弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人浦田仙造の控訴趣意は、記録に編綴されている同弁護人提出の控訴趣意書
記載のとおりであるからこれを引用する。
 同控訴趣意中(一)事実誤認の点について、
 論旨は、先づ被告人の原判示第一及び第二の所為は正当防衛行為であると主張す
るにあるが、右所論は判示A薬店前道路上において生じた一瞬の場面をとらえて、
独自の結論をなしたものというべく本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠
に現われた被告人の当夜の行動を全般的に観察すれば、被告人の本件所為が所論の
ごとき防衛意思に出でたものとは認め得ない。
 すなわち、所論指摘の各証拠に徴すると、判示Bは、C劇場において自らの非礼
な振舞を顧みず、却つて被告人等に因念をつけて挑戦的態度に出で、同僚D等と共
に被告人等を脅迫し、「たたき殺してやる、下で待つておれ」と捨独白をのこして
同劇場を立ち去り、被告人等の帰途を判示E店附近で待ち伏せ、被告人を呼びと
め、とらえて同所から暗夜で人通り稀れなA薬店前道路に連行し、Bに随行した前
記DのほかF、Gにおいて被告人を取り囲んだ状況のもとに、Bは只管陳謝し、無
抵抗の被告人の胸倉を掴えて、その顔面を二、三回殴打し、被告人がこれにひる
み、後方の溝に落ち込んだところえ、襟首を掴えていたBがこれに続いてのしかか
る様にして、さらに殴打しかかつて来た際、被告人は激昂して、所携の切出し小刀
を以てB目がけて突き刺し、さらにその場に居合せた前記Fに立向い、右小刀で同
人の大腿部を突き刺した事実が認められるけれども、被告人は右のごとくC劇場に
おいてB事から脅迫された上に、帰途前示のごとく呼び止められたのであるから、
その情勢下においては同人等から暴行を受けるかも知れないことは充分察知し得ら
れた筈であり、しかも原判決に挙示の証拠により、被告人はH、及びI等と共に同
劇場を立ち出で、前記E店附近においては、同方向に帰途についていた他の船員数
名もいたことが明らかであるので、被告人が諾々とB等の連行に委ねるについて
は、万一の場合所携の小刀で立ち向う意思があつたことも窺い得られないでもな
く、またB、D、G、F等は本件犯行現場において何等の兇器も所持しておらず、
Bは素手で殴打し九のみであり、他の者等も附近に立つていたとはいえ、毫も被告
人に立向つて来た形跡は存しなかつえことが明白である。以上説示のごとき情況か
ら考察すれば、Bの被告人に対する前示のごとき攻撃は不正の侵害といい得るとし
ても、被告人においてこれを避けるために、他に何等の方策も構じ得なかつたもの
とは考えられず、従つて、被告人が所携の小刀でBを突刺し、さらにFをも突き刺
した本件所為が、自己の権利を防衛する為めに已むことを得なかつたものと認める
に由ない。なお原判決がBにおいて被告人方におしかぶさるように向つて来たもの
でなく、同人が被告人より突き刺されて溝に落ち、その場に坐り込み、そのはづみ
に被告人が同人と共に溝に落ち込んだもののごとく説示している点については、前
に認定したとおりの状況であつたと認められること所論指摘のとおりであるが、右
の点は罪となるべき事実に属せず、従つて判決を破棄すべき事実誤認というは当ら
ない。
 次に論旨は、本件切出小刀は銃砲刀剣類等所持取締令第十五条に規定するヒ首又
はこれに類似する刃物と認めることはできないと主張するにあるが、押収されてい
る切出小刀は、被告人がBか或いはFを突いた<要旨>とき、その先端が折れたもの
であることが記録上明らかであり、白木の柄と蓋のついた細身の鋭利な刃器であ 要旨>つて、先端の折れない状態においては、優に刃渡十糎位のものであつたことが
推認される。而して前示法条に所謂匕首に類似する刃物とは、その形状において又
その性能、及び用法においても匕首に類似していて匕首のように容易にこれを隠し
携帯することができ、また社会常識上他人の身体損傷の用に供せらるる危険性を有
するものと認め得られる刃物を汎称するものと解するを相当とする。それで、本件
小刀が前示のごときものである以上、これが前示同条に所定の匕首に類似する刃物
に該当することは勿論であつて、被告人は本件犯行当夜映画見物に出かくるに当
り、なお之を携行したものであり之を携帯するについて業務その他正当な理由がな
かつたことは記録上優にこれを認めることができる。そして弁護人において、該小
刀が携帯禁止の刃物に該当しないと主張していることは原審第四回公判調書の記載
によりこれを窺い得られるけれども、原判決は判示のごとく認定し、前示同令第十
五条、第二十七条を適用処断しているのであるから、所論のように判断の遺脱があ
るものというを得ない。
 而して記録を精査しても、原判決の事実認定に誤りがあることを発見することは
できないので、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。
 同控訴趣意中(二)量刑不当の点について、
 しかし、本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われた被告人の性
格、年齢境遇、並びに本件犯罪の動機、態様その他諸般の情状及び犯罪後の情況等
を考究し、なお所論の情状を参酌しても、原審の被告人に対する刑の量定はまこと
に相当で、これを不当とする事由を発見することができないので、論旨は採用ずる
ことができない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に則り、本件控訴を棄却することとし、主文
のとおり判決する。
 (裁判長判事 筒井義彦 判事 柳原幸雄 判事 岡林次郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛