弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件再上告を棄却する。
         理    由
 弁護人川上隆の上告趣意第一点について。
 本件は高等裁判所が上告審としてした判決に対する再上告であるから、刑訴応急
措置法第一七条に掲げられた理由を主張する場合に限り許されるべきものである。
しかるに論旨は明かに右の場合に該当しないから適法な上告理由となり得ない。の
みならず連続犯の規定は昭和二二年法律第一二四号によつて廃止せられたのである
から、同法律が施行された昭和二二年一一月一五日以後の昭和二三年四、五及び六
月に行われた本件犯行については、連続犯の観念を適用する余地がない。論旨は採
用することができない。
 同上第二点について。
 本論旨も亦、刑訴応急措置法第一七条の定める場合に該当しないから、上告適法
の理由となり得ない。
 加うるに本論旨はその内容も容認し難い。論旨は、第二審判決が証拠として引用
している被害者Aの盗難届は本件記録中に編綴せられていないから、右の判決は虚
無の証拠を断罪の資に供したものであると非難しているが、記録を調べてみると、
右の盗難届については、第二審公判廷において適法な証拠調がなされており、裁判
長は被告人に対してこれを読聞かせ又はその要旨を告げて意見弁解の有無を問うて
いるのであるから、この盗難届が本件記録中に編綴されていないで、別冊Bの記録
中に編綴されていたとしても、如何なる内容の盗難届を被告人に示したか不明であ
るとか、虚無の証拠を引用したものであるとかいう非難はあたらない。又右の盗難
届を含む証拠書類について、裁判長は、その作成者並に供述者を公判廷に於て訊問
することを請求し得る旨を告げたにも拘わらず、被告人は無之旨答え、弁護人もC
以外の証人の訊問は請求しなかつたのであるから、裁判所がその作成者を証人とし
て喚問しないで、これを証拠として採用したからとて、所論のような違法を犯した
ものと云い得ないこと、当裁判所がしばしば示した判例に徴して明かである。
 同上第三点について。
 被害者Aの盗難届の証拠能力については、論旨第二点に関して説明した通りであ
る。第二審判決は、右の盗難届をも証拠として、判示第二の犯罪事実を認定したの
であつて、被告人の自白を唯一の証拠として断罪したものではないから、所論のよ
うに憲法に違反するものでなく、その他の法令にも違背する点はない。論旨は理由
がない。
 以上のように第二審判決並にこれを維持した原判決の何れにも憲法違反の点は存
しないから、再上告の理由なきものとして、旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判
決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年一二月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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