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平成26年6月20日判決言渡
平成25年(行コ)第202号一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求控訴事

主文
1被告大阪府及び原告らの本件各控訴をいずれも棄却する。
2被告大阪府の控訴に係る控訴費用は被告大阪府の,原告らの控訴に係
る控訴費用は原告らの,各負担とする。
第1控訴の趣旨
1被告大阪府
(1)原判決中,被告大阪府敗訴部分を取り消す。
(2)前項の部分につき,原告らの被告大阪府に対する請求をいずれも棄却す
る。
2原告ら
(1)原判決主文2項を取り消す。
(2)被告らは,原告らそれぞれに対し,各自110万円及びこれらに対する平
成23年3月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の骨子及び訴訟の経緯
本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対す
る援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者健康手
帳の交付を受けた被爆者である原告A,承継前原告B及びC(以下「本件被爆
者ら」という。)が,大韓民国(以下「韓国」という。)に居住し,韓国の医
療機関(病院,診療所及び薬局をいう。以下同じ。)で医療を受けて現実に負
担した医療費について,原告A,承継前原告B,原告D(以下,3名を総称し
て「本件申請者ら」という。)が大阪府知事に対し被爆者援護法18条の一般
疾病医療費の支給を申請したところ(以下,これらの申請を「本件各申請」と
いう。),大阪府知事によって本件各申請を却下された(以下,これらの却下
処分を「本件各却下処分」という。)ことから,原告らが,①被告大阪府に対
し,本件各却下処分の各取消しを求めるとともに,②被告らに対し,大阪府知
事がした本件各却下処分が国家賠償法上違法である(被告大阪府関係),被告
国の担当者が在外被爆者(被爆者であって国内に居住地及び現在地を有しない
ものをいう。被爆者援護法の改正に係る平成20年法律第78号附則(以下「平
成20年改正附則」という。)2条1項参照。以下同じ。)に対して一般疾病
医療費の支給を認めてこなかったこと及び本件各却下処分に先立ち被告大阪府
に在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は却下が相当である旨回答したこ
とが違法である(被告国関係)などとして,国家賠償法1条1項に基づき,各
110万円(慰謝料及び弁護士費用の合計額)及びこれらに対する本件各却下
処分の日である平成23年3月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,①本件各却下処分の各取消請求を認容し,②被告らに対する国家賠
償請求をいずれも棄却したので,被告大阪府と原告らがそれぞれ,各敗訴部分
を不服として,控訴した。
2関係法令の定め及び前提事実
本件に関する法令の定め等及び前提事実は,原判決「事実及び理由」中の第
2の2及び3(原判決2頁20行目から7頁3行目まで)のとおりであるから,
これを引用する。
3争点及び争点に関する当事者の主張
争点及び争点に関する当事者の主張は,次の4及び5で,被告大阪府及び原
告らの当審における補充主張をそれぞれ付加するほかは,原判決「事実及び理
由」中の第2の4及び5(原判決7頁4行目から26頁25行目まで)に記載
のとおりであるから,これを引用する。
ただし,原判決15頁7行目の「支給対象とはならない」の次に「ものでは
ない」を加える。
4被告大阪府の当審における補充主張
(1)一般疾病医療費は都道府県知事の指定を受けた被爆者一般疾病医療機関
から医療を受けることが原則であること
被爆者援護法18条1項の一般疾病医療費の支給制度に係る法全体の仕組
みをみると,同項本文は,一般疾病医療費を支給する場合として,被爆者一
般疾病医療機関から医療を受けた場合と,被爆者一般疾病医療機関以外の者
から医療を受けた場合に分けた上で,後者の場合については「緊急その他や
むを得ない理由により」という限定を付している。そうすると,同法は,一
般疾病医療費の支給について,被爆者が被爆者一般疾病医療機関から医療を
受けた場合を原則としているものである。そして,被爆者一般疾病医療機関
は都道府県知事が指定することとされているのであるから,被爆者援護法1
8条1項は,原則として,我が国の行政権の及ぶ国内の被爆者一般疾病医療
機関から医療を受けた場合を想定しているのであって,在外被爆者が国外の
医療機関で医療を受けた場合を想定しているとはいえない。
すなわち,在外被爆者が国外の医療機関で受ける医療については,常に例
外形態である「被爆者一般疾病医療機関以外の者から医療を受けたとき」と
して支給を受けることにならざるを得ない。仮に,在外被爆者であるという
ことで,原則として「緊急その他やむを得ない理由」があるというのであれ
ば,原則と例外を逆とするもので,被爆者援護法の予定しているところでは
ない。
(2)被爆者援護法には適正性の担保の規定が各種設けられているが,在外被爆
者については適正性の確保の手段がないこと
被爆者援護法は,医療費の支給については,支給の適正性を担保する各種
規定を設けている。これらの各種規定は,いずれも医療提供者側に対する権
限であって,在外被爆者が医療を受ける国外の医療提供者に対して適用する
ことは不可能である。そして,現行法には,在外被爆者が国外の医療機関で
医療を受けた場合において適用可能な適正性の確保に関する規定は存在して
いない。多額の公費をもって運営される支給制度について,同法が何ら適正
性を担保する手段を設けないということは不自然・不合理であり,同法が適
正性を確保しないままの支給を予定しているとはいえない。
平成12年通知は,被爆者が,国外の医療提供者から医療を受けた場合で
あっても,一時的な出国をしている間に,緊急その他やむを得ない理由によ
り国外の医療機関から医療を受けた場合であり,かつ,その被爆者が,我が
国の公的医療保険制度による医療の給付を受け得る被保険者等の立場にある
場合において,一般疾病医療費を支給するというものであり,支給の適正性
の担保の制度的仕組みが働かない場面ではない。これをもって,何ら適正性
の担保をもたない在外被爆者が国外の医療機関から医療を受けた場合につい
て一般疾病医療費を支給すべき根拠とすることはできない。
(3)在外被爆者の居住する各国の公的医療保障制度との併給調整規定は設け
られていないこと
一般疾病医療費の支給制度は,公費により運営される公的制度であるとこ
ろ,公費が支給される場合において複数の受給権が発生するときは,各種法
律において,両者を受給することによる過剰給付を避けるための調整規定(併
給調整規定)が設けられている。被爆者援護法は,18条1項ただし書にお
いて,社会保険各法等による給付との調整を図っている。
これを在外被爆者についてみると,在外被爆者が各居住国における医療費
の負担に関する公的な医療保障制度に加入し,当該国において医療を受けた
場合には,医療費について,当該制度により給付を受けることが当然に想定
される。仮に,被爆者援護法が,在外被爆者に対し,一般疾病医療費を支給
することを予定しているのであれば,併給調整のための規定を設けることが
合理的であるにもかかわらず,そのような規定はないのであって,同法は,
国外の医療機関において医療を受けた在外被爆者に対して一般疾病医療費を
支給することは予定していないといわざるを得ない。
(4)在外被爆者を一般疾病医療費の支給対象に含めないという立法者意思は
明確であり,平成20年改正附則は,それを前提としていること
平成20年法律第78号による被爆者援護法の改正によって,国内に居住
地及び現在地を有しない者からの被爆者健康手帳の交付申請について,これ
を認めるための手続規定が新設された際,「被爆者であって国内に居住地及
び現在地を有しないもの」として「在外被爆者」を定義づけ(平成20年改
正附則2条1項),在外被爆者に対して行う「医療に要する費用の支給につ
いて,国内に居住する被爆者の状況及びその者の居住地における医療の実情
等を踏まえて検討を行い,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとす
る」としている。これは,従来どおり,被爆者援護法17条及び18条は在
外被爆者に適用されないものとし,この点についての法改正を行わないこと
を前提として,別途,国内に居住する被爆者の状況等を踏まえた「必要な措
置を講ずる」ことを行政に求めたものであり,この立法の経過からも,被爆
者援護法17条及び18条が在外被爆者に適用されないことは明らかであ
る。
(5)以上のとおり,在外被爆者が国外の医療機関から受けた医療に係る一般疾
病医療費の支給については,被爆者援護法全体の仕組み等に鑑みれば,そも
そも同条の適用が予定されているとはいえない。
原告らの被告大阪府に対する本件各処分取消請求はいずれも棄却されるべ
きである。
5原告らの当審における国家賠償請求についての補充主張
日本国外に居住する被爆者が日本国外の医療機関で治療を受けた場合に,一
般疾病医療費の支給がないという取扱いが違法であることを,被告国は,下記
のとおり,度重ねて容易に認識できた。
(1)一般疾病医療費等の支給規定を新設した原爆医療法の改正時点(昭和35
年)において,新設された規定には,その居住地いかんによって,法適用を
区別する規定がない以上,その支給を居住地によって限定するという解釈が
誤りであることは,この時点で容易に認識できることであった。
(2)402号通達が発出された段階(昭和49年)において,被告国の採って
きた原爆二法が国外居住被爆者にはおよそ適用されないなどとする解釈及び
運用が,原爆二法の客観的解釈として正当なものといえるか否かを改めて検
討する必要に迫られることになったのであるから,国外に居住する被爆者に
一般疾病医療費等の支給規定が適用されないとする解釈及び運用もまた,原
爆医療法の客観的解釈として正当なものといえるか否かを改めて検討する必
要に迫られたのであり,在外被爆者に適用することがおよそ予定されていな
いと限定解釈することが違法であることは当然に認識することができた。
(3)海外の医療機関で療養を受けた場合の費用も健康保険法44条に基づく
療養費の支給対象となった時点(昭和55年)において,日本に居住しない
被爆者が海外の医療機関で受けた医療を一般疾病医療費の支給対象外とする
ことが正当なものといえるか否かを改めて検討すべきであり,被告国がこれ
を行えば,この時点でも,在外被爆者に対する取扱いが違法なものであるこ
とを認識しえた。
(4)平成12年通知は,国外の医療機関で受けた医療であっても,適正性を欠
くことなく一般疾病医療費が支給できることを明らかにしたものであり,こ
の時点において在外被爆者を一般疾病医療費の支給対象としないとの取扱い
を見直す機会となりえたにもかかわらず,被告国はこれを見直さなかった。
(5)平成15年3月1日に402号通達の失権取扱いを廃止した際に,併せて
「法による給付の対象となるのは,日本国内に居住又は現在する被爆者であ
ることから」とした平成12年通知の3項も当然削除すべきであった。
(6)被告国は,平成20年改正附則2条2項による検討の結果,平成22年被
爆者援護法施行令を改正して,原爆症認定について,国外からの申請を可能
とした。また,原判決を受けて,国外に居住する被爆者の医療費について,
保険医療助成事業の上限額を引き上げた上で,上限超過分についても事業の
財源を用いて支給する旨を明らかにしており,公費を用いた事業である以上,
被告国は,適正性を確保した上での支給が可能であることを自ら認めたこと
になる。
そうであれば,平成20年改正時において,国外に居住する被爆者が国外
の医療機関で受けた医療費についても法律の改正によることなく,被爆者援
護法18条を適用できると容易に判断することができたことは明らかであ
る。
(7)原告らが本件各申請をした時点で,改めて従前の取扱いについて見直すこ
とを迫られたのであり,これを見直せばその違法であることは容易に認識し
得た。
第3当裁判所の判断
1関係法令の沿革等
当事者間に争いがないか,証拠により認められる関係法令の沿革等は,原判
決「事実及び理由」中の第3の1(原判決27頁2行目から39頁22行目ま
で)のとおりであるから,これを引用する。
2争点(1)について
(1)被爆者援護法の適用対象について
被爆者援護法は,同法で定める援護措置の対象者である「被爆者」の要件
として,①同法1条各号のいずれかに該当するものであること,②被爆者健
康手帳の交付を受けたものであることの2点を定めており,法文上,日本に
居住し,又は現在することを要件としていない。
この点,かつて被告国は,被爆者援護法(その前身である原爆二法を含む。
この項において同じ。)について,同法に基づく給付が拠出を要しない公的
財源によって賄われるものであることや,立法者意思,法律全体の法構造等
に照らすと,同法は,日本に居住関係を有する者のみをその適用対象とする
ものであると解釈して,その運用を行ってきた。しかしながら,被爆者援護
法の趣旨,構造,他の法律との整合性等を考慮すると,そうした解釈及び運
用は法律上の根拠を欠くものと認識されるに至り,上記1認定のとおり,そ
の運用が改められてきたところである。
すなわち,被爆者援護法は,いわゆる社会保障法としての性格をもつもの
であるが,原子爆弾による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻な
ものであり,被爆者の多くがなお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状
態に置かれているという特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった被告
国が自らの責任によりその救済を図るという一面をも有するものであり,そ
の点では,実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあると解される。例えば,
被爆者の収入ないし資産状態のいかんを問わず常に全額公費負担と定めてい
ることなどは,国家補償的配慮の一端を示すものと認められるところである
し,また,戦争被害に関する他の補償立法(戦傷病者戦没者遺族等援護法,
戦傷病者特別援護法)と異なり,補償対象者を日本国籍を有する者に限定す
る規定をあえて設けず,外国人に対しても同法を適用することとしているの
は,同法が国家補償の趣旨を併せもつものと解することと矛盾するものでは
ない。さらに,そもそも,年金,手当,医療費等の給付に関する諸制度の中
には,日本国内に住所や居住地を有することが手当等の支給要件とされてい
るものが少なくないが,そのような場合には,日本国内に住所等を有するこ
とが手当等の支給要件であることが法文に明記されたり,日本国内に住所等
を有しなくなった場合には手当等の受給権を失うこととなる旨が法文に明記
されたりするのが通例であると考えられるところ(国民健康保険法,国民年
金法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当等の支給に関する法律など),被
爆者援護法には,被爆者が日本国内に居住地を有することが適用の要件とな
る旨を定めた明文の規定は存しない。被爆者援護法が,日本国内に居住関係
を有する者のみをその適用対象とするとの解釈及び運用が法律上の根拠を欠
くものであるとの認識及び理解は,上記のような同法の趣旨,法律全体の構
造,他の法律との整合性等が考慮されたことによるものと解される(以上に
つき,最高裁判所昭和50年(行ツ)第98号同53年3月30日第一小法廷
判決・民集32巻2号435頁,最高裁判所平成17年(受)第1977号同
19年11月1日第一小法廷判決・民集61巻8号2733頁参照)。
そして,現在,被爆者援護法第3章で定められている種々の援護措置のう
ち,医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当,健康管理手当,保健手
当,葬祭料などについて,日本国内に居住地も現在地も有しない被爆者に適
用されるものとして解釈され,運用されているのも,同様に,被爆者援護法
の趣旨,法律全体の構造,他の法律との整合性等が考慮されたことによるも
のと解される。
被爆者援護法18条1項の一般疾病医療費の支給規定が,日本国内に居住
地も現在地も有しない被爆者が国外の医療機関で受けた医療について適用さ
れるのかを判断するに当たっては,上記同様,被爆者援護法の趣旨,法律全
体の構造,他の法律との整合性等を考慮した上で,法文上明記されていない
要件を付加して限定解釈することが合理的なものといえるかを検討すべきで
ある。
(2)被爆者一般疾病医療機関から医療を受けることを原則としていないとの
主張について
被告らは,被爆者援護法18条1項は,一般疾病医療費の支給について,
被爆者一般疾病医療機関で医療を受けた場合を原則としているものであり,
同機関以外の者から医療を受けた場合については,「緊急その他やむを得な
い理由」があるという例外的な場合に限定しているものであるところ,在外
被爆者が国外の医療機関で受ける医療については,常に例外形態として支給
を受けることにならざるを得ず,原則と例外を逆にするもので,被爆者援護
法の予定しているところではないと主張する。
確かに,被爆者援護法18条1項は,一般疾病医療費の支給について,①
被爆者一般疾病医療機関で医療を受けた場合と,②被爆者一般疾病医療機関
以外の医療機関から医療を受けた場合とを規定し,②の場合については,「緊
急その他やむを得ない理由があるとき」との要件を付加しているのであるか
ら,同法は,「緊急その他やむを得ない理由があるとき」以外は,被爆者一
般疾病医療機関において医療を受けることを原則的な形態として想定してい
ると考えることは可能である。
しかしながら,被爆者援護法18条が,一般疾病医療費の支給について,
都道府県知事の指定した被爆者一般疾病医療機関において被爆者が医療を受
けた場合には,被爆者が医療機関に支払うべき医療費を国が被爆者に代わっ
て支払い,その支払によって,被爆者に対する一般疾病医療費の支払があっ
たものとみなすこととしているのは,医療に要した費用の支給(現金給付)
である一般疾病医療費を,医療を受ける被爆者の便宜を考慮して,現物給付
(医療の給付)的に取り扱うため(被爆者一般疾病医療機関において医療を
受ける限り,その場において医療費を支払う必要がないものとするため)に
設けられたものと解される。したがって,被爆者一般疾病医療機関も,被爆
者援護法10条による医療を担当させる指定医療機関とは異なり,特別の専
門的能力は要求されず,広範囲に指定される必要があるものとされている(乙
14)。
このような,制度の趣旨からすると,被爆者援護法18条の適用対象者が
限定されているか否かを検討するに当たり,被爆者が受けた医療が特定の医
療機関におけるものか否かを特段重視する必要はない。
さらに,上記②の「緊急その他やむを得ない理由があるとき」,怪我や急
病で緊急を要する場合のほか,付近に被爆者一般疾病医療機関がないため,
被爆者一般疾病医療機関以外の医療機関で医療を受ける場合が例示されてい
るところであるが,日本国内に居住する被爆者であっても,被爆者健康手帳
の交付を受ける前から継続的に受診していた医療機関が被爆者一般疾病医療
機関ではない場合や,近くに被爆者一般疾病医療機関がない地域に居住して
いる場合などには,一般疾病に関する医療は,日常的に,被爆者一般疾病医
療機関以外の医療機関で受けるものと考えられる。しかし,前説示のとおり,
被爆者一般疾病医療機関で医療を受けることは,受給者の便宜を考慮したも
のであるから,「緊急その他やむを得ない理由」を狭く解する理由はない。
上記のような付近に被爆者一般疾病医療機関がない地域に居住していること
等のために,被爆者一般疾病医療機関以外の医療機関で医療を受けることを
常態とする国内に居住する被爆者に対して,原則と例外を逆にするものであ
り,同法の予定しているところではないとして,被爆者援護法18条が適用
されないと解釈することは不合理と言わざるを得ない(なお,被爆者援護法
施行規則26条,様式8号は,被爆者一般疾病医療機関以外の医療機関で医
療を受けた被爆者が一般疾病医療費の支給を請求する場合に,「被爆者一般
疾病医療機関から医療を受けることができなかった理由」を申請書に記載す
ることは求めているが,その理由について資料を添えることまでは求めてい
ない。)。同様に,被爆者一般疾病医療機関以外の医療機関で医療を受ける
ことを常態とする在外被爆者に対して一般疾病医療費を支給することは,原
則と例外を逆にするもので,同法の予定しているところではないとして,被
爆者援護法18条が適用されないと解釈することは合理的とはいえない。
(3)在外被爆者については適正性確保の手段がないとの主張について
被告らは,被爆者援護法は,医療費の支給について,支給の適正性を担保
する各種規定を設けており,これらの各種規定は,いずれも医療提供者側に
対する権限であって,国外の医療提供者に対して適用することは不可能であ
るところ,被爆者援護法が支給の適正性を確保しないままの支給を予定して
いるとはいえない等と主張する。
確かに,一般疾病医療費の支給の財源は,全て公費によって賄われている
のであるから,支給に対する適正性を確保することは重要であり,被爆者援
護法は,一般疾病医療費を被爆者一般疾病医療機関に支払うため必要がある
場合には,厚生労働大臣が管理者に対して必要な報告を求め,又は診療録そ
の他の帳簿書類の検査をすることができ(21条,16条),また,厚生労
働大臣ないし都道府県知事は,一般疾病医療費を支給するため必要があると
きには,当該医療を行った者又はこれを使用する者に対し,その行った医療
に関し,報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命じ,
又は当該職員をして質問させることができる(同法21条,17条3項,5
1条,被爆者援護法施行令22条)旨を定める等して,支給の適正性を担保
する諸規定を設けているところ,これらの医療機関に対する諸規定は,国内
の医療機関に対してのみ適用することができるものであり,国家主権に由来
する対他国家不干渉義務の問題により,国外の医療機関に対して適用するこ
とは不可能である。
しかしながら,支給の適正性を確保するためにどのような法制度を設ける
か,設けた制度の全部又は一部が機能しない場合には適正な支給申請が行わ
れた場合を含めて一律に支給対象から除外するとの扱いをするのか否か,そ
の場合,支給対象から除外する範囲をどのように設定するのか等は,個々の
立法ごとに選択されるものであり,選択の結果は,通常,法文上明らかにさ
れるものと考えられる。明文の規定の有無にかかわらず,支給の適正性を確
保するために設けた諸規定の適用が想定されない場合には一律に支給対象か
ら除外するとの解釈が当然に導かれるものではない。
実際,被告国は,平成12年通知により,日本国内に居住する被爆者が海
外旅行等の一時的な出国をしている間に,緊急その他やむを得ない理由によ
り海外において療養等を受けた場合については,一般疾病医療費の支給対象
となる旨の解釈を明らかにしているのであって,被爆者援護法が設けた医療
機関に対する上記諸規定が適用されない国外の医療機関で医療を受けた場合
であっても,一律に支給対象から除外するとの扱いはしていないところであ
る。
この点について,被告らは,平成12年通知は,国民健康保険等による海
外療養費の支給を前提とするものであって,一時出国した被爆者が我が国の
公的医療保険制度による医療の給付を受け得る被保険者等の立場にあること
を要件とするものであり(したがって,日本国内に居住する被爆者であって
も無保険者には適用されない。),国民健康保険法等の規定により支給の適
正性を確保することができる場合である旨説明し,在外被爆者については,
これと異なり,支給の適正性を確保する手段がないので,支給の対象となら
ない旨主張する。
しかしながら,国外の医療機関で受けた医療について,一般疾病医療費の
支給申請があった場合,申請書や添付書類に不備がある場合等に申請者に対
して追加書類の提出を求めることや,医療費を支給するに際して必要がある
ときは,医療を受けたとする国外の医療機関に対して照会を行うこと等が妨
げられるものではない。現に,健康保険等により海外療養費が支給される場
合において,不正請求対策のひとつとして,必要に応じ,療養等を受けたと
される海外の医療機関等に対して,文書等により,支給申請に係る療養等が
行われた事実の有無や,行われた療養等の内容を照会することを掲げる通知
(「海外療養費の不正請求対策等について,同〔国民健康保険法〕,同〔高
齢者の医療の確保に関する法律〕(平成25年12月6日)(保保発120
6第1号)(保国発1206第1号/保高発1206第1号)」(甲35な
いし37))が発出されているところである。都道府県知事の負担はともか
く,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合の医療費の適正性につ
いて,我が国の公的医療保険制度の被保険者が国外で医療を受けた場合の医
療費の適正性についての審査と実質的にそれほど差のない審査を行えないと
する根拠は十分ではない(被爆者に対し調査に応じることを求め,調査に応
じない等のために医療費額の認定ができない場合には支給をしないという対
応は考え得るし,不正な医療費の請求が,制度上は,刑法による処罰の対象
となることもあり得る。)。
また,被爆者援護法が,被爆者の救済を図るために,被爆者の資力や国籍
を限定せずに援護の対象とする法律であること等を考慮すると,上記のとお
り,国外に居住し,我が国の公的医療保険制度の被保険者ではない者が国外
の医療機関で医療を受けた場合において,国内の医療機関で医療を受けた場
合や我が国の公的医療保険制度の被保険者が国外で医療を受けた場合と比較
すると支給の適正性を確保する手段が十全のものではないとしても,そのこ
とを理由として,在外被爆者からの一般疾病医療費の支給申請については,
適正な支給申請があった場合を含めて,一切の支給を行わないことを予定し
ているものとは解し難い。
(4)在外被爆者の居住する各国の公的医療保障制度との併給調整規定は設け
られていないとの主張について
被告らは,公費が支給される場合において,複数の受給権が発生する場合
には各種法律において,両者を受給することによる過剰給付を避けるための
調整規定(併給調整規定)が設けられており,被爆者援護法は,18条1項
ただし書において,一般疾病医療費の支給と社会保険各法等による給付との
調整を図っているところ,在外被爆者が,各居住国において公的な医療保障
制度に加入し,その国において医療を受けた場合に,当然想定される当該制
度による給付に対しては,併給調整のための規定はないのであって,同法は,
国外の医療機関において医療を受けた在外被爆者に対して一般疾病医療費を
支給することは予定していないと言わざるを得ないと主張する。
しかしながら,例えば,日本国外に居住する被爆者で居住国の公的医療保
障制度に加入している者が,我が国滞在中に国内の医療機関で医療を受けた
場合には,国内に現在地があるので一般疾病医療費の支給対象となるものと
解されるが,この場合に,当該居住国の公的医療保障制度によって何らかの
給付を受けられるとしても,被爆者援護法18条1項ただし書による明示の
併給調整の対象とはならないのであって,被告らの主張するような併給調整
の規定の有無という点で,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合
をこれと区別する合理的な理由はない。そして,一般疾病医療費の支給制度
が,医療費のうち公的医療保障制度によっても自己負担が必要となる部分に
ついて,一般疾病医療費を支給することによって自己負担なしに医療を受け
られるようにする趣旨のものであり,被爆者援護法18条2項が,医療費の
算定について「現に要した費用の額を超えることができない」との同法17
条2項の規定を準用しており,ここでいう「現に要した費用」は,被爆者が
自ら負担した医療費の額を意味すると解し得る余地もある(原爆医療法の規
定に関してであるが「原子爆弾被爆者に対する医療の給付等の取扱いについ
て(昭和35年12月3日)(衛発第1170号)」(甲29)はそうした
解釈を前提とするものと解し得る。なお,原告らもそうした解釈を前提とし
て本件各申請を行っている。)から,被爆者援護法18条の解釈を通じて,
在外被爆者に対する過剰給付を避けることが可能と解される。被爆者援護法
が,在外被爆者の居住国における公的医療保障制度による給付額との個別の
併給調整規定を設けなかったのは,同法が在外被爆者に対して一般疾病医療
費を支給することを予定していないことによるものと解することはできな
い。
(5)在外被爆者を一般疾病医療費の支給対象に含めないという立法者意思は
明確であり,平成20年改正附則は,それを前提としているとの主張につい

ア被告らは,被爆者援護法の立法当初における政府委員の答弁(乙6)を
指摘する等して,在外被爆者を一般疾病医療費の支給対象に含めないとい
う立法者意思は明らかである旨主張する。
しかしながら,法律の解釈は,まず法文の合理的解釈によるものである
から,立法者意思についても,第一次的には,当該法文に表された内容に
よって探求されるべきものである。そして,前記のとおり,年金,手当,
医療費等の給付に関する諸制度において,日本国内に住所等を有すること
が支給要件とされる場合には,その旨法文に明記されるのが通例と考えら
れ,その旨の規定をおくことが立法技術上困難であったとも考え難いとこ
ろであるから,立法者が,日本国内に居住地又は現在地を有することを支
給要件とする意思を明確に有していたのであれば,当然にその旨法文に明
記したものと解される。立法者は,被爆者援護法18条の支給対象者を限
定する規定をあえて設けなかったと解さざるを得ない。
イ被告らは,「政府は,この法律の施行後速やかに,在外被爆者に対して
行う医療に要する費用の支給について,国内に居住する被爆者の状況及び
その者の居住地における医療の実情等を踏まえて検討を行い,その結果に
基づいて必要な措置を講ずるものとする」と定める平成20年改正附則2
条1項は,被爆者援護法18条が在外被爆者に適用されないことを前提と
するものであり,こうした立法の経過からも立法者意思は明らかである旨
主張する。
しかしながら,平成20年改正附則2条1項は,政府が平成16年以降,
予算の範囲内で行っていた保険医療助成費(在外被爆者がその居住国の医
療機関において必要な医療を受けたときの医療費について助成を希望する
者に支給するもの)の上限額について検討することを想定したものであっ
て(乙26),当時の立法者が,在外被爆者を一般疾病医療費の支給対象
に含めないとの意思を明確にした上で,政府に対して,その代替措置を予
算の範囲内で講ずることを求めたものではない。そして,政府が平成16
年以降,予算の範囲内で行う在外被爆者に対する各種支援事業のひとつと
して,保険医療助成事業を実施してきたことは前記1認定のとおりであり,
これにより,在外被爆者は,一般疾病医療費の支給申請手続に比べて,よ
り簡易な手続により,居住国の医療機関で受けた医療費の自己負担額につ
いて,定められた上限額の範囲内で助成を受けることが可能となったので
あるが,こうした在外被爆者に対する各種支援事業が実施されていること
は,在外被爆者に被爆者援護法の各種規定が適用されないことを当然に意
味するものでもない(在外被爆者が国外から被爆者健康手帳の交付申請を
なし得る旨の規定が新設された後においても,手帳交付渡日支援事業が実
施されている(乙22)ことに照らしても,在外被爆者に対する上記各種
支援事業は,在外被爆者に対して被爆者援護法の各種規定が適用されない
ことの代替措置として実施されているものではないことは明らかであ
る。)。
また,平成20年改正附則は,上記2条1項の規定とともに,2条2項
の規定を設けて「政府は,この法律の施行の状況等を踏まえ,在外被爆者
に係る原爆症認定の申請の在り方について検討を行い,その結果に基づい
て必要な措置を講ずるものとする」旨定めており,同規定を受けて,政府
は,平成22年政令第29号により被爆者援護法施行令を改正して,在外
被爆者が国外から原爆症認定申請を行うことを可能としたのである(同施
行令8条2項ないし4項)が,こうした経緯に照らすと,平成20年改正
附則2条2項に表れた立法者意思は,被爆者援護法11条は在外被爆者が
国外から原爆症認定申請を行うことを排除していないことを前提として,
原爆症認定申請を行うために必要な措置を講ずることを政府に求めたもの
と解される。そうすると,同様の規定である平成20年改正附則2条1項
に表れた立法者意思についても,被爆者援護法18条は在外被爆者が国外
の医療機関において受けた医療について一般疾病医療費の支給対象とする
ことを排除していないことを前提として,より簡易な手続である保険医療
助成事業について上限額を引き上げることを検討し,必要な措置を講ずる
ことを政府に求めたものと解される。
以上のとおり,平成20年の被爆者援護法改正当時において,立法者は,
在外被爆者に同法18条1項が適用されない旨の明文の規定を置くことは
せず,保険医療助成事業の上限額の引き上げの検討等を求める平成20年
改正附則2条1項の規定を置くにとどめたのであって,在外被爆者には同
法18条1項が適用されないとする当時の立法者意思が客観的に明らかに
されたということはできない。
ウ被告らは,各種の予算措置による在外被爆者に対する援護施策の拡充が
図られていることを指摘するが,そのことが,被爆者援護法18条1項を
在外被爆者には適用されないとの立法者意思の表れとして,同条の解釈指
針となり得るものではない。
(6)小括
以上のとおり,被爆者援護法は,いわゆる社会保障法としての性格をもつ
ものであるが,被告国が自らの責任により被爆者の救済を図るという国家補
償的配慮を根底に有し,被爆者の資力や国籍による限定をせずに援護の対象
とするものであること,手当等の支給に関する他の制度においては国内に住
居地等を有することが支給要件とされている場合には法律にその旨明記され
るのが通例であるところ,被爆者援護法はその旨の規定をおいていないこと,
同法18条に基づく一般疾病医療費の支給についても,国内に居住地又は現
在地を有すること等を支給要件とする旨の明文の規定はなく,一般疾病医療
費の支給に関する同法全体の構造,立法者意思等を考慮しても,その支給対
象者について,法文上明記されていない条件を付加して限定解釈されること
を予定しているものとは解し難く,同条について,在外被爆者が国外の医療
機関で医療を受けた場合を一般疾病医療費の支給対象から除外するものと限
定解釈することが合理的なものということはできない。
そして,国外の医療機関は,被爆者一般疾病医療機関として指定されてい
ないことに加え,一般に,迅速に治療を受けられない場合には負傷や疾病が
悪化するおそれがあるため,居住国の医療機関で治療を受けずにあえて時間
と費用をかけて我が国の被爆者一般疾病医療機関での医療を受けるのでなけ
れば一般疾病医療費の支給対象とすべきではないと評価することが社会通念
上相当な場合はごく限られていると考えられることに照らすと,在外被爆者
がその居住国の医療機関で医療を受けた場合は,我が国に渡航して被爆者一
般疾病医療機関での医療を受けることが容易であり,かつ,当該居住国の医
療機関での医療を受けずに日本で医療を受ける方が合理的であるなどの特段
の事情がない限り,被爆者援護法18条1項にいう「緊急その他やむを得な
い理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたと
き」に当たるものと解するのが相当である。
本件各申請は,韓国に居住し,現在する本件被爆者らが韓国の医療機関で
受けた医療に係るものであって,上記特段の事情は見受けられないから,本
件各申請に係る医療はいずれも被爆者援護法18条1項にいう「緊急その他
やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療
を受けたとき」に当たるものと認められる。
したがって,本件各申請を却下した本件各却下処分は,いずれも違法であ
って,取消しを免れない。
3争点(2)について
(1)争点(2)イ,ウ(被告大阪府が本件各却下処分をしたこと及びこれに先立
ち被告国が被告大阪府に対し,在外被爆者からの一般疾病医療費支給申請は
却下相当であると回答したことが,国家賠償法上違法か)につき,まず検討
する。
ア前記2のとおり,本件各申請を却下した本件各却下処分は違法であり,
取消しを免れないものである。しかしながら,本件各却下処分が違法であ
ることは,直ちに,本件各却下処分を行った被告大阪府の担当者の行為,
あるいは,本件各申請を却下すべきである旨を回答した被告国の担当者の
行為に国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を導くものではな
く,被告らの各担当者において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くす
ことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限
り,同項にいう違法があったと評価すべきものと解するのが相当である(最
高裁判所昭和63年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判
決・民集39巻7号1512頁,最高裁判所平成元年(オ)第930号,第
1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863
頁)。
かかる観点から以下検討する。
イ在外被爆者に対する原爆二法及び被爆者援護法の適用に関する従前の動
きは,前記1認定のとおりであり,この間の過程において,在外被爆者に
原爆二法及び被爆者援護法が適用されることを主張する訴訟が多数提起さ
れてきた。しかし,これまで,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受け
た場合に,被爆者援護法18条に基づく一般疾病医療費の支給対象となる
かが訴訟の場で正面から争われたことはなく,本件原判決が言い渡される
まで,同条が在外被爆者には適用されないとの解釈が違法であるとの司法
判断が示されたことはなかった。むしろ,平成14年大阪高裁判決(日本
国内に現在している間に被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者が,国外に
移動したことを理由に健康管理手当の支給を停止されたことの当否が問題
とされた事案)は,傍論(医療給付が予定されていないことが健康管理手
当を支給しない根拠となり得るか)の中でではあるが,医療給付について
は,日本に居住も現在もしない者に対する給付は予定されていない旨判示
していたところである。
また,被爆者援護法上,在外被爆者に一般疾病医療費を支給し得る旨の
明文の規定はなく,被爆者援護法施行規則26条は,一般疾病医療費の支
給の申請について,居住先の都道府県知事を申請先として定めており,在
外被爆者が一般疾病医療費の支給申請手続について明文の手続規定をおい
ていないこと,被爆者援護法は医療費支給の適正性を確保するための諸規
定を設けているところ,これらの諸規定を,国外の医療機関に適用するこ
とは不可能であり,また,在外被爆者の居住する各国の公的医療保障制度
との併給調整規定も設けられていないこと,改正附則2条1項の文言など
から,在外被爆者が国外の医療機関で医療を受けた場合には被爆者援護法
18条に基づく一般疾病医療費は支給しないとする解釈にはそれなりの根
拠が存したということができる。
そうすると,被告らの各担当者において,本件各却下処分をしたことや,
却下相当であると回答したことについて,その職務上尽くすべき注意義務
を尽くさなかったものとはいい難いから,被告らの各担当者の行為につい
て,国家賠償法上違法であると評価することはできない。
(2)争点(2)ア(在外被爆者に一般疾病医療費を支給する措置を講じなかった
ことが国家賠償法上違法か(被告国関係))について
上記(1)で説示したとおり,本件各却下処分あるいは本件各申請が却下相当
として回答したことが国家賠償法上違法といえないのであって,そこで判示
したところに照らせば,被告国が却下相当との回答よりも前に在外被爆者に
一般疾病医療費を支給する措置を講じなかったことも国家賠償法上違法であ
るとはいえない。
(3)小括
したがって,その余の点を論ずるまでもなく,原告らの被告らに対する各
国家賠償請求には理由がない。
4以上のとおりであるから,原告らの被告大阪府に対する本件各却下処分の取
消請求はいずれも理由があるからこれを認容した原判決は相当であって,被告
大阪府の控訴は理由がなく,また,原告らが被告らに対する国家賠償請求はい
ずれも理由がないからこれらを棄却した原判決は相当であって,原告らの控訴
もまた理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官水上敏
裁判官内山梨枝子
裁判官平野剛史

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