弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人免出礦の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決が上告人の出納責任者Dは推薦届出者訴外Eによつて選任届出さ
れ、右届出には上告人の承諾を得たことを証すべき書面の添付を欠いたが、上告人
はこれを承諾していた事実があるものとして、右選任届出を有効と解したのに対し、
これを採証の法則に反して事実を誤認したものであるのみならず、上告人の承諾を
証すべき書面の添付を欠いたこと及びその選任届出に関し前記Eに過誤のあつたこ
とを理由として、その選任届出は無効であり、Dは出納責任者ではなかつたものと
いうにある。
 しかし、原判決の挙示する甲第三号証、第七、八号証、第九ないし第一五号証に
よれば、訴外Eが同Dを上告人の出納責任者として選任届け出でた事実及び右選任
届出について上告人の承諾のあつた事実はこれを認めえないものではなく、Eにそ
の選任届出の効力に影響するような過誤があつたとする所論のごときは到底肯認し
がたい。その出納責任者の選任が公職選挙法一八〇条一項但書後段の規定によるも
のであつたのにかかわらず、同条四項所定の候補者の承諾を証すべき書面の添付を
欠いたことは原判決の認めるところであるが、右書面の添付は、候補者の意向を無
視して出納責任者が選任されるようなことのないことを保障する趣旨のものにすぎ
ないと解するのを相当とするから、同条が出納責任者の選任につきいわゆる届出主
義を採るものにもせよ、事実候補者の承諾がある以上、その旨を証すべき書面の添
付を欠いても、その届出が選挙管理委員会に受理されたときは出納責任者の選任を
有効と認める原判決の判断を失当ということはできない。論旨のうち、採証法則違
反をいう点は、原審における証拠申出の採否あるいは上告の事実の認定に関する証
拠の取捨選択を論難するものにすぎず、論旨はすべて理由がないものといわなけれ
ばならない。
 同第二点について。
 論旨は、いわゆる連座訴訟においては、刑事判決の既判力は当選人に及ぶもので
はないから、刑事判決の認定判断が連座訴訟において争われ、それに疑がもたれる
ならば、裁判所は直接各証拠を取り調べて独自に事実の存否を判定すべきであるの
に、原判決が刑事判決の確定した事実をそのまま採用したのは、連座訴訟の性格を
誤解したもので、失当であるというにある。
 しかし、本件においては、原審は刑事判決の確定事実と異なる上告人の主張、立
証を許容し、その争点について審理判断をつくしているのであつて、その判断の結
果が刑事判決の確定したところと合致したとしても、これを刑事判決の判断に拘束
されたもののごとく論難するのはあたらない。論旨は、結局原判決の事実認定を非
難するに帰し、理由のないものというべきである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎

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