弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人正木亮、同松野甚之助の上告趣意第一点について。
 論旨は、憲法三一条違反をいうが、その実質は刑訴三一七条違反、証拠の価値判
断の非難、事実誤認の主張を出でないものであり、刑訴四〇五条の上告理由に当ら
ない。なお、訴訟上証明さるべき事実の認定は、所論のように、直接証拠だけによ
らなければならぬという法則はないのであつて、証拠によりある事実(間接事実)
を認定し、この事実から右要証事実を認定しても何ら差支えないことは既に幾多の
当裁判所の判例の示すところである。また、原判決は、所論のように、本件犯行に
使用された兇器が証一号の鉄製ハンマーであると断定しているのではなく、証一号
かもしくはこれと類似の物体を使用したと認定していること、さらに、原判決が、
所論のように、被害者死亡前被告人とAとの間に情交関係があつたと認定している
ものでもないことは、原判決の判文に徴し明白であり、所論は原判決の誤解に基く
ものである。
 同第二点について。
 論旨は、本件証第一号の差押手続が違憲であり、かゝる違憲の差押手続により押
収された物を証拠として犯罪事実を認定した原判決は、憲法三五条二項違反である
と主張する。なるほど、所論許可状中の指摘の部分が所論のとおり訂正されている
ことは記録五二五丁の許可状に徴し明白であるけれども、右訂正個所には判事の印
判が押捺してあり、かつ、上らんには「四字挿入三字削除」と記載してあつてその
訂正の方式は刑訴法所定のとおりであり、右訂正の方式およびその筆跡から見ても、
また一件記録によつても、右訂正が、所論のように証一号の押収後に訂正された事
実を認めるに足りる何らの証拠はないのみならず、所論は単なる疑惑に基き主張す
るに過ぎないし、また、判事が右許可状作成中その文面に誤記を発見した場合には
これを訂正すべきは当然のことであつて、その訂正個所が所論のように捜索すべき
場所であるからといつて右の理に何ら変りはないから、本件証一号の押収について
は所論のような違法は認められず、従つて所論違憲の主張はその前提を欠いている。
 同第三点について。
 論旨は事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(所論中理
由不備と判例違反をいう点は、前記論旨第一点に対する説明のとおり、原判決の誤
解に基くものである。)
 また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三九六条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 検察官 田中万一出席。
  昭和三二年七月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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