弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を懲役一年に処する。
     但し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     訴訟費用中一審において証人A、同Bに支給した分は、被告人と一審相
被告人Cの連帯負担、その余は被告人と原審相被告人D、一審相被告人C、同E、
同Fの連帯負担とし、原審において証人G、同Hに支給した分は、被告人の負担、
その余は被告人と原審相被告人Dの連帯負担とする。
     本件公訴事実中物価統制令違反、臨時肥料配給統制法違反の点につき被
告人を免訴する。
         理    由
 弁護人坂上重守の上告趣意第二点について。
 所論は原審認定詐欺の事実と本件公訴事実との間に同一性がないと主張するので
あるが、所論本件公訴事実は一審判決認定事実に示されるように第一、被告人はD、
I等と共謀して昭和二二年四月九日川崎市所在a駅構内で領得の意思で荷送人J電
工株式会社荷受人K農業会硫酸アンモニヤ三百十九叺(一叺四五瓩入)積込同県b
駅行の貨車ワム第九〇〇八号の車票を密かに差し換え情を知らない当該鉄道係員を
してこれを山形県c駅に転送させ、第二、被告人はE、D、C、I等と共謀して同
年五月一三日前記a駅構内で領得の意思で荷送人同会社荷受人L農業会硫酸アンモ
ニヤ三百十九叺(一叺四五瓩入)積込同県d駅行の貨車スム第三二〇二号の車票を
窃かに差し換え情を知らない当該鉄道係員をしてこれを茨城県e駅に転送させて、
各M公団所有の硫酸アンモニアを窃取したという趣旨のものであり、これに対応す
る原審認定事実の要旨は第一、被告人は肥料積載の貨車の車票を差し換えて他の駅
に転送させ、係員を欺罔してこれを入手売却しようと企てD、I等と共謀の上昭和
二二年四月九日車票用紙に線名左沢線、着駅c駅、荷受人駅長、品名省用品、発駅
f等と記入し、a駅構内で、組成貨物列車の中、J電工株式会社製造に係る当時M
肥料株式会社(後のM公団)所有のK農業会宛硫酸アンモニア一叺四十五瓩入三百
十九叺を積載したg駅発宮城県b駅行ワム第九〇〇八号貨車の車票を抜き取り、前
記虚偽の車票と差し換え、同貨車をそのまま発送させ同月一一日山形県c駅に到着
させ、翌一二日Eと共にh駅に到り駅長Nに対し、自分はO総連合会厚生部員Pの
名刺を出し、EはJ電工株式会社労働組合の代表者Qと名乗り、前記ワム第九〇〇
八号貨車に積載した肥料は、J電工株式会社において資金獲得のため、正式ルート
以外に山形県の農業会に売却するため送付したものであるから、引き渡して貰いた
いと虚構の事実を申し向け同人を欺罔してこれを騙取しようとしたが、同人がその
引渡を拒絶したためその目的を遂げず、第二、被告人は前同様の方法で硫酸アンモ
ニアを積載した貨車を転送し、保管関係者を欺罔して騙取しようと企て、DI、C
等と共謀の上、予めIが、茨城県結城郡i村村長Bに対し、自分はJ電工株式会社
の社員であるが、同会社では従業員の生活突破資金を作るため硫酸アンモニアを売
却することになつたから買つて貰いたいと虚言を弄して買受の承諾を得ておき、E
をして貨車車票用紙に、発駅f、着駅e、真荷送人J、荷受人ツ真荷受人R農業会
等と記入させ、同年五月一三日a駅構内で、組成貨物列車の中、J電工株式会社製
造に係る当時M肥料株式会社(後のM公団)所有のL農業会宛硫酸アンモニア一叺
四十五瓩入のもの三百十九叺を積載した新潟県d駅行スム第三二〇二号貨車の車票
を抜き取り、前記虚偽の車票と差し換え、そのまま同貨車を発送させ、同月一五日、
これを前記e駅に到着させたので、同駅長Sは、右貨物の荷受人は車票記載のとお
りツ即ちTことU通運株式会社V出張所であると誤信して右出張所に交付し、同出
張所係員も同貨物の真の荷受人は車票記載のとおりR農業会であると誤信し同農業
会に引き渡し、同農業会は配給用として県当局より送付されたものと思料して同会
倉庫に保管中、前記I、C等において同月一六日前記i村B方で同人に対し右硫酸
アンモニア三百十九叺を代金三十八万二千八百円で売却し、同月一八日頃右Bより、
右肥料は同人がJ電工株式会社より全部買受けたものと告げられ、これを真実と誤
信した前記R農業会役員をして、右硫酸アンモニア全部を右Bに交付させてこれを
騙取したというのである。
 してみれば、所論の本件公訴事実と原審認定事実とは基本的事実関係としては、
いずれも同一物件について車票の差換による不法領得という同一行為に関するもの
であつて、一は所論の日時場所における貨車の転送をもつて窃盗既遂と断し他は然
らずとしたのは単に占有関係の法的価値評価を異にした結果にすぎない。それ故原
審認定事実と公訴事実は同一性を失うものではなく所論は理由がない。
 次に職権をもつて調査するに、被告人に対する本件公訴事実中物価統制令違反、
臨時肥料配給統制法違反の点(原審判示第三の事実)については、昭和二七年政令
第一一七号大赦令(同令一条八七号、一一六号該当)により大赦があつたので右公
訴事実については被告人を免訴すべきものである。それ故原判決はこの点において
破棄を免れず結局上告理由あるに帰する。
 よつて上告趣意第一、三点に対する判断を省略し刑訴施行法二条旧刑訴四三四条、
四四七条、四四八条、四五五条、三六三条三号により主文一、五項のとおり破棄、
免訴し、爾余の原判示第一、第二の事実につき更に判決すべきものとする。
 よつて右所為について法令を適用すると、判示第一の所為は刑法二四六条一項二
五〇条六〇条に、同第二の所為は同法二四六条一項六〇条に各該当し、右詐欺と詐
欺未遂とは犯意継続に係るものであるから、昭和二二年法律第一二四号附則四項に
より同法による改正前の刑法五五条を適用して連続一罪とし、その所定刑期範囲内
において被告人を懲役一年に処し、情状刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法
二五条に従い、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用について
刑訴施行法二条旧刑訴二三七条一項二三八条を適用し、主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検事 宮崎三郎関与。
  昭和二九年八月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   叉   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛