弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小泉英一、同桝井雅生の上告趣意第一点について。
 所論は、違憲をいうも、その実質は、単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。そして、所論盗難顛末書は、月日、数量を除いて盗難
の証拠としたものであることは、第一審判決の証拠説明で明白であり、また、同証
拠説明中「一月初めとあるは中旬と認む」「二月中旬とあるは上旬と認む」との記
載は、他の証拠により右記載のごとく認定した趣旨で、同顛末書中の日時を証拠と
したものでないこと明らかであるから、同顛末書については、所論の訴訟法違反は
認められない。次に、所論上申書及び供述調書については、証拠とすることについ
て日時、数量の点を除外したものでないこと記録上明らかであるばかりでなく、原
審で主張も判断もない新らたな訴訟法違反の主張で採ることができない。
 同第二点について。
 所論盗難顛末書が単なる伝聞証拠でないことは、原判決の説示したところである
ばかりでなく、該顛末書は、日時、数量を除き証拠とすることに同意した証拠であ
るから、刑訴三二六条により伝聞証拠に関する同三二四条の規定にかかわらず証拠
とすることができるものである。そして、原一、二審判決は、右顛末書の外Aの証
言をも補強証拠として判示事実全体を認定したものであつて、挙示の証拠でその事
実認定を肯認することができるから、所論違憲の主張は、その前提を欠き刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
 同第三点について。
 仮りに第一審手続に所論の違法があつたとしても(検察官は、所論B作成の顛末
書を結局日時、数量の点を除き証拠として提出し被告人弁護人はこれを証拠とする
ことに同意したこと記録上明白であるから、所論Bを証人とすることを放棄したと
認められる。)これに対し異議の申立もないのであつて、判決に影響を及ぼすこと
が明らかであるといえないこと論を俟たない(刑訴三七九条参照)。所論判例は、
旧刑訴のもので、新刑訴の本件に適切でないばかりでなく、所論の違法は、原審で
主張もなく、従つて、これに対する判断もないのであるから、当審に対する上告理
由としては不適法なものであり、その他審理不尽の主張は、単なる訴訟法違反の主
張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第四点乃至第七点について。
 同第四点は、単なる訴訟法違反の主張であり、(原判決理由冒頭の記載で末尾に
添附した控訴趣意書を引用した趣旨であること明白である。なお、刑訴規則二四六
条後段参照)、同第五点、第六点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同
第七点は、量刑不当の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。また記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で、主文の
とおり決定する。
  昭和二九年一月二八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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