弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は記録に編綴してある大津地方検察庁検事正代理次席検事志賀親
雄提出の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。
 同控訴の趣意について、
 論旨は要するに原判決が本件公訴事実に対し、被告人の採つた手段を刑法第二百
三十三条の偽計に該当せず軽犯罪法にいう「悪戯」の程度であると認定し同法を以
て処断したのは事実の認定に重大な誤謬を犯し、法律<要旨>の解釈適用を誤つたも
のと主張する。しかし刑法第二百三十三条にいう「偽計ヲ用ヒ」とは人の業務を妨
害するため、他人の不知或は錯誤を利用する意図を以て錯誤を生ぜしめる手
段を施すことをいうのであつて、列車の制動機を故なく緊締する場合、他人がその
事実を知らないこと或は緊締していないものの如く錯誤に陥つたことを利用して業
務を妨害せんとするの意図に出たことが認められないかぎり、刑法第二百三十三条
を以て律することはできないのである。本件についてみるに被告人は司法警察員に
対する第一回供述調書中において「別に鉄道側に怨みもなく又そのような悪い事を
せなければならないわけもなかつたのでありますが、かんたんに考えてやつた」旨
供述し、この供述調書や被告人の原審公判調書中の供述記載並びに当審の証拠調の
結果に徴すれば被告人は原判示の如く列車が河瀬駅に到着し下車せんとするに際し
たまたま列車の振動で判示制動機のハンドルが被告人の身体に触れたところから単
なる興味にかられ面白半分に予でハンドルを七、八回廻転し爪車に爪(制動機の緩
解を阻止するための装置―当審検証調書及び添附の図面写真参照)をかけたままに
して降車したことが認められるのであつて、被告人が該列車の進行妨害のため前示
制動機を緊締しこれを緊締していないように他人を錯誤に陥らしめ、この錯誤を利
用する意図の下に本件所為に及んだものであるとは記録上到底確認し難い。所論は
被告人の年齢経歴犯行の手段その他諸般の心情からみて同人が面白半分に本件を犯
したと認めることは経験法則に反する認定であるというが、なるほど所論の点を考
察するならば被告人には前示の如く制動機を緊締すれば列車の運行に支障を来すと
の認識があつたことはこれを否定し得ないところであるけれども、それだけで進ん
で列車運行妨害のためにする制動機緊締に関する他人の錯誤利用の意図の存在まで
も肯定することはできす記録中の諸資料を検討してみても被告人が敢て右のような
意図を抱いたと首肯するに足りる事情は見当らない。従つて被告人の本件所為は刑
法第二百三十三条の定める偽計を用い他人の業務を妨害した罪に当るものとはなし
難く、当審証拠調の際における被告人の供述によつても明かなように同人は幼少時
木から落ち大怪我をして智能の程度に多少劣るものあることが窺われるのであり、
むしろ叙上認定の如く興味にかられ面白半分の気持から出た所為即ち悪戯と認めて
誤なくこれを以て経験法則に反する認定ということはできない。更に又検察官は本
件犯行の手段が偽計なりや或は悪戯に過ぎないかは行為自体について判断すべきで
あると主張するけれども、法にいわゆる偽計を用いたとなすべきであるかどうかの
点は既に説明した意図の有無如何によつて決せられるものと解すべく行為自体重大
な結果を招来する虞あるときでもそれだけで常に刑法第二百三十三条の罪を構成す
るとはかぎらない。被告人の本件所為はこれにより列車を出発不能に陥らしめその
異状状態の発見と是正に鉄道従業員に時間を空費させて定時より約三分間遅延させ
て発車せしめたことは所論のとおりであるが、もしそれその所為にして列車往来の
危険を生ずるが如き重大なものであるならば刑法第百二十五条往来危険罪等を以て
問擬するとか又その他の犯罪の構成要件を充足するならばその該当法規を適用して
処罰すべきは格別列車の運行妨害のため他人の不知或は錯誤を利用する意図を以て
なされたとは認められない本件を行為自体重大の一事を以て刑法第二百三十三条に
いう偽計を用い人の業務を妨害したものと解なることはできないのである。そして
被告人に対しては原判決挙示の証拠により原判示事実を認定するのを相当とするか
ら本件は軽犯罪法第一条第三十一号により処断すべく原判決の法律の解釈適用には
何等誤りない。縷々の所論を検討し記録を精査してみても原判決には所論のような
違法は一も存在しないから論旨はすべて理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い主文のとおり判決をする。
 (裁判長判事 吉田正雄 判事 山崎寅之助 判事 大西和夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛