弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A提出の上告趣意について。
 按ずるに前段の主張は仮りに司法警察官の取調べが主張のような事情であつたと
しても、原審裁判所は被告人に対する司法警察官の聴取書は証拠に採つてはいない
のであるから、上告の理由とはならない。又後段の主張は寛大な処置を願い今一度
調べて欲しいと云うのであつてかゝる事由は適法な上告理由とならない。以上の次
第で何れの主張もこれを採り上げることはできない。
 被告人B弁護人松久利市上告趣意第一点について。
 所論は、原判決は憲法違反の判決であり、上告人の基本的人権の享有を妨げ且つ
裁判官としての義務を尽していない判決であると云うのであるが、憲法の如何なる
条項に反するかを明らかにしていない。しかし論旨の主張せんとする趣旨は、原判
決が被告人Bに対する原判示第二の(二)の犯罪事実を認定する証拠として挙示し
たC及びDに対する副検事の各聴取書は、同人等に対する司法警察官の強制に基ず
く供述が基因となり、これを反覆した供述が録取されたものであるから憲法第三八
条第二項により証拠能力のないものである。したがつて証拠に採つた原判決は違法
であると云うに帰着するものである。按ずるに原審が証拠に採つた所論副検事の右
両名に対する聴取書は何等強制の加わつたものでないことは両名ともその旨第一審
において供述しているところである(記録第四冊一五五丁、一六八丁、各参照)、
尤も右両名とも右副検事の取調の際傍らに刑事が恐ろしい顔をして立つていたので
警察での聴取書と違つたことを云えば警察に戻され又ひどい目に会わされると思い
嘘のこと(即ち警察での聴取書と同じこと)を申した趣旨の供述はあるけれども(
記録第四冊一六八丁、三八八丁参照)、これをもつて所論のように右両人の副検事
に対する供述が任意性を欠いたものであるとは断ずることはできない。次に右両名
に対する副検事の聴取書と原審公判廷における右両人の供述(Dは証人として)と
の間に被告人にとり利益不利益の差異がある場合、その何れを信用採証するかは原
審の自由なる心証に任ずるところであることは論を用いないところであるから、原
審がその公判廷における右両名の供述を信用せず却つて右両名に対する副検事の聴
取書を信用し、これを断罪の証拠とした原判決に何等の違法はないのである。所論
は結局原審の専権に属する証拠の取捨判断を攻撃するに帰着するものであつて、論
旨は採用することはできない。
 同第二点について。
 凡そ証拠の取捨判断は事実審裁判所の自由心証に任ぜられるところである。そし
て原判示第二の(一)の犯罪事実の認定として原審が挙示した各証拠を綜合すると、
原判決認定の賍物収受罪の認定証拠として毫も欠くるところがない。所論は原審の
採用した証拠の趣旨を不自然に解釈し又は原審が採用せざる他の証拠中被告人に利
益な部分のみを抽出しての立場であつて到底採用に値しない。論旨は理由がない。
 尚同弁護人提出の上告趣意書補充訂正申立と題する書面は、上告趣意書提出の法
定期間経過後の提出に係り、且つ先きに提出した上告趣意書に対する単なる辞句用
語等の補充訂正ではなく、新たなる論旨を記載しているものであることは該書面自
体に徴し明らかであるから、これに対する判断を与えない。
 以上の理由により、刑訴施行法第二条並びに旧刑訴法第四四六条に従い、主文の
とおり判決する。
 この判決は全裁判官一致の意見によるものである。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二四年一二月三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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