弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人は無罪。
         理    由
 弁護人川上広蔵の控訴の趣意は別紙控訴趣意言記載の通りであつてこれに対する
当裁判所の判断は次の通りである。
 第二点について。
 原判決摘示の証拠を綜合すれば被告人は原判決摘示の日時場所でその摘示の経緯
状況の下に警察隊員及び接収係員等計百数十名に対し原判決摘示のような演説をし
たことを認めることができる。而して暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項に
所謂団体若は多衆の威力を示し刑法第二百二十二条の罪を犯したる者とは団体若は
多衆を背景としその威力を利用して刑法第二百二十二条の罪を犯した者と解すべき
ところこれを本件について考えてみるに被告人は果して原判決摘示のように右演説
により団体を背景としてその威力を利用して他人を脅迫したものと言うことができ
るであろうか。成程被告人が演説した場所は元A連盟及び同B同盟各C支部の共用
事務所の二階であるD党E地区委員会事務所の窓でありその窓口にはD党E地区委
員会と書いた看板が掲げてあり且つ赤旗も掲揚してあつたこと及び被告人の発言の
内容にD党員においてよく用いられておる人民政府とか人民裁判とかの言葉があつ
たことは伺われるけれどもそれたからと言つてこのこと自体で直ちに被告人はD党
を背景としその威力を利用して右演説をしたものと速断できないのみならずその他
本件訴訟記録全部によるもこれを認めるに足る証拠はない。況んや起訴状記載のよ
うに元A連盟及び同B同盟なる二団体及び原判決摘示の場所に蝟集しスクラムを組
んでいた朝鮮人等多衆を背景としその威力を利用して右演説をしたものと認めるに
足る証拠は毫も存しない。果して然らば原判決摘示の被告人の本件演説は暴力行為
等処罰ニ関スル法律第一条第一項に該当しないのに拘わらすこれに当るものと判断
して被告人を処断した原判決はこの点において到底破棄を免れない。論旨は理由あ
り。
 <要旨>次に本件が検察官が原審において予備的に主張する単純脅迫罪に該当する
かどうかを考えてみるに刑法第二百二十二条所定の脅迫たるには単に害悪が
その発生すべきことを通告せられるだけでは足らずその発生が行為者自身において
又は行為者の左右し得る他人を通じて即ち直接又は間接に行為者によつて可能なら
しめられるものとして通告せられるを要するものと解すべきところ被告人はただ
「云々の警察官は人民政府ができた暁には人民裁判によつて断頭台上に裁かれる。
人民政府ができるのは近い将来である」と申向けたのにとどまるのであるからこの
こと自体で直ちに害悪たる断頭台上に裁かれることが被告人自身において又は被告
人の左右し得る他人を通じて可能ならしめられるものとして通告せられたものと解
することはできない。むしろ被告人は警告を発したものと解するのが妥当であろ
う。その他本件訴訟記録全部によるも被告人において害悪を左右し得るものとして
通告したことを認めるに足る証拠がないから本件は単純脅迫罪にも該当しないもの
と言わねばならぬ。
 以上の次第であるから刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条を適用して原判
決を破棄し同法第四百条但し書により被告事件について更に判決をする。
 本件公訴事実は被告人はD党員であつて出雲市a町b、c番地所在の同党E地区
委員会事務所に出入りするものであるが右階下に事務所を有して居た元A連盟及び
元B同盟の各C支部が解散を命ぜられ昭和二十四年九月十日朝島根県職員F外十四
名が同支部の明渡及び財産の調査、保全の執行の為め右事務所内へ立入ろうとした
際朝鮮人数十名がスクラムを組んで之を阻止妨害した為め検挙に赴いた出雲市警察
署及び簸川地区警察署の警察官G、H外数十名が之と対峙していた折右朝鮮人を支
援し解散命令の執行及び之に関連する犯罪検挙を中止せしめる意図の下にD党E地
区委員会と大書した看板を掲げ且赤旗を掲揚した二階の前記地区委員会事務所の窓
から表街路を見下し集合して居た前記県庁職員及び警察官等に対し「警察官諸君よ
諸君は朝鮮人を弾圧するため何等正当な理由もないのに連盟を解散したI反動内閣
の手先となつて今日連盟の財産を取上げる為罪もない朝鮮人等に対して暴力を加え
た然し革命は目前に迫つているのだ人民政川が組織されたら今日こんな事をした諸
君は全部人民裁判にかけられ絞首台上にあがらねばならないぞ」「諸君は今笑つて
いるが笑いごとではない青くなつて慄えあがる日が来るぞ」との旨を警察官等を指
示しながら語気鋭く放言してD党及び前記朝鮮人二団体並に同所に蝟集してスクラ
ムを組んで居た前記朝鮮人等多衆の威力を示して同人等を脅迫したものであると言
うに在り。右公訴事実について検察官は団体並に多衆の威力を示した点が認められ
ないとすれば予備的に刑法第二百二十二条単純脅迫罪の訴因及び罰条を追加する旨
主張しておるが前叙の理由により本件は右の何れにも該当するものとして認めるこ
とができないから犯罪の証明なしとして刑事訴訟法第三百三十六条を適用して無罪
とする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 平井林 判事 久利馨 判事 藤間忠顕)

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