弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はいずれもこれを棄却する。
     当審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人畑和提出の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこ
れを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。
 控訴趣意第一点について。
 被告人等が原判示選挙人等を往問した場所がいずれも同人等の居宅若しくは屋敷
内ではなく公路若しくはこれに準ずべき公然の場所であつたことはまさに所論のと
おりであるが、公職選挙法第百三十八条第一項の戸別訪問における訪問には、選挙
人の居宅についてこれを訪う場合のみに限らず、あまねく選挙人何某方と解せられ
るべき場所についてこれを訪う場合を包含しすなわちいやしくも社会通念上その往
問した場所が被往問者の何某方と解せられるときはその居宅であると否とを問わ
ず、これを訪問と解して何等妨げないものというべきである。(昭和三年(れ)第
一〇〇一号、同年七月十三日大審院判決参照)。
 そこで本件において被告人等が原判示選挙人等を往問した場所の状況を検討して
みるに、その場所は、(一)A及びBについては、いずれも同人等居宅の門(正確
にいえば居宅前庭の生垣の入口)前で、その地点は門に接近し、門には戸扉の設備
がなく、直ちに前庭に通じ門から居間を容易に見透すことができ、(二)C及びD
については、同女等居宅前空地の柿の木の処であつて、同所は同女等居宅敷地と地
続きで、居宅には垣根等の囲障はなく、同所はあたかも同女等居宅の庭先同然にな
つていて、指呼の間に右居宅を望むことができ、又同所は同女等の借地部分ではな
いが、同女等は日常竹細工等の内職にこれを使用し、地主も默認し、さながら同女
等の仕事場と化しており、(三)Eについては、同人居宅前庭の生垣に接近し、往
問当時生垣は植えたばかりで枝葉が少く、生垣越しに奥座敷を容易に見透すことが
できたことは、原判決挙示の証拠その他原審及び当審において取り調べた証拠を綜
合すれば明瞭である。
 <要旨第一>しかもこれらの証拠によれば、被告人等は右同人等を往問するに当り
同人等の居住部落に入つてから自転車を降り、これを押しながら歩行
し、前記各往間場所に一々立ち止まり、(一)Aについては同人居宅の門から真直
に見透しうる居間の軒下にいた同人の妻Fに対し、(二)C及びDについては、当
時同女等が竹細工作業中の柿の木の処まで赴き、その居宅を確めた上同女等に対
し、(三)Bについては、同人居宅の門に近く前庭内にいた同人に対し、(四)E
については同人居宅前庭の生垣越しに奥座敷にいた同人の妻Gに対し、それぞれそ
の姿を認めた上で、被告人Hに投票を依頼する旨の挨拶をなし、同人等も被告人等
の姿を認め声を聞き、来意を知つて応答したという事情も窺い知ることができるの
である。
 そこで叙上往問した場所の状況に、往問当時の具体的事情を参酌して考察する
と、被告人等の本件所為は社会通念上原判示選挙人等方についてこれを訪うたも
の、すなわち冒頭説示のとおり公職選挙法第百三十八条第一項にいわゆる戸別訪問
に該当するものと認めるのが相当である。従つて原判決がこれを同条同項に違反す
るものと判断したのは正当であり、所論のような法令の適用の誤は存しないのであ
る。論旨は理由がない。
 控訴趣意第二点について。
 <要旨第二>所論にかんがみ記録を精査し、原審及び当審においてした証拠調の結
果に徴すると、被告人HとIIとが同村の生れで、出生年次もわずか三
年を距るに過ぎず、同じ頃同一小学校に通学し、互に顔見知りであり、幼少の時代
は学校友達として共に山野に遊び、長じては魚釣りを共にすることもある事情を窺
知するに難くないが、両名が親族、平素親交の間柄にある知己その他密接な間柄に
あることは未だ認められない。却つて原審及び当審における証人Iの証言並びに同
人の司法警察員に対する供述によれば、被告人Hは農地改革前は村内の豪農であつ
たに反し、Iは小作人階級で家格が全く相違し、両名が互にその相手の家を訪問し
たり、祝儀、不祝儀のやり取りをすることは全くなく魚釣を共にするといつても偶
然釣場で顔を合わす程度に過ぎず、格別懇意の間柄ではないことが認められるので
ある。されば原判決が本件について改正前公職選挙法第百三十八条第一項但書に規
定する事由がないものと認定したのはまことに相当であつて、原判決には事実誤認
の疑はいささかも存しない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 花輪三次郎 判事 山本長次 判事 栗田正)

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