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平成30年5月28日判決言渡
平成30年(行ケ)第10003号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成30年4月16日
判決
原告株式会社マインドウインド
同訴訟代理人弁理士野原利雄
被告アクティプリント株式会社
同訴訟代理人弁理士古谷栄男
松下正
同訴訟復代理人弁護士小林幸夫
藤沼光太
田仲剛
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が取消2017-300526号事件について平成29年11月28日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
⑴原告は,以下の商標(登録第5053467号)の商標権者である。(甲1,
2)
登録商標:別紙商標目録記載のとおり(以下「本件商標」という。)
登録出願:平成18年10月4日
設定登録:平成19年6月8日
更新登録:平成29年6月20日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,
履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
⑵被告は,平成29年7月20日,特許庁に対し,本件商標は,その指定商品
のうち第25類「被服」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,
専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないとして,商標法5
0条1項の規定に基づく商標登録の取消しを求める審判を請求し,当該請求は同年
8月3日に登録された。(甲1)
⑶特許庁は,これを取消2017-300526号事件として審理し,平成2
9年11月28日,本件商標の指定商品中,第25類「被服」についての商標登録
を取り消す旨の別紙審決書(写し)記載の審決をし(以下「本件審決」という。),
その謄本は,同年12月6日,原告に送達された。
⑷原告は,平成30年1月4日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し
た。
2本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,原告は
本件審判請求に対して答弁せず,審判請求の登録前3年以内の要証期間内における
本件商標の使用は証明されないから,商標法50条の規定により,本件商標の指定
商品中,第25類「被服」についての登録は取り消されるべきものである,という
ものである。
3取消事由
本件商標の使用の有無に係る認定の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
原告は,平成28年10月28日及び29日,東京都品川区所在のTOCビル1
3階の特別ホールにおいて,ファミリーセール(以下「本件セール」という。)を
開催し,本件商標を表示した下げ札(タグ。甲3,4の1・2。以下「本件タグ」
という。)を付けた婦人服計4点(品番「11-33-4197-32」の商品2
点並びに同「11-33-4199-00」及び同「11-33-4199-80」
の商品各1点。以下「本件商品」という。)を展示し,各500円(消費税別)で
販売した。この事実は,物流倉庫の担当者が発行した「証明願」(甲5)及び原告
作成の「riche.商品の販売データ」(甲12)が示すとおりであり,これら
の証拠の記載内容は,物流倉庫の「棚卸明細表」(甲7)及び「移動(即時)伝票
明細」(甲9~11)並びに運送費用の請求書(甲25)によって裏付けられてい
る。
本件タグには,下げ紐のほか,本件セールにおける本件商品の割引率又は販売価
格をその色により表すための結束バンドが付けられており,結束バンドではなく下
げ紐により,本件商品にくくり付けられていた。そして,原告において,本件タグ
に表示されたバーコードから商品の品番等の情報を読み取り,結束バンドの色から
販売価格を把握して,販売データとして入力するため,本件商品を販売し顧客に引
き渡した際に,本件商品から本件タグを取り外し,保管していた。また,上記下げ
紐を取り外す際には,商品を傷つけないようにするため,紐をハサミで切断するの
ではなく,紐をほどいて取り外していた。
また,本件商品は,平成26年4月1日に消費税率が8%に改定される前に原告
が仕入れ,販売を開始したものであるため,本件タグに表示された税込価格は消費
税率を5%で計算したものとなっているが,ファミリーセールで展示販売される商
品中には発売から一定期間経過した商品も含まれており,原告は,特価であること
の理由を示すためにも,発売当時の下げ札をそのまま付けておくこととしていた。
そして,実売価格や消費税額について購入者の混乱や誤認を避けるべく,「特価品
/¥500円均一/(税別)」と朱書したポップ掲示をすることによって対応して
いた。
なお,原告の開催するファミリーセールで展示販売される商品のほとんどは,原
告が百貨店で展示販売していた商品であるため,原告の下げ札が付いているが,原
告が受託販売している他社商品等には,原告の下げ札は付されていなかった。
よって,本件商標は,要証期間内に使用されたものである。
〔被告の主張〕
原告が本件セールを開催したことについては,不知。同セールにおいて,原告が
本件商標を付した商品を展示して販売したことについては,否認する。
原告が掲げる証拠のいずれも,本件商標が本件セールにおいて使用されたことを
推認させるものではなく,要証期間内に原告により本件商標が使用されたことを立
証するものではない。
第4当裁判所の判断
1認定事実
後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
⑴原告は,洋服の製造販売等を営む株式会社である。
⑵原告は,平成28年10月28日及び29日,本件セールを開催した。本件
セールは,原告商品の在庫処分の意味合いを含めたディスカウントセールであり,
その際,原告は,原告商品を定価から30%ないし90%値引きし,又は,500
円,1000円若しくは2000円の均一価格に値引きして販売した。(甲14,
16~18)
2取消事由について
⑴原告は,本件セールにおいて本件タグを付けた本件商品を展示して販売した
ものであり,本件商品を顧客に引き渡した際に本件タグを取り外し,原告において
保管していた旨主張する。
⑵しかし,原告の提出する証拠(甲5,7,9~12,25)から認められる
のは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各
500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本
件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そ
のほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付
けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であ
って,採用できない。
ア本件タグは,その表面に本件商標が表示され,その裏面に,原告の名称のほ
か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価
格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも
のである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催
日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい
る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当
時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商
品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ
せたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常
は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,
かかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの
が通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付
けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付
けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実
は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの
ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは
なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外
す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって
いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要
な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,
何ら合理的な説明をしていない。
ウ原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ
ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本
件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本
体価格¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう
すると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本
件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な
お,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ
る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け
る的確な証拠はない。
⑶以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示
販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また,
原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証
期間内に使用したことの主張立証をしない。
⑷小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用
されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2
5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき
ものである。
3結論
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がないから,原告の請求を棄却するこ
ととし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官高部眞規子
裁判官山門優
裁判官筈井卓矢
別紙
商標目録

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