弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人A、同B、同C、同D、同Eに関する部分を破棄する。
     被告人Cを懲役六月に、同Eを懲役四月に、同Bを懲役三月にそれぞれ
処し、被告人A、同D を各罰金三〇、〇〇〇円に処する。
     被告人C、同E、同Bに対し、いずれも本裁判確定の日から二年間右懲
役刑の執行を猶予する。
     被告人A、同Dにおいて、右各罰金を完納することができないときは、
金一、〇〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検察官検事古川健次郎提出にかかる横浜地方
検察庁検察官検事吉良敬三郎作成名義の控訴趣意書および東京高等検察庁検察官検
事海治立憲作成にかかる控訴趣意補充申立書に、これに対する答弁は、弁護人小林
優、同南木武輝の連名で作成にかかる答弁書にそれぞれ記載されているとおりであ
るから、ここにこれらを引用し、これに対し当裁判所は、事実の取調を行なつたう
え、次のとおり判断する。
 控訴趣意第一点(補充控訴趣意一および二をも含む。)について。
 検察官の所論は、要するに、原判決は、各被告人に対する昭和二五年神奈川県条
例第六九号、集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(以下県条例と略称す
る。)第五条違反、同年東京都条例第四四号、集会、集団行進及び集団示威運動に
関する条例(以下都条例と略称する。なお、両条例は、その内容において同様であ
るから、以下両者を併せて本件条例と略称する。)第五条違反の各公訴事実に対
し、その事実関係については概ね検察官の主張どおり認定しながら、本件条例第五
条のうち、第三条第一項但書によつて付された条件に違反した集会、集団行進、集
団示威運動の主催者、指導者、せん動者を処罰する規定(以下本件罰則規定と略称
する。)は白地刑罰法規であり、公安委員会の定める条件によつて同罰則規定の構
成要件が補充されるのであつて、条例からさらにそれ以下の形式による法令への犯
罪構成要件の再委任を意味するものであるが、憲法第三一条、第七三条第六号但
書、国家行政組織法第一二条第四項等の規定によれば、法律以下の法令により刑罰
法規を制定するためには、すべて法律による直接の委任規定が必要であり、地方自
治法第一四条第一項、第五項は、かかる罰則の再委任を許容した趣旨とは解せられ
ないから、右罰則規定は法律の根拠を欠き、憲法第三一条に違反し無効である旨判
示している。しかし、原判決の右判断は、最高裁判所および高等裁判所の判決に反
するばかりでなく、法令の解釈を誤つており、是認しえないものであるという旨の
主張である。
 <要旨第一>よつて案ずるに、本件条例が対象とする集団行進とくに集団示威運動
は、昭和三五年七月二〇日最高裁判所</要旨第一>大法廷が都条例違反被告事件に
ついて言い渡した判決の判示するとおり、「本来平穏に秩序を重んじてなさるべき
純粋なる表現の自由の行使の範囲を逸脱し、静ひつを乱し、暴力に発展する危険性
のある物理力を内包しているものであり、表現の自由を口実にして集団行進により
平和と秩序を破壊するような行動またはさような傾向を帯びた行動を事前に予知
し、不慮の事態に備え、適切な措置を講じ得るようにすることはけだし止むを得な
いものと認め」られるものであつて、「いわゆる公安条例を以て、地方的情況その
他諸般の事情を十分考慮に入れ、不測の事態に備え、法と秩序を維持するに必要か
つ最少限度の措置を事前に講ずることはけだし止むを得ない」とされるのである。
そして、本件罰則規定は右のような集団行動について対象地域における道路の広
狭、交通量の繁閑等の地方的情況やその他諸般の事情を十分考慮に入れて予想され
る不測の事態に備え必要最少限度の事前措置をとる目的をもつて制定されたもので
ある。しかしこの目的のために、あらゆる集団行動に対して適用できる画一的な具
体的制限事項を予め想定し、それを条例により網羅的に規定して、一律に条件を規
定することは、いたずらに制限事項の範囲の拡大をきたして立法技術上も困難であ
るのみならず、かえつて当該届出にかかる集団行動の特性に適応する措置には欠け
る虞があつて条例制定の趣旨にも反する結果となるので、むしろその許可にあたる
公安委員会がその許可の都度当該集団行動の性格、規模、日時、経路、行進の仕方
等について個々的に具体的に考慮してこれに適切な条件を付することとする方がそ
の集団行動に対する制限事項を必要最少限の範囲にしぼることが可能となり、条例
制定の目的を達することができるわけであつて、本件罰則規定がその第三条第一項
但書において条件を付し得る事項の範囲を限定するに止めて、細目は、公安委員会
の条件付与によつて補充することとしたのも、右のような現実の必要性に適合する
ための立法技術上の理由があつたものと解せられる。ところで、本件罰則規定は、
地方自治法第二条第三項第一号に明示されている「地方公共の秩序を維持し、住民
および滞在者の安全、健康および福祉を保持すること」に関して制定され、同法第
一四条第一項、第五項に基づき限定された範囲内で刑罰を科するものであつて、公
安委員会に対して、集団示威運動等を許可する際に、地方公共の秩序を維持し、住
民、滞在者等の安全を確保する見地から必要最少限度の条件を付する権限、即ち条
件付与によつて犯罪構成要件を補充する権限を与えているのであるが、右のように
本件条例が、その制定の目的を達するための合理的必要性から公安委員会に対して
条件付与の権限を与え、犯罪構成要件の補充を行なわしめることとしているのは、
前記条例の性質上地方自治法第一四条第五項の委任の趣旨に反するものではないと
認められる。原判決は、条例をもつて定められる罰則規定自体において犯罪構成要
件およびこれに対する刑罰が明確にされているのでなければ、右規定の委任を根拠
として条例に白地刑罰法規を設けることは、憲法第三一条の罪刑法定主義の原則に
違反する旨判示している。しかし、本件条例は、公安委員会に対して白紙の状態で
条件を付与する権限を与えたものではなく、本件条例第三条第一項但書第一号ない
し第六号に条件を付しうる事項が、相当具体的に規定されていて、その内容と範囲
は、予め明確に限定されているのであるから、これを単純な白地刑罰法規とみるべ
きではなく、また、これを再委任と解するとしても、地方自治法第一四条第五項の
委任の趣旨を逸脱するものでないことは明らかである。さらに、本件罰則規定によ
り公安委員会が定める条件は、公共の安寧に対する直接の危険を防止するため必要
かつ相当の限度に止められねばならないことは本件条例第三条本文の規定に徴して
も明らかであるから、おのずからその事項の内容は特定的、具体的事項に限定され
ており、しかも、公安委員会が付した条件は、予め集団行動の主催者、指揮者等に
了知されうるものであつて、集団行動の行なわれる前に具体的に許可条件が示され
ることによつて犯罪構成要件が補充され、集団行動の時点においては、どのような
行動が許可条件として禁止されるものであるかが明瞭となるのであり、これらの点
に徴すれば、本件罰則規定は、罪刑法定主義にもとるものでないと認められる。本
件公訴において適用された本件条例第三条第一項但書第三号には交通維持に関する
事項と規定されており、公安委員会が付した条件としては「デモ行進は、交通信
号、警察官の指示に従い平穏に秩序正しく行ない、ジグザグ行進、渦巻き、かけ足
行進、おそ足行進、隊列のことさらな停滞、道路いつぱいにひろがつての行進、プ
ラカード、旗竿等を横に構え、または大きく振つての行進などは行なわないこ
と」、「だ行進、渦巻き行進、ことさらなかけ足行進、おそ足行進、停滞、すわり
込み、あるいは先行てい団との併進、追越しまたはいわゆるフランスデモ等交通秩
序をみだす行為をしないこと」というのであるから、この条件の内容は、本件条例
第三条但書第三号の規定する具体的事項の範囲内において当該集団示威運動の指揮
者等が守るべき必要最少限の事項を明確にしているものというべきである。これを
要するに、公安委員会が条件を付与することによつて構成要件を補充する規定方式
は、集団行動の自由と公共の福祉との調整措置を可能にするための合理的必要性に
基ずくものであり、地方自治法第一四条による委任の趣旨に反するものではないと
解するのを相当とする。なお、原判決は、国家行政組織法第一二条第四項を引いて
刑罰法規を法律以下の法令によつて定めるには、法律の直接の委任を要する一つの
根拠と解しているのであるが、同条は、憲法第七三条第六号但書の規定を受けて、
法律の委任がなければ罰則を設けたりすることができないことを規定しているもの
にすぎず、その委任が当該法律によつてすべて直接規定されることまで要求してい
る趣旨とは解せられない。それゆえ、本件罰則規定は、原判決判示のように憲法第
三一条に違反するものとは認められないから、原判決には、法令の解釈適用を誤つ
た違法があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄
を免れず、論旨は理由がある。
 控訴趣意第二点(補充控訴趣意三および四をも含む。)について。
 検察官の所論は、原判決は、要するに、本件各条例違反事件において、公訴事実
とされている各条件違反の事項のうち、「行進は六列縦隊とすること」、「ジグザ
グ行進、かけ足行進、道路いつぱいにひろがつての行進などは行なわないこと」、
「ことさらなかけ足行進等交通秩序をみだす行為をしないこと」の各条件事項につ
いては、横須賀市中や東京都内における道路事情を前提とするかぎり、必要最少限
の合理的な規制であると判断しているが、「隊列のことさらな停滞を行なわないこ
と」、「停滞等交通秩序をみだす行為をしないこと」については、道路交通法第七
六条第四項第二号の規定するところとその対象が同一であるか重複するもので、そ
の規制の趣旨、目的も同一であるか、あるいは重複するものと解されるから、国の
法令自体に牴触するか、あるいはその趣旨に反することとなり無効であつて、交通
の妨害となるような方法によらない停滞については、道路交通法の右規定はこれを
処罰しないことを明示しているものと解すべきであるから、これを条件とすること
ができないことは明らかであるとし、また、「デモ行進は交通信号、警察官の指示
に従い平穏に秩序正しく行ない」の部分は、その後段の部分とは別個の意味内容を
もつものと解せられるところ、「交通信号、警察官の指示に従い」とあるのは、道
路交通法第四条第二項、第一五条、第五条ないし第七条、第一一条が命じた義務で
その違反に対する罰条も条例の場合よりも罰金刑が軽く定められているのであるか
ら、道路交通法の罰則規定に牴触し無効であると判断し、さらに、本件に対し直接
適用されるものとされていない各条件についても順次判断を加え、それらはいずれ
も条件としての必要最少限度を超えるものとして憲法第二一条に違反し、あるいは
道路交通法、銃砲刀剣類所持等取締法に牴触するものとして無効であり、かかる条
件が即時強制の根拠となり、犯罪構成要件の内容たりうるものとして掲げられてい
るかぎり、それらを根拠として不当な実力規制ないし現行犯逮捕がなされる可能性
が存し、これを予防しうべき保障が存しない以上、集団行動としての表現の自由に
対する侵害の可能性を存在せしめるという意味で憲法第二一条に違反し、無効であ
り、その条件が公訴事実とされない場合は、裁判所はこれを判断する必要がないこ
ととなり、もし判断しても何らの法的効果もないのであるから、結局違憲、無効の
条件を存続させて違法な運用の可能性を保障する結果を招来するから、違憲、無効
の条件と合憲、有効の条件とは可分的に考えるべきではなく、一個の条件付許可処
分の一部の条件が、集団行動としての表現の自由に対する侵害又はその可能性ある
が故に違憲、無効であるときは、残余の条件が合憲、有効と解される場合において
も、全条件を一体として違憲、無効と解すべきものであり、かかる無効の条件によ
つて補充される本件罰則規定は適用することができない旨判示している。しかし、
原判決の右判断は、憲法第二一条の解釈適用を誤つた違法があり、その違法は判決
に影響を及ぼすことが明らかであるという旨の主張である。
 <要旨第二>よつて審案するに、東京都公安委員会および神奈川県公安委員会が本
件昭和四〇年一二月一七日の集会、集</要旨第二>団示威運動ならびに昭和四一年
五月三〇日および同年六月一日の各集会および集団示威運動について本件条例第三
条但書により付した多数の各許可条件は、本来個々独立の意味を有し、個々に各構
成要件を補充しているものであつて、許可条件のうちの一部が違憲、無効であると
いう解釈を理由にその余の許可条件までが当然無効であると主張することは許され
ず、また、被告人ら五名に対する本件各公訴提起の前提となつた許可条件とは別個
独立の条件をとらえ、裁判所がこれを違憲審査権の対象として判断を示すことは許
されないものと解するのが相当である。ところで、記録によると、被告人五名に対
する本件各起訴状においては、被告人A、同Bは、いずれも昭和四一年五月三〇日
の集団示威運動において、「デモ行進は、交通信号、警察官の指示に従い平穏に秩
序正しく行ない、ジグザグ行進、かけ足行進、隊列のことさらな停滞などは行なわ
ないこと」の許可条件に、被告人Dは、昭和四一年六月一日の集団示威運動におい
て、「行進は、六列縦隊とすること」、「ジグザグ行進、かけ足行進、隊列のこと
さらな停滞などは行なわないこと」との許可条件に、被告人Eは、昭和四一年六月
一日の集団示威運動において、「行進は、六列縦隊とすること」、「ジグザグ行
進、かけ足行進、隊列のことさらな停滞、道路いつぱいにひろがつての行進などは
行なわないこと」との許可条件に、被告人Cは、昭和四〇年一二月一七日の集団示
威運動において、「行進隊形は五列縦隊とすること」、「ことさらなかけ足行進、
停滞等交通秩序をみだす行為をしないこと」との許可条件および同四一年六月一日
の集団示威運動において、「行進は、六列縦隊とすること」、「ジグザグ行進、か
け足行進、隊列のことさらな停滞などは行なわないこと」との許可条件に、それそ
れ違反して集団示威運動を指導したものであるとして各公訴の提起がなされている
ことならびに被告人ら五名が右各集団示威運動をなすにあたり、それぞれ起訴状記
載のとおりの許可条件が付されていたことが明らかである。そこで、これら本件各
公訴提起の前提となつた各許可条件のうち、原判決が無効であるとしたものについ
て検討するに、まず、「隊列のことさらな停滞を行わないこと」、「停滞等交通秩
序をみだす行為をしないこと」との各条件は、要するに単に人が道路に停滞しては
ならないというのではなく、集団が集団として停滞してはならないという内容であ
つて、本来平穏に秩序を重んじてなさるべき集団行動において当然守られなければ
ならない事項であり、本件集団示威運動の進路が横須賀市の中心地で交通が頻繁で
あることの事情および東京都内の道路交通事情を併せ考えると、なおさらその遵守
が強く要請されているのであるから、右許可条件は表現の自由を侵すものといえな
い。また、本件条例による前示のような特殊な形態の交通妨害行為を処罰すること
を禁止しているとみるべき条項は、道路交通法第七六条第四項の各規定中に存在し
ていない。なお、道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と
円滑を図ることを目的としているが、本件条例の規制の目的は、単なる道路交通秩
序の維持にとどまらず、集団行動の実施によつてひき起されることのあるべき不測
の事態に伴う混乱を未然に防止するため適宜の処置を講ずることによつて、公共の
安寧を保持し、社会の秩序を維持しようとするものであつて、その目的において、
道路交通法第七六条第四項とは別個のものであるばかりでなく、その主体も本件条
例は主催者、指導者およびせん動者に限定されているのであるから、牴触無効を論
ずる余地はない。さらに、許可条件中「デモ行進は、交通信号、警察官の指示に従
い平穏に秩序正しく行ない」という点について検討するに、右は「デモ行進は、」
道路交通法所定の「交通信口、警察官の指示に従い、平穏に秩序正しく行な」わな
ければなならい(前段)ものであり、そのためには、「ジグザグ行進、かけ足行
進、隊列のことさらな停滞などを行なわないこと」(後段)という趣旨であつて、
右前段は独立した許可条件ではなく、右後段が許可条件の具体的内容である、即
ち、右前段の指示に違反したということだけでは道路交通法違反にはなつても直ち
に許可条件違反として本件条例違反罪を構成はしない、右後段に違反した場合には
じめて許可条件違反として本件条例違反罪を構成するものと解すべきであるから、
この点に関する原判決の判断は失当である。これを要するに、本件各条件は全体と
して憲法第二一条に違反し、無効であるから、右条件によつて補充される本件条例
第五条、第三条第一項但書の罰則規定はこれを適用することができないとした原判
決は、憲法第二一条の解釈適用を誤つた違法があり、これが判決に影響を及ぼすこ
とが明らかであるから、原判決は破棄を免れず、論旨は理由がある。
 以上のとおり、原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があり、これが判決に
影響を及ぼすことは明らかであるので、刑事訴訟法第三九七条、第三八〇条により
原判決中被告人ら五名に関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書により被告人ら
五名に対する被告事件について、さらに判決をする。 「罪となるべき事実」
 第一、 被告人Aは、昭和四一年五月三〇日横須賀市において原子力潜水艦寄港
阻止横須賀実行委員会が主催した原子力潜水艦寄港阻止横須賀集会に参加したもの
であるが、同日午後八時七分ごろから午後九時三一分ごろまでの間、同市a町無番
地臨海公園出入口付近から同市b町c丁目無番地米海軍横須賀基地正門前に至る間
の道路において、右集会に参加した学生約二〇〇名の集団が、神奈川県公安委員会
から前記主催者に対し、集会、集団示威運動の許可に当つて付されていたところの
行進は、信号、警察官の指示に従い平穏に秩序正しく行ない、ジグザグ行進、かけ
足行進、隊列のことさらな停滞などを行つてはならない旨の条件に違反して、激し
くジグザグ行進、かけ足行進などの集団示威運動を行なつた際、外数名と共謀の
上、前記学生の隊列の先頭列外に位置し、先頭隊伍が横にして所持する竹竿を握つ
たり、笛を吹いて音頭をとつたりして右行進を誘導し、さらに前記米海軍横須賀基
地正門前道路上において坐り込みの指示などをして前記学生集団を同所に坐り込ま
せて、ことさらに停滞させ、もつて、右許可条件に違反した集団示威運動を指導し
たものである。
 第二、 被告人Bは、昭和四一年五月三〇日横須賀市において原子力潜水艦寄港
阻止横須賀実行委員会が主催した原子力潜水艦寄港阻止横須賀集会に参加したもの
であるが、同日午後八時二分ごろから午後八時二一分ごろまでの間、同市a町無番
地臨海公園中央出入口付近から、同市b町d丁目e番地先路上に至る間の道路にお
いて、右集会に参加した学生約八〇〇名の集団が、神奈川県公安委員会から前記主
催者に対し、集会、集団示威運動の許可にあたつて付されていたところの行進は、
信号、警察官の指示に従い平穏に秩序正しく行ない、ジグザグ行進、かけ足行進、
隊列のことさらな停滞などを行なつてはならない旨の条件に違反して、ジグザグ行
進、かけ足行進、ことさらな停滞などの集団示威運動を行なつた際、外数名と共謀
の上、前記学生の隊列の先頭列外に位置し、先頭隊列が横にして所持する竹竿を握
つたり、笛を吹いて音頭をとつたりして、右行進を誘導し、さらに坐り込みの指示
などをして隊列をことさらに停滞させ、もつて、右許可条件に違反した集団示威運
動を指導したものである。
 第三、 被告人Cは、
 一、 昭和四〇年一二月一七日東京都大田区fg丁目h番地萩中公園において開
催された東京都学生自治会連合主催の「日韓条約批准書交換阻止全都学生緊急行
動」と称する集会ならびに右集会終了後同公園から同区蒲田消防署羽田出張所前、
京浜急行電鉄大鳥居駅前の各交差点を経て同区i町j番地F製作所G工場前に至る
間の道路上において行なわれた集団示威運動に学生約六〇〇名とともに参加したも
のであるが、右学生らが東京都公安委員会の付した許可条件に違反し、同日午前一
〇時ごろから同一〇時九分ごろまでの間、右萩中公園から同区fg丁目kのl、H
サービスステーシヨン前までの道路上において約一〇列乃至三〇列となつてことさ
らなかけ足行進を行ない、午前一〇時九分ごろから同一〇時一〇分ごろまでの間右
Hサービスステーシヨン前道路上において停滞し、午前一〇時一〇分ごろから同一
〇時一三分ごろまでの間、同所から同区mn丁目oのpI株式会社前までの道路上
において約三〇列となつてことさらなかけ足行進を行なつた際、外約一〇名の学生
と共謀の上、萩中公園からI株式会社前までの道路上において終始、右学生隊列の
先頭列外に位置し、前向きあるいは、後ろ向きとなり、先頭隊伍が横に構えて所持
する竹竿を掴んで引つ張り、かけ声をかけ、手を振り、あるいは学生の肩車に乗つ
て呼びかけをするなどして右学生らのことさらなかけ足行進および停滞を指揮し、
 二、 昭和四一年六月一日横須賀市において行なわれた原子力潜水艦寄港阻止横
須賀実行委員会主催の原子力潜水艦寄港阻止横須賀集会に参加したものであるが、
同日午後七時三七分ごろから午後八時一三分ごろまでの間、同市a町無番地所在の
臨海公園中央出入口付近から同市b町q丁目r番地J前に至る間の道路上におい
て、右集会に参加した約八〇〇名の学生集団が、神奈川県公安委員会から前記主催
者に対し、集会、集団示威運動の許可にあたつて付された条件に違反して、約三〇
列の縦隊となつて道路いつぱいにひろがつての行進、ジグザグ行進、かけ足行進、
隊列のことさらな停滞などを行なつた際、外数名と共謀の上、右集団先頭に位置し
た宣伝カー上にあつて、マイクを使用し、または手振りなどにより、前記行進また
は停滞の指示をし、
 もつて、前記各許可条件に違反した集団示威運動を指導したものである。
 第四、 被告人Dは、昭和四一年六月一日横須賀市において行なわれた原子力潜
水艦寄港阻止横須賀実行委員会主催の原子力潜水艦寄港阻止横須賀集会に参加した
ものであるが、同日午後七時二二分ごろから午後七時三三分ごろまでの間、同市a
町無番地臨海公園東側出入口付近から同市b町d丁目K前に至る間の道路上におい
て、右集会に参加した約二五〇名の学生集団が神奈川県公安委員会から前記主催者
に対し、集会、集団示威運動の許可に当つて付された条件に違反して、隊列を約一
〇列縦隊とし、ジグザグ行進、かけ足行進、隊列のことさらな停滞などを行なつた
際、外一名と共謀の上、隊列先頭列外にあつて、先頭員が横に構えた竹竿を引つ張
り、笛を吹きつつ右行進を誘導し、さらに坐り込みを指示して隊列を停滞させ、も
つて、前記許可条件に違反した集団示威運動を指導したものである。
 第五、 被告人Eは、昭和四一年六月一日横須賀市において行なわれた原子力潜
水艦寄港阻止横須賀実行委員会主催の原子力潜水艦寄港阻止横須賀集会に参加した
ものであるが、同日午後七時三七分ごろから午後九時五五分ごろまでの間、同市a
町無番地臨海公園中央出入口付近から同市b町c丁目無番地米海軍横須賀基地正門
前に至る間の道路において、右集会に参加した約八〇〇名の学生集団が、神奈川県
公安委員会から前記主催者に対し、集会、集団示威運動の許可にあたつて付された
許可条件に違反して、警察官の指示に従わず二五ないし三〇列位の縦隊となつて道
路いつぱいにひろがつての行進、ジグザグ行進、かけ足行進あるいは隊列の停止、
坐り込みなどにより隊列のことさらな停滞などを行なつた際、C外数名と共謀の
上、右隊列の先頭列外にあつて、先頭隊列が横にして所持する竹竿を握つて右道路
いつぱいにひろがつての行進を誘導し、ついで右集団先頭に位置した宣伝カー上に
あつて、拡声器、手振りなどにより、前記ジグザグ行進、かけ足行進、隊列の停止
などを指示し、さらに右集団が坐り込みをした際その集団中央にあつてこの継統を
呼びかけるなどし、もつて前記許可条件に違反した集団示威運動を指導したもので
ある。
 「証拠の標目」省略
 「法令の適用」
 被告人Cの判示第三の一の所為は、昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行
進及び集団示威運動に関する条例第五条、第三条第一項但書、刑法第六〇条に、被
告人Aの判示第一の所為、同Bの判示第二の所為、同Cの判示第三の二の所為、同
Dの判示第四の所為および同Eの判示第五の所為は、いずれも昭和二五年神奈川県
条例第六九号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例第五条、第三条第一項
但書、刑法第六〇条にそれぞれ該当するので、所定刑中被告人C、同E、同Bにつ
いては各懲役刑を、被告人A、同Dについては各罰金刑を選択し、その刑期および
罰金額の範囲内において、被告人Eを懲役四月に、同Bを懲役三月にそれぞれ処
し、被告人A、同Dを各罰金三〇、〇〇〇円に処し、なお被告人Cの判示第三の
一、二の各所為は、刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第
一〇条により犯情の重いと認める判示第三の一の罪の刑に法定の加重をした刑期範
囲内において、被告人Cを懲役六月に処し、主文第三項の刑の執行猶予の言渡につ
き刑法第二五条第一項を、主文第四項の罰金不完納の場合における換刑処分につき
同法第一八条を各適用し、原審における訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項
但書により被告人ら五名にこれを負担させないこととして、主文のとおり判決す
る。
 (裁判長判事 飯田一郎 判事 吉川由己夫 判事 小川泉)

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71期修習生 72期修習生 求人
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