19条1項に基づくも
のを「本件申立て」という。)。被控訴人は,控訴人の本件追加的変更及び
本件申立てに対し同意しない。」
(3)同4頁10行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「行政処分は,取り消すだけの公益上の理由があって初めてその行政行為の瑕
疵を理由に取り消すことができるが(最高裁判所昭和32年(オ)第18号同3
3年9月9日第三小法廷判決・民集12巻13号1949頁参照),旭川市長
がした本件処分の取消しは公益上の理由がない。本件訴えに関し土対法3条2
項に基づく通知が行政処分に当たるとした札幌高等裁判所及び最高裁判所の判
決が出ているのだから,本件処分の無効が自明でかつ重大である場合に限り,
本件処分を取り消すことができるところ(最高裁判所昭和25年(オ)第354
号同29年1月21日第一小法廷判決・民集8巻1号102頁,最高裁判所昭
和26年(オ)第898号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14
号2070頁参照),旭川市長がした本件処分の取消しは上記場合に当たらな
い。また,上記のとおり本件訴えに関し札幌高等裁判所及び最高裁判所の判決
が出された後に本件処分を取り消すことは,被控訴人がこれらの判決の効力を
免れる一方,本件訴えの訴訟活動が徒労となる控訴人に不利益をもたらすこと
になり,信義則上許されない。
したがって,旭川市長がした本件処分の取消しは無効である。」
2当審における訴えの追加的変更等に関する当事者の主張
(1)控訴人の主張
本件追加処分は,本件処分と同一の社会的事実に基づいてされた同一内容
の処分であって,本件訴えと本件追加処分の取消請求に係る訴えは,請求の
基礎が同一であるし,訴訟手続を著しく遅延させることはない。
また,民事訴訟法143条に基づく訴えの変更は被控訴人の同意は要件と
されていないし,本件のように関連請求に係る訴えの被告の審級の利益が害
されない場合には,行政事件訴訟法19条に基づく請求の追加的併合におい
ても同意がそもそも不要であるか,仮に必要であるとしても同意しないこと
は信義則に反し許されない。
(2)被控訴人の主張
争う。本件追加処分の取消請求に係る訴えは,請求の基礎の同一性を欠き,
訴訟手続を著しく遅延させるし,行政事件訴訟法19条に基づく追加的併合
をする場合及び行政事件訴訟において民事訴訟法143条に基づく訴えの追
加的変更をする場合には,被告(被控訴人)の同意が必要であると解すべき
ところ,被控訴人は同意しないから,その要件を欠く。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法であると判断する。その理由は,原
判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであ
るから,これを引用する。ただし,原判決9頁9行目の次に行を改めて,次
のとおり加える。
「控訴人は,本件処分の取消しは無効である旨主張するが,いずれも本件と
事案を異にする最高裁判所の判決に基づくものであるか,又は独自の見解に
基づくものであり,採用することはできない。」
2本件追加的変更及び本件申立ての適否について
(1)本件追加的変更は,本件処分とは別個の処分の取消しを求めるもので
あって,請求原因事実を異にするから,本件請求と請求の基礎に変更がな
いとはいえない。また,請求の基礎に変更がある本件追加的変更に係る請
求について控訴審で改めて審理することは著しく訴訟手続を遅延させるこ
とになる。
したがって,本件追加的変更は,民事訴訟法143条1項により許され
ない。
(2)本件申立てについて判断するに,行政事件訴訟法19条1項及び16
条2項によれば,請求の追加的併合をするには,追加する関連請求に係る
訴えの被告の同意を得なければならないとされているところ,一件記録に
よれば,関連請求に係る訴えの被告である被控訴人は本件申立てに同意し
ないことが明らかである。
控訴人は,本件のように関連請求に係る訴えの被告の審級の利益が害さ
れない場合には,同意がそもそも不要であるか,仮に必要であるとしても
同意しないことは信義則に反し許されない旨主張するが,本件訴えと本件
申立ての争点につき控訴人指摘のような共通部分が存することや,本件訴
えの訴訟経過を考慮しても,本件申立てが関連請求に係る訴えに関する被
控訴人の審級の利益が害されない場合であるとはいえないし,また被控訴
人の不同意が信義則に反して許されないということもできないから,控訴
人の主張は理由がない。
以上によれば,本件申立てはその要件を欠く不適法なものであり,許さ
れないものといわなければならない。そして本件申立ては,それ自体取消
訴訟の新訴提起としての要件を備えており,これを独立の訴え提起とみる
ことができるので,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法16条1項により,
その管轄裁判所である旭川地方裁判所に移送することとする。
第4結論
以上によれば,本件追加的変更についてはこれを許さず,控訴人の本件訴え
は不適法であって,これを却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がな
いから,これを棄却し,本件申立てに係る訴えを旭川地方裁判所へ移送するこ
ととして,主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第3民事部
裁判官佐藤重憲
裁判官石川真紀子
裁判長裁判官橋本昌純は転補のため署名押印できない
裁判官佐藤重憲

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛