弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人二村満、同宮前隆文の上告理由について
 一 民法二五八条二項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、
共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著
しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規
定している。ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手
続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、
裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性
質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられ
る。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売に
よる分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。
 そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当
たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、
過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四
月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性
質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況
及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理
性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得
させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物
を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させるこ
ととしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するとき
は、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から
他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(以下「全面的価格賠償の方法」
という。)による分割をすることも許されるものというべきである。
 二 これを本件についてみるに、原審の適法に確定した事実関係の概要及び記録
によって認められる本件訴訟の経過等は、次のとおりである。(1) 第一審判決添
付物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、登記簿上の地目はため池
であるが、現況は草が繁茂している土地である。(2) 本件土地は被上告人と上告
人らの共有であって、その持分は、被上告人が二二八分の二二三、上告人らが各二
二八分の一であり、登記簿上の面積一四六四平方メートルを基準にすると、上告人
らの持分に相当する土地の面積は各六・四二平方メートルである。(3) 被上告人
は、上告人らとの間の分割協議が調わなかったため、本件土地の共有物分割等を求
める本件訴えを提起し、本件土地の分割方法として、自らが本件土地を単独で取得
する全面的価格賠償の方法による分割を希望している。(4) これに対し、上告人
らは、その持分の合計に相当する部分の土地を上告人らの共有のままで残し、その
余の部分の土地を被上告人の単独所有とする現物分割を希望している。(5) 本件
土地の価格の鑑定を依頼された不動産鑑定士は、平成六年六月二〇日時点における
本件土地の価格について、近隣地域の類似地の取引事例との比較、公示価格との規
準等を考慮し、一平方メートル当たり二万九七〇〇円(上告人らの持分に相当する
価格は各一九万一〇〇〇円)と評価しており、右の評価が不合理であることをうか
がわせる事情は存しない。
 右の事実関係等によれば、上告人らの持分に相当する土地は、面積の合計が三二・
一平方メートルにすぎず、本件土地の所在する場所等も併せ考えると、土地として
の社会的、経済的効用が乏しいものといわなければならない。他方、持分の大部分
を有する被上告人は、本件土地を競売に付することなく、自らがこれを単独で取得
する全面的価格賠償の方法による分割を希望しているのであって、これらの事情を
考慮すると、本件土地をすべて被上告人に取得させるのが相当であると認められる。
そして、本件土地の価格は適正に評価されており、また、上告人らに支払われるべ
き賠償金の額からして、その履行が困難であるとは考えられないから、価格賠償の
方法によっても共有者間の実質的公平が害されるおそれはないものと認められる。
 そうすると、本件については全面的価格賠償の方法により共有物を分割すること
の許される特段の事情が存するものというべきであって、原審が、本件土地につい
て現物分割又は競売による分割の方法を採ることなく、本件土地を被上告人の単独
所有とした上、被上告人に対し、前記の評価額に従って上告人らの持分の価格の賠
償を命ずべきものとしたことに、分割方法の決定についての裁量の範囲の逸脱があ
るということはできない。
 三 以上によれば、所論の点に関する原審の認定判断は、いずれも正当として是
認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、
これと異なる見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤り及び原審の
裁量に属する分割方法の決定の不当をいうか、又は原審の専権に属する事実の認定
を非難するものであって、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    藤   井   正   雄

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