弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を禁こ一年に処する。
     原審において生じた訴訟費用は全部被告人の負担とする。
     被告人の本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾添附の検事大久保重太郎作成名義及び弁護人高橋泰雄同古
山貞三同奥田三之助同公文貞行同宮坂興静同森鋼平同丸目美良同桑山重雄作成名義
の控訴趣意書と題する各書面及び弁護人高橋泰雄同森鋼平連名作成名義の控訴趣意
補充書と題する書面記載のとおりであり、検事の控訴趣意に対する答弁は、弁護人
森鋼平作成名義の控訴趣意答弁書と題する書面及び弁護人田中伊三次同田中康道連
名並びに弁護人高橋泰雄同古山貞三同奥田三之助同公文貞行同宮坂興静同桑山重雄
同丸目美良連名作成名義の答弁書と題する各書面記載のとおりであつて、これに対
して当裁判所は次のとおり判断する。
 検事控訴趣意第二点について。
 然し乍ら、刑事訴訟法第三七八条第三号に所謂「事件」とは特定の被告人に対す
る特定の犯罪事実、換言すれば特定の被告人に対する訴因として法律的に犯罪構成
要件に当てはめられた具体的事実そのものを意味するものであつて、訴因たる事実
以外の事実はこれを包含しないものと解すべきを相当とする。されば起訴状に仮に
公訴事実として記載せられた場合においても、法律的に構成された犯罪構成要件た
る事実に該当しない事実である以上これを以つて同条に所謂「事件」と謂うことを
得ないのは極めて当然である。
 飜つて本件について観るに、本件起訴状に、その公訴事実として「被告人は昭和
二八年四月一九日施行の衆議院議員選挙に際し、埼玉県第一区より立候補(当選)
した同議員候補者Aの選挙運動を総括主宰し、且つ同年三月二三日出納責任者に選
任せられた者であるが、右候補者に当選を得しめる目的で……云々」と明記し、本
件被告人が選挙運動を総括主宰した者であつた事実を記載してあつたのに対して原
判決は罪となるべき事実として単に「被告人は昭和二八年四月一九日施行の衆議院
議員選挙に際し、埼玉県第一区より立候補(当選)した同議員候補者Aの出納責任
者に同年三月二三日選任せられたものであるが右候補者に当選を得しめる目的を以
て……云々」と摘示しているのみであつて被告人がAの総括主宰者であつたか否か
については全く触れるところがないこと洵に所論のとおりである。かかる場合即ち
被告人が選挙運動の<要旨>総括主宰者であつた事実が、本件被告人の公職選挙法違
反罪の構成要件たる事実に該当するか否かを審究するに、本件の如き買収犯
罪について規定した公職選挙法第二二一条によれば、行為者(犯人)の地位、資格
等につき何等制限していないこと法文上洵に明らかであるのみならず、同法の何処
にも有権者が選挙運動の総括、主宰者であることを要件とする趣旨を窺うに足る規
定は一も発見することができない。果して然らば被告人が選挙運動の総括主宰者で
あつたとの事実についての本件起訴状における公訴事実の記載は、訴因たる事実に
該当しないものと謂うべく、従つてこれを以て刑事訴訟法第三七八条第三号に所謂
「事件」と謂うことができないのは極めて当然であつて、原判決が此の点につき審
判しなかつたとしても毫も違法の廉あることなく論旨は採用の限りでない。所論に
よれば、被告人が選挙運動の総括主宰者であることが、仮に訴因たる本件犯罪構成
要件たる事実に該当しないとしても、之と密接不可分の関係にある重要の事実であ
るから同条に所謂「事件」としての事実の中に包含され、従つて亦審判の範囲に属
する旨主張する。なるほど公職選挙法を一瞥すると、選挙運動を総括主宰した者が
同法第二二一条乃至第二二三条の二の犯罪を犯し刑に処せられた場合に関し候補者
等に法律上別個の効果を生ずべき規定が多々存在し(例えば同法第二一一条第二二
〇条第二五一条第二五四条の如き)、これが法条えお仔細に検討すれば、選挙運動
を総括主宰した者の違反である場合には、行為者以外に対して重大な影響を及ばす
ものであることを知ることができる。然し乍ら、此のことたるやその行為者が選挙
運動の総括主宰者たる地位の重要性に基く特別規定の結果に過ぎないのであつて、
それだからと云つてこれを以つて犯罪構成要件たる事実と同一視することは到底出
来ない。
 畢竟所論は独自の見解に基くものであつて採用し難くこの点の論旨はその理由が
ない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 渡辺好人)

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