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令和元年(受)第794号,第795号地位確認等請求事件
令和2年10月15日第一小法廷判決
主文
1第1審被告の上告を棄却する。
2原判決中,次の部分を破棄する。
(1)第1審原告X1の平成27年4月30日以前に
おける年末年始勤務手当及び同日以前における
1月1日から同月3日までの期間(ただし,祝
日を除く。)の勤務に対する祝日給に係る損害
賠償請求に関する部分
(2)第1審原告X2及び第1審原告X3の扶養手当
に係る損害賠償請求に関する部分
3前項の破棄部分につき,本件を大阪高等裁判所に
差し戻す。
4第1審原告X1,第1審原告X2及び第1審原告
X3のその余の上告を棄却する。
5第1項に関する上告費用は第1審被告の負担とし,
前項に関する上告費用は第1審原告X1,第1審
原告X2及び第1審原告X3の負担とする。
理由
第1事案の概要
1本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」と
いう。)を締結して勤務し,又は勤務していた時給制契約社員又は月給制契約社員
である第1審原告らが,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」とい
う。)を締結している労働者(以下「正社員」という。)と第1審原告らとの間
で,年末年始勤務手当,祝日給,扶養手当,夏期休暇及び冬期休暇(以下「夏期冬
期休暇」という。)等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第
71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったと主張して,第
1審被告に対し,不法行為に基づき,上記相違に係る損害賠償を求めるなどの請求
をする事案である。
2原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)ア第1審被告は,国及び日本郵政公社が行っていた郵便事業を承継した郵
便局株式会社及び郵便事業株式会社の合併により,平成24年10月1日に成立し
た株式会社であり,郵便局を設置して,郵便の業務,銀行窓口業務,保険窓口業務
等を営んでいる。
イ第1審原告X1を除く第1審原告らは,いずれも,国又は日本郵政公社に有
期任用公務員として任用された後,平成19年10月1日,郵便事業株式会社との
間で有期労働契約を締結し,同社及び第1審被告との間でその更新を繰り返して,
郵便外務事務(配達等の事務)に従事し,又は従事していた時給制契約社員又は月
給制契約社員である。このうち,第1審原告X3は,平成24年8月1日に時給制
契約社員から月給制契約社員となったが,その余の者は,いずれも時給制契約社員
である。また,第1審原告X4は,平成28年3月31日,第1審被告を退職し
た。
第1審原告X1は,平成22年4月,郵便事業株式会社との間で有期労働契約を
締結し,同社及び第1審被告との間で有期労働契約の締結又は更新を繰り返して,
郵便外務事務に従事する時給制契約社員である。
(2)ア第1審被告に雇用される従業員には,無期労働契約を締結する正社員と
有期労働契約を締結する期間雇用社員が存在し,それぞれに適用される就業規則及
び給与規程は異なる。
イ正社員に適用される就業規則において,正社員の勤務時間は,1日について
原則8時間,4週間について1週平均40時間とされている。
平成26年3月31日以前の人事制度(以下「旧人事制度」という。)におい
て,正社員は,企画職群,一般職群(以下「旧一般職」という。)及び技能職群に
区分され,このうち郵便局における郵便の業務を担当していたのは旧一般職であっ
た。
そして,平成26年4月1日以後の人事制度(以下「新人事制度」という。)に
おいて,正社員は,管理職,総合職,地域基幹職及び一般職(以下「新一般職」と
いう。)の各コースに区分され,このうち郵便局における郵便の業務を担当するの
は地域基幹職及び新一般職である。
ウ期間雇用社員に適用される就業規則において,期間雇用社員は,スペシャリ
スト契約社員,エキスパート契約社員,月給制契約社員,時給制契約社員及びアル
バイトに区分されており,それぞれ契約期間の長さや賃金の支払方法が異なる。こ
のうち時給制契約社員は,郵便局等での一般的業務に従事し,時給制で給与が支給
されるものとして採用された者であって,契約期間は6か月以内で,契約を更新す
ることができ,正規の勤務時間は,1日について8時間以内,4週間について1週
平均40時間以内とされている。また,月給制契約社員は,高い知識・能力を発揮
して郵便局等での一般的業務に従事し,月給制で給与が支給されるものとして採用
された者であって,契約期間は1年以内で,契約を更新することができ,正規の勤
務時間は,1日について6時間以上8時間以内,4週間について1週平均40時
間,35時間又は30時間とされている。
(3)正社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程において,郵便の業
務を担当する正社員の給与は,基本給と諸手当で構成されている。諸手当には,扶
養手当,住居手当,祝日給,特殊勤務手当,夏期手当,年末手当等がある。
このうち扶養手当は,所定の扶養親族のある者に支給されるものであり,その額
は,扶養親族の種類等に応じて,扶養親族1人につき月額1500円~1万580
0円である。
また,祝日給は,正社員が祝日において割り振られた正規の勤務時間中に勤務す
ることを命ぜられて勤務したとき(祝日代休が指定された場合を除く。)及び祝日
を除く1月1日から同月3日までの期間(以下「年始期間」という。)に勤務した
ときに支給されるものであり,その額は,月の初日から末日までの間における祝日
給の支給対象時間(勤務時間)に次の算式により求められる額を乗じて得た額であ
る。なお,正社員に適用される就業規則において,郵便の業務を担当する正社員に
は,年始期間について特別休暇が与えられるものとされている。
((基本給の月額+基本給及び扶養手当の月額に係る調整手当の月額+隔遠地手
当の月額)×12/年間所定勤務時間数)×100分の135
さらに,特殊勤務手当は,著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他の著
しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,その特殊性を基本給で考
慮することが適当でないと認められるものに従事する正社員に,その勤務の特殊性
に応じて支給するものとされている。特殊勤務手当の一つである年末年始勤務手当
は,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給さ
れるものであり,その額は,12月29日から同月31日までは1日につき400
0円,1月1日から同月3日までは1日につき5000円であるが,実際に勤務し
た時間が4時間以下の場合は,それぞれその半額である。
このほか,正社員に適用される就業規則では,郵便の業務を担当する正社員に夏
期冬期休暇が与えられることとされている。夏期休暇は6月1日から9月30日ま
で,冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの各期間において,それぞれ3
日まで与えられる有給休暇である。
(4)ア期間雇用社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程において,
郵便の業務を担当する時給制契約社員の給与は,基本賃金と諸手当で構成されてい
る。諸手当には,祝日割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当等がある。
このうち祝日割増賃金は,時給制契約社員が祝日に勤務することを命ぜられて勤
務したときに支給されるものであり,その額は,月の初日から末日までの期間にお
ける祝日割増賃金の支給対象時間(勤務時間)に,基本賃金額(時給)の100分
の35を乗じて得た額である。
イ期間雇用社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程において,郵便
の業務を担当する月給制契約社員の給与は,基本賃金と諸手当で構成されている。
諸手当には,祝日割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当等がある。
このうち祝日割増賃金は,月給制契約社員が祝日において割り振られた正規の勤
務時間中に勤務することを命ぜられて勤務したときに支給されるものであり,その
額は,月の初日から末日までの間における祝日割増賃金の支給対象時間(勤務時
間)に次の算式により求められる額を乗じて得た額である。
(基本賃金額(月給)×12/年間所定勤務時間数)×100分の135
ウもっとも,郵便の業務を担当する時給制契約社員及び月給制契約社員(以
下,併せて「本件契約社員」という。)に対して,扶養手当及び年末年始勤務手当
は支給されず,祝日割増賃金は,正社員に対する祝日給とは異なり,年始期間に勤
務したときには支給されない。なお,本件契約社員には年始期間について特別休暇
は与えられていない。
また,本件契約社員に対して,夏期冬期休暇は与えられていない。
(5)ア旧一般職及び地域基幹職は,郵便外務事務,郵便内務事務等に幅広く従
事すること,昇任や昇格により役割や職責が大きく変動することが想定されてい
る。他方,新一般職は,郵便外務事務,郵便内務事務等の標準的な業務に従事する
ことが予定されており,昇任や昇格は予定されていない。
また,正社員の人事評価においては,業務の実績そのものに加え,部下の育成指
導状況,組織全体に対する貢献等の項目によって業績が評価されるほか,自己研さ
ん,状況把握,論理的思考,チャレンジ志向等の項目によって正社員に求められる
役割を発揮した行動が評価される。
イこれに対し,本件契約社員は,郵便外務事務又は郵便内務事務のうち,特定
の業務のみに従事し,上記各事務について幅広く従事することは想定されておら
ず,昇任や昇格は予定されていない。
また,時給制契約社員の人事評価においては,上司の指示や職場内のルールの遵
守等の基本的事項に関する評価が行われるほか,担当する職務の広さとその習熟度
についての評価が行われる。月給制契約社員の人事評価においては,業務を適切に
遂行していたかなどの観点によって業績が評価されるほか,上司の指示の理解,上
司への伝達等の基本的事項や,他の期間雇用社員への助言等の観点により,月給制
契約社員に求められる役割を発揮した行動が評価される。他方,本件契約社員の人
事評価においては,正社員とは異なり,組織全体に対する貢献によって業績が評価
されること等はない。
(6)旧一般職を含む正社員には配転が予定されている。ただし,新一般職は,
転居を伴わない範囲において人事異動が命ぜられる可能性があるにとどまる。
これに対し,本件契約社員は,職場及び職務内容を限定して採用されており,正
社員のような人事異動は行われず,郵便局を移る場合には,個別の同意に基づき,
従前の郵便局における雇用契約を終了させた上で,新たに別の郵便局における勤務
に関して雇用契約を締結し直している。
(7)本件契約社員に対しては,正社員に登用される制度が設けられており,人
事評価や勤続年数等に関する応募要件を満たす応募者について,適性試験や面接等
により選考される。
第2令和元年(受)第794号上告代理人樋󠄀口隆明ほかの上告受理申立て理
由第2並びに同第795号上告代理人森博行ほかの上告受理申立て理由第2及び第
4の2(ただし,いずれも排除されたものを除く。)について
1原審は,前記第1の2の事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,
郵便事業株式会社及び第1審被告との間で更新された有期労働契約の契約期間を通
算した期間(以下「通算雇用期間」という。)が5年を超えていた時期における第
1審原告らの年末年始勤務手当及び年始期間の勤務に対する祝日給に係る損害賠償
請求の一部を認容すべきものとする一方,第1審原告X1について,通算雇用期間
が5年を超えていなかった平成27年4月30日以前の年末年始勤務手当及び同日
以前の年始期間の勤務に対する祝日給に係る損害賠償請求を棄却すべきものとし
た。
(1)第1審被告における年末年始勤務手当は,年末年始の時期に業務に従事し
なければならない正社員の労苦に報いる趣旨で支給されるものであるところ,本件
契約社員が原則として短期雇用を前提とすること等からすると,正社員に対して年
末年始勤務手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという
労働条件の相違は,直ちに労働契約法20条にいう不合理と認められるものには当
たらない。もっとも,本件契約社員であっても,通算雇用期間が5年を超える場合
には,正社員との間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違を設ける根拠は薄弱
なものとならざるを得ず,上記相違は,同条にいう不合理と認められるものに当た
る。
(2)第1審被告において,正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支
給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないと
いう労働条件の相違は,年始期間につき正社員に対してのみ与えられる特別休暇に
ついての相違を反映したものであるところ,長期雇用を前提とする正社員と,原則
として短期雇用を前提とする本件契約社員との間で,休暇等について異なる制度や
運用を採用することには一定の合理性があるから,上記特別休暇についての相違が
直ちに労働契約法20条にいう不合理と認められるものには当たらず,これを反映
した上記祝日給についての相違も,同条にいう不合理と認められるものには当たら
ない。もっとも,本件契約社員であっても,通算雇用期間が5年を超える場合に
は,上記相違を設ける根拠は薄弱なものとならざるを得ず,上記相違は,同条にい
う不合理と認められるものに当たる。
2しかしながら,原審の上記判断はいずれも是認することができない。その理
由は,次のとおりである。
(1)年末年始勤務手当について
第1審被告における年末年始勤務手当は,郵便の業務を担当する正社員の給与を
構成する特殊勤務手当の一つであり,12月29日から翌年1月3日までの間にお
いて実際に勤務したときに支給されるものであることからすると,同業務について
の最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において,
同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対
価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員
が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務し
たこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と
時間に応じて一律である。
上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば,これ
を支給することとした趣旨は,本件契約社員にも妥当するものである。そうする
と,前記第1の2(5)~(7)のとおり,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員
との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範
囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に年末年始
勤務手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができ
るものといえる。
したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する
一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契
約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。
(2)年始期間の勤務に対する祝日給について
第1審被告における祝日給は,祝日のほか,年始期間の勤務に対しても支給され
るものである。年始期間については,郵便の業務を担当する正社員に対して特別休
暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって年始期間が休日とされている
という慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであると解される。これに
対し,本件契約社員に対しては,年始期間についての特別休暇は与えられず,年始
期間の勤務に対しても,正社員に支給される祝日給に対応する祝日割増賃金は支給
されない。そうすると,年始期間の勤務に対する祝日給は,特別休暇が与えられる
こととされているにもかかわらず最繁忙期であるために年始期間に勤務したことに
ついて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支
給することとされたものと解され,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員と
の間の祝日給及びこれに対応する祝日割増賃金に係る上記の労働条件の相違は,上
記特別休暇に係る労働条件の相違を反映したものと考えられる。
しかしながら,本件契約社員は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされてお
り,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者も存するな
ど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見
込まれている。そうすると,最繁忙期における労働力の確保の観点から,本件契約
社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはでき
るものの,年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は,本件契約
社員にも妥当するというべきである。そうすると,前記第1の2(5)~(7)のとお
り,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の
職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違
があること等を考慮しても,上記祝日給を正社員に支給する一方で本件契約社員に
はこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは,
不合理であると評価することができるものといえる。
したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日
給を支給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給し
ないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに
当たると解するのが相当である。
3以上と異なる原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令
の違反がある。第1審原告X1の論旨は以上の趣旨をいうものとして理由がある。
他方,以上によれば,第1審被告の論旨は採用することができない。
第3令和元年(受)第795号上告代理人森博行ほかの上告受理申立て理由第
7について
1原審は,前記第1の2の事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,
第1審原告X2及び第1審原告X3の扶養手当に係る損害賠償請求を棄却した。
第1審被告における扶養手当は,長期雇用を前提として基本給を補完する生活手
当としての性質及び趣旨を有するものであるところ,本件契約社員が原則として短
期雇用を前提とすること等からすると,正社員に対して扶養手当を支給する一方
で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法
20条にいう不合理と認められるものに当たらない。
2しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
第1審被告において,郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給され
ているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることか
ら,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせ
ることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられ
る。このように,継続的な勤務が見込まれる労働者に扶養手当を支給するものとす
ることは,使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。もっとも,上記目
的に照らせば,本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な
勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するとい
うべきである。そして,第1審被告においては,本件契約社員は,契約期間が6か
月以内又は1年以内とされており,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰
り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれているといえ
る。そうすると,前記第1の2(5)~(7)のとおり,上記正社員と本件契約社員との
間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲そ
の他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に扶養手当に係
る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものという
べきである。
したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当を支給する一方で,
本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20
条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。
3以上と異なる原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令
の違反がある。論旨は以上の趣旨をいうものとして理由がある。
第4令和元年(受)第794号上告代理人樋󠄀口隆明ほかの上告受理申立て理
由第3の4について
1原審は,郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇を与える一方
で,本件契約社員である第1審原告らに対してこれを与えないという労働条件の相
違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たることを前提に,上記
相違によって夏期冬期休暇の日数分の賃金に相当する額の損害が発生したと判断し
た。所論は,原審のこの判断には民法709条の解釈適用の誤りがある旨をいうも
のである。
2第1審被告における夏期冬期休暇は,有給休暇として所定の期間内に所定の
日数を取得することができるものであるところ,本件契約社員である第1審原告ら
は,夏期冬期休暇を与えられなかったことにより,当該所定の日数につき,本来す
る必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから,上記勤務をしたこ
とによる財産的損害を受けたものということができる。
以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用する
ことができない。
第5結論
以上のとおりであるから,原判決中,第1審原告X1の平成27年4月30日以
前における年末年始勤務手当及び同日以前における年始期間の勤務に対する祝日給
に係る損害賠償請求に関する部分並びに第1審原告X2及び第1審原告X3の扶養
手当に係る損害賠償請求に関する部分を破棄し,損害額等について更に審理を尽く
させるため,これらの部分につき本件を原審に差し戻すとともに,第1審被告の上
告並びに第1審原告X1,第1審原告X2及び第1審原告X3のその余の上告を棄
却することとする。なお,その余の上告受理申立て理由は,上告受理の決定におい
て排除された。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官山口厚裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官
木澤克之裁判官深山卓也)

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