弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人松永和重の上告理由第一点および第三点について。
 借地法六条の適用により、建物所有を目的とする土地の賃貸借の期間満了の後賃
借人が土地の使用を継続する場合において、土地所有者が遅滞なく異議を述べない
ことにより前契約と同一の条件でさらに借地権を設定したものとみなされるために
は、民法六一九条の場合と異り、土地所有者が賃貸借の期間満了を知りながらあえ
て異議を述べず、それによつて賃貸人の賃貸借契約継続の意思が推認できるような
場合に限らないことは所論のとおりである。
 しかしながら、賃貸借契約の締結が遠い過去に属し、賃貸人賃借人の双方共にと
つて契約締結の時期があいまいになり、賃貸人に対し期間満了の際直ちにそのこと
を知つて異議を述べることが容易に期待できず、賃借人もまたその時期にはこれを
予期していないような特段の事情がある場合においては、賃貸人が漸く期間満了の
時期が到来したと推測して直ちに述べた異議が、訴訟における審理の結果判明した
契約成立の時期から起算すると、賃貸借の期間満了後若干の日時を経過した後に述
べられたことになるとしても、この異議をもつて借地法六条にいう遅滞なく述べら
れた異議に当ると解すべき余地がある。
 原判決の確定するところによれば、本件土地賃貸借契約の成立は数十年以前のこ
とであるが、契約成立を証する書面もなく、契約当初の関係者がほとんど死亡して
いるなどの事情のため、賃貸人賃借人ともにその始期を明確に知り難い事情にあつ
たこと、賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人A1、同A2両名の前主D)が地
上建物を第三者に賃与して他に転居するに及び、自己使用の必要のため本件賃貸借
契約を終らしめようと意図し、関係者を探索した結果、大正四年九月頃に本件地上
の上告人所有建物が建築されその頃本件土地賃貸借契約が成立したものと考えて、
昭和三〇年九月一〇日賃借人Dの土地使用継続に対し異議を述べたこと、一方賃借
人Dにおいても、賃貸借の期間に関心がなく、賃貸人より前記の異議を受ける以前
には賃貸人に対し賃貸借更新請求をなしていないというのである。
 本訴において、本件賃貸借の成立時期を大正四年九月頃であるとする被上告人の
主張に対し、上告人らはこれが大正二年三月頃であると争い、原審は、審理の結果
知りえた原判決判示の徴憑事実を総合し、大正三年春頃本件土地の賃貸借契約が成
立したものと推認したのであるが、原判決の判示した右時期から起算すると、本件
土地の賃貸借は途中一回更新されて昭和二九年春頃期間満了となり、従つて、前記
賃貸人の異議は期間満了より約一年半を経過してなされたことになる。しかしなが
ら、以上のような特段の事情の下においては、これをもつて借地法六条にいう遅滞
なく述べられた異議に当るものと解しても同法の趣旨に反するものではない。
 つぎに、所論は、被上告人が賃貸借期間満了後である昭和二九年度および昭和三
〇年度の賃料名義の金員を賃借人より受領しているから、被上告人は異議権を放棄
したものであるか、もしくはこれにより異儀権を喪失したと解すべきであると主張
する。
 しかしながら、原判決は、被上告人が賃貸借期間満了の時期を昭和三〇年九月頃
であると解していたことその他原判決判示の事情の下においては、右事実をもつて
直ちに被上告人の異議権放棄の意思を推認することができないと認定したものであ
つて、右原判決の判断をもつて違法ということはできないし、また、これをもつて
異議権を喪失したと解することもできない。
 原判決に所論の法律解釈の誤り等の違法がなく、論旨はいずれも採用できない。
 同第二点について。
 原判決判示の事情の下においては、被上告人のなした賃貸借継続に対する異議を
もつて遅滞なくなされた異議に当ると解すべきこと前段説示のとおりであるが、原
判決の所論の判示もひつきよう右の趣旨に外ならず、これをもつて原判決に違法の
かどがあるものとすることはできない。論旨は採用できない。
 同第四点について。
 原判決は、判示の事情の下においては、上告人A1が本件土地上の建物を上告人
A3に賃貸している事情をしんしやくしてもなお、被上告人のなした本件土地賃貸
借継続に対する異議に正当の事由があるとしたものであつて、右判断は当裁判所も
これを正当であると考える。なお、所論は、原判決が、被上告人が上告人A3に対
し、その希望があれば被上告人の現在使用中の建物を賃貸するのに吝さかでない旨
の意向のあることを認定し、これをもつて右正当事由の内容をなすものであると判
示するが、被上告人の右意向は、前記異議の五年後である本訴口頭弁論期日に至り
始めて生じたものであるから、正当事由の資料となりえない旨論ずるが、所論指摘
の事実の有無は、前記正当事由に関する当審の判断を左右するに足りないから、こ
の点をとらえて原判決を非難することは許されない。
 原判決に所論の法律解釈の誤り等の違法がなく、論旨は採用できない。
 上告代理人柴山博の上告理由について。
 上告代理人松永和重の上告理由第一点、第二点および第四点に対する判示のとお
りであつて、原判決に所論の違法がなく、論旨はいずれも採用できない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員
の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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