弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 (控訴の趣意)
 被告人、ならびに弁護人伊藤五郎、同伊藤泰蔵両名連名各提出の控訴趣意書記載
のとおりであるから、いずれもこれを引用する。
 (当裁判所の判断)
 弁護人の控訴趣意第一、法令の適用の誤りの主張、及び同第二、中法令の適用の
誤りを主張する点について
 所論は、刑法一二六条一項に言う破壊とは、汽車、又は電車の車体の実質を壊
ち、安全なる運行を不能ならしむべき程度のものでなければならないところ、本件
電車の損害の程度は、電車の天井の鉄板、窓ガラスの一部、座席、網棚の一部を損
傷(損害額約五万四、〇〇〇円)したに過ぎないから、同条にいわゆる破壊には該
当しない、と主張する。
 <要旨第一>按ずるに、刑法一二六条一項にいう破壊とは、人の現在する汽車、又
は電車の実質を害して、その交通機関たる機能の全部又は一部を失なわ
せる程度の損壊をいうものと解すべきところ、原判決が証拠により認定したところ
によると、被告人の仕掛けた爆体の爆破によつて、本件電車の屋根、天井に張られ
た鉄板、及び合金板四枚、座席七個、網棚、窓ガラス四枚、その他車体付属品八点
を損壊したことが明らかであつて(なお、司法警察員作成の昭和四三年七月一六日
付検証調書《前同六四八丁》に照らすと、天井、屋根、車体内張りの金属板等車体
の実質や、金属製扉を損傷したほか、第二六、二八の腰掛の窓ガラス二段はガラス
がほとんど完全に割れ落ち、網棚は垂れ下がり、座席も破損し、爆発物の破片等が
床上一杯に散乱していることが認められる。)その損害額が五万四、一〇六円程度
に止まつたにしても、進行中の電車に小石を投じて窓ガラスを割つたり、小刀を使
つて座席を傷つけたりしたのとは異り、たとえ、電車自体の走行そのものは可能で
あつたとしても、交通機関として乗客を乗せ安全な運行を続けるに堪えないものと
認められるから、刑法一二六条一項所定の破壊というに妨げない。したがつて、原
判決が、刑法一二六条一項を適用処断したのは正当であつて、論旨は理由がない。
 次に所論は、仮りに、被告人に乗客を殺傷する未必の故意があつたとしても、刑
法一二六条三項は、汽車、電車の顛覆、又は破壊の結果、人を死に致した場合のみ
ならず、最初から殺傷の犯意がある場合をも当然包含するものと解すべきであるか
ら、本件につき刑法一九九条、二〇三条、二〇四条を適用処断した原判決には法令
の適用を誤つた違法があると主張する。
 <要旨第二>よつて按ずるに、刑法一二六条三項は、同条一項、二項の罪を犯しよ
つて人を死に致した行為を結果的加重犯として重く処罰する規定である
から(大正七年一一月二五日大審院判決参照)、致死の結果につき予見のある場合
には、同法一二六条三項のほか、同法一九九条の適用があり、両者は一所為数法の
関係に立つものと解するのを相当とする。もし、そうでないとすると、殺人の故意
を以て汽車、電車を破壊したが殺人が未遂に終わつた場合には、同法一二六条三項
の罪には未遂の処罰規定がなく、その結果同条一項によつて罰せられるに過ぎない
こととなり、明らかに不当である。しかるに前記のように解釈すると、この場合は
同条一項と同法一九九条、二〇三条とに該当し、一所為数法の関係に立つこととな
り、その結果が妥当である。また、傷害の犯意(暴行の犯意の場合も同じ)がある
に過ぎないときは、もとより一二六条三項に包含されるいわれはなく、傷害の結果
発生の場合は同法一二六条一項と、同法二〇四条とに該当し、一所為数法の関係を
生ずることまた当然であるから、原判決が未必の殺意を認め、被害者Aに対する関
係で刑法一二六条三項一項、一九九条に該当するとし、被害者B外一一名(原判決
添付一覧表(一))に対する関係で、同法一二六条一項、一九九条、二〇三条に該
当するとし、C外一名(同表(二))に対する関係では未必の傷害の故意を認め、
同法一二六条一項、二〇四条に該当するとし、右はそれぞれ一所為数法の関係にあ
るとして法律の適用をしたのは正当であり、論旨は理由がない。
 <要旨第三>なお、本件は、被告人が電車内で時限爆破装置を爆発させ、その爆体
の破片によつて乗客Aを死亡させたものであつて、爆発により電車が破
壊し、その破壊それ自体の結果として、同人を死に致したものではないから、刑法
一二六条三項に該当するか疑問がないわけではない。しかしながら、電車の破壊行
為という一個の行為で同時に電車の破壊と、人の死亡の結果とを発生した本件のよ
うな場合には、同法条に該当するものと解するのが相当である。けだし、その被害
法益の点から考えても、両者をとくに区別すべき実質的理由に乏しいばかりか、も
し、両者を区別すると、同一の犯意を以て実行し、同一の結果を発生しながら、た
またま爆発自体によつて人の死亡の結果が発生した場合と、爆発により汽車、電車
の破壊があり、さらにその破壊の結果として人の死亡が発生した場合とにより、一
は死刑、または無期、もしくは三年以上の懲役、一は死刑、または無期懲役となつ
て、刑の均衡を著しく害する結果となり不当であるからである。
 (その余の判決理由は省略する)
 (裁判長判事 樋口勝 判事 目黒太郎 判事 伊東正七郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛