弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はいづれもこれを棄却する。
         理    由
 弁護人村田光雄主張の控訴趣意は末尾に添付した別紙控訴趣意書と題する書面記
載のとおりで、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 <要旨>第一点について、麻薬取締法第四条第一号は麻薬原料植物の栽培はその目
的が観賞用その他麻薬原料採取以外のためであつてもすべてこれを禁止する
法意であると解するを相当とする。蓋し栽培の目的について法文上なんらの制限が
ないのみならず殊に本件で問題となつている罌粟の如きものについては観賞の対象
となるものは花であるのに麻薬原料となるものは果実であつて観賞の目的と麻薬原
料採取の目的とは両立併存し観賞の目的に供された後に麻薬原料採取の危険が存す
るからである。従つて観賞用その他麻薬製造以外の目的のための行為は植栽であつ
て麻薬取締法第四条第一号の栽培にあたらないとの論旨はその理由がない。されば
被告人Bがたとい所論の如く観賞用に本件麻薬原料植物である罌粟を栽培したもの
とするも、また被告人Aがたとい所論の如き事情で本件行為に出でたものとするも
前記法条違反の罪責を免れないといわねばならない。次に一件記録を検討するに被
告人Aの本件所為が所論の如き事由により期待可能性のない行為とは到底認められ
ないからこの点の所論もその理由がない。更に刑法第三十八条第三項はいわゆる法
定犯についてもその適用があるものと解するを相当とするが故にたとい被告人等に
所論の如く違法の認識がなかつたとしても犯意の成立に影響を及ぼさない。従つて
この点に関する所論もその理由がない。要するに論旨はすべて理由がない。
 第二点について 原審第二回公判調書に被吾人Bの供述として論旨摘録の如き趣
旨の記載があり、また同被告人に対する麻薬取締員作成にかかる昭和二十四年八月
十一日の実況見分調書に栽培状況2として論旨摘録の如き記載があることはいづれ
も所論のとおりである。しかし右実況見分調書は原判決が証拠として採用しなかつ
たものであるのみならず、同調書には栽培状況3として本年七月下旬刈取つたる為
見分の際罌粟の生植物を認めなかつた旨の記載があり、更に原判決が証拠としてあ
げている検察事務官作成の巡査Cの供述調書謄本には同巡査が昭和二十四年七月二
十日戸口調査に赴いたとき同被告人方の畑地に約五十本の罌粟が栽培してあつたの
を現認した旨の供述記載があるから、これらの各記載と対照するとき前記実況見分
書中の論旨摘録の如き記載は前月下旬に刈取つた罌粟の生植物を除いた残りの本数
に関する記載とも解せられ従つて必ずしも同被告人の栽培した罌粟の数が六本に過
ぎないとの所論の事実を肯認させる資料とはしがたい。次に原判決挙示の証拠を綜
合すれば被告人Bが麻薬原料植物である罌粟約五十本を栽培した事実を肯認するに
難くないから、原判決は原審第二回公判調書中の論旨摘録の如き同被告人の供述記
載は真実に合致しないものとしてこれを採用しなかつたものと認めるを相当とす
る。されば原判決には所論の如き事実誤認はないから原判決が単に芽生したに過ぎ
ないものまで法にいう栽培と認める誤を犯しているとの論旨は到底採用するに由な
い。
 第三点について 所論に鑑み、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠を
精査し本件犯行の罪質犯情を検討するに原判決の量刑にはなんら不当の点は認めら
れない。論旨は理由がない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に従い、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 平井林 判事 久利馨 判事 藤間忠顕)

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