弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主     文
     1 原判決を取り消す。
     2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
     3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
           事実及び理由
第1 控訴の趣旨
   主文と同旨
第2 事案の概要
 1 本件は,被控訴人が,平成6年分(平成5年5月1日から平成6年4月3
0日までの事業年度)及び平成7年分(平成6年5月1日から平成7年4月30
日までの事業年度)の法人税の各確定申告をするに当たり,ミャンマー国林野庁
森林公社(MTE)との間で原木を取引する際に支出した金員が当該原木の売買
代金であることを前提として,これを損金算入するなどしたところ,控訴人が,
その一部については売買代金と認められず,また当該金員のうちMTEに贈与し
た機械等の取得に要した費用は租税特別措置法(租特法)61条の4の交際費等
に該当するとして,上記の損金算入を否認するなどして平成6年分及び平成7年
分の各法人税について更正処分(本件各更正処分)をした上,過少申告加算税
(平成6年分)及び重加算税(平成6年分及び平成7年分)の各賦課決定処分
(本件各賦課決定処分)をしたため,被控訴人がこれを不服として,本件各更正
処分のうち申告に係る総所得金額及び納付すべき税額(ただし,平成6年分につ
いては納付すべき税額615万5375円)を超える部分と本件各賦課決定処分
(ただし,各重加算税賦課決定処分の一部(過少申告加算税相当額を超える部
分)については,平成8年8月8日付け異議決定により取り消されているため,
その取消後のもの。)の取消しを求めた事案である。
   原判決は,上記金員は原木取引の売買代金として支払われたものであっ
て,交際費等とも認められず,控訴人による本件各更正処分は違法であるとし
て,本件各更正処分のうち被控訴人の請求に係る部分及び平成6年分の過少申告
加算税賦課決定処分を取り消したが,各重加算税賦課決定処分の取消しを求める
訴えについては,異議決定でその全部が取り消されているとしてこれを却下し
た。そのため,控訴人が不服を申し立て,訴えの却下部分を含めて被控訴人の請
求の棄却を求めたものである。
 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の事実
及び理由中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるので,これを引用す
る。
  (1) 原判決3頁23行目から4頁4行目までを,次のとおりに改める。
    「イ 被控訴人は,昭和62年4月23日,株式会社Aとの間で,原木
取引に関し,要旨,次の約定で,商品買入委託契約を締結した(乙4の1)。
       第2条  株式会社A(乙)が被控訴人(甲)に買入れを委託す
る場合には,年月日・数量・価格等を書面等で指示する。
            甲乙の協議により合意したものに関し,甲がビルマ連
邦社会主義共和国木材公社(公社)との間に締結した輸入契約書に基づき,甲は
上記商品の買入れ委託を遂行する。
            甲は公社との間に締結した輸入契約書の写しを速やか
に乙に提出する。
       第4条 乙は買入れに対して委託手数料として,日本国内検量に
よる数量に基づき支払う。なお,委託手数料は別途,覚書に定めるものとする。
       第5条 商品の買入代金は,第6条の場合を除き,乙が甲の名義
により公社を相手先として商業信用状を開設し,乙がこれを決済する。
       第13条 本契約の存続期間は,昭和62年4月1日より昭和63
年3月31日までとする。ただし,期間満了3か月前までに,甲・乙双方から何
らの申し出のないときは,この契約は,自動的に1か年間延長されるものとし,
以後も同様とする。
       なお,上記契約締結後,平成7年4月30日(平成7年4月期の
事業年度の末日)までには,新たな商品買入委託契約は締結されていない。」
  (2) 原判決添付の別表1の「異議決定」の「過少申告加算税」欄の「八三
万八〇〇〇円」を「棄却」に,「重加算税」欄の「〇」を「四六万六〇〇〇円」
に改め,「審査請求」の「重加算税」欄に「〇」を,「審査裁決」の「重加算
税」欄に「棄却」を加え,別表2の「異議決定」の「過少申告加算税」欄の「九
四万一五〇〇円」を削除し,「重加算税」欄の「〇」を「九四万一五〇〇円」に
改め,「審査請求」の「過少申告加算税」欄の「〇」を削除し,「重加算税」欄
に「〇」を加え,「審査裁決」の「過少申告加算税」欄の「棄却」を削除し,
「重加算税」欄に「棄却」を加える。
  (3) 控訴人の当審における主張
   ア 本件各金員の性質について
    (ア) 契約書から生ずる事実上の推定について
     a はじめに
       売買契約書が作成され,その成立の真正に問題がない場合におい
ては,後日契約内容をめぐる紛争が生じるのを防止するために契約書を取り交わ
している当事者の意思に照らせば,経験則上,契約書の記載どおりの内容の契約
が当事者間で成立したものといえるのであり,契約書の記載と異なる内容の契約
が成立したと主張する者は,契約書の記載と異なる合意がされたことについて
「特段の事情」ないし「首肯するに足りる理由」を具体的かつ説得的に立証しな
ければならない。
       本件の特徴は,被控訴人の主張する代金支払方法なるものが特異
である点にある。すなわち,本件各金員は,売買契約書記載の代金とは異なり,
MTEに直接送金されることなく,第三国であるシンガポールに法人Bが設立さ
れ,そこに送金されている。しかも,その送金は,被控訴人と法人Bとの間でコ
ミッション契約という架空の契約書を作成した上で行われている。このような政
府に把握されていない方法で売買代金の支払を受けることが政府機関として許さ
れるものでないことは,ミャンマー国の財政状況が厳しくなって,軍事費以外の
国家予算は削減される傾向にあったことからも当然であると考えれられる。しか
も,平成6年度取引は入札によるものであり,入札価格に基づく売買契約書記載
の代金額とは別に,それと異なる売買代金額が合意されるなどということは,入
札制度上考え難いことである。
       仮に,MTEが300万ドルの範囲内で自由に使用することので
きる金員を留保することが政府から認められ,本件各金員の授受がミャンマー国
政府に無断でされたものではないのであれば,上記のような特異な支払方法をと
る必要はなかったはずである。そのような方法をとる必要性を説明することがで
きないにもかかわらず,売買契約書とは異なる代金額の合意があったとすること
は根拠を欠く。むしろ,本件の実態に照らせば,MTEは政府に把握されない方
法で被控訴人から売買代金とは別に一定の利益(本件機械等)を受けることで足
り,これを売買代金として得る必要はないし,他方,被控訴人もMTEとの取引
関係を維持し,確保するためであれば,売買代金名目にこだわる必要はなく,実
際に法人Bへの送金のために架空のコミッション契約書を作成しているのであ
る。売買契約書と異なる売買代金額を別途合意することが許されないものである
ことを当事者双方が認識していることからしても,あえて売買代金として売買契
約書とは異なる合意をする意味も必要性もない。被控訴人は,有利な取引関係を
維持,確保すべくMTEの利益供与の求めに応じたにすぎず,このように理解し
て初めて本件の特異な事実経過を合理的に説明することができる。
     b 本件において特に考慮すべき事情について
       被控訴人とMTEとの間の原木取引は,国際売買契約であるとこ
ろ,国際売買契約の当事者としては,「異なった,文化,風俗,習慣,言語,法
制,更には権利意識の下にある人間が契約を結ぼうとする場合に,ただ単に口頭
の約束だけで十分であると断言できないことは自明の理である。したがって,文
書にしておくことが不可欠であるといわざるをえない。」,「当事者が合意した
内容を正確に作成することは,国内契約,国際契約を問わず必要であることはい
うまでもない。特に国際契約においては,契約書作成は極めて重要である。」と
いう意識で行動するのが通常である。
       しかも,①処分証書である本件各売買契約書には,商品の内容,
数量,単価,貿易条件等,被控訴人とMTEとの間の原木売買契約の内容が詳細
に記載されていること,②売買の対象である原木はミャンマー国の国有財産であ
り,契約の一方当事者であるMTEは様々な法的規制の下にあるミャンマー国の
国営企業であること,③被控訴人とMTE間の原木売買契約は,被控訴人と株式
会社A間の昭和62年4月23日付け商品買入委託契約に基づくものであるとこ
ろ,従前の原木取引においては,株式会社Aが,売買契約書に記載された単価を
決済しており,売買契約書に記載されない売買代金の支払を求められたことはな
かったこと,④MTEと取引関係にある他社でも,MTEから売買契約書ないし
インボイスに記載されない売買代金の支払を求められたことはないこと,⑤30
0万ドルの範囲内でMTEが自由に使用することのできる金員を留保することを
政府から認められていて,違法なものでないのであれば,本件各金員を本件各売
買契約書の単価に含めて記載することができない理由は全くないし,そのように
記載されてしかるべきであること,⑥被控訴人が主張する本件各売買契約書の記
載内容と異なる売買代金の定めがあったことを示す覚書や念書は一切作成されて
いないこと,などの事情も存在する。
     c これらを総合すると,本件各売買契約書の記載内容とおりの売買
契約が成立したとの事実上の推定が強く働くところ,この推定を覆すに足りる
「特段の事情」や「首肯するに足りる理由」はない。
    (イ) 本件各金員の性質に関する当事者の認識内容
     a 被控訴人の認識について
       被控訴人代表者Cは,原処分の調査過程において,担当調査官に
対し,2度にわたり,本件各金員は,被控訴人が競合他社を排して原木の独占供
給を受けるために,MTEに対する裏金を捻出・留保する目的で法人Bの現地預
金口座に送金されたものである旨明確に供述しており,原木取引の売買代金の一
部であるとの供述は一切していない。Cは,その後,本件各金員は原木代金の一
部であるとの供述をするに至っているが,変遷に合理的理由はなく,信用するこ
とはできない。
       また,D銀行広島支店(当時)において本件各金員の送金を担当
したE,Fは,被控訴人の経理担当者であるGから,本件各金員はMTEに対す
る「バックマージン」である旨の説明を受けており,原木の輸入元である株式会
社Aの担当者Hも,Iとの直接交渉の過程で同人から詳細な説明を受けた上,本
件各金員の趣旨につき,売買代金は「国家予算」に入り,MTEが必要とする物
資を調達することができないので,MTEが必要とする原木伐採用機械等を供給
するよう要求され,MTEと優先的に取引をすべく,機械等を購入するためのも
のと認識していたほか,株式会社Aの経理担当者であったJも,Hからの報告や
Gとの直接交渉の過程で,本件各金員について「不明瞭で,かつ,あやふやな金
員」「不明瞭で支払根拠がない」「ミャンマーの国の財政」に支払われる原木代
とは別に,MTEの事業活動に充てるためのものと認識していた。
       さらに,被控訴人が,本件各金員を売買代金の一部であると認識
していたのであれば,架空の本件各コミッション契約を締結して,送金名目を代
理店手数料とする必要など全くなく,送金名目を売買代金とすれば足りたのであ
る。仮に,送金名目を売買代金とするのに客観的な資料が必要であるならば,そ
のような資料の作成をMTEに依頼するはずであり,MTEとしても売買代金や
支払方法について定めた覚書等の作成を拒絶する理由もない。また,平成5年度
取引で株式会社Aとの間で支払方法について問題が生じたのであるから,平成6
年度取引においてはMTEに客観的な資料作成を要請してしかるべきである。に
もかかわらず,そのような覚書等が作成されていないのは,本件各金員を売買代
金の一部とは認識していなかったからにほかならない。そもそも,本件のように
売買契約書に記載されない上,覚書や念書等の書類も作成されないまま,買主が
売主から,売主とは全く無関係を装う預金口座を開設し,契約書記載の売買代金
額とは別個の金員を同口座へ送金するよう要求された場合,合理的な経済人であ
れば,そのような送金をもって売買代金と認識するはずはなく,Cの当初供述の
内容こそ自然なもので信用することができる。
     b MTEの認識について
       Kの陳述書(甲34)は,全くあいまいな内容であり,本件各金
員が原木の売買代金に含まれるのであれば,何故にシンガポールの第三者名義の
預金口座に送金しなければならなかったのか,その「便宜」の具体的内容はいか
なるものかなど核心的な疑問点への説明は一切なく,信用性に欠ける。
       ミャンマー国法上,国営企業であるMTEが輸出した原木代金を
収受する権限は,財務管理権限に属するものであり,毎年度の財政予算勘定であ
る国家基金勘定(SFA)を所管する財政歳入省及び最終的承認権限を有する国
家法秩序回復評議会(SLORC)がこれを掌握していたのであって,MTEに
はそのような権限は一切与えられていない。Kは,その陳述書において,林業省
(原判決の呼称による。)が300万ドルの範囲内でMTEに使用枠を与えてい
た旨述べるが,上記のとおり,ミャンマー国法上,国営企業であるMTEの財務
管理権限は同国の国家予算というべきSFAにすべて組み込まれ,財政歳入省及
びSLORCが一元的に管理するという制度が採用されていたのであるから,林
業省には国庫に払い込まれるべき販売価格の一部を300万ドルに達するまでは
留保しておくことを許す権限など与えられていなかったのである。もし林業省が
そのような権限をMTEに与えていたというのであれば,それは単なる越権行為
であり,ミャンマー国法上許されない違法なものというほかない。なお,本件各
金員が,MTEの工場で使用する機械等の購入に充てられていた点で,MTEの
設備投資に関する権限の問題とみる余地もあるが,これについても上記のとおり
SLORCが最終的な承認権限を掌握していたのであるから,この点から,仮に
K陳述書にいう「林業省の許し」が存在したとしても,そのことからこれが違法
でなかったとの結論をとることはできない。また,同人は,本件機械類が税関を
通過したことをもって上記の「使用枠」があったことの裏付けとするが,そもそ
も,通常の通関手続においては,輸入物品自体がいかなるものであるかの(イン
ボイスのとおりの物品であるか否か)の確認が中心となるものであって,その原
資について深く詮索するような場面になることは皆無に近い。まして,本件にお
いては,ミャンマー国の国営企業であるMTEが輸入者となっており,一般に国
営企業が輸入物品自体を偽るとは考えにくく,また,同国関税法7条で「国営事
業のための輸出入品の種類及び商品」には課税減免措置が定められていることか
らすれば,本件の通関手続において輸入物品の原資が詮索される可能性は極めて
低いと考えられる。同国の税関を本件機械等が支障なく通過したからといって,
本件各金員の授受がミャンマー国政府に無断でされたとは考えれられないという
ことはできない。
       以上のとおり,SFAの導入によりミャンマー国営企業の収支は
すべて国家財政に組み込まれるようになっていた状況下で,MTE自身に与えら
れた権限は極めて限定的なものであったことなどを考慮すれば,MTEが,シン
ガポールの銀行口座で被控訴人において留保されたい旨要求してきたのは,SF
Aに組み込まれず,しかも,財政歳入省やSLORCに把握されない「独自の資
金」を確保したいとの配慮からにほかならない。仮に,MTEが,売買代金の一
部を留保することにつきSLORC等の承認を得ており,SLORC等に把握さ
れても支障のない金員であれば,MTE名義のミャンマー国内あるいはシンガポ
ールの銀行口座へ入金させて,MTE自身で管理すれば足りる。MTEは,財政
歳入省やSLORCに無断で,本件各金員を留保するという越権行為を行おうと
したものであり,かかる資金留保行為は,ミャンマー国内法上紛れもなく違法な
「裏金作り」である。MTEは,確かにチーク材の販売を独占する権限を有し,
MTEが販売するその他の林産物についても価格決定権を有していたことが認め
られるが,そのような価格決定権は,決定された価格による販売代金がすべてS
FAに入ることを前提とするものであり,国庫に入らない金員を含めた価格を決
定する権限までを与えられたものでないことは明らかである。
     c 原判決が当事者の認識を裏付けると評価した事実について
      (a) ファックス文書について
         商社等に商品買付けを委託する者にとって,輸入契約の交渉
過程において関心があるのは採算であり,その判断に必要な情報は,輸入契約に
係る売買代金額そのものではなく,売買代金を含めた支払総額であるから,受託
者も委託者に対して支払総額を連絡するのが通常である。
         しかも,本件において,名宛人であるHは,前記のとおり,
Iからの説明で,MTEが本来的には「国家予算(SFA)」に入るべき金員
を,敢えてこれには入れずに別途留保してMTEの原木伐採用機材等を購入する
ものと認識していたのである(上記ファックス文書(乙7の1)にも「パーツ,
機材代金」との記載がされ,甲26にも同様の記載がある。)。さらに,Iら
が,「裏金」と認識していても,誰の目に触れるか分からないファックスに敢え
て「裏金」であることを記載するはずもなく,無難な表現を用いたからといっ
て,それが真の認識内容を反映したものと断定することはできない。
      (b) MTEの優位性について
         MTEに被控訴人に対する優位性が認められるとしても,こ
の事実は,そのような立場を利用して「裏金」を要求したとの認定にも結びつく
ものである。
      (c) 本件各金員の使途について
         本件各金員の使途は,大半がMTEの事業活動に使用される
機械類であり,典型的な賄賂ではないが,そうだからといって「裏金」たる性格
を否定することはできない。法人が取得した売買代金を代表者の個人的用途に費
消しても売買代金であることに変わりがなく,他方,送られた賄賂を事業活動に
充てたとしても,賄賂は売買代金(ないし代物弁済)とはなり得ない。
    (ウ) 原判決が指摘するその他の事実
     a 価額について
       原木取引についての相場が存在しなかったとしても,その意味す
るところは,本件各金員を原木代金の一部であると理解しても矛盾しないという
だけで,買主としては,採算の合わない取引をしないのが通常であるから,支払
総額が不自然な価格ではないからといって,その価額を売買代金とするとの合意
があったとの認定には直ちには結びつかない。
     b 取引数量との比例について
       取引高に応じて支払われる形態の「裏金」が現に存在することは
経験則の教えるところである。
     c 原木の独占的供給の必要性について
       環境問題から南洋材の伐採が禁止された影響で,原木の需要が高
まっていたという客観的な状況下において,原木価格は,平成4年度取引では1
トンあたり約184ドルであったのが,平成5年度では285ドル,平成6年度
では400ドルと急激に高騰しており,しかも,原木取引の方法が,平成5年度
では割当制度であったものが,平成6年度では入札方式が採用されていることか
らすると,競合他社の存在がうかがわれ,原木の独占的供給を必要とする状況に
あったといえる。入札は形式だけであったとするK陳述書は信用性に乏しい。
   イ 本件各預金口座(法人B名義でシンガポール開発銀行(DBS)に開
設された甲預金口座及びD銀行シンガポール支店に開設された乙預金口座)の管
理について
    (ア) 以下の事情からすれば,本件各預金口座は,実質的に被控訴人が
管理していたというべきである。
       すなわち,①平成5年11月27日にシンガポールに設立された
法人Bの設立目的は,被控訴人が,シンガポールに銀行預金口座を開設してそこ
に「裏金」を送金して管理してほしいと要求されたところ,シンガポールにおい
ては,登記されていない会社は預金からの出金が認められないために設立された
ものであること,②法人Bと被控訴人との間で,本件原木取引に関して本件各コ
ミッション契約書が作成され,コミッション・代理店手数料名目で本件各金員が
送金されたが,法人Bは,本件原木取引に関し活動実態のない,いわゆるペーパ
ーカンパニーであること,③本件各預金口座は,被控訴人の専務取締役であるI
が管理していたこと,④本件各金員はMTEへ機械類を納入するための原資であ
るところ,MTEへの機械類の納入等も被控訴人において行っており,MTEが
物理的な意味で自由に使用することができる状態にはなかったことなどからする
と,本件各預金口座は,実質的に被控訴人が管理していたというべきである。
    (イ) さらに,本件各預金口座の取引状況は以下のようなものであり,
本件各金員の一部は被控訴人の事業資金として利用されていたことが如実にうか
がわれるのであって,MTEが本件各預金口座を実質的に管理していたなどとい
う状況からは程遠く,本件各預金口座は,実質的に被控訴人が管理していたとい
うべきである。
     a 甲預金口座
      ① 1993年12月7日,甲金員23万2500ドル入金
      ② 翌8日,「YANGON COST」として3万1000ドル出金
      ③ 同日,「YANGON COST」として2万ドルがミャンマー外国貿易
銀行(MFTB)へ送金された後,MFTBのUSドル口座から,被控訴人のヤ
ンゴン事務所における給料・電気料・エアコン修理費用,ガソリン代,電話代等
の支払に充てられている。
      ④ 同日,6万3600ドルが「CURRENT A/C S$」へと振り替
えられた後,本件機械等とは全く関係のない機械の購入費用にも充てられてい
る。
     b 乙預金口座
      ① 1994年3月18日,被控訴人から「前渡金」として20万
ドルの入金
      ② それからほどなく,「YANGON COST」名目による数件の出金
      ③ その後も,被控訴人から「前渡金」として数回の入金
      ④ それに対応するように,「YANGON COST」名目による数件の出
金,被控訴人の事業に関連する取引の決済
      ⑤ 1995年1月23日,乙金員30万ドルの入金
      ⑥ 同日,1万2000ドルが機械等の購入のため出金  
      ⑦ 同月27日,本件機械等の購入とは無関係に9600ドル,6
万8680ドルの各出金,22万8721.17ドルの定期預金への振替
   ウ 「交際費等」該当性について
     租特法61条の4第3項が「その他これらに類する行為」と規定する
にとどめているのは,交際費課税制度が抑制しようとする支出,すなわち,取引
関係の円滑な進行を図る趣旨・目的の利益供与行為に対する支出は,その時代の
社会情勢や生活の価値観の変化に伴い,その態様が変化するとともに,複雑多岐
にわたることから,こうした支出の態様に変化があっても,その行為の目的によ
って柔軟に対応することができるようにする趣旨と解されるのであって,かかる
趣旨からすれば,「その他これらに類する行為」という要件の実質的基準として
は「(特定の)事業関係者との間の親睦の度を密にして,取引関係の円滑な進行
を図るのを目的」としてされた支出であることを要し,かつ,それで足りると解
すべきである。これ以外に「当該支出が事業の遂行に不可欠のものであるか否
か」「定額的な支出であるか否か」といった要素によって左右されるものではな
いし,当該支出が冗・濫費性を帯びていることも独立の要件とされないというべ
きである。
  (4) 被控訴人の当審における主張
   ア ミャンマー国の実情について
     ミャンマー国のような発展途上国,あるいは軍政下の国では,刊行物
に記載されている調査内容と国内での実態は異なっており,控訴人が書証として
提出している報告書等がどの程度国情の実態を正確に記載しているかは不明であ
る。特に,本件訴訟は,売買代金の一部がMTEの必要な資金に使用するため政
府口座とは別の口座に入金されたという事案であり,例えば日本の国情を前提に
考えれば,このようなことを国が了解しているということはあり得ないかもしれ
ないが,しかし,上記のようなミャンマー国の実情では当時当然のこととして行
われていたのである。
   イ 当事者の合意内容
    (ア) 被控訴人の認識
     a 平成5年10月27日作成に係るファックス文書(乙7の1)に
は「93年単価310ドル」との記載があり,被控訴人がこのような認識であっ
たことは明らかである。また,同文書には,株式会社Aに対し,単価310ドル
のうちの285ドル相当分の合計270万ドルをMTE口座に入金するように指
示するとともに,単価310ドルのうちの25ドル相当分をパーツ・機械代金と
して,後日シンガポール銀行の指示される口座へ入金する予定であることが記載
されている。したがって,同文書の記載からは,被控訴人が単価310ドルの一
部である25ドル相当分についても,売買代金としてMTEの指定する口座に入
金する旨の指示を受けており,被控訴人がMTEの指示どおりに認識していたこ
とは明らかである。
       また,同年11月26日に作成された文書(甲26)は上記文書
に対応するものであり,同文書で指示された単価310ドルのうちの25ドル相
当分の合計23万2500ドルをMTEより指定された口座に入金する旨の指示
を記載している。この文書にも「購入代金US$232,500」との記載があ
り,被控訴人がこれを売買代金の一部であると認識していたことがうかがわれ
る。
     b 本件各金員の処理は,以下のとおり,売買の合意が成立した後,
株式会社Aの指示に基づいてしたにすぎず,被控訴人に売買代金であるとの認識
がなかったということはできない。また,被控訴人がした支払は,本来株式会社
Aが行うべき売買代金の支払を被控訴人が立て替えて支払ったものであり,被控
訴人が課税の対象者となるべきものではないし,株式会社Aが支払った25ドル
相当分について代金として処理しながら,被控訴人が株式会社Aに代わってした
支払を交際費とすることは矛盾がある。
      (a) 株式会社Aと被控訴人とは,昭和61年3月10日に商品買
入委託契約を締結し,被控訴人は,株式会社Aの仲買人として原木の購入に当た
っており,委託手数料は1石当たり500円であった。したがって,売買代金は
株式会社Aが直接MTEに支払い,被控訴人は手数料の支払を受ける関係であっ
た。
      (b) 株式会社Aは,平成5年度分の原木代金について,上記のフ
ァックス文書に基づき,同年10月29日にMTE口座に270万ドルを直接入
金している。更に,株式会社Aは,売買代金の残りの25ドル相当分についても
同社が直接入金すべきと理解しており,同年11月25日,被控訴人に対し,銀
行名,口座番号がわかり次第直ちに入金ができるよう経理にファックスするよう
依頼しており,株式会社Aも25ドル相当分を売買代金の一部と理解していた。
      (c) 平成5年11月30日,株式会社AのL,Mが被控訴人を訪
れ,株式会社Aと被控訴人との間でコミッション契約を締結し,被控訴人と法人
Bの間でもコミッション契約を締結する形式をとるべき旨指示した。
      (d) 平成5年12月2日,株式会社Aの処理が遅れていることか
ら,25ドル相当分の支払を,被控訴人が株式会社Aに代わって立替払すること
になった。
      (e) 株式会社Aから,被控訴人の立替金分について1石当たりの
手数料を増額する方法で支払う旨決定したとして,増額依頼書のモデルが送付さ
れ,被控訴人は,この方法に従い,手数料名下で支払を受けた。
      (f) なお,平成7年には,株式会社Aの指示により,これまでの
売買委託方式を取り止め,株式会社Aが被控訴人に対して売買代金名下に単価4
25ドルの支払をし,被控訴人が株式会社Aに代わってMTE及び法人Bの口座
に売買代金として入金する方法をとることになった。しかし,株式会社Aは,被
控訴人がMTE及び法人Bに入金した単価425ドルの総額分に対する為替差益
全額について引き渡すよう要請し,被控訴人はこれに応じており,単に形式を変
更したにすぎず,被控訴人が購入委託を受けたとの実態に変わりはない。
    (イ) MTEの認識
     a MTEの売買代金決定の権限
       輸出木材の決定権はMTEが有しており,林業省に事後報告をす
るが承認を得る必要はないとされている。平成5年度取引の単価310ドル,平
成6年度取引の単価425ドルはいずれもMTEが決定した正規の売買価格であ
る。
     b K陳述書の証拠価値
       甲9及び34は,KがMTEに在職中作成されたもので,いずれ
もMTEの正規の書面に記載されたものである。したがって,MTEの役職者が
正規に作成したものである。しかも,甲52を含め,裁判所に提出するものであ
ることを前提に氏名,役職名を明らかにしている点でも信用性が高い。甲52に
は,MTEが300万ドルの範囲で代金の一部を留保し得る権限があること,法
人Bへの入金指示がこの権限に基づくものであるとの記載があり,これは被控訴
人も承知していなかった事実であり信用性は高い。
       また,甲52においては,300万ドル留保が許されていた理由
が詳細に記載され,その内容は首肯することのできるものである。また,合法的
であった根拠として指摘されている正常な通関をしたことについて,仮に違法な
ものであればMTE宛にするのではなく,被控訴人の工場宛に輸送するなどより
発覚が困難な方法を採るはずである。MTEは購入機械について見積書を提出さ
せ,購入機械の確認をしているが,違法な行為であればMTEに直接書類を提出
させる等,他人の目に触れる可能性のある方法を回避するのが自然である。
     c MTEの権限
       MTEは,林業大臣の承認を得て,300万ドルの範囲で代金を
留保する権限を有していた。このことは,Kの陳述書のほか,MTEが本件機械
を正規の手続きで通関させていること,機械購入の承認の手続をしていることか
らも明らかである。また,控訴人提出の文献(乙44)にも「価格の最終決定権
は基本的に管轄各省に委譲され」ている旨の記載がある。平成5年度取引のイン
ボイス等の書類に代金が単価285ドルとされ,平成6年度取引の入札価格が4
00ドルであったことは,いずれもMTEが300万ドルの範囲内で独自に伐採
等に必要な機械等を調達する費用として留保する権限内の行為として,実際の売
買価格より減額された金額が記載され,入札価格とされたにすぎない。
     d 以上のとおり,MTEにおいても25ドル相当分は,売買代金の
一部であるとの認識であり,一部を国庫に入金せず,自らの必要な機械等の購入
に充てることも権限内の正当な行為であるとの認識であった。
    (ウ) 結語
     a 以上のように,MTEは,原木の売買代金を決定する権限を有し
ており,MTEはこの権限によって平成5年度取引の単価を310ドル,平成6
年度取引の単価を425ドルとそれぞれ決定した。被控訴人も上記金額を代金と
認識しており,その内容で売買代金に関する合意が成立したものである。
     b なお,MTEは,原木売買代金のうち300万ドルの範囲でこれ
を留保する権限を有しており,25ドル相当分はMTEがこの権限により法人B
の口座に振り込むように指示したものであるが,MTEが売買代金を決定し,被
控訴人もMTEが指示した金額を売買代金として認識した以上,300万ドルの
範囲で留保する権限があったか否かにかかわらず,売買代金は25ドル相当分を
含めた額で合意されたことになる。
   ウ 本件各預金口座の開設等について
    (ア) 法人Bを設立し,本件各預金口座が開設された経緯は以下のとお
りである。
       平成5年10月ころ,Nは林業大臣秘書官よりシンガポールでの
銀行口座の開設を依頼された。その際にNは,同預金口座にはMTEの販売した
原木代金が入金され,この金員でMTEが必要とする機械を購入することにな
る,機械の購入についてはIを通じて必要な機械の指示をする旨依頼されてい
る。
       Nは,上記依頼とともにIを紹介され,同人とともに法人Bを設
立し,同社のシンガポールでの預金口座の開設を行うとともに同口座での金員の
処理を監視するために法人Bの役員に就任した。法人Bの設立に係るMTEの指
示は,Iが代表者となり,Nが役員になることであった。そして,平成5年12
月7日にDBSのUSドル口座に23万2500ドルが送金されることで取引が
開始されている(D銀行シンガポール支店の口座もこれと同じ日に開設されてい
る。)。
       以上の経緯からすれば,法人Bの設立及び同社の本件各預金口座
がMTEの木材の売買代金の一部を入金し,同金員でMTEが必要とする機械を
購入することを目的としていたものであり,その送金金員の使用に関してはMT
Eの監視役であるNが役員として十分に監視していたことは明らかである。さら
に,MTEが本件各預金口座に売買代金の一部を入金させ,MTEに必要な機械
を購入することはミャンマー国政府の林業大臣の指示によるものであり,この点
からミャンマー国政府が本件売買代金の一部をMTEが必要とする機械の購入に
使用することを承知していたものと理解することができる。
    (イ) 本件各預金口座の管理の具体的内容は以下のとおりである。
     a 通帳等はIが所持し,引出し等の手続も同人が行っていた。シン
ガポールの預金口座は,日本のような通帳による管理ではなく,サインを届け,
届出人のサインがなければ出金することはできないが,本件各預金口座の届出サ
インはIのものである。
     b 法人Bの本社住所は,Nの会計事務所を借用していることから,
本件各預金口座の履歴等もすべて同事務所に送付され,同氏はすべて取引履歴を
確認した上会計処理していた。
     c Nは,MTEがIに購入を指示した機械の内容について別ルート
でMTEから知らされていた。本件機械の購入のためのL/Cの開設やインボイ
スの作成等はすべてNの事務所で行われ,これらの手続を通じて同人はMTEの
指示どおり機械が購入されているかの確認も行っていた。
     d 法人Bの決算等の経理関係もNの事務所が担当しており,同人は
これら経理書類等を通じても,被控訴人が振り込んだ売買代金の一部の金員がM
TEの指示する機械の購入に使用されているかを管理していた。
    (ウ) 本件で問題となるのは,法人Bの本件各預金口座の管理の問題で
はなく,MTEの原木売買代金の一部として被控訴人から振り込まれた金員の管
理である。仮に,MTEがNを通じて法人Bの預金口座そのものを管理していた
といえないとしても,本件各金員がMTEの指示する機械に使用されているかど
うかについてはMTEがNを通じて管理していたものである。
   エ 入金された金員の使途について
     被控訴人が原木の売買代金の一部として法人Bの本件各預金口座に入
金した金員は,いずれもNの監視のもとにMTEの必要な機械代金の支払に充て
られており,被控訴人が自由に使用したことはない。
     なお,被控訴人がミャンマー等の外国との取引を行うに際し,法人B
の口座を使用してL/Cを開設するのが便利であったことから,被控訴人がMTE
への機械購入以外の目的で本件各預金口座を使用したことがあるが,これによっ
て本件各預金口座に送金された金員の性格が変わるものではない。
   オ 交際費課税について
     交際費とは「法人が,その業務遂行に関連して,得意先,仕入先その
他の事業に関係のある特定の者との親睦を密にして取引関係者等の円滑な進行を
図る目的の下に,その手段として,接待,供応,慰安,贈答その他およそこれら
の者の歓心を買い,あるいはこれに迎合するために自らの裁量による利益供与の
行為」である。
     本件における25ドル相当分は,売買代金の一部であることは明らか
であり,交際費の対象とはならない。また,そもそも,被控訴人が法人Bの口座
に入金した金員は,株式会社Aとの商品買入委託契約に基づく仲介者として株式
会社Aの支払うべき金員を立替払したものであり,この点からも交際費に該当す
る支出ではない。
     また,25ドル相当分が売買代金の一部か否か,MTEが300万ド
ルの範囲で代金を留保する権限があったか否かにかかわらず,交際費には該当し
ない。すなわち,交際費該当性の判断に際し,「その支出の動機,目的,金額の
多寡,行為の態様,意図する効果等の具体的な事情を勘案」すべきであるとこ
ろ,本件25ドル相当部分は,これを支払わなければ原木が搬出されなかったで
あろう点は争いがない。したがって,同金員は,MTEの歓心を買い,あるいは
迎合する目的で支出されたものではなく,あるいは取引を円滑にするための支出
でもない。売買目的物を取得するための不可欠な費用であり,被控訴人の裁量も
認められない。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所は,被控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その
理由は,以下のとおりである。
  (1) 被控訴人とMTEの間の原木取引の仕組,平成5年度及び平成6年度
の各取引の経過については,次のとおり付加訂正するほか,原判決の事実及び理
由中の「第2 事案の概要」の「1 前提となる事実」(本判決で付加訂正した
部分を含む。)及び「第3 争点に対する判断」の1記載のとおりであるので,
これを引用する。
   ア 原判決13頁10行目の「乙7の1,乙15の1,乙24ないし2
7,33,34,」を,「乙6の1・3,7の1,9の1・3,10の1・3,
15の1,24ないし27,33,34,38,39,」に改める。
   イ 同16頁9行目の「代金総額」を「支払うべき総額」に,12行目の
「310米ドルであり,うち25ドル」を「310ドルとするが,契約書では単
価は285ドルで代金合計が270万ドルとなり,差額の25ドル」に,16行
目の「開催した。」を「開催して,前記の甲売買契約書の内容のとおりの1トン
当たりの価格を概ね285ドルとし,総額270万ドルの前払とする契約条件を
決定した。」に,24行目の「11月になり,」を「そして,被控訴人とMTE
の間で,11月22日付けで甲売買契約書が取り交わされたが,25ドル分の支
払に関しては契約書に記載されず,ほかに何らの書面も作成されないまま(イン
ボイスにも記載されなかった。),」に改める。
   ウ 同17頁19行目から20行目の「開催された。」を「開催され,前
記の乙売買契約書の内容のとおりの1トン当たりの価格を400ドルとする契約
条件が決定され,これに基づいて,平成7年1月24日付けで,被控訴人とMT
Eの間で,乙売買契約書が取り交わされたが,25ドル分の支払に関しては前同
様,契約書に記載されることも,ほかに何らかの書面が作成されることもなく,
インボイスにもその記載はなかった。」に改め,23行目の「平成7年」の前に
「結果として,」を加える。
   エ 同18頁1行目の末尾に続けて,「そして,被控訴人は,平成7年1
月23日付けで法人Bとの間で乙コミッション契約書を取り交わして,乙金員を
乙預金口座に送金した。」を加える。
  (2) 本件各預金口座の管理について
    本件各預金口座は,上記のとおり,法人Bに本件各金員を送金するため
に開設されたものであるが,証拠(乙52ないし55,56の1ないし4,57
ないし59の各1・2,60,61及び62の各1ないし20,63の1ないし
11)及び弁論の全趣旨によれば,シンガポールでは預金口座からの出金には届
出人のサインを要するところ,本件各預金口座についての届出サインはIのもの
であり,払戻等の手続は同人が行っていたこと,本件各預金口座の入出金記録に
よれば,送金された本件各金員を区別して本件機械等の取得費用に充てていたわ
けではなく,被控訴人による他の入出金も加わって,本件機械等の取得と関係の
ない機械の購入や被控訴人のヤンゴン事務所の経費の支払等にも充てられていた
ことが認められ,本件各預金口座は被控訴人が実質的に管理していたものという
ことができる。もっとも,法人Bの住所がNの会計事務所を借用していたことか
ら,本件各預金口座の取引に関する通知等が同事務所宛に行われていたことがう
かがわれるが,Nがそれ以上に本件各預金口座における入出金について指示等を
していたような事実は認められず,上記認定を左右するものではない。
  (3) 本件各金員の趣旨についての各関係者の認識
   ア 株式会社Aについて
     証拠(乙3の1,4の1,15の1,24ないし27,原審における
証人J,H)によれば,株式会社Aの担当者Hは,平成5年度取引については,
当初,単価が1トン当たり285ドル,委託手数料1石当たり500円と聞いて
いたところ,被控訴人から,現地で不足している機械・パーツ等を購入する費用
として1トン当たり25ドルの金員を法人Bに送金しないと原木が出荷されない
との話があり,その負担に応じるのもやむを得ないものと考えたこと,そして,
経理担当のJと協議したが,株式会社Aには法人Bに対する債務はなく,根拠の
ない金員を支払うことはできないとして,被控訴人からの法人Bへの送金の指示
には応じずに,被控訴人からの平成5年12月15日付けの手数料改訂の依頼書
に基づいて,被控訴人との間で委託手数料の増額の合意をした上で,25ドル分
に見合う金員を被控訴人に対して支払うことにしたこと,このような経緯から,
株式会社Aとしては,原木の単価は甲売買契約書に記載されているとおり1トン
当たり285ドルであって,25ドル分の金員は原木の代金とは関係のない被控
訴人への委託手数料であると認識しており,経理上もそのように処理されている
こと,平成6年度取引については,原木代金をMTEに直接支払っていたそれま
での方法から被控訴人に対して支払う方法に改めたが,価格については,1トン
当たり400ドルで落札することができる旨の話を被控訴人から聞いており,こ
れに前年度と同様の趣旨で25ドルを加えた425ドルの割合による金員を被控
訴人に支払ったこと,したがって,同年度の取引についても原木の単価は1トン
当たり400ドルであって,25ドルは手数料に相当する金員であると認識して
いることが認められる。
     なお,平成5年10月27日付けで被控訴人から株式会社Aに送信さ
れたファックス文書(乙7の1)には,単価として310ドルとの記載があり,
同年11月26日付けのファックス文書(甲26)には,購入代金23万250
0ドルを法人Bの甲預金口座に送金するようにとの記載があるものの,これは1
トン当たり285ドルの割合による総額270万ドルの送金とは別に,25ドル
分の送金を依頼する書面であって,その後,この金員の趣旨やその取扱いについ
て両者の間で協議がされた結果,同年12月15日付けの手数料改訂の依頼書を
経て上記のとおりの理解のもとに売買代金としての処理はされなかったものであ
るから,上記認定を妨げるものではない。
   イ 被控訴人について
     被控訴人の代表者Cは,本件各処分の前の平成7年9月14日及び同
年10月3日に行われた国税調査官による調査において,本件各金員は,被控訴
人が原木の独占供給を受けるためにMTEに対する裏金を捻出・留保する目的で
法人Bの本件各預金口座に送金したものである旨明確に供述しており,原木取引
の売買代金の一部であるとの供述は一切していない。すなわち,証拠(乙1,2
1)によれば,Cは,平成7年9月14日,国税調査官に対し,①本件各金員
は,従来,ミャンマー国の原木を被控訴人が買い入れて株式会社Aに販売し,同
社が製品化・販売していたが,これがヒットして他社からの買入れ要請も出てき
たため,今後も被控訴人において独占的に原木の供給を受けたい旨ミャンマー国
政府高官に申し入れたところ,その対価として要求された「裏金」であった,②
しかし,「裏金」はミャンマー国政府が管理することはできないとして,被控訴
人においてシンガポールの銀行で管理されたい旨要請されたことから,預金口座
の開設名義人となる会社として法人Bを設立して登記した,③平成6年度取引に
ついて,被控訴人は株式会社Aに対して1トン当たり425ドルで売上げを計上
したが,株式会社AのHらは,そのうち400ドル分が実際の原木仕入単価であ
り,残り25ドル分については外為法上及び税法上問題のある金員であるという
認識であり,25ドル相当分は被控訴人において処理すべきであるとの態度であ
った旨供述し,さらに,同年10月3日,国税調査官に対し,①本件各金員は上
記同様の趣旨でミャンマー国政府高官から要求された「裏金」ないし「バックマ
ージン」であった,②「裏金」の使途は,ミャンマー国政府高官が外国出張する
際の個人的費用や,被控訴人が技術協力をしている工場以外の工場における機械
消耗品等の費用に充てられている旨供述していることが認められるのである。
     また,証拠(乙38,39)によれば,被控訴人から法人Bに対する
送金の方法について相談を受けたD銀行広島支店(当時)の担当者のEやFは,
被控訴人の経理担当のGから,本件各金員は被控訴人のMTEに対するバックマ
ージンの支払である旨の説明を受けていたことが認められる。
     その後,被控訴人は,本件各金員は原木の売買代金の一部であると主
張し,C及びGは原審においてその主張に沿った供述や証言をしているのである
が,その内容の変遷に合理的な理由がないばかりか,仮に被控訴人の主張どおり
に売買代金の一部であるとすれば,本件各金員は売買代金として送金すれば足
り,法人Bとの間で形式だけのコミッション契約を取り交わして,本件各金員を
法人Bに対する手数料とする必要はなく,また,本件各売買契約書には本件各金
員も含めた代金額を記載するか,それができないのであれば,MTEとの間で本
件各金員の支払に関して何らかの書面を作成するのが取引の通例と考えられるの
に,前記のとおり何らの書面も取り交わされていないのである。平成5年度取引
の単価を310ドルとし,23万2500ドルを購入代金と記載した株式会社A
宛の上記各ファックス文書が存在し,平成6年度取引においては被控訴人から株
式会社Aに対する売買の代金として1トン当たり425ドルとされていることが
あるとしても,上記のとおり被控訴人自身が本件各金員について売買代金の一部
であると首肯することのできるような処理をしていないことや,既に株式会社A
の認識について検討したとおりの事情を併せ考えると,これをもって上記のCの
供述やGの銀行員に対する説明が誤りであって,被控訴人が本件各金員が売買代
金の一部であると認識していたものと認めることはできない。
     国税調査官に対するCの当初の供述やGの銀行員に対する当時の説明
のとおりとすれば,上記のような不合理もなく,本件各金員の送金方法や本件各
預金口座の管理の実態についても矛盾なく首肯することができるのであって,被
控訴人は,本件各金員は原木の売買代金の一部ではなく,MTEから独占的に原
木の供給を受けるためのMTEに対する裏金であるとの認識を有していたものと
認めるのが相当である。
   ウ MTEについて
     被控訴人との原木取引のMTE側の担当者であるKの証明書(甲9の
1・2),陳述書(甲34の1・2)及び確認書(甲52の1・2)には,MT
EはSLORCの承認を得た林業大臣の許可により,木材の売上代金の一部30
0万ドルを国庫に入れずに,MTEが必要とする木材出材のための機械等を購入
する目的のもとに留保して独自に管理することができたものであり,本件各金員
もその一環として,被控訴人から法人Bの預金口座に送金させ,これからMTE
が指示した機械・パーツ等を被控訴人に購入させてMTEに搬送させたものであ
ること,平成5年度取引における単価は1トン当たり285ドルに機械等購入代
金として25ドルを加えた310ドルであり,平成6年度取引における単価は4
00ドルに同様の25ドルを加えた425ドルであること,本件各売買契約書に
単価が285ドルや400ドルと記載されているのは便宜上のことにすぎないこ
と,MTEによる本件各金員の留保が違法であれば,上記のようにして購入した
機械・パーツ等を輸入することはできないことなどが記載されている。しかし,
上記の各書面では,本件各売買契約書の代金額の記載が便宜上にすぎないとはい
かなることなのか,MTEによる売上代金の留保が正規に認められていることで
あれば,何故,売買契約書等の書面において本件各金員について明記しないの
か,本件各金員をMTEにではなく,シンガポールの法人Bの本件各預金口座に
送金させたのは何故かといった事柄について全く明らかにしていない上,SLO
RCや林業大臣による承認の事実を示す資料の添付もなく,Kの説明を裏付ける
客観的資料ないし政府機関内の第三者の文書の提出も可能であると思われるの
に,その提出すらない点でも不自然であり,上記の各書面のみをもってその記載
内容のとおりに認めることは到底できない。また,被控訴人が本件各金員によっ
て取得した機械・パーツ等が支障なく通関してMTEに送られた事実があったと
しても,そのことから直ちに当該機械・パーツ等の購入の原資に問題のないこと
が確認されたものということはできない。
     本件各金員が本件各売買契約書に記載されず,これに関する書面も取
り交わされず,しかも第三国であるシンガポールに本件各金員の送金のためにわ
ざわざ法人Bを設立し,その預金口座に本件各金員を送金して,MTEの名義が
表面に現れないようにしていることからは,MTEにおいても,本件各金員が正
規の売買代金の一部であるとの認識を有していたかどうかは疑わしいものといわ
ざるを得ない。このことは,本件各金員がMTEの必要とする機械・パーツ等の
取得費用に充てられたからといって変わるものではない。
  (4) 本件各金員の性質について
   ア 上記認定のとおり,本件各金員については,本件各売買契約書やMT
Eからの原木のインボイス(乙22の1ないし9)にも何ら記載がなく,これが
売買代金の一部であることを裏付ける書面は売買当事者間では作成されていな
い。のみならず,被控訴人がMTEから原木の買入れをしたのは,株式会社Aと
の間の商品買入委託契約に基づくものであるところ,同契約においては,被控訴
人は,MTEとの間で締結した売買契約書に基づき買入れ委託を実行し,被控訴
人において売買契約書の写しを速やかに株式会社Aに送付すべきこと,売買代金
は,株式会社Aが,被控訴人名義でMTEを相手方として商業信用状を開設した
上決済することとされており,甲売買契約書に係る代金として株式会社AがMT
Eに送金した金員は売買契約書及びインボイスに記載された単価相当分のみであ
る。他方,被控訴人は,本件各売買契約書作成日とほぼ同時期に,法人Bとの間
で,それぞれの売買に関するコミッション契約書を作成し,各売買に関する代理
店手数料の名目で,甲売買契約に関しては23万2500ドル(1トン当たり2
5ドル),乙売買契約に関しては30万ドル(1トン当たり25ドル)を支払う
旨約し,甲金員についてはシンガポール開発銀行の,乙金員については当時のD
銀行シンガポール支店の,いずれも法人Bの本件各預金口座に送金している。
     加えて,上記のとおり,法人Bの本件各預金口座の管理は実質的には
被控訴人が行っていたものと認められること,本件各金員についての各関係者の
認識においても,株式会社Aはこれを原木の売買代金とは認識しておらず,ま
た,売買代金の一部であるとする被控訴人の主張はCやGの当初の供述や説明に
照らして認めがたく,MTEに対する裏金であるとの認識を有していたものと認
めるのが相当であること,MTEについても本件各金員が正規の売買代金の一部
であるとの認識を有していたかどうかは疑わしいものであることをも併せ考慮す
ると,本件各金員が被控訴人とMTE間の原木の取引における売買代金の一部で
あると認めることは困難である。
   イ 被控訴人は,本件各金員が原木の売買代金の一部であることは当事者
間で口頭で合意されていたものであり,このことは被控訴人が作成して送付した
ファックス文書(乙7の1,甲26)やMTE担当者のK作成の前記陳述書や確
認書等(甲9の1・2,34の1・2,52の1・2)からも明らかである旨主
張するが,これらの書面の記載のとおりには認め難いことは前述したとおりであ
る。
     また,被控訴人は,①本件各預金口座の取引履歴等はNの会計事務所
に送付され,同人がこれを確認した上会計処理していたこと,②Nは,MTEが
Iに購入を指示した機械の内容について別ルートでMTEから知らされており,
本件機械等の購入のためのL/Cの開設やインボイスの作成等はすべてNの事務
所で行われ,これらの手続を通じて同人はMTEの指示どおりに機械等が購入さ
れているかの確認も行っていたこと,③法人Bの決算等の経理関係もNの事務所
が担当しており,同人はこれら経理書類等を通じても,被控訴人が送金した金員
がMTEの指示する機械等の購入に使用されているかを管理していたことなどか
ら,本件各金員についてはMTEがNを通じて管理していた旨主張する。しか
し,その主張のとおりとしても,本件各預金口座からの本件各金員の払戻等につ
いてIひいては被控訴人の関与が不可欠なことに変わりはなく,Nを介してのM
TEの管理なるものは間接的なものにすぎないのであって,本件各預金口座をM
TEが管理し,これにより本件各金員がMTEに対して送金され支払われたもの
と認めることはできず,被控訴人の主張は採用できない。
   ウ 以上のとおり,本件各売買契約書その他契約当事者間で取引に際して
作成ないし交付された書面には,本件各金員が売買代金の一部であることを意味
する記載は全くない反面,本件各金員の支払は,被控訴人と法人Bとの間でコミ
ッション契約を締結し,その代理店手数料名目で支払われており,その形式から
みても明らかに売買代金とはされていないのみならず,本件各金員が送金された
法人Bの本件各預金口座も被控訴人が管理していたもので,MTEの管理下にあ
ったということはできないのであって,本件各金員が原木の売買代金の一部であ
るということはできず,また,これがMTEに対する支払としてされたものとみ
ることもできない。
     そして,本件各金員が売買代金の一部であると認められないとすれ
ば,既に述べたような被控訴人が本件各預金口座に本件各金員を送金するように
なった経緯,殊に,MTEに対してではなく,わざわざ第三国であるシンガポー
ルに送金の受け皿となる法人として法人Bを設立して,同社と被控訴人との間で
形式的なコミッション契約を締結し,その代理店手数料名目で本件各預金口座に
送金するという方法を講じていること,しかも本件各預金口座をMTEが直接管
理するわけでもなく,MTEの名前は伏せられていること,被控訴人代表者Cの
国税調査官に対する当初の供述やGのD銀行広島支店の担当者に対する当時の説
明の内容等に照らして,本件各金員は,被控訴人がMTEから独占的に原木の供
給を受けるために,MTEから本件機械等を取得するための費用等にするなどと
して要求された裏金に充てるために,被控訴人からその管理する本件各預金口座
に送金されたものと認めるのが相当である。
     したがって,控訴人が,本件各更正処分において,本件各金員(平成
5年度取引における23万2500ドル(2556万3375円)(乙11の
1)及び平成6年度取引における30万ドル(3001万5000円)(乙12
の1))について,被控訴人が法人B名義で自ら管理する本件各預金口座に送金
したものであって,原木取引に係る支払手数料とは認められず,これを損金に算
入することはできないとして所得金額に加算したことは相当と認められる。
  (5) 交際費等の該当性について
    上記のとおり,本件各金員は,MTEからの要求に応じて上記のような
趣旨,目的の裏金に充てるために,被控訴人がその管理する本件各預金口座に送
金したものということができる。そして,被控訴人はその目的に従って本件各金
員を原資として本件機械等を取得したものと認めることができ(乙18の1ない
し15,64,65,66の1ないし3),この認定を妨げるに足りる証拠は存
しない。また,本件機械等が被控訴人からMTEに送付され,その代金の支払も
されていないことからすれば,本件各金員は,被控訴人が原木の輸入取引を独占
することができるようにする目的で,MTEとの関係を良好に維持するための資
金に充てるべく,自己の資金を国外に送金したものであり,その上で,本件各金
員によって本件機械等を購入して,前同様の目的でMTEへこれを無償で贈与し
たものと認められるのである。
    そして,このように被控訴人が本件機械等をMTEに無償で贈与した行
為は,被控訴人の事業の遂行上必要なものとして原木取引の相手方であるMTE
との関係を円滑にする目的で行われたものであって,租特法61条の4第3項の
「仕入先その他事業に関係のある者等に対する」「贈答その他これに類する行
為」に該当し,本件機械等を取得するために要した費用は,「贈答その他これに
類する行為のために支出した費用」に当たるというべきである。
    被控訴人は,本件各金員を支払わなければ原木が出荷されなかったもの
であるから,同金員は,MTEの歓心を買い,あるいは迎合する目的で支出され
たものではなく,あるいは取引を円滑にするための支出でもなく,売買の目的物
を取得するための不可欠な費用であり,被控訴人の裁量も認められない旨主張す
る。しかし,上記法条の文言からすれば,被控訴人の主張するような目的等が存
在する場合に限定されるものとは解されない上,本件各金員は本来の売買契約の
内容に照らしてMTEから正当に要求することのできるものではなく,被控訴人
もこれを裏金あるいはバックマージンの要求と解釈していたのであり,それにも
かかわらず被控訴人がこのようなMTEの正当でない要求に応じたのは,MTE
との関係を円滑に維持し,独占的に原木の供給を受けることを意図したためであ
ると認められることからしても,上記の判断を妨げるものではない。
    また,被控訴人は,本件各金員は,株式会社Aとの間の商品買入委託契
約に基づく仲介者として,株式会社Aの支払うべき金員を立替払したものであ
り,この点からも交際費に該当する支出ではない旨主張する。しかし,上記認定
のとおり,被控訴人と株式会社Aとの間で締結された委託契約の内容は,単に被
控訴人が売買の仲介をするというものではなく,被控訴人が当事者としてMTE
との間で売買契約を締結するというものであり,現に被控訴人はMTEとの間で
当事者として売買契約をしていること,本件各金員に相当する金員は最終的には
株式会社Aが負担しているものの,これは委託手数料として被控訴人に支払われ
ており,本件各金員そのものは被控訴人の名において本件各預金口座に送金され
ているのであって,これらの事実からすれば,本件各金員が,株式会社AがMT
Eに支払うべき金員を被控訴人が立て替えて支払ったものであるということはで
きない。Gの作成していた日報(甲12ないし22)の記載もこの判断を妨げる
ものではない。
    したがって,控訴人が,本件各更正処分において,被控訴人がMTEに
無償で贈与した本件機械等の取得費用が交際費に当たるとして,被控訴人が損金
として計上していない本件機械等の取得費用の一部(平成6年4月期は572万
2265円,平成7年4月期は1374万8190円)(乙18の1ないし1
5,19の1,20の1,弁論の全趣旨)を減算した上で,本件機械等の取得費
用全部を交際費等の支出額として計上し,当初申告における交際費等の額と合算
して,交際費等の損金不算入額を算定し,これを所得金額に加算したことは相当
と認められる。
  (6) 本件賦課決定処分について
    以上のとおり,本件各更正処分は適法であり,これに基づいて国税通則
法65条1項及び2項に従ってその範囲内で行われた本件各賦課決定処分(な
お,各重加算税賦課決定処分については,平成8年8月8日付けの異議決定によ
り過少申告加算税相当額を超える部分について取り消されている。)もまた適法
と認められる。
 2 したがって,控訴人がした本件各処分はいずれも適法であり,被控訴人の
請求はいずれも理由がない。よって,これと異なる原判決は失当であるのでこれ
を取り消して,被控訴人の請求をいずれも棄却することとし(なお,原判決が訴
えを却下した部分については,原審において判断に必要な実質的な審理はされて
いるものと認められるので,これを差し戻す必要はない。),主文のとおり判決
する。
    広島高等裁判所第3部
        裁判長裁判官   西   島   幸   夫
           裁判官   齋   藤   憲   次
      裁判官能勢顯男は転補のため署名押印することができない。
                                   
        裁判長裁判官   西   島   幸   夫

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