弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人以呂免義雄の上告理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 被上告人は、上告人A1の養子で、同上告人の唯一の推定相続人であり、上
告人A2は、上告人A1のおいである。
 2 上告人A1は、平成元年一二月一八日、奈良地方法務局所属公証人D作成同
年第八四九号公正証書によって遺言(以下「本件遺言」という。)をした。
 3 本件遺言の内容は、上告人A1の所有する奈良市a所在の土地建物の持分一
〇〇分の五五を上告人A2に遺贈するというものである。
 4 奈良家庭裁判所は、平成五年三月一五日、上告人A1が、アルツハイマー型
老人性痴呆である旨の鑑定の結果に基づき、心神喪失の常況にあるとして、同上告
人に対し禁治産宣告をした。同上告人の病状は回復の見込みがない。
 二 本件訴えは、被上告人が上告人らに対し、本件遺言につき、上告人A1の意
思能力を欠いた状態で、かつ、公正証書遺言の方式に違反して作成されたと主張し
て、本件遺言が無効であることを確認する旨の判決を求めるものである。
 三 原審は、遺言者の生存中に遺言の無効確認を求める訴えは原則として不適法
であるが、前記事実関係の下において、本件のように遺言者による遺言の取消し又
は変更の可能性がないことが明白な場合には、その生存中であっても遺言の無効確
認を求めることができるとして、本件訴えを適法と判断し、本件訴えを却下した第
一審判決を取り消し、本件を第一審裁判所に差し戻した。
 四 しかし、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおり
である。
 1 本件において、被上告人が遺言者である上告人A1の生存中に本件遺言が無
効であることを確認する旨の判決を求める趣旨は、上告人A2が遺言者である上告
人A1の死亡により遺贈を受けることとなる地位にないことの確認を求めることに
よって、推定相続人である被上告人の相続する財産が減少する可能性をあらかじめ
除去しようとするにあるものと認められる。
 2 ところで、遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり(
民法九八五条一項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消すことができ(同法
一〇二二条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じな
い(同法九九四条一項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によっ
て何らの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を
取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権
利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎない(最高裁昭
和三〇年(オ)第九五号同三一年一〇月四日第一小法廷判決・民集一〇巻一〇号一
二二九頁参照)。したがって、このような受遺者とされる者の地位は、確認の訴え
の対象となる権利又は法律関係には該当しないというべきである。遺言者が心神喪
失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変
更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、受遺者とされた者の地位の右のよう
な性質が変わるものではない。
 3 したがって、【要旨】被上告人が遺言者である上告人A1の生存中に本件遺
言の無効確認を求める本件訴えは、不適法なものというべきである。
 五 そうすると、本件訴えを適法とした原審の判断には法令の解釈適用を誤った
違法があり、この違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨
は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件訴えを不適法として却下し
た第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴は棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 亀山
継夫)

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